2025年12月29日月曜日

【小説】外伝:駆け抜け!人類アンチ種族神 序章②

※この小説は、連載中の『人類アンチ種族神』のこれまでのあらすじをダイジェスト形式でまとめたものです。

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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かつて人間として絶望の中で死んだ彼は、神として転生し、お台場の上空に居城を出現させた。


本来、この世界の神は異なる次元に存在し、姿を見せることなく干渉するものである。 だが、彼は違った。自らの存在を人間に誇示し、恐怖を刻み込むことに固執したのだ。


彼は空中の居城に立つと、世界への宣戦布告として最初の配下を生み出す。 指先から放たれた無数の黒いモヤは、瞬く間に濃縮され、翼を持った人型の怪物へと姿を変えた。


◆ ◆ ◆


その頃、高校生配信者のミナトは、秋葉原のメイド喫茶で看板娘コトハとコラボ配信を行っていた。


「あはは、今日はいい天気ですねー!」


あざとく笑うコトハの猫耳カチューシャ越しに映る青空。その一点に、黒い“シミ”のようなものがぽつりと湧いた。 コメント欄が『あれ何?』『合成?』とざわつき始める。 ミナトは「どうせゴミか何かだろ」と乾いた笑いを漏らした。――その楽観が凍りつくまで、三秒もかからなかった。


◆ ◆ ◆


同時刻、渋谷スクランブル交差点。


就活帰りの大学生・蒼井隆司は赤信号で立ち止まり、ハンカチで額の汗を拭った。


突如飛来した怪物は、交差点の中央で息を大きく吸うと、ゴゥッ! と高熱の炎を吐きだした。


「……マジかよ」


――紅蓮の炎が横断歩道を薙ぎ、観光バスが爆裂した。 焦げたタイヤの甘ったるいゴム臭と、肉の焼ける異臭がマスク越しに突き刺さり、隆司の肺が拒絶反応で痙攣する。 ガラス片と砕けたアスファルトが雨のように降り注ぐ中、隆司は反射的に走り出した。だが視界の端には、まだ“現実”を飲み込めずスマホを掲げたまま立ち尽くす人々がいた。


逃げ惑う阿鼻叫喚の群衆の中に、一組のカップルがいた。


女はヒールのまま走り、靴先でガラス片を弾くたびに足首が赤く染まっている。多くの破片が散乱する路面をヒールで走る彼女は、次第に彼氏から遅れていく。 『もっと! もっと速く!』 彼氏が叫ぶ。だが、スニーカーを履いた男と同じ速度で走れるはずがない。


彼氏は何度も彼女の腕を引き、振り返っては迫りくる黒い怪物との距離を測っていた。繋いだ手は冷や汗で滑り、指先が小刻みに震えている。『大丈夫だ、俺がいる!』と叫ぶ声は裏返り、優しさという仮面の下で、剥き出しの恐怖が脈打っているのが隆司にも見えた。 ──もう限界だ。


その時、逃げる群衆を無差別に襲っていた一体の怪物が、ふと二人のほうを向いた。 猛禽類が次の獲物を見つけた瞬間を思わせる、氷のように冷たい視線。


彼氏の喉がごくりと動き、その瞳に〈自分の末路〉が映ったように揺らいだ。 刹那、恐怖が理性を追い越した。


彼氏は繋いでいた手を、邪魔なものを排除するように強く振り払った。


「っ?!」 「悪いッ!」


その反動を利用し、彼氏は動物じみた加速で群衆の渦へ溶け込んでいく。それは謝罪とも拒絶ともつかない、生存本能だけの行動だった。


見捨てたのか──?! 隆司の胸に稲妻のような憤りが走る。同時に、助けへ踏み出そうともしない自分の足が恐怖で路面に縫い留められている事実が、避けがたい自己嫌悪を連れてきた。


「待って! お願い、置いていかないで!」


ヒールで踏みしめる硬質音と、か細い悲鳴。 直後に響く骨の砕ける音、肉の焦げる臭気。 隆司は耳を塞いでも鼓膜の奥でその音が反響し続け、喉の奥から胃液が逆流した。


◆ ◆ ◆


この神が生み出した怪物の正式な名前は誰も知らない。 それでもSNSのハッシュタグで、誰かがその名をつけた。


『ガーゴイル』


それが、この黒い怪物の名だ。 この日――大都市東京は、紅の奈落へと落ちた。


◆ ◆ ◆


東京を瓦礫に変えた神は、さらに3体の特別なガーゴイルを生み出した。


近接戦闘特化の個体、ベルガン。 索敵支援特化の個体、サーチ。 そして、全軍の指揮を執る参謀個体、ヴァロン。


彼らに与えられた最初のミッションは、妻を殺したトラックの運転手を捜すこと。そして、事実を捻じ曲げた弁護士を捜し出すことだった。 神の能力をもってすれば、特定の個人を発見するのは容易い。これは復讐であると同時に、産み落とした怪物たちの『狩り』の初陣でもあった。


数日後、サーチがあのトラックの運転手を発見した。


神はベルガンとサーチに冷徹な指示を出す。 「あの人間は、トラックで潰して殺せ」


神は神でありながら、人間として生きた怨念を忘れてはいなかった。単純には殺さない。意趣返しを込めた死を与えることで、内なる怒りを昇華させようとしたのだ。


ベルガンとサーチは、運転手を望みどおりの形――鉄塊による圧死――で葬り去った。能力としては優秀と言ってよい。 だが神は満たされてはいなかった。


ーー簡単すぎた。もっと、苦しみを。私が味わった地獄と同じだけの絶望を与えねばならない。


やがて弁護士も発見された。 神は前回の反省を踏まえ、彼にはより入念な意趣返しを用意する。


名付けて、「絶叫の法廷」。


神は、弁護士の家族を一人一人、被告として即席の法廷に立たせた。 弁護士にはその弁護を命じる。だが、彼が口を開こうとするたびに肉体的な苦痛を与え、決して弁護の言葉を紡がせない。 かつて神が人間だった頃、真実を封じられ、金と権力でねじ伏せられた理不尽な裁判の再現である。


「罪なき者を殺すのか、と問う眼だな」


神は弁護士の絶望的な視線を受け止め、冷たく言い放つ。


「私の妻も、罪などなかった。奪った者は、奪われる覚悟を持つべきだ」


神は彼のすべての家族を処刑すると、最後に弁護士へこう告げた。


「お前だけは殺さない。だが覚えておけ。お前に守るべきものが再びできたとき、この法廷は何度でも開かれる」


絶望に発狂する弁護士を置き去りにし、神と眷属たちはその場を去った。


復讐は完遂された。はずだった。 だが神の中には依然として黒い渦が感情を押し上げてくる。 一方で、種族神として「人間族を守ろう」とする本能が、神の完全な暴走をかろうじて押し留めていた。


神の生み出した怪物は東京都を焼き払った。だが、他県へは流れ込むことはなく、破壊と守護がせめぎ合う繊細なバランスのもと、新しい絶望の世界が幕を開けたのだ。


この未曽有の状況に、防衛大臣である真田は頭を抱えていた。 地下や建物に隠れて生き延びた人々。錯綜する情報。政府の官僚も多数が死傷し、機能不全に陥っている。


それでも「説明責任」という言葉で、安全圏にいる他の議員たちは真田を追い立てる。 ついに、運命の説明会見が開かれることとなった。

2025年12月28日日曜日

【小説】 外伝:駆け抜け!人類アンチ種族神 序章①

※この小説は、連載中の人類アンチ種族神のこれまでのあらすじを、ダイジェストにまとめつつ、描写や表現を加筆・修正したものです。

※この小説は、はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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これは、人間の種族神として誕生した若い神による、破壊と創生、そして審判と成長の記録である。


「ねえ!君はどんな神になるの?」


光に包まれた広大な空間で、丸い光の玉が、隣に浮かぶもう一つの玉に話しかけた。


「僕はねえ。地球という星の人間族の種族神だって!」


彼らは神の子。神になるべくして生まれた生命とは違う存在だ。


神の子は無数に存在する。次元、時間、場所、対象となる生物 と細かく割り振られる。


この神の子は、ある次元の地球の日本、人間の種族神となることが決められたのだ。


神の子は神になる前に、その種族に転生し生涯を経験しなければならない。掟に従い神の子は記憶を失い純粋な人の子として転生したのだった。


だが人の世は厳しいものだった。


二歳の春。――他人の不注意で信号無視の自転車が歩道に突っ込み、跳ね飛ばされた。

左半身は中程度の麻痺が残り、この傷が彼を生涯苦しめた。


中程度の麻痺は、外見にはほとんど傷が残らない。立つこともでる、ぎこちなくても歩ける。

だから大人たちは言った。


> 「努力が足りないだけさ」

> 「ほら、手を抜くな、怠けるな」

> 「泣くのは甘えだろ?」


左足が思うように上がらず、指先の感覚が半分しか戻らない、と訴えても

「できるはずだ」 と笑うだけ。健常な価値観で計った物差しは、彼の痛みを計測不能と切り捨てた。


十八で就職。体に負担の少ない軽作業を選んだ。それでも彼は人よりも頑張った。

脳裏に響く「手を抜くな、怠けるな」という大人の呪いが彼に休むことを許さないのだ。


だが、彼の上司は健常者だったが酷く怠け者であった。上司の怠け癖で度々止まってしまうライン。

ある時、経営者から大問題とされ、責任の追及を行った。


彼の上司は一番の働き者であった彼を「障害者だから」という理由で罪を擦り付け、彼は理不尽に職を失った。


二十二で再就職。次の職場は見下す視線と無言の圧が職場全体を湿らせていた。

「手が遅い」 「給料泥棒」――耳障りな陰口は、やがて彼は自分の心音と区別がつかなくなった。



そんな泥の底で、たった一輪の花が咲く。

家庭ができ、男の子と女の子が生まれた。


だが奇跡は長く続かない。


居眠り運転のトラックが妻をはね、死亡させてしまったのだ。


トラックの運転手も、自分の非を認めなかった。赤信号を妻が飛び出したと言い張った。


ーーそんなはずはない。


彼は何度も現場へ行って目撃者を捜した。そしてついに、現場近くの文具店から防犯カメラの映像を発見した。

青信号を渡る妻に、一切減速していないトラックが突っ込む瞬間を彼は深い悲しみを抑え何度も見返した。


だが、裁判でその証拠が使われることはなかった。


文具店の店主は、運送会社からの『謝礼』と、弁護士がちらつかせた『協力しない場合の不利益』に屈して、大切な証拠の映像を『誤って消去した』と証言したのだ。


裁判で彼はただ、妻への謝罪が欲しかった。すまなかったの一言でよかった。

だが会社も男も「保険が降りますので」と頭を下げただけで、その眼に感情はなかった。


正義は金で買われる。 その現実が胃の奥で錆びた鉄の味を広げ、胸を焼く憎悪に変わった。


妻を失った彼は、子供のために必死に働いた。寝食を忘れ妻の残したわが子のために身を粉にして働いた。


ある日、彼は朝から少し体が重かった。倉庫の奥で三十キロの段ボールを抱えていると、額を伝った汗が右目に入り視界が滲む。


そのときだ。胸のまん中を、赤く焼けたナイフでいきなり刺されたような痛みが走った。


「――っぐ……!」


荷が落ち、つぶれた箱からネジが散る。ひざが折れ、ほこりのにおいが鼻を突いた。


左手を伸ばすが、指先から力がすべて抜ける。心臓が一発ごとに強く打ち、そのたび視界のふちが暗くなる。


痛みは徐々に強くなり、彼は悟る。


――死ぬ? 今ここで?


恐ろしい。けれど同じくらい理不尽だった。


息が吸えず、口がぱくぱくと音もなく開くだけ。誰もいない倉庫に爪を立てても、助けは来ない。


ふざけるな……ふざけるな……!


胸を殴っても鼓動は弱まる一方で、世界の音が遠ざかる。ネジが転がるカラカラという音だけが、むなしく響いた。


涙は出なかった。かわりに熱い血が耳のうしろで波打ち、視界は真っ白に発光した。


「誰か――」

「子供たちの夕飯を……まだ作って……」


いや、せめて――最後に一目……!


心臓が、ひとつ、ぐしゃりと音を立てた気がした。次の鼓動は来なかった。


白い世界だけが残り、そして静けさがすべてを飲みこんだ。


(……おかえりなさい)


あの、丸い光の玉が再び彼に話しかけた。

次の瞬間、宇宙規模の記憶が洪水のように流れ込む。


彼は“神の子”であることを思い出した。


彼は人間としての人生を振り返る。理不尽と暴力、そして一片の希望さえも許されない人生だった。

彼の口から言葉が漏れる。


「人間の種族神か。ならば存分に破壊から始めるべきだろう。このクソ種族は守るべき価値から

 作り出してやろう。面白い。実に面白い。あははははは」


純粋培養された『隣の神の子』は、変わり果てた彼の深く黒い感情に震え上がり、言葉を失っていた。


人類を最も憎む人類の種族神。

「人類アンチ種族神」の誕生の瞬間だった。

2025年12月25日木曜日

活動レポート 2025年11月

管理人の緑茶です。こんばんは!

 

遅くなりましたが、今回は先月の活動レポートとなります。


【実績】

作家関連のお仕事は・・・・0(ZERO!)

今月も安定の0!(ZERO!)でした。


【雑感】

『レビューの話題』-------------------

秋アニメ終了に伴い、レビュー数は控えめとなりました。今回は日記記事を増やしすぎないよう、劇場版のレビューを掲載する方針で調整しています。日記も人気がないわけではありませんが、連続するとネタが弱くなりがちなので、趣向を変えてみました。読者の皆様に少しでも楽しんでいただければ幸いです。劇場版レビューは思った以上に伸びたので、今後も不定期で扱っていきたいと思います。


『DQXの話題』-------------------

最近はなかなかログインできていません。シナリオを始めると時間がかかることが分かっているので、どうしても未着手になりがちです。ゲーム開始から終了まで5分程度で済むコンテンツなら気軽に楽しめるのですが、そうなると日替わり・週替わり討伐くらいしかなく、プレイから遠ざかってしまっています。遊びたい気持ちは強いのですが、隙間時間が取れないのが実情です。加えて、ゲーム内ストレージ(かばんや装備枠)が常に一杯で、まず整理から始めなければならないのも腰が重くなる原因です(笑)


『YouTubeの話題』-------------------

春野菜の準備に向けて、農業系のチャンネルを色々と視聴していました。最近は真偽不明の動画が増えている印象です。たとえば、袋の側面に穴を開けて、ジャガイモを上下左右から育てて収穫量を増やすという内容の動画がありました。しかし、芽は基本的に重力と逆方向にしか伸びないため、理屈としてはかなり無理があります。浅く植えることで横から芽を出す可能性はありますが、それでは収穫量が減ってしまうため、現実的とは言い難いと感じました。


『小説の話題』-------------------

「人類アンチ種族神」を週一で更新しています。本サイトではすでに次の章に突入していますが、外部サイトでは年末前に前章がきれいに終わるよう調整できました。年末年始には「ふりかえり版」を掲載予定で、ほぼ予定通りの進行です。山場を連休に合わせたり、話が途切れないよう2日連続で更新したりと、読者に読まれやすい工夫を意識して取り組んでいます。それ自体も良い経験として楽しめています。


『その他の話題』-------------------

もう今年も終わりが近づいています。今年は本当にチャレンジの多い一年でした。うまくいったことも、そうでなかったこともありますが、実のある年だったと感じています。家庭菜園関連の活動が少し弱かったのと、リアルの多忙によりNサークルの活動に迷惑をかけてしまった点は反省です。来年もどうぞよろしくお願いいたします。



以上で、今回の活動レポートは終了です。


長文にお付き合いいただきありがとうございました!


今月も引き続き更新していきますので、ズズズイッとよろしくお願いします!



2025年12月23日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント②》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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R連隊研究室で偵察ドローンが撮影した映像を見ながら、変人研究者篠原《しのはら》涼音《すずね》の解説を防衛大臣の大仲《おおなか》晴彦《はるひこ》が聞いていたところ、一人の官僚が慌てて研究室に入ってきた。


それは、大荻山が死亡し、私有シェルターの脱出部隊が全滅してから、僅か数分後の出来事だった。


「大仲大臣!!緊急事態です!」


大仲は急いで官僚の元へ駆け寄ると、声を抑えて尋ねた。


「何があった?UFBか?」


「いえ、タラメアです!」


「タラメア?まさか核か!!」


「いえいえ、あの、舞岡議員が独断で……」


事の真相はこうだった。先ほど前触れもなくタラメアの使節団が埼玉の臨時内閣本部を訪問。しかも武装したまま暫く滞在するというのだ。そんな暴挙が許されるはずがない。国際的にも非難されるべき事案で、あり得ない話だった。


だが、使節団の言い分は「この国の舞岡議員の強い要請により、UFBと戦う同盟国の現状を視察に来た」ということだった。


舞岡議員は使節団の案内役として常に同行しており、話を聞くこともできない。国会にも「同盟国アドバイザー」という形で出席する意向で事実上、本会議の場で外交戦略についての話し合いは不可能になったというのだ。


大仲は愕然とするとともに、あまりにも節操のないタラメアに怒りが沸き上がった。


「同盟国でも武装して内閣本部に滞在するなどあり得ない!防衛大臣として即座に退去を要請する!!この非常時にタラメアまで相手にしていられるか!!」


つい、声が大きくなる。すると研究室の吊り下げ式のモニターにAI画像の男が現れた。AI男は無機質な合成音声で話し始めた。


「篠原です。大臣、まずは冷静に。舞岡議員の独断とはいえ、建前上はお招きした客人です。対処を誤れば代償は大きい。彼らの狙いは明白です。自衛隊の監視です。まずは情報の秘匿です。この研究所の場所を悟られてはいけません。ここには多くの秘匿情報が……」


プツン


突然映像が切れた。


入れ替わるように、入り口の方に、信じられない光景が現れた。


「ミチニ マヨッテイタラ ナニヤラ スゴイ トコロニ ツキマシタ。コンニチハ ミスター大仲」


官僚は座り込み、その人物の名前を口にした。


「タラメア使節団のリーク大佐ッ」


その様子を見て、リーク大佐は親しげに声をかけた。


「ココハ ドコデスカ?」


大仲がすぐに矢面に立った。


「リーク大佐。あなたはタラメア合衆国の情報部配属のはず。見当はついているのでしょう。そもそも入り口や通路に多くの警備兵がいたはずですが、道に迷うなんて不思議ですね」


リーク大佐は悪びれる様子もない。


「オー! キョウダーイ ココハ ドコデスカ?」


明確な煽りに大仲は乗らなかった。


「どうやって、というのはやめましょう。ここには外に出せない情報があります。つまり秘匿施設なのです。同盟国とはいえ、防衛大臣として立ち入りを許可できません!」


リーク大佐は退く気配もなく話を続けた。


「ハーン? キョウダーイ ココハ ドコデスカ?」


「大佐。そのウソくさい日本語もやめていただきたい。私は防衛大臣です。あなたのことは存じております」


リーク大佐の声のトーンが変わった。


「なら話は早いですね。何度要求しても怪物の情報を出さない!あんたは、いやこの国は合衆国の友人だろう?ならば情報を共有すべきだ。今すぐに。これはタラメア大統領の言葉だと思ってもらって構わない」



大統領の言葉。つまり断れば同盟に亀裂が入る。大仲の一存ではさすがに判断できない事案であった。だが、リーク大佐は「今見せろ」と譲る気配はなかった。


1分… 大仲は言葉に言葉を重ね、この場をしのごうと脳をフル稼働させていた。沈黙が続いた。


しびれを切らした大佐が沈黙を破った。


「大臣。この国にはあなたの家族もいる。”同盟国”として、居場所も把握している。大丈夫、怪物の情報をくれれば”友人として”我が国が安全を保障しよう」


「さぁ友人よ。情報を今すぐ開示してくれ」


大仲の顔がこわばった。


「ぬうう」


つくろう言葉は見つからず、絞り出した声は感情だけが前に出た絞りカスのような声だった。


そこへ篠原が現れた。胸には「山口」と書かれたプレート。どうやら状況を察して偽装したようだ。


そして、わざとらしく大声で叫んだ。


「きゃぁぁ!こんなところに外人さんが!オラこわいだぁぁ!」


そういうと、手元にあった資料を取ってはバラバラに裂いてリーク大佐に投げつけた。

そばにいた、R連隊隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》は仲原《なかばら》香《かおり》三佐にアイコンタクトを送った。


すると、仲原も暴れだした。


「こら!山口!山口さん!落ち着いて!!こちらは使節団のリーク大佐よ!怖くないわ!」


そう言いながら、手元にあったUSBメモリーなどの記録媒体を破壊しては投げつけ始めた。


足立も黙って見ているようで、足元に転がってきたSSD記録機器などを踏みつぶした。


大仲も気が付いた。


ーーこれは整理された情報を乱雑に混ぜることで時間を稼ぐ作戦だと。


そして同調した。


「仲原!山口!何をしている!今すぐヤメタマエ!」


当然止まることはなかった。


だが、茶番は長くは続かなかった。リーク大佐は胸元につけた銃のホルダーを見せ、大きな声で場を制した。


「小細工はやめろ!山口とかいう女!室長の篠原を連れてこい!」


山口(篠原)はぺたんと尻もちをついた。


その瞬間、再びモニターが映り、AI画像の男が現れた。


「室長の篠原です。初めまして。私は秘匿扱いのためこの姿で失礼する。情報はすぐにお渡しします。その代わり、この研究室のことは内密にお願いしたい。できないときは私が全て消去し、私も死にます」


大佐は初めて表情から余裕が消えた。


篠原の噂は大佐も知っていた。タラメアの分析結果としても常識がない人物である。全データを本当に消しかねない。その不安が思考を鈍らせる。


答えを聞かず、AI篠原は進めた。


「あなたを信頼しましょう。後ろの大型モニターに我々の解析結果を表示します。ご自由に撮影してお持ち帰りください。カメラは山口がお渡しします」


すると山口(篠原)がポケットからデジタルカメラを取り出すと、大佐に手渡した。


大佐は山口を睨みつけるとーー


「この女、やはり冷静じゃないか。このリークに馬鹿な芝居をするなんて、いい胆力だ。お前、タラメアに来るか?」


その言葉に、後ずさりし、また座り込む山口(篠原)。


それをみて上機嫌な大佐はデジカメの電源を入れる。すると、大型モニターにUFBの情報が映し出された。


AI篠原が補足した。


「そのデジカメは研究所用のものです。記録画像は3時間で自動消去されます。モニター情報を撮影したら、手早く本国へ送信されるとよいでしょう」


映し出されたUFBの情報を見て大仲は驚いた。


2025年12月21日日曜日

年末年始のお知らせ

本日は当サイトの年末年始のスケジュールをお知らせします。

今年も年末の休暇日が長いので、里帰りのため変則的になります。


外部サイトと同期をとって、小説の作者再編集版を休載日を中心に更新します。

数万文字の内容をギュッと圧縮して「これまでのあらすじ」的な内容になります。

この機会に、本作の序章などに触れて頂ければ幸いです。

最初のころの文章は凝りすぎて読みにくい部分もあったので、再編集版では読みやすくなっていると思います。(一部のミスも修正しています)


28日までは通常通りの更新となります。


28日(日曜日) 掲載日 → 小説】人類アンチ種族神(振り返り:序章①)

29日(月曜日) 休載日 → 【小説】人類アンチ種族神(振り返り:序章②)

30日(火曜日) 掲載日 → 休載日

31日(水曜日) 休載日 → 休載日

01日(木曜日) 掲載日 → 掲載日(新年のご挨拶)

02日(金曜日) 休載日 → 【小説】人類アンチ種族神(振り返り:対決①)

03日(土曜日) 休載日 → 【小説】人類アンチ種族神(振り返り:対決②)

04日(日曜日) 掲載日 → 休載日

05日(月曜日) 休載日 → 休載日

06日(火曜日) 掲載日 → 掲載日

…⇒ 以降通常通り


以降、通常スケジュールとなります。30日は休載になってしますが、申し訳ございません。ご容赦頂ければと思います。

記事に関するDMやコメントに関しては5日以降に確認する形になりますので、ご了承お願い致します。


では、今年もあとわずかですが、本年も最後までよろしくお願いします!

2025年12月18日木曜日

機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム(レビュー)〔Netflix独占配信〕

 <あらすじ>

一年戦争期の東ヨーロッパ戦線を舞台に、新兵器モビルスーツの投入でジオン優勢だった戦局が大きく揺らぐ中、物語は進みます。

ジオン軍の宇宙降下部隊「レッド・ウルフ隊」は、地球連邦軍の最新鋭モビルスーツ「ガンダム」に追撃されながらも、生き残りを図ります。


<レビュー>

本作は、地上にいるジオン側の視点で初代『機動戦士ガンダム』の世界を描いたシリーズです。最終話とそれ以外のエピソードの色合いが大きく異なり、最終話以外は“怪獣映画的”な演出が強い印象でした。“ガンダムらしさ”が最も濃いのは最終話だったと思います。


とはいえ、エンタメとしての推進力は非常に高いです。映画ではなく連続ものにもかかわらず、中だるみなく視聴を引っ張る構成で、毎話しっかり次を見たくなる作りでした。


とりわけ印象的なのは、ガンダムを“無敵の怪獣”として描く視点です。ガンダム登場前には圧倒的だったザクでさえ歯が立たず、逃げても逃げても追ってくる“鉄の怪獣”としての脅威が、ジオン側の恐怖体験としてよく伝わります。「連邦の切り札」を“未知の天災”として提示する手法は、既存ファンにも新鮮に映りました。


一方で、人物や背景のCG表現はやや気になります。メカには十分なリソースが投下されている反面、人間キャラクターのモーションやリップシンク(発話と口の動きの同期)、視線や表情芝居がやや旧世代的に見えるカットが散見されました。メカは抜群に格好いいだけに、このギャップは少し惜しいところです。


演出面では“強襲”展開の頻度が高く、数回重なると先読みが効いてしまう点も気になりました。緊張感維持のための演出であることは理解しますが、強襲以外の揺さぶり(人的ドラマや状況戦術の駆け引き)をもう一手増やすと、恐怖の質にバリエーションが出たはずです。たとえば、モビルスーツ戦だけでなく、生身の人間の判断が勝敗を左右する“地上戦の息づかい”を強調すれば、違ったドキドキ感を提供できたように感じます。


細かな指摘はあるものの、結局は一気見してしまう面白さが勝りました。年末年始に腰を据えて楽しむのにぴったりの一本だと思います。



2025年12月16日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント①》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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大荻山《おおぎやま》剛三郎《ごうざぶろう》とベルガン・サーチが死闘を繰り広げていたころ、埼玉に避難したR連隊研究室では

偵察ドローンが撮影したリアルタイムの映像が、中央にある大型モニターに投影されていた。


それを、R連隊のUFB研究室の室長、変人研究者篠原《しのはら》涼音《すずね》はドローンを通して興味深く観察していた。


同席するのはR連隊隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》と仲原《なかばら》香《かおり》三佐、そして防衛大臣の大仲《おおなか》晴彦《はるひこ》である。



同席した彼らは饒舌に解析する篠原に驚愕していた。


篠原は足立に向かって様々な情報を語っていく


「あは!みてぇ!あの戦車ー!あれは既存のデータにはないですねぇ。あ!でもハッチの形状や装甲の傾向から、タラメアの戦車ですねぇーうわー。かっこいいですねぇ。無駄に大きくて重量があるあたり痺れますぅ」


大仲はこの一言でも血の気が引く


「ばかな!何で他国の戦車が東京の地下にあるんだ!」


篠原は大仲を視界の外でとらえながら、淡々と大仲に説明する。


「大臣。そんなの、あのシェルターにいる大荻山がタラメアとつながっていて、両者の信頼の証として売買されたのでしょう。自衛隊のデータベースにない車両なので、おそらく噂の24シリーズでしょう。車両上部に副砲を備えたオプション兵器が付いています。拡張性の高い戦車型新兵器。YA-24?みたいな名前じゃないですか?だとすれば、後ろにいる装甲車はYA-24とリンク可能な新兵器。装甲車タイプなのでDD-24ということです」


大仲は信じられないという面持ちで一言。


「YA-24、DD-24、大きな声では言えないが防衛相の情報機関が最近入手した呼称。なぜ・・・それを?」


篠原の意識は映像に戻り、大仲の質問は聞こえていない。すぐに足立への語り掛けに戻る。


「足立たいちょぉー!見てくださぁい!この副砲、UFBの行動を先読みして発砲してますぅ。このセンサーとしてドローンを飛ばして立体的に演算してるんですよぉ。なかなかの予測性能なのでぇ、I社製のCPU(P200)、メモリは1024GBといったところでしょうかぁ」


足立への言葉に大仲が反応してしまう。


「数秒の映像からスペックまで?いや、あってるのか?いや、分かったところで役に立つのか?」


篠原が面倒臭そうに答える


「大臣。あのですね。この子のCPUとメモリが分かれば、性能限界が分かります。性能限界が分かれば、それを超えてやれば異常を起こせます」


元自衛官の大仲大臣だったが、それでも飲み込めていない様子。

しぶしぶ篠原は解説する。


「大臣。えっと。この子はメモリは多く積んでいますが、CPUとのバランスは良くないです。多くのメモリを活かすためにはI社製よりもN社製のCPUが向いています。政治的にI社を選ばざるを得ないのでしょう。ここが弱点で、意図的に再計算を強要すれば折角のメモリも活かしきれずに頭脳が追いつかないのです」


見かねた足立が補足する。


「戦術としては陣形を連続的に変えたり、敵の知らない兵器や作戦を織り交ぜることで簡単に性能限界に達します。そうなれば処理速度が落ちて命中精度や照準速度が壊滅的に落ちます。対ドローン用の兵器でこの弱点は致命的。と篠原は言っております」


「なるほど!」


大仲と仲原三佐が同時に声を上げ、気まずい空気が流れる。


そんなことには興味がないのか、刻々と変化する大荻山と神の兵との戦闘に篠原の解説は止まらない。


「このUFBの特攻隊長くんは、別人?いや、サーチちゃんとの連携や行動の癖をみていると同一?身体能力が全然違ってるじゃない!うっはー!パワーよりも速度、柔軟性を上げてきたかんじぃ!面白ーい!」


今度は足立が即座に反応する


「能力が変わってる?どういうことだ?」


篠原は足立に体を寄せて説明する


「えっとですねぇ~。今まではぁパワーがあるもののぉ筋肉が硬いのでぇ一瞬だけ力をタメるような動きでしたぁ。でもぉ、いまのこの子はぁほらぁ移動もしなやかでぇ、加速力や機動力が1.5倍くらいになってますぅ」


「1.5倍、ただでさえ速いのに……」


足立の反応をみて篠原はさらに続ける。


「あは!サーチちゃん!きれいですねー!あの白いのがこの前、特攻隊長君を助けた防御膜ですねー!頑丈そうですが、一度消してしまうと再展開に時間がかかりますねぇ50秒位ですかぁ。あとぉ、あの防御膜はぁ長時間展開出来ないようですねぇ」


ここぞとばかりに仲原三佐が切り込んでいく


「いや、あの白いやつは上空で展開してから、一度も切れてないじゃないか!」

「・・・・」


「答えろ。私は一応三佐だぞ!」


「はいはい。よく見てください。確かに、展開していますが明らかに強弱あります。格闘技のガードと同じでダメージを受ける寸前に硬化して、安全なときは力が抜けています。ほら、彼をかばって後ろから直撃されたとき、貫通してますよね。あれは意識が彼に向いていてシールドが不完全だった証拠でしょう」


そういうと、すぐに足立の方に振り向いて話しを戻す。


「それでぇ、あの防御膜ですがぁサーチちゃんの反応からぁ、ある程度の光、音、電波は通すみたいですぅ。あとぉ、映像から煙も一部貫通してますぅ。なのでぇ、あれは先に可燃性のガス系をぶつけてぇ引火させれば内部で大爆発。余裕で対応できそうですぅー」


足立の声が漏れる。


「すごい。リアルタイムで映像をみながら、ここまでわかるのか・・・?この子には一体どれだけの情報が見えているんだ・・・」


同じく大仲も言葉も出なかった。


そこへ一人の官僚がやってきた。


「大仲大臣!!緊急事態です!」

2025年12月14日日曜日

劇場版「オーバーロード」聖王国編 (レビュー)

<あらすじ>

聖王⼥カルカを元⾸とするローブル聖王国は、

その国⼟を⻑⼤な城壁に守られ平和な時代を謳歌してきた。

悪魔の出没に聖騎⼠団と従者ネイアを伴い、とある国へと助けを請いに向かった。

その国の名はアインズ・ウール・ゴウン魔導国。

 

<レビュー>

本作は『オーバーロード』の劇場版で、単体でも楽しめるように配慮された構成になっています。未完結シリーズの番外編という立ち位置のため、本編の成長や大きな因果は極力持ち込まず、登場人物のフォーカスもアインズ、デミウルゴス、シズに絞られています(他メンバーはモブ的な登場に留まります)。


物語の狙いは、人間側の醜さや脆さをあえて強調しつつ、人間側のヒロインをアインズの隣に置くことで、彼女が人間社会から“アンデッド側”へと傾いていく心理を描く点にあります。

構図としては人間(+アインズ)対 悪魔(デミウルゴス)ですが、初戦から後衛の要を前線に出す判断が裏目に出て、要となる指揮・知略の要員を同時に失ってしまいます。その結果、アインズとデミウルゴスの“出来レース”に、人間側が翻弄され続ける展開になります。


作風は本編同様に苛烈です。人間側が容赦なく殺害され、序盤から聖王女の顔面損傷など、残虐描写も含まれます。ここを割り切って“パニックもの”として俯瞰できるかが、受け止め方の分かれ目です。割り切れる方には、アインズの底知れない強さと人間社会のもろさという両極のコントラストが、第三者視点で非常に魅力的に見えるとおもいます。


人物紹介や世界設定の前置きは最小限で、シリーズ視聴(または原作既読)を前提にした語り口です。そこに抵抗がなければ、常識外れの暴力が支配する世界と、聖性を盲信し自壊していく人間達の姿を、映像の力でストレートに味わえる劇場作品だと感じました。グロテスク表現に耐性がある方にはおすすめです。



2025年12月11日木曜日

【軽い日記的なもの】ケンタッキー「鳥の日パック」改悪…なのでしょうか?

 12月から、ケンタッキーの毎月28日限定メニュー「鳥の日パック」の内容が変わりました。

以前はオリジナルチキン5本で1,100円、サイドメニューは任意で割引オプションという、いわば“欲しいものだけ足せる”設計で、とても優れたメニューだと感じていました。


この考え方は、KDDIのpovoに近い発想だと思います。

「基本だけ安く買い、必要なトッピングだけを自分で足す」――選択権が購入者側にあることが大きな魅力でした。


一方、他社の一般的な値引きはスマホでいうセット割に近く、必要なもの+半ば強制的なオプションを束ね、総額を大きくしてから割引する方式が多いです。見た目はお得でも、不要品を含むため実質値引きが小さくなることがあります。

その点、旧「鳥の日パック」は主力(チキン)だけで完結でき、サイドが欲しい人だけ割安で追加できるため、納得感とお得感の両立がありました。


数字で見ると、当時は――


チキン通常価格:1本 310円

旧パック:5本 1,100円 → 1本あたり 220円

ところが今回、内容が「チキン4本+ナゲット5個 1,250円」に変更されました。

チキンが食べたい人にとっては

1,250円 ÷ 4本 = 1本あたり 312.5円(ナゲット分を無視した場合)

あるいは“チキン1本は実質192円に見える”という訴求も成立しそうですが、ナゲット(5個)が約480円と高額なため”いらない感”が一層強まってしまいます。


つまり、純粋にチキンだけ食べたい人にとっては、不要なナゲットが“抱き合わせ”に感じられ、選択権が後退した印象になります。これは、折角の個性を捨て、他社に埋もれてしまうセット割的な束ね方に近い考え方です。


私はこの変更を“改悪寄り”と受け止めました。とはいえ、ケンタッキー側にも年末の繁忙期に28日に注文が集中しないよう平準化したいといった狙いがあるのだろうと推測します。企業側の気持ちは理解できますが、毎月28日はケンタッキーを買うという定期行動の芽を、やや摘んでしまった印象もあります。一度きりの購入より継続購入のほうが長期的な価値が大きいのは言うまでもありません。


もし私が企画するなら、年末の動線は次のようにします。


12/24・25: クリスマス向けの「クリスマスパック」(セット割で客単価を上げる)


12/28〜31: 期間拡張の「ロング鳥の日パック」(旧来の“チキン5本中心”で選択権を担保)


1/1〜3: 「お正月パック」(家族・親族向けの需要に対応・お年玉クーポンを付けてリピート狙い)


こうしてセット割(客単価)と選択権(満足度・リピート)を交互に配置し、「年末年始はケンタッキーがお得」という記憶を育てつつ、28日一点集中の混雑をやわらげます。

ゲーム業界でいう「ナーフ(=意図的な弱体化)」のように、ユーザーの楽しみを削ぐ方向ではなく、“楽しみの場を増やす”方向の調整が、長期のファン形成には効くと考えます。


数字だけが売り上げではありません。未来の常連候補を増やす絶好の機会に、水を差すようでケンタッキーファンとしては残念な気持ちになりましたので、記事にしてみました。

2025年12月9日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才⑥_神の兵_後編》

 この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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大荻山《おおぎやま》剛三郎《ごうざぶろう》は、焦燥に駆られていた。


ここまでは、圧倒的な演算能力を誇る兵器の力で、UFBの特殊個体を蹂躙《じゅうりん》できていたはずだった。だが、直線的で読みやすかった怪物の動きが、突如として変貌したのだ。


AIの予測を超える機動力で「目」となるドローンを次々と破壊し、8機あった機体は残り2機まで数を減らした。


最強のAIは目を失って情報が不足、ただの箱に成り下がろうとしていた。


そしてその牙は今、大荻山の乗る装甲車(DD-24)へ向けられている。



本能的な恐怖が大荻山を突き動かした。「SUB11Fを手動に切り替えろ! 当たらなくてもいい! 直線軌道に弾幕を張れ! 特攻されれば20秒で接近されるぞ!」


度重なるAIの指示変更で右往左往していた副砲は、手動への切り替えでようやくその首振りを止めた。 といっても、狙いが定まったわけではない。高度な迎撃システムはただの『火を噴く筒』へと成り下がり、暴力的に弾丸をばら撒き始めたに過ぎなかった。


「よし、それでいい。戦車(YA-24)とのケーブル切断。我々は戦車を盾に後退する! 散開させていた一般車両も戻せ。もう囮《おとり》にもならん!」


戦車に搭載されたSUB11Fは、本来なら精密なAI制御でドローンを撃墜するシステムだ。

手動での連射など想定外であり、残弾的にも排熱的にも30秒が限界だった。


さらに、AI本体を搭載している装甲車とのケーブル切断は、AIアシストの完全放棄を意味する。AIを前提にした兵装が、AIを切る。

誰の目にも明らかだった。戦車は、捨て駒にされたのだ。


慌てて後退を始める装甲車。それを援護すべく戦車が火を噴くが、手動の乱射が怪物に当たるはずもない。弾丸は怪物の回避行動の前に虚しく空を切り、時間だけが浪費されていく。


それは、まさに「死への時間稼ぎ」でしかなかった。



◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


戦車内では、女性リーダーの鋭い怒号が響いていた。


「もっと右! 相手の切り返しをよく見て! 気合で食らいつきなさい! 主砲、弾種換装! L2炸裂弾よ、信管設定は1秒! 急いで、あと20秒で副砲が尽きるわ!」


しかし、重量級のSUB11Fを手動旋回させ、超高速機動する物体に直撃させるなど、土台無理な話だった。照準は遅れ、焦りだけが募る。



「クソッ! せめてAIのアシストさえあれば……ッ! 換装、急ぎなさい!!」

「あの老害《ジジィ》はどうでもいい! でもね、後ろの同胞と民間人は守るのよ! 気合入れなさい!!」


悲痛な叫びも虚しく、SUB11Fは一発も命中させることなく、静かに弾切れを迎えた。弾幕が止む。

それを見透かしたように怪物は回避行動を止め、一直線に戦車へ突っ込んできた。


「今よ! 主砲、撃てェッ!」

「ズゥゥン!」


低い独特の砲撃音とともに、砲口から閃光が迸《ほとばし》る。放たれたL2炸裂弾は瞬時に起爆し、無数の子爆弾をショットガンのように撒き散らした。


ーーこの至近距離!しかも直進コース!『点』ではなく『面』で叩けば落ちるはず!


 女性リーダーの勝算は、一瞬で砕け散る。


「敵、直前で軌道変更! 上です! かわされました! ダメージなし!」


彼女の目が見開かれ、張り詰めた汗がこめかみを伝う。コンマ一秒の硬直。それを自らの怒号で無理やり断ち切った。


「回避! 全速で下がりなさい!!」


だが、その命令に車両はピクリとも反応しない。


「どうしたの、回避よッ! 上から来るわよ!!」



操縦士が、震える声で答えた。 

「操……作、不能。管理者によるコマンド介入です……コマンドは、『自爆』」


女性リーダーが怒りと絶望に顔を歪めた、その時。


戦車の上部ハッチが飴細工のようにぐにゃりと押し潰され、車内にあの化け物が降り立った。

生じた衝撃波が、搭乗員たちを一瞬で肉塊へと変える。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


数秒前。装甲車(DD-24)内。


「先生! いくら何でも見捨てるなんて!」 


「うるさい! 女風情が口を出すな! それに、無駄死にはさせんよ。YA-24には機密保持機構があってな、私のコマンド一つで火薬庫を誘爆できる。……全弾薬で吹き飛ばせば、たとえ怪物だろうと無事で済むものか!」


「先生! 戦車の上から怪物が!!」


 激しく揺れる車窓越しにも、炸裂弾の閃光を背に影を落とす怪物の姿が見えた。そいつは躊躇なく、戦車の直上から降下を始めている。


「死ね!!」


大荻山は愉悦に顔を歪め、自爆命令を確定させた。


数秒後。


直上から貫かれた戦車が、一拍も置かずに爆縮し、弾け飛んだ。逃げ場のない爆圧が分厚い装甲を内側から押し上げ、鋼鉄の巨体が粘土のように歪む。


裂けた装甲の隙間から紅蓮の炎が噴き上がると、それは驚くほど美しく、そして残酷に、すべてを粉々に爆散させて黒煙に変えた。


「がはははは! サルがぁ! 自ら檻に飛び込んで自殺しおったぁぁ!」


黒煙が風に巻かれ、燃え盛る残骸の中から「白いもの」が揺らめく。


「先生! ああ……あ、あれ!!!」

同乗していた愛人が、引きつった悲鳴と共に指さした。



大荻山は我が目を疑った。


あろうことか、怪物は上空で「女王」と呼ばれる個体と合流し、二人掛かりで戦車へ突入していたのだ。

当然、女王型はあの白いシールドを全方位に展開している。


やがて、傷一つないシールドをすり抜けるようにして、王と呼ばれる怪物が、ゆらりとその姿を現した。



大荻山が、裏返った声で絶叫した。


「全速で逃げろ!! 一般車両は私の盾になれ!! 生き残ったら何でもくれてやる! 死んでも家族に金を出す! とにかく守れ!!」



装甲車(DD-24)は、最高速度こそ戦車を上回るが、唯一の欠点はその初速の鈍さにあった。

重量級の装甲車がトップスピードに乗るまでには、相応の助走距離を要するのだ。


YA-24に自爆コマンドを確実に送るために減速していたことが、ここに来て致命的な仇《あだ》となる。再加速には、絶対的な時間が足りない。


さらに、追い打ちをかけるような事態が発生した。


大荻山の命令に反し、装甲車が急ブレーキをかけて停車してしまったのだ。


「な、な、何をやっている! 速度を上げろ、死にたいのか!! 一般車両も早く盾になれ!! もたもたするな! 私が死ねば恩賞もないのだぞ!」


だが、装甲車はピクリとも動かない。操縦兵が悲鳴に近い報告を上げる。 


「先生! い、一般車両が……前方に停車して進路を塞いでいます……」

「ばかな! 何をやっている!!!」


バス、トラック、乗用車。それらが示し合わせたように、装甲車の進路を塞ぐ形でバリケードを作っていた。人々は次々と車両を放棄し、蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。


大荻山は慌ててバスの運転手に無線を飛ばした。

「何事だ! 邪魔だ! バスをどかせ!」


無線から、冷え切った、それでいて怒りに震える返答が返る。


『先生! もううんざりだ! 盾になれだと? あんたは、これまで何人殺した! 盾になって死ぬくらいなら、先生を盾にして俺たちは逃げさせてもらう!』


「なっ……きさまら!!」


それを聞いた装甲車の操縦兵が叫ぶ。

「ダメです先生! DD-24はあくまで後続車、戦車ほどのトルクはありません! バスやトラックを無理やり押しのけるには時間がかかります!」


その間にも、怪物の王は確実に距離を詰めてくる。


距離はすでに5mを切っていた。



「いやぁぁ、たすけてぇええ!」


愛人の女がパニックを起こし、その恐怖は同乗する他の要人にも伝播する。


「先生! 何とかしたまえ!」

「これはどういうことですか! ミスター大荻山!」



装甲車はバスの側面に直角に接触すると、エンジンを唸らせて全力で押しのけようとした。焦った操縦兵が、アクセルを床まで踏み込む。


怪物が目前に迫る極限の恐怖。


だが、その状況でも大荻山は、アクセルをベタ踏みする操縦兵のミスを見逃さなかった。


ーー空転するエンジン音

大荻山は操縦兵に具体的な指示をまくし立てた。


「馬鹿者! コイツはタラメア式オートギア制御だぞ! アクセルを一気に踏むな! 回転数に合わせてゆっくり踏み込め! 空転して動かんぞ!!」


その不毛なやり取りの間に、怪物はDD-24へとたどり着いた。



大荻山は、震える声で虚勢を張った。


「狼狽《うろた》えるな! この装甲車はYA-24の主砲すら弾き返す! 耐衝撃、耐熱、最強のシェルターだ。落ち着いてバスをどかせばいい!」


その言葉が終わるか終わらないかの時だった。


装甲車の後方ハッチ、そのロック部分が赤熱し、まるで水飴のようにドロリと溶解し始めた。


「きゃあああああああ!」

愛人の悲鳴が鼓膜を裂く。


直後、溶けた装甲の隙間から怪物の手がねじ込まれた。


「グギィ」


嫌な金属音が響き、分厚いハッチが紙屑のようにこじ開けられる。


大荻山、愛人、要人、そして私兵たちが凍りつく中、怪物は不敵な笑みを浮かべてそこに立っていた。


驚くことに、怪物は流暢な日本語で問いかけた。


「……お前らが指揮官か。俺をここまで無様に追い詰めた人間の顔を拝むために、丁寧におもちゃを壊してみたんだが……どいつが大将だ?」


「この人よ!!」

愛人が即座に叫び、大荻山の背後へ飛び退く。


「この、バカ女ぁぁぁ!!!」

大荻山が激昂するが、他の乗客もこれに乗じた。

こともあろうか、彼が金で雇った私兵たちまでもが、大荻山の背中を怪物の前へと押し出していく。


「やめろ! おまえら!! 私を誰だと思っている! 大荻山だぞ! お前らごときとは命の重さが違うのだ! なぜわからん!!」

「やめろ!! 押すな! こんなことをしてタラメアが黙っていると思うか! おい、お前の今の地位は私があってこそだろう!」

「頼む、やめろ!! なぁ、愛し合った仲だろう! やめてくれ、ああ、おい! 誰か、金ならやる! 助けろぉぉぉ!」


大荻山の必死の訴えに耳を貸す者は、誰一人としていなかった。


怪物の鼻先へ突き出された大荻山は、引きつった顔で怪物にすがった。


「に、日本語が分かるのか! 私は大荻山。この国でもっとも尊い人間だ! 私を殺さずに上手く使えば、この国、いや大国タラメアさえも簡単に占領できる! どうだ! 私を助けてもらえないか!」


怪物は、氷のように冷たい目で大荻山を見下ろした。 

「どんな切れ者かと思えば。はぁ。……時間の無駄だったな」


吐き捨てるように言うと、怪物は装甲車の車内へ向けて、深紅のブレスを解き放った。

超高温の吐息は一瞬ですべての酸素を奪い、肺を焼き、車内の人間は全員、断末魔の一言も発することなく灰となった。



◆◆◆   ◆◆◆  ◆◆◆



ベルガンは自分の無能さを悔いていた。

気高い敵の指揮官に押されていたと思っていたが、顔を拝んでみれば保身しか能のないクズだった。

そんなものに後れを取った自分が、情けなくてたまらない。


だが、感傷に浸る時間はない。神の命令は絶対だ。

『一人でも逃がせば負け』——その勝利条件を満たさねばならない。


ベルガンは冷徹な思考に切り替えると、サーチの追跡能力を借り、散り散りに逃げた人々を一人残らず捕捉し、始末していく。

慈悲も、愉悦もない。ただの作業として、すべての命を刈り取った。



静寂が戻ると、ベルガンはサーチの元へ戻った。


「サーチ、お前大丈夫か?」


サーチは少しだけ勝気な笑みを浮かべる。


「何? 私がこれくらいで、どうにかなると思ったわけ? ふっ。おやさしいこと!」


ベルガンは元気そうなサーチに安堵を覚えつつ、ヴァロンに報告した。


「任務完了。逃亡者なし。……おかげで完全勝利だ。帰還する」




だが、その一部始終をじっと見つめる「目」があった。

超高性能赤外線カメラを搭載した、一機の自衛隊偵察ドローン。


その眼差しの主は、天才——篠原《しのはら》涼音《すずね》であった。

2025年12月7日日曜日

素材採取家の異世界旅行記 #1~#9( 一部レビュー )

<あらすじ>

異世界へ転生した、ごく普通のサラリーマン・神城タケル。

剣と魔法の世界『マデウス』で新たな人生をスタートすることになった彼には、数々の能力が備わっていました。

身体能力の強化にとんでもない魔力、そして価値のあるものを見つけ出せる探査能力。

与えられたチート級の力を駆使して、タケルの異世界大旅行が幕を開けます。


<レビュー>

本作は、シナリオに軸足を置いた異世界チート系のアニメです。序盤こそ能力が物語を引っ張っていましたが、話数を重ねるにつれ、主人公の万能ぶりそのものを楽しむ作りになってきたと感じます。


マスコット的存在に加え、不足していたヒロイン枠にも仲間が加わり、パーティが賑やかになっていく様子は、王道ながらやはり楽しい見どころです。

一方で本作のヒロイン像は、いわゆる“人間的な可憐さ”に寄せず、人外要素の強いキャラクター(例:「いつも汚いエルフ」「馬の姿の女神さま」など)で構成されています。台詞や振る舞いも含めてギャグ寄りの造形が多く、たとえば語尾が「ひひーん」になるようなシーンもあります。

この設計から、作者が積極的にラブコメ的な絡みを抑え、世界観と探索要素を前面に置いている意図が伝わってきます。恋愛を足すと要素が渋滞しやすいタイプの作品だからこそ、あえて“外す”判断をしているのだと思います。


とはいえ、キャラクターデザインはもう一歩洗練できたのでは、という印象もわずかにあります。ヒロインの女性的な魅力を控えた結果、モノノケ感が前面に出すぎるシーンがあり、そこを魅力として楽しめる一方で、ヒロインが少しかわいそうに映る瞬間もありました。


進行テンポは非常によく、1話で1エピソードがまとまり、次のエピソードの導入まで進むことも多いです。裏を返せば、1話見逃すと展開の把握が難しくなる場合がありますので、見逃してしまった際は各配信サービスで追いついておくと、次の回をより楽しめます。


まもなく最終回ということで、かなり序盤から伏線が張られていたヒロイン・ブロライトにスポットが当たるエピソードに突入しました。どのような着地で締めくくるのか、非常に楽しみにしています。




2025年12月5日金曜日

【軽い日記的なもの】日々雑記

こんばんは。管理人の緑茶です。


12月になり、秋アニメ(10月スタート)の最終回ラッシュの時期がやって来ました。毎回日記でもお伝えしていますが、この時期はレビューを書くタイミングが難しく、いま書いてしまうと最終回直後にまた書くことになってしまいます。そのため、どうしても日記が増えがちになります。


ということで、本日は近況の雑記をいくつか書いていきます。


・Nサークルの話題です


私はゲーム制作サークルの Nサークル に所属しています。メンバーの多くが社会人のため、年末年始は例年どおり多忙です。私自身も「年末までにお願いします!」という作業が重なり、コミュニティツールを眺める時間はあるものの、ほとんど参加できていません。ふだんは活発なサークルも、この時期は「シーン」と静まり返っています。


制作進行のあいさんが進捗や成果物の話題を投げてくれているのですが、ほぼ全員が既読スルーの状態が続いており、申し訳なく感じています。私もすぐに良い返事ができていないので、もどかしい気持ちです。


そんな中、ふだんはゲームをイチから作らないイラストレーターのもこもこさんが、RPGツクールMZで試作版のゲームを披露してくれました。手探り感が画面全体から伝わってきたのがかえって印象的で、繁忙期が明けたら私も腰を据えてがんばろう、と良い刺激をもらいました。



・小説の話題です


『人類アンチ種族神』〈混乱と天才〉を書き終えました!(拍手) このサイトでも、外部サイトでも年内に当章は完結させます。かなり手の込んだシナリオで、設定資料とにらめっこしながら書き上げました。大筋は前章の〈対決〉で固まっていたのですが、頭の中の物語を具体的な文字に落とし込むまでに思った以上の時間がかかりました。


当サイトでは、年末年始ごろに総集編として、〈序章〉〈対決〉〈混乱と天才〉の作者再編集版を掲載する予定です。〈序章〉は〈対決〉以前の第1話~〈復讐〉をまとめたものです。連載開始当初は長期連載にするか悩んでいたため、『人類アンチ種族神 I』『II』という短編寄りの形式で公開していましたが、今回あらためて再編集・再構成します。


年末年始の読み物として楽しんでいただけましたら幸いです。〈混乱と天才〉から読み始めた方は、導入部である〈序章〉もぜひ手に取ってみてください。





もちろん物語はこの先も続きます。次章の伏線はすでに張ってありますので、順次回収していきます。骨格だけは書き出してあり、かなり刺激の強い章になりそうです。



・その他の雑記です


ここ最近は物価の上昇が続いており、特に食費のコントロールが難しく感じます。私は少し足を延ばして、地元で有名な安売り店に通うようになりました。このお店は今でも数量限定の告知なし特売があり、キャベツ98円、白菜98円、卵98円といった価格に遭遇できることがあります。うまく当たると本当に助かります。


一方で、ペットボトル飲料の「綾鷹」が220円になるという話を耳にしました(情報源は未確認です)。さすがにお茶に200円を超えて支払うくらいなら、まずは食材を買うべきか……と、家計のバランスを考えてしまいます。需要があるのかもしれませんが、しばらくは様子見になりそうです。


気になる話題は多いのですが、まずは目の前の繁忙期と小説執筆、そして「これはそれ」。に全力で取り組もうと思います。


本日はこんな日記でした。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

2025年12月2日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才⑥_神の兵_中編》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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大荻山《おおぎやま》剛三郎《ごうざぶろう》は、焦燥に駆られていた。


ここまでは、圧倒的な演算能力を誇る兵器の力で、UFBの特殊個体を蹂躙《じゅうりん》できていたはずだった。だが、直線的で読みやすかった怪物の動きが、突如として変貌したのだ。


AIの予測を超える機動力で「目」となるドローンを次々と破壊し、8機あった機体は残り2機まで数を減らした。


最強のAIは目を失って情報が不足、ただの箱に成り下がろうとしていた。


そしてその牙は今、大荻山の乗る装甲車(DD-24)へ向けられている。



本能的な恐怖が大荻山を突き動かした。「SUB11Fを手動に切り替えろ! 当たらなくてもいい! 直線軌道に弾幕を張れ! 特攻されれば20秒で接近されるぞ!」


度重なるAIの指示変更で右往左往していた副砲は、手動への切り替えでようやくその首振りを止めた。 といっても、狙いが定まったわけではない。高度な迎撃システムはただの『火を噴く筒』へと成り下がり、暴力的に弾丸をばら撒き始めたに過ぎなかった。


「よし、それでいい。戦車(YA-24)とのケーブル切断。我々は戦車を盾に後退する! 散開させていた一般車両も戻せ。もう囮《おとり》にもならん!」


戦車に搭載されたSUB11Fは、本来なら精密なAI制御でドローンを撃墜するシステムだ。

手動での連射など想定外であり、残弾的にも排熱的にも30秒が限界だった。


さらに、AI本体を搭載している装甲車とのケーブル切断は、AIアシストの完全放棄を意味する。AIを前提にした兵装が、AIを切る。

誰の目にも明らかだった。戦車は、捨て駒にされたのだ。


慌てて後退を始める装甲車。それを援護すべく戦車が火を噴くが、手動の乱射が怪物に当たるはずもない。弾丸は怪物の回避行動の前に虚しく空を切り、時間だけが浪費されていく。


それは、まさに「死への時間稼ぎ」でしかなかった。



◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


戦車内では、女性リーダーの鋭い怒号が響いていた。


「もっと右! 相手の切り返しをよく見て! 気合で食らいつきなさい! 主砲、弾種換装! L2炸裂弾よ、信管設定は1秒! 急いで、あと20秒で副砲が尽きるわ!」


しかし、重量級のSUB11Fを手動旋回させ、超高速機動する物体に直撃させるなど、土台無理な話だった。照準は遅れ、焦りだけが募る。



「クソッ! せめてAIのアシストさえあれば……ッ! 換装、急ぎなさい!!」

「あの老害《ジジィ》はどうでもいい! でもね、後ろの同胞と民間人は守るのよ! 気合入れなさい!!」


悲痛な叫びも虚しく、SUB11Fは一発も命中させることなく、静かに弾切れを迎えた。弾幕が止む。

それを見透かしたように怪物は回避行動を止め、一直線に戦車へ突っ込んできた。


「今よ! 主砲、撃てェッ!」

「ズゥゥン!」


低い独特の砲撃音とともに、砲口から閃光が迸《ほとばし》る。放たれたL2炸裂弾は瞬時に起爆し、無数の子爆弾をショットガンのように撒き散らした。


ーーこの至近距離!しかも直進コース!『点』ではなく『面』で叩けば落ちるはず!


 女性リーダーの勝算は、一瞬で砕け散る。


「敵、直前で軌道変更! 上です! かわされました! ダメージなし!」


彼女の目が見開かれ、張り詰めた汗がこめかみを伝う。コンマ一秒の硬直。それを自らの怒号で無理やり断ち切った。


「回避! 全速で下がりなさい!!」


だが、その命令に車両はピクリとも反応しない。


「どうしたの、回避よッ! 上から来るわよ!!」



操縦士が、震える声で答えた。 

「操……作、不能。管理者によるコマンド介入です……コマンドは、『自爆』」


女性リーダーが怒りと絶望に顔を歪めた、その時。


戦車の上部ハッチが飴細工のようにぐにゃりと押し潰され、車内にあの化け物が降り立った。

生じた衝撃波が、搭乗員たちを一瞬で肉塊へと変える。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


数秒前。装甲車(DD-24)内。


「先生! いくら何でも見捨てるなんて!」 


「うるさい! 女風情が口を出すな! それに、無駄死にはさせんよ。YA-24には機密保持機構があってな、私のコマンド一つで火薬庫を誘爆できる。……全弾薬で吹き飛ばせば、たとえ怪物だろうと無事で済むものか!」


「先生! 戦車の上から怪物が!!」


 激しく揺れる車窓越しにも、炸裂弾の閃光を背に影を落とす怪物の姿が見えた。そいつは躊躇なく、戦車の直上から降下を始めている。


「死ね!!」


大荻山は愉悦に顔を歪め、自爆命令を確定させた。


数秒後。


直上から貫かれた戦車が、一拍も置かずに爆縮し、弾け飛んだ。逃げ場のない爆圧が分厚い装甲を内側から押し上げ、鋼鉄の巨体が粘土のように歪む。


裂けた装甲の隙間から紅蓮の炎が噴き上がると、それは驚くほど美しく、そして残酷に、すべてを粉々に爆散させて黒煙に変えた。


「がはははは! サルがぁ! 自ら檻に飛び込んで自殺しおったぁぁ!」


黒煙が風に巻かれ、燃え盛る残骸の中から「白いもの」が揺らめく。


「先生! ああ……あ、あれ!!!」

同乗していた愛人が、引きつった悲鳴と共に指さした。


大荻山は我が目を疑った。


あろうことか、怪物は上空で「女王」と呼ばれる個体と合流し、二人掛かりで戦車へ突入していたのだ。

当然、女王型はあの白いシールドを全方位に展開している。


やがて、傷一つないシールドをすり抜けるようにして、王と呼ばれる怪物が、ゆらりとその姿を現した。

2025年11月30日日曜日

最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか #1~#9( 一部レビュー )

<あらすじ>

舞踏会の最中、婚約者である第二王子・カイルから、理不尽な婚約破棄を告げられた公爵令嬢・スカーレット。

“婚約者”という立場に甘んじて耐え続けてきましたが、ついに我慢の限界を迎えます。

「私の最後のお願いです。このクソアマをブッ飛ばしてもよろしいですか?」

こうして、スカーレットの“拳”が舞い踊る物語が始まります。


<レビュー>

本作は、婚約破棄から始まる悪役令嬢ものですが、最大の特徴は解決手段が“拳”=暴力的制裁である点にあります。さらに、主人公には隠された聖女設定があり、時間を操る能力を備えています。序盤では「超加速」によって周囲の時間を相対的に遅く見せ、自身の行動速度を上げる描写が中心でしたが、物語が進むと、物体を過去の状態へ“巻き戻す”ことで治癒に相当する効果を発揮したり、汚染された構造物を汚染前へ戻すといった応用も可能であることが示されます。


結果として、人の生死を直接左右できるかは別として、物質的な破損や負傷を実質的に「なかったこと」にできるため、彼女はヒーラーとしてもアタッカーとしても一流という、きわめて強力な立ち位置にあります。


この“チート級”の主人公が、「世のため人のため」というスタンスで悪人を見つけては殴って片づけるうちに、いつしか神々の対立に巻き込まれていきます。対立するのは、第1話でスカーレットに「クソアマ」と罵倒され、実際に殴り飛ばされた転生者にして異教徒の女神です。個人間の確執から、次第に神話的スケールへと広がっていく設計が印象的です。


また、ありがちな“王子たちに取り巻かれる”お花畑展開ではなく、どちらかといえば少年漫画的な段階バトルに近い構成です。強敵を打ち破って一区切りつくと、さらなる敵が現れる――その繰り返しによってテンポ良く見せていきます。作画は一見すると女性向けの繊細さがありますが、内容はバトルとギャグの比重が高いため、そのギャップも本作の魅力だと感じます。


総じて、聖女系の定番イメージから意図的に外しつつ、爽快な解決と高火力の能力演出を押し出した作品です。悪役令嬢ジャンルにアクション快感を求める方には特に相性が良いと思います。ご興味があれば、ぜひご視聴をおすすめします。



2025年11月27日木曜日

【軽い日記的なもの】迷惑メール実験。

こんばんは。管理人の緑茶です。

本日は、三連休に実施した小さな実験の結果をご紹介します。題して、「あやしげなサイトにメールアドレスを登録したら、三日後にどうなるのか」です。読者の皆さまには真似を推奨しません。危険回避の観点からの記録としてお読みください。


方法はシンプルです。


実験専用の使い捨てメールアドレスを新規作成します。


そのアドレスを、いかにも怪しいと感じるサイトに登録します。


登録後三日間、受信ボックスの動きを観察します。

※ スクリーンショット等は、手口の拡散防止と読者保護の観点から掲載しません。


それでは、結果です。


登録後・数分以内に、いわゆる恫喝系の迷惑メールが到着しました(「有料サイトにアクセスしたので支払え」等)。

ただし、その後一日目の残り時間は意外と静かで、新着は少なめでした。


二日目に入ると、商材系や投資系などのメールが少しずつ届き始めます。


三日目は、いわばフィーバー状態でした。件名や差出人の傾向は、知り合い装い系・アダルト系・誘導系・恫喝系・金融機関装い系・投資系・出会い系・メルマガ風・当選詐称・広告・○○社とのタイアップ装い系・外国語(中国語、ハングル、タイ語と思われるもの)など、実に多彩でした。

ただし、その後はプロバイダーの迷惑メールフィルターが効いたのか、受信数は減少に転じ、メルマガ風や広告系の、フィルターをすり抜けやすいものが散発的に残る程度になりました。


想定以上の量とバリエーションでしたので、これ以上の継続はプロバイダーや他者に迷惑がかかると判断し、実験用アカウントは削除して終了しました。


結論としては、メールアドレスの登録は極めて慎重に行うべきだとあらためて実感しました。

可能であれば、ふだんは使い捨てアドレスを使い、必要に応じて自動転送でメインのアドレスへ受け取る運用が安全です。間違った登録をしてしまっても、使い捨て側をすぐに停止・作り直しできます。加えて、危険なサイトにはアクセスしないという基本も、やはり最強の予防策です。


以上、本日の日記でした。皆さまも、どうか安全第一でお過ごしください。


本記事はセキュリティ意識向上のための注意喚起です。再現実験やスクリーンショットの公開は推奨しません。

危険なサイトへのアクセスや登録は行わないでください。

2025年11月25日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才⑥_神の兵_前編》

 【ここまでのあらすじ】

ある私有シェルターの代表、日本有数の実力者・大荻山《おおぎやま》剛三郎《ごうざぶろう》は、私兵と要人・愛人のみを連れてシェルターを出て東京脱出を試みていた。

神が作り出した怪物ガーゴイル(通称 UFB)の中でも特別にチューニングされた個体、武闘派ベルガンと支援型サーチは、神の気まぐれな命令で兵も連れずに、大荻山の率いるタラメア製の最新兵器と戦うことになった。

ベルガンはタラメアの戦車 YA-24 と装甲車 DD-24 に搭載された SUB11F(全方位対ドローン迎撃機構) に苦戦。ベルガンをかばい、サーチは負傷してしまった。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


傷ついたサーチを眼下に置いたベルガンの表情は、かろうじて知性を保っていたが、怒号に満ちた猛獣のようでもあった。

残された理性は多くない。だがベルガンは、自分が冷静さと判断力を欠いていることだけはギリギリで理解していた。


ベルガンは即座にヴァロンへ呼びかける。


「ヴァロン。すまない、サーチが負傷した。——また俺だ。俺に策がないばかりに。策をくれ、ヴァロン!頼む」


神の居城「デスランド」の王座。ヴァロンは神と二人、サーチの〈視覚共有〉で現場を眺めていた。


「創造主様。たしか、ベルガンやサーチが求めれば私の参戦は許可されていましたが……」


ヴァロンは、迂闊に口を挟むと不機嫌になる神を横目でうかがう。


「ああ、もちろんだとも! あのプライドの高いベルガンが、自分の欠点を分析してヴァロンに助言を求めるなんて面白い。ヴァロン、好きに手助けしてやれ!」


「私が策を与えれば、必勝となりますが——本当によろしいのですね?」


「くどい! “必勝”とやらにも興味がある。ヴァロン、お前の知性を見せてみろ!」


「では」


ヴァロンの口元が、不敵に緩む。本来は軍師——参謀型の特殊個体。これまで神の気まぐれとベルガンの暴走に振り回されてきた衝動が、解放宣言で一気に爆ぜる。


「ベルガン。視覚共有のマップを見ろ。黄色が敵の位置。小円がドローン、大円が戦車と装甲車、点滅は雑魚車両だ。赤い円が見えるな? そこがドローン陣形の“穴”だ。やつらは 8 機の“目”を立体的に使ってこちらの座標を正確に割り出している。まずは陣形を崩す。——サーチ、損傷は見えている。シールドと飛行は問題ないな?」


傷ついたサーチが応える。


「ええ、やられたのは腕と脚。翼・胴体・頭は硬化を強めて守ってあるわ。加速は厳しいけど、その程度なら」


ベルガンが割って入る。


「サーチ、強がるな! たとえ飛べても、戦闘には耐えられない!」


ヴァロンが冷静に指示を重ねる。


「わかっている。落ち着け、ベルガン。サーチはそのまま隠れて、まずシールドを 100% まで展開。展開できたら、その位置から西へ上昇——高度 1000m までだ。その後はシールド維持。最初は狙われるが、数分で終わる。シールドに専念しろ」


「了解。30 秒もあれば、ベルガンのエーテルも借りてすぐ展開できる」


「よし。ベルガン、サーチが上昇したら 5 数えろ。隠れている瓦礫を破壊して、最短距離で“赤い円”へ直進。可能な限り高度を上げ、同じく 1000m を目安に接近。次の指示はすぐ出す」


30 秒後。サーチはシールドを完全展開し、上昇を開始。


「……1……2……」ベルガンのカウントも始まる。


再び射線に入ったサーチに SUB11F が即反応する。幸い、先ほど吹き飛ばされた位置関係の影響で YA-24 主砲の射程からは外れていた。


「ドドン!」


サーチのシールドに着弾。しかし 100% まで硬化したシールドは SUB11F の副砲程度では大きく損なわれない。


「……4……5!」


「バカン!」と分厚いコンクリ壁をぶち抜き、ベルガンが指定座標を目指して上昇。数秒で到達。


ヴァロンの次の指示が飛ぶ。


「右下のドローンを視認。エーテル滑空で追え!」


サーチの視覚共有により、小さな標的でも最速で捕捉できる。急降下するベルガンに、横方向への回避では逃げ切れない。5 秒で捕獲、破壊成功。


「よし。あのドローンは本体から離れるのを嫌う。エーテル干渉を警戒しているんだろう。サーチが注意を引いた瞬間に“DD-24”と”ドローン”の間へ割って入れば判断を誤る。——読みどおりだ。次! 左・後方のドローン。創造主からもらった飛び道具、ファイアアロー で貫け!」


ベルガンは掌にエーテルを集中させ、線状の熱線を放つ。「ドン!」即爆散する。

ヴァロンが畳みかける。


「相手は AI。初見の攻撃には対応が遅れる——当然だ。次! 爆散方向へ上昇。視覚共有で次の“円”を示した、そこへ」


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


(数分前)大荻山陣営。


「SUB11F 正常稼働、命中率 75%。すごい……魔法のような予測射撃だ」


私兵の声に、大荻山が汚く笑う。


「わはは。化け物どもは夜目も利かん。せいぜいドローンを見つけても AI 制御の回避で接近すら不可能。所詮は化け物だ。人間様の知性の前ではサル同然よ」


「先生、まもなく YA-24の主砲の射程に入ります!」


「AI 射撃管制に優先タスク設定。“突撃馬鹿”から始末しろ!」


「後方の女型は後回しで?」


「最強の“矛”と“盾”。どちらかを先に壊せるなら“矛”だ。盾は所詮盾、こちらへの脅威は薄い。まして女型。矛が死ねば逃げ帰るさ。わはは」


AI は確実にベルガンを誘導し、YA-24の主砲の射線へおびき出す。


「先生、射程に入りました!」


「よし。砲撃システムを SUB11F にリンケージ、タイミングを譲渡!」


数秒後——


「ロックオン……!? 女型が急降下、射線に割って入ります!」


「化け物にも同族愛か? くだらんロマンスだ。構わん、リンケージ継続!」


YA-24 の主砲が火を吹く。独特の低い砲声。

着弾——


「命中!……いえ、まだ活動中……嘘だろ……」


大荻山は一瞬だけ目を疑いながらも優勢を崩さない。


「西へ逃がすな。遮蔽物が増えると SUB11F の射線が取りにくい。東へ追い込め!」


数秒、緊張が張り詰める。


「先生、敵は東側の建物残骸に隠れました。射線取れず。ドローンの光学カメラもロスト、迂回ルート計算中」


「いらん! これ以上 DD-24 からドローンを離すな。ジャミングされたら失速してしまう。隠れているならそれもいい。SUB11F を冷却モードへ、予備弾装填、次に備えろ」


1 分後——


「冷却 25% 完了、予備弾装填完了!」


大荻山が SUB11F を即座に射撃モードへ戻す——その瞬間。


「敵、上昇。西です!」


「逃がすな。射線に入り次第、撃ちまくれ!」


「ドドドン!」


SUB11F が西に逃げた個体を正確に叩く。


「ロックオン。高度750m、緩やかに上昇中。命中率 90%!」


攻勢を強める大荻山——その時。


「建物からもう 1 体出現! 上昇しつつ接近! AI がドローン回避モードに自動スイッチ!」


「駄目だ、それでは横回避になる。手動に戻せ! 距離を取れ、DD-24 から離れてもいい!」


「了解——なんてことだ……先生、ドローン 4 号機シグナルロスト!」


「くそがああ!」


「先生、続いて 3 号機もロスト!」


大荻山の計算が崩れる。


「3号機? 二機墜ちた? なぜだ、報告!」


「1号機の光学映像。レーザーでしょうか、敵から発射された線状の何かに貫かれています」


「まずい、飛び道具……! あいつは接近特化ではないのか?!これ以上ドローンを失うな。回避優先! 西側は砲撃続行。ただし YA-24 への誘導は中止、こちらの防衛を最優先!」


私兵が慌てて AI の命令を組み替える——刹那。


「先生、5号機・6号機、シグナルロスト! 4D 移動予測精度が 50% まで低下!」


「何だ、何が起きている。なぜ急に AI の演算を超えてきた? 読まれている? いや、違う……再計算……そうか、“意図的な状況の高速変化”で AI に再計算を強要し、その隙で精度を落とす——そこを突いているのか? しかし、そんな頭脳戦を——」


「先生! 8号機、落ちました!」


大荻山から血の気が引いていく。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同時刻 ベルガン


ヴァロンからの通信が入る。


「よくやった。残りのドローンは放置でいい。もう目としては数に劣る。戦車と装甲車を落とすぞ!」


2025年11月24日月曜日

グノーシア #1話~#6話(一部レビュー)

 <あらすじ>

物語の舞台は漂流する宇宙船。

“人間に化けて人間を襲う未知の敵”――『グノーシア』が船内に紛れこんだことを受けて、

乗員たちは疑心暗鬼の中、毎日1人ずつ疑わしい者を投票で選び、コールドスリープさせることを決める。

グノーシアを全てコールドスリープさせることができれば人間の勝利。

なんと主人公・ユーリは、どのような選択をしても、最初の1日目にループする事態に。

わずかな時間を繰りかえす、一瞬にして永遠のような物語が、いま、幕を開ける。


<レビュー>

本作は、ゲーム原作の人狼×タイムリープ作品です。毎回同じスタートから、人に化けた怪物「グノーシア」をあぶり出していきます。グノーシアを見つけても、逆に襲撃されても、投票で凍らされても――主人公が持つ“鍵”が満足するまで、世界は何度でも1日目へ巻き戻ります。


本作は人狼要素にかなり寄せた設計で、ロール(役職)が機能します。

 ・ドクター:前日にコールドスリープさせた人物が人間かどうかを翌日に判定します。

・エンジニア:1日1回、指定した1人が人間かグノーシアかを判定します。

・守護天使:航行(転移)中に起きるグノーシアの強襲から、自分以外の1人を保護します。

 

初期配置によっては実質詰みに近い回から始まることもあります。合理的に考えれば、主人公は“鍵”が要求する情報を集めるため自分の生存を最優先に立ち回るのが得策に思えますが、物語上はグノーシアの排除と人間側の勝利に尽力する姿勢が貫かれます。

ここはゲーム原作ゆえのシナリオと捉えるのが妥当で、知略よりも“誰を信じるか”を選ぶ物語として受け止められるかどうかで評価が分かれるところだと感じます。


とはいえ、“都合の良さ”や“ゲーム的ロール制”を気にしなければ、本作は毎回犯人が入れ替わるタイムリープ型ミステリーとして非常に相性のよい仕立てになっています。同じ時間へ戻りながら“毎回別の並行世界”へ滑り込むため、犯人・人数・関係性が都度変化します。視聴者も途中まで推理に参加できる点が大きな魅力です。


比較対象としては『Re:ゼロから始める異世界生活』(以下、リゼロ)は、固定世界で死に戻り→最善ルートを探索する構造です。一方で『グノーシア』は、世界側が毎回シャッフルされる“人狼卓”に近い構造を取ります。固定解を目指すルート探索ではなく、確率と会話で切り抜ける反復推理という趣であり、そのため週単位で視聴しても飽きにくいと感じます。第6話時点でも、会話の癖・嘘のつき方・投票の流れが生む“微妙な手触り”にドラマが息づいています。


総じて、繰り返すほど面白くなるタイプの作品だと評価します。世界の“底”に触れていく手応えが少しずつ積み上がっていく感覚は、アニメ化との相性も良好です。まずは数話、続けて視聴してみていただければと思います。



2025年11月21日金曜日

友達の妹が俺にだけウザい #1~#7(一部レビュー)

 <あらすじ>

学校では清楚な優等生として大人気の彩羽は、明照にだけやたらとウザい。

そんなハイテンション系ウザかわ女子・彩羽に振り回される明照の前に、

塩対応女子・真白が出現。

それをきっかけに、明照、彩羽、そして仲間たちの日常は激変し――!?

ウザかわ女子が(頼んでないのに)寄ってくる! 悶絶必至のいちゃウザ青春ラブコメ、開幕

<レビュー>

親友の妹と、お嬢様の同級生から好意を寄せられる主人公が、無自覚にモテまくるという鈍感系主人公ラブコメです。テンプレの鈍感系ラブコメを抑えつつ、独自要素としてゲーム制作チームという裏の顔と、悩みを持っているヒロインを大胆に手助けする青春要素という表の顔を持っている設定多めの作品です。


設定は多いですが、主要登場人物は少なめで5人位覚えれば楽しく視聴できる情報量を上手くコントロールしている作品です。複数のヒロインとの鈍感系ラブコメだと常時「主人公の取り合い」になってしまうので、多くの作品は主人公にフォーカスしすぎないようにモブを投入し、群像劇のような側面をもたせることがありますが、この作品は取り合いを楽しむことにスポットしつつ、設定を盛ることで少ない人数でも単調にならないような工夫を感じます。

 

作画も安定していますし、なによりキメカットのクオリティは結構高いと思います。原画の工数を上手にメリハリをつけて予算を有効に使用している印象です。


また作品の系統的に、親友の妹が負けヒロインぽく見えてしまい、お嬢様が優位になりがちですが妹の露出の回数を増やすことでどちらがヒロインになるのか、先が読めない(むしろ作者も決めていない)ような面白さがあります。


ハーレム要素もありますが、下ネタや露骨なエロ描写での視聴者アピールは少なく、内容で勝負している気合がとても好感の持てる作品ですので、ややタイトルで損をしている感じはありますが一度見ると面白いと感じる作品ですのでご興味があれば、おすすめです。



2025年11月18日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才⑤》

ある私有シェルターの代表、日本有数の実力者、大荻山《おおぎやま》剛三郎《ごうざぶろう》は、私兵と要人・愛人のみを連れてシェルターを出て、東京脱出を試みていた。


しかし、地下のシェルターから大型エレベータで地上に出た車列を襲ったのは、エーテルによる大規模なシステム障害だった。戦車の駆動系など構造的に単純な部分は動いていたが、早期警戒システムや自動照準システムなど精密機器に関しては機能が停止。

最高性能のタラメア製の戦車や装甲車も精密機器が動作しないとなれば、ただの硬くて重い戦車である。


すぐに私兵のリーダーが大荻山に指示を乞う。


「先生。想定以上にジャミング(電子妨害)が強い。そのせいで、性能の高いシステムが全く使えません。脱出を取りやめますか?」


大荻山の回答は早かった。


「何を寝ぼけている! 自衛隊の兵器はドローンやロックオンシステムを使用していた。つまり、このジャミングには穴がある。少なくともR連隊との戦闘地域まで行けば弱まるはずだ! 進め!!」


号令をきっかけに、車列は埼玉方面へ移動を始めた。先頭はタラメア製の最新鋭の戦車YA-24と装甲車DD-24である。そのあとに私兵を乗せた輸送トラック、バス、自家用車などが続く。


一人のリーダーがつぶやく。


「YA-24。なんて恐ろしい戦車なんだ。精密機器が使えない状態でも進行方向にある大きな瓦礫は崩し、後続車両が通れる程度の“地ならし”をしやがる。まるで道を切り開きながら進んでいるようだ」


すると隣の隊員が答える。


「馬力も重量も自衛隊の25式とは比較にならないスケールだからな。さらにこいつは大荻山さんの指示で、オプション装甲のARM40(前方掃討機構)とSUB11F(全方位対ドローン迎撃機構)を装備している。最強の中の最強だな」


しばらく前進していると、突然「ピピピッ」と計器の起動音が鳴り始めた。どうやら精密機器が息を吹き返したようだ。


直後に大荻山から指示が飛ぶ。


「予想通りだ。ジャミングには穴がある! 索敵ドローンを上げろ!」


装甲車DD-24の上部はドローン格納庫になっている。格納庫の扉が重い音を立て開くと、8基のドローンが勢いよく舞い上がった。


装甲車の中にあるモニターに映し出された索敵情報の範囲は、驚くべき速度で拡大し周囲のガーゴイルを発見する。


大荻山はモニターを睨みつつ呟く。


「どの敵も遠い。そして動く気配もない。やはり暗闇ではヤツラは鈍い。このまま瓦礫の山を抜ければ先日の戦闘の高熱で溶けた区域に入る。そこまでだ。そこまで行けば速度が出せる」


20分後、ついに大荻山の車列はR連隊の残骸が点在する区域までやってきた。その時、索敵システムが反応する。


「何事だ!」


大荻山が無線で声を張る。


「後方より急速に接近する敵影です。数2!」


大荻山は直ぐにその正体を看破した。


「例の王とか女王とかいう特殊個体だ! 一般車両は散開しろ! YA-24とDD-24は光ファイバーリンク。座標をYA-24へ送信! YA-24はSUB11F(全方位対ドローン迎撃機構)で迎撃!」


まるで軍人。一般人である大荻山がタラメアの兵器を持っていた理由はここにある。彼は兵器マニアなのだ。彼は実力者である。その分だけ命も狙われてきた。

自分の命を守る武器――それは護身用ナイフから始まり、銃、機銃と強力な兵器になり、行きついたのがこのタラメア製の兵器である。自分の命を守る武器だけに、その性能は熟知していた。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


同時刻、ベルガンとサーチは合流し、大荻山の車列を追っていた。


サーチがすぐに異変に気付く。


「ベルガン、人間の車列が散開を始めたわ! あとはドローンが8機上がってきたわよ!」


ベルガンも答える。


「創造主様がエーテルを抑えたからな。ご自慢のコバエが動けるようになったのか! まずはコバエを潰すぜ!」


ベルガンはサーチの視覚共有でドローンを察知すると、一直線に破壊に向かう。


すると、狙われたドローンは即座にベルガンから離れ始める。


「クソがぁ! 逃げてやがる!」


ベルガンがさらにギアを上げた。その瞬間、サーチが制止を促す。


「危ない! よけて!」


ベルガンがその声を理解した瞬間、「ドン」と鈍い衝撃がベルガンの横腹に刺さる。


「痛ってえ!」


「続けてくるわよ! 上昇して!」


反射的に急上昇するベルガン。僅か数秒後に、数発の弾丸が通過していく。


「ベルガン! 私たちの位置がかなり正確に知られているわ! 一旦距離を取りましょう!」


だがベルガンは知っている。距離が離れれば人間が有利になることを。


「駄目だ! むしろコバエを落とし、接近する!!」


そういって、姿勢を立て直したベルガンに再び弾薬が刺さる。「ドン!」


「ぐあああああ!」


ベルガンは上下左右に回避行動を行いつつ、最も近いコバエ(ドローン)を目指す。


だが、ドローンは狙われると離れていく。


「くっそ! コバエの分際で!!」「ドン!」


「ぐああああ!」


サーチがしきりに通信を入れる。


「ベルガン! 相手はあなたの回避を計算し砲弾を撃ってきている! 回避を複雑に!!」


サーチがベルガンに意識を向けていた隙を、ドローンは見逃さない。


「ドン!」「きゃぁ!」


サーチの脚部に着弾。サーチもベルガン同様、肉体の強化を受けているため一撃で致命傷を受けることはない。

だが、タラメアのYA-24のSUB11F(全方位対ドローン迎撃機構)は大型ドローンを想定した自動迎撃システムである。


それゆえに威力の高い弾薬を装備している。


「サーチ! クソ!!! コバエはダメだ! 追えば逃げる! 深追いすれば撃たれる! 先にあの戦車をブチ壊す!!」


ベルガンはサーチが被弾したことで、怒りがさらに増加する。


「ベルガン! だめ! 直線的な動きは相手の――」


言いかけた言葉が終わる前に多数の着弾音。


「ドン! ドドドン!」


「うおおおお!」


被弾しながらもさらに加速するベルガン。


するとタラメアの戦車YA-24の主砲がベルガンを捉える。


「いけない!」


サーチは急降下してベルガンを止めに入る。


当然この直線的な動きも、迎撃システムの餌食となる。SUB11Fの特徴の一つが、主砲とは独立した複数の砲門からなるドローン迎撃攻撃にある。


「ドン! ドドド! ドドン!」


サーチの体に何度も激痛が走る。サーチは新しい体で手に入れた自己硬化能力で、何とか砲弾のダメージを軽減する。そしてさらに加速。ベルガンを助けるため、シールドの展開準備も進めていた。


「お願い! 早く! 早くシールドを!」


サーチのエーテルシールドは、周囲のエーテルを集約し物質化することで盾として機能する。その特性上、エーテルの濃度が低い地域では、必要なエーテルの集約に時間がかかる。


ベルガンもSUB11Fの砲弾を正面から浴び続け、速度が落ちつつあった。


そしてついに、主砲の射程に入ってしまう。


「ズウウウン」


YA-24の主砲が重音を上げて火を吹いた。三種の火薬を多層的に詰め込まれた砲弾は、発砲後に加速する推進力となる火薬、相手の戦車の装甲を貫通して内部でまず小規模な一次爆発、そして強烈な二次爆発で大きなダメージを生む機構だ。


この主砲が直撃すれば、ベルガンといえど無事では済まない。


だが、SUB11Fの砲撃で姿勢を崩されるベルガンも、これを避ける術はなかった。


直撃。


そう見えた瞬間、サーチがベルガンの盾となって割って入った。


エーテルシールドはまだ完全には展開できておらず、主砲の貫通を許す。そして一次爆発。サーチはベルガンに向かって大きく吹き飛んだ。そして直後に二次爆発。大量の鋼の屑を含む殺傷力の高い爆風が、サーチの体に無数に刺さる。


「あああ!」


思わずサーチの声が漏れる。


ベルガンがサーチに目を向けると、あの美しい右腕と足の一部が大きく損傷していた。一方ベルガンは、サーチが盾になったことで大きなダメージは受けていない。


――また助けられた。


ベルガンは己の顔面を殴ると、サーチを抱きかかえ、射線から離れるため、瓦礫の奥に着地した。


「サーチ。すまない」


傷ついたサーチを眼下に置いたベルガンの表情は、かろうじて知性を保っていたが、怒号に満ちた猛獣のようになっていた。

2025年11月16日日曜日

【軽い日記的なもの】AIによる脅威の文字認識!

こんばんは、管理人の緑茶です。

本日は日記記事です。


先日、とある工場を見学しました。そこは、納品された原料を加工して出荷する工場。長年の悩みは「納品書」と「支払い」の突合でした。理由は、この業界では注文数と納品数にバラつきがあり、分納が常態化しているからです。たとえば、4月の発注500個が「5月に300個、6月に150個、同じく6月に50個」といった具合で分納されます。これが複数の原料で毎月発生します。


たとえば5月だけ切り取ると、工場側の受け取りはこんな感じです。

2025年11月13日木曜日

さわらないで小手指くん(新)(一部レビュー)

 <あらすじ>

小手指向陽・高校1年生。

特技は「気持ちよくさせすぎちゃう超絶マッサージ」!

学費を稼ぐため、スポーツ強豪校・星和大付属高校の寮の管理人となった向陽。

そこで出会ったのは、曲者揃いの美少女アスリートたちだった——。


新時代のマッサージ・ラブコメ、ここに開幕!


<レビュー>

本作はいわゆる今期のアダルト寄りラブコメ枠にあたります。

地上波では当然ながら放送基準により一部の表現が規制されていますが、

実際には有料配信版への誘導を兼ねた“お試し放送”としての側面が強い印象です。


作品としては、単なる刺激描写に依存せず、ラブコメとしての軽快なテンポと

「マッサージ」という独特の設定を軸に構成されているため、

地上波でも十分に楽しめる内容に仕上がっています。


惜しいのは作画面です。

カットごとに品質の振れ幅が大きく、特に日常パートでは

顔や体のバランスが崩れたり、作画が不安定になる場面も見受けられます。

本作はアクション重視のアニメではないため、

原画と動画の差によるブレではなく、演出段階での品質統一不足が目立ちます。


ただし、要所要所では非常に完成度の高いシーンも多く、

ヒロインたちの可愛らしさや色気の描写は高水準。

いわば「高低差」ではなく“明確な山谷”があるタイプの作画と言えるでしょう。


物語は2〜3話ごとにメインヒロインが入れ替わる形式を採用しており、

常に新鮮さを保ちながら進行します。

すでに“攻略済み”のヒロインも同じ寮に暮らしており、

シリーズを通じて登場人物が増えていくため、

結果的にハーレム的展開へと自然に移行していく構成です。


このあたりの展開処理が意外に丁寧で、

単なるエピソード消費型ではなく、過去のヒロインたちも

物語上の役割を持って再登場する点は好印象です。

視聴を重ねるほどキャラクターへの愛着が増していく“キャラモノ”として

一定の完成度を感じさせます。


ジャンル的には“深夜アニメのアダルト寄りラブコメ”に位置しますが、

エロティックな要素よりもむしろ、ギャグとテンポ感に重点を置いた作りです。

規制シーンはあるものの、それだけを目的とした構成ではなく、

コメディとしてのテンポとキャラクターの反応劇がメインになっています。


全体として、視聴者に“ちょっと背徳的な笑い”と

“軽めの恋愛コメディ”を同時に提供するタイプの作品です。

性的な要素を売りにしながらも、物語としての誠実さを捨てていない点が評価できます。


■ 総評

作画のムラや演出の粗は見受けられるものの、

ヒロインの魅力や構成の工夫により、作品全体の印象はプラスに転じています。

むしろ、シリーズとしての伸びしろを感じさせる作品であり、

「アダルト枠=軽薄」という固定観念を少し覆す力を持っています。


深夜枠ラブコメとしては安定感のある構成と、適度に遊び心を取り入れた演出で、視聴後の満足度は高いです。

刺激的な要素を含みつつも、あくまでコメディとして成立している点に制作者の“自制と計算”が感じられました。


やや好みが分かれる作品ではありますが、ラブコメのテンポやキャラ描写を楽しみたい視聴者にはおすすめできる一作です。



2025年11月11日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才④_大荻山の決断》

この作品はフィクションです。

登場する人物・地名・国名などすべて実在のものとは無関係です。

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自衛隊が国有シェルターの人々を地方に退避させた翌日。


光ファイバーの損傷で通信が途絶していた一つの私有シェルターでは、大きな動きが始まっていた。


そのシェルターの代表は、日本有数の実力者、大荻山《おおぎやま》剛三郎《ごうざぶろう》である。

彼は他のシェルターとの通信が途絶したあとも、巨大な受信装置を使い、エーテルの妨害を受けながらもラジオ波を拾い情報を集めていた。


そして、国有シェルターの避難民が一斉に地方へ脱出したと知ったのである。

もともと切れのある思考力と先見性を持ち合わせる大荻山は、容易に自分たちが「切り捨てられた」と理解した。


大荻山のシェルターは内閣シェルターに匹敵する規模・設備を備えた大規模なもので、収容人数一万人、備蓄資材は六か月分という、ある種要塞に近いものだった。

大荻山という絶対的な権力者のもと、治安も維持されている。


しかし、この切り捨てによって大荻山は揺れていた。


ーー自衛隊の軸足が変わった。舞岡がしくじったか。使えぬ男だ。


大荻山は、政治的なパイプ役として舞岡を筆頭に「帝都復権党」を支援し、影響力を発揮していた。

だが、切り捨てられたということは影響力の低下を簡単に想像させる。


そしてその事実が、大きな決断を迫った。


ーー救助を待つべきか。自力で脱出すべきか。


ーー救助を待つのであれば、あと五か月以上は持つだろう。だが都民を脱出させたということは、私有シェルター民は死亡扱いの可能性がある。


ーー自力脱出の場合、このシェルターに避難している約八千人の移動は可能だろうか。兵ではない一般人も多い。


だが彼は僅かに口角をあげると、すぐに結論を出す。


ーー私は聖職者ではない。全員を助ける必要もないか。


決断の速い大荻山は、すぐに私兵のリーダーたちを招集した。


「リーダー諸君。これから話す内容は重要機密だ。よいな」


そういうと、しばらく整列したリーダー十人を見回し、一人のリーダーの前に立った。


「携帯電話を見せろ。当然、電源は切れているな? 無線も見せてみろ」


リーダーは即座に携帯電話と無線の状態を提示した。

それを見た他のリーダーも、当然のように同じ行動をとる。


「よろしい。では説明する。我々は二日後の夜、シェルターを脱出する。脱出はタラメアから買い取った最新鋭の戦車『YA-24』と装甲車『DD-24』を使う。ヘリは使えん。破棄する」


YA-24、DD-24、この二つのキーワードにリーダーたちは動揺を隠せない。

この二つの兵器は民間人である大荻山が保持していること自体が違法である。

しかも両兵器ともに同盟国「タラメア合衆国」の最新鋭機で、国としても国内にあってはならない兵器なのだ。


リーダーの一人が一歩前に出ると質問を投げかける。


「よろしいでしょうか。最新鋭機とはいえ、両機とも一台しかありません。他、通常の移送車両などを合わせても全員の脱出には足りません。徒歩随伴となりますと機動力を活かせません。機動力を活かすため、一括脱出ではなくピストン輸送でよろしいでしょうか」


「その必要はない。タラメアの最新兵器だぞ。それを目撃した民間人は存在していいのか? 駄目だろう普通に。つまり私兵と、信頼できる私の友人だけで脱出する。だったら精々三百人だ。物資用の輸送トラックも使えば移動できるだろう」


それを聞いた女性のリーダーも、一歩前に出る。


「では、約七千五百名を残置となります。食料もそれなりに残すことになります。またヘリなど使用できない兵器の秘匿性に問題が残ります。機密保持の観点から、ピストン輸送による全員脱出を意見具申いたします!」


大荻山は呆れた表情でこれに答える。


「機密保持は当たり前だ馬鹿者。脱出人員を選別するということを正しく理解しろ。我々が脱出したあと、このシェルターでは非常に大きな火災が起こる。悲しいことだ。そして消火に有毒ガスが自動的に使用される。外に出るハッチは故障して動かない。換気システムも火災で停止中。とても心が痛い出来事だが、残された人々は焼かれて死ぬか、毒で死ぬか、火災で食料も燃料も失って飢えて死ぬ。全滅だ。だが、火災で機密事項は焼失。死人に口はない。つまり、問題はない」


女性隊員の表情が濁る。それを大荻山は見逃さない。


「だが、君が正義感から残りたいなら残ってもいいぞ。その場合は私の意思に反するということになる。意味は分かるな?」


女性は黙って一歩さがると敬礼し、


「脱出に尽力させていただきます」


と大きな声で宣言した。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


二日後の夜、情報を開示することなく脱出作戦は、残された人々に気付かれることなく始まった。

大荻山の言葉通り、シェルターの治安部隊を含む私兵と、大荻山の愛人、大荻山のシェルターで保護していた財界の要人のみがDD-24(タラメア製最新型装甲車)に搭乗していた。


大荻山は自ら指揮を執る。


「自衛隊の通信を傍受していたが、やつらは視力と聴力で獲物を捜すらしい。夜目は効かず活動も限定的ということだ。闇に紛れ静かに行動しろ。ライトは赤外線を使え。いいな」


大荻山の車列はゆっくりと、埼玉方面——つまりR連隊とベルガンの戦闘の影響で高熱により地形が均され、比較的瓦礫が少なく、車両の残骸によって車列が目立たないようなルートを目指す。



◆◆◆◆  ◆◆◆◆  ◆◆◆◆◆


同時刻。


お台場上空に浮かぶ神の居城「デスランド」。


ヴァロンが一人、執務室にこもり、強化されたベルガンとサーチとの新しい連携方式について思考を巡らせていた。


そこへサーチからの連絡が入る。


「ヴァロン、ポイント129に人間の兵器を発見。映像を送るわね」


すると、ヴァロンの眼前にエーテルを使った視覚共有能力により、サーチの視界が映し出される。


「随分と明るいな」


思わずヴァロンが口にする。


「創造主様のお力で、光の増幅能力と映像の補正能力が強化されたからでしょう。それで、この車列どうしましょう?」


もちろん映し出されているのは大荻山らの脱出車両だ。


大荻山は闇に乗じたつもりだが、それは前回のR連隊とベルガンの戦いで得た情報である。

サーチがいれば新月でもない限り丸見えなのである。この日の状態であれば、日中とさほど変わらない程度の視界を確保できていた。


「ぶっ潰そうぜ!」


ベルガンが通信に割って入る。


「ベルガンの気持ちもわかる。サーチ、映像を拡大できるか? あと、周囲に迫撃砲やドローンの姿はないか?」


ヴァロンの眼前の映像が一気に拡大される。


「1、2、3……十両編成。先頭は見慣れない戦車。後続も見慣れない輸送車。残り八台は軍用車ではないな、輸送トラック、乗用車というところか」


すると気配もなく、神がヴァロンの後ろから声をかける。


「ふーん。最新型のタラメアのおもちゃじゃないか。面白そうだね。な、ヴァロン!」


「急に現れないでください! 創造主様、お言葉ですが今回は私が指揮をとらせていただきます。私の存在理由を奪わないでください!」


神はケラケラと笑う。


「いやだね! 面白そうなおもちゃを前に譲るわけがない。ヴァロンはさ、もっとこう細かいのとか、面倒くさい消耗戦とか、退屈だけど指揮が必要なやつを頼むよ」


ヴァロンは呆れたような目で神を横目に見つつも、食らいつく。


「いえいえ、これも十分つまらないと思いますよ。結果の見えた出来レースです。強化されたベルガン。周囲には五万近い同胞、サーチも健在、さらにエーテルの影響で人間は精密機器が使えません。瞬殺ですよ」


「そういうとこだよヴァロン君。君は手堅い。優秀だけど面白みがない。君がやろうとしているのは、そうだなー例えるなら将棋のプロが小学生相手に全力で叩き潰すようなものだよ」


「駄目ですか?」


「駄目じゃないけどさ、面白くないだろ。だからここはさ、盤面を整えてやろうよ。まず、エーテルの濃度を下げてタラメアのおもちゃが百パーセント性能を出せるようにする。それから、ベルガンはこの前の戦いで兵を減らしすぎたので、今回は兵なしで戦うこと。つまりこっちの手駒はベルガンとサーチのみ。相手は全力。一人でも逃がしたら俺たちの負け。どう? ワクワクしないか?」


悪い笑み。とても神とは思えない表情である。


「指揮は、このヴァロンに任せてもらえるんでしょうな?」


明らかに不満の声。神はしぶしぶ応える。


「だーめ! でもさ、俺も口出ししないから、ベルガン、サーチでやってごらんよ。それでヴァロンが必要になったら、お前たちからヴァロンに協力を求めるのは認める。これでいいだろ」


ーー創造主様の最高の譲歩か、仕方ない。


ヴァロンは渋々了承し、すぐに大荻山の車列の周囲のエーテル濃度が下げられた。


神は楽しそうに宣言する。


「リベンジ戦を始めるぞー!」


ベルガンは返事をしない。

だがその目には燃える意思が強く出ていた。燃えるような闘志と、凍るような怒り。サーチはベルガンを分析して直感した。


あの人間は運が悪い――と。

2025年11月9日日曜日

【考察】なぜRPGアツマールは閉鎖するほど人気が落ちたのか

ドワンゴのコンテンツの一つとして人気を博していたRPGアツマールですが

結果として採算がとれなくなり2022年に閉鎖となりました。


閉鎖前に一度分析しているのですが、当時はまだサービス中だったので控えめに書いていました。

閉鎖から年月も経ち、そろそろ改めて分析してみたいと思います。



結論としては「コンテンツの拡大方向を間違えて強みを失った」これに尽きると思います。


アツマールの強みはツクールMVと手を組んだ気軽なフリーゲーム公開プラットフォームでした。


試作や体験版などを作った製作者が気軽にアップして、遊んだほうもコメントという形で気軽にフィードバックできるというライトなコミュニティは、ドワンゴの得意とするニコニコ動画と同じ設計の一つの完成形でした。


しかし、弱点も同じでした。それは気軽にアップされたデータを消せない。ストレージの容量を圧迫し採算を悪化させるという部分です。


一応作者ごとにアップロード上限はあったものの、いくらでもアカウントを作り直せるので実質無限ストレージになってしまいました。また非公開にして残すこともできるのでプラットフォームに一切貢献しないゴミデータが蓄積しやすいのも弱い部分だったと思います。


ストレージの維持には費用が必要なので、ドワンゴは広告を入れたり課金製作者への優遇を強化しました。そして、これが最大の悪手で、人気作が出るとその作品を上位に出し、プレーヤーを呼ぶため(つまり広告や課金の原資)を確保するための目玉に据えました。


その結果どうなったかというと、サイトを開くといつも同じゲームが上位に並び尖った新作や人気が出そうなタイトルが埋もれる結果になりました。


新しい人気作が出ないので、ずっと既往の作品が上位にいます。そしてその中には、ちょっと性的な表現のゲームもありました。内容的には文句なしに面白い作品ばかりでしたが、開くたびに同じ顔、そしてちょっと性的となると、おそらく女性層からプレーヤーが減り始めたのではないかと思います。


そしてその頃、製作者側も良くない方向にあったと思います。がんばって大作を作成しても埋もれてしまうため、試作や出オチゲー、体験版、釣りサムネなど全体的な新作の質の低下が起こりました。


なぜなら、少ない労力で数を出した方が、埋もれても見つけてもらえる可能性が増えるからです。そうなると毎日のように似たような作品が出ることになります。いわゆるデフォルト素材を使った雑なRPGです。コンセプトなども特になく、プレーヤーが遊んで後悔するようなタイプです。


そんな中、コンセプトを明確にした作品は頭一つ抜けました。「実写」「フルボイス」「●●すぎる勇者系」などです。これらは分かりやすいコンセプトのおかげでゲーム実況者の目に触れて、アツマールのシステムとは別ルートで名を挙げていきました。


それでも桁違いのプレイ数を誇る上位ゲーム層には後発では勝てず、すぐに埋もれてしまうため「実写2」「フルボイス2」など同じ作者がより過激にバージョンアップして人気の維持を図りました。するとアツマールはさらに固定化されています。


(最上位)超人気作・不動の名作


(上位)企業案件・コラボ作品


(今の人気作品) 「実写」「実写2」「実写3」などなど

---ここまでがユーザの目に留まりやすい---

(普通の新作)


(デイリー人気作)


(既存作品のジャンル別人気作)


こうなると新鮮味もありません。ユーザは態々スクロールして下の方の作品を遊び機会は減っていきます。

そして遊んだとしても雑ゲーに当たる確率も増えていました。


何度か雑ゲーにあたれば、もう今のユーザは手堅く人気作で遊ぶか、アツマール自体に興味をなくします。

するとプレーヤーが減るので、製作者はさらに焦り、奪い合うために奇抜・お色気・ネタゲーなど、まずはクリックさせることに集中していきます。


それらを求めてゲーム実況者は見に来るようになりますが、どんどん質が落ちていくため動画映えしない作品も増え、唯一の「下層からの浮上ルート」になっていたゲーム実況者も別のプラットフォームやフリーゲームではなく製品版のゲーム実況に移行していきました。


こうして、プレーヤーが減ってしまったアツマールは増え続ける雑ゲーのデータ容量の負荷に耐え切れず採算割れとなり閉鎖になった。


当時製作者として、そしてプレーヤーとして参加していた私の分析です。感じ方は人それぞれで全てが真理や真実だとはいいません。


しかし、超人気作や企業案件、今の人気作は別ページに送り出し、サイトを開いたときには運営が遊んで面白かった新作がまず並び、その下に投稿順の新作が並ぶようなページ設計であれば、少なくとも新鮮味と一定の質の担保はされるため、プレーヤ離れは起きなかったのではないかと思います。

2025年11月6日木曜日

異世界かるてっと3(新)(一部レビュー)

<あらすじ>

異世界転移を経て学園に戻ってきた

アインズ、カズマ、スバル、ターニャ、尚文たち。

2組には新たな転校生オットーとガーフィールが加わり、

1組にも謎の転校生たちが現れる。

彼らの学園生活の行く末やいかに――?


<レビュー>

本作は、一話完結型の人気異世界作品キャラクター総出演によるドタバタギャグアニメです。

最大の特徴は、まったく異なる世界観のキャラクターたちが「学園」という箱庭を舞台に交流するという、いわば“ファミコンジャンプ的なお祭りクロスオーバー”的な要素にあります。


通常のアニメでは「主役」「準主役」「脇役」と明確に役割が分かれ、登場頻度や演出の強弱も変わります。

学園ものでは特に、脇役キャラは名前すら与えられず、場合によっては顔の描き分けすら行われないこともあります。

そうすることで主役の存在が際立ち、作品全体に濃淡がつくのが一般的です。


一方で、『異世界かるてっと』のような群像劇的作品では、登場人物全員に主役級の個性とキャラ立ちを持たせています。

これほど多くのキャラクターを一人の作者が均等に描き分けるのは通常不可能ですが、

異なる原作作者が作り上げたキャラクターたちを一堂に集めたアニメだからこそ実現できた珍しい試みといえるでしょう。


そのため非常に新鮮で、すでに第3期を迎えながらも毎回飽きずに楽しめる構成になっています。


さらに本作は、複数の人気作品をまとめている性質上、異なるファン層が共通の作品を楽しむという特殊な状況を生んでいます。

しかし、その点についても丁寧な配慮がなされており、各キャラの性格や設定は原作準拠。

登場頻度やセリフ回しもバランスよく調整されているのが印象的です。


たとえば、出番が少ないキャラがいた場合でも、数十秒程度のショートギャグや掛け合いが用意されており、

ギャグアニメとしてのテンポを崩さずにファン満足度を維持する工夫が見られます。


人気作品のキャラをただ寄せ集めた“雑なコラボ”ではなく、

各キャラの個性をしっかり生かしてコメディに昇華している点に強い好感が持てます。


あえて難点を挙げるなら、シリーズを知らない視聴者にとっては「誰だこれ?」というキャラも少なくない点です。

ただ、その場合は“よくできたモブ”程度に受け止めても十分に楽しめる構成となっています。


総じて、異世界ファンにはもちろん、

テンポの良いギャグや多作品コラボを楽しみたい方にもおすすめの作品です。



2025年11月4日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才③》

連日行われる内閣シェルター内でのタラメア合衆国への対応問題会議。


「先送り論」が50%を占めるこの議論は、まるで議論をすることで実質的な先送りを達成しているような、答えのないタラレバの応酬であった。


そんな中、与党と一部の野党が手を組んで通した決議があった。


「国有シェルター民 地方避難措置」である。


文字通り、今もなお東京の地下に設置された三つのシェルター「埼玉側シェルター」「千葉側シェルター」「神奈川側シェルター」の国民を茨城、埼玉、山梨に集団避難させるというものである。


議論の場には、モニター越しに研究者の篠原《しのはら》涼音《すずね》が重要性を説いた。


「皆さんこんにちは。自衛隊UFB研究室長の篠原です。失礼ながら職務上、顔は映せませんし声も変えさせていただきます」


いかにもAIが作成した男性の顔がモニターに映し出され、変声機を通した篠原の、いつもより平板な声が響く。


「議員の皆さん。資料1をご覧ください。こちらがR連隊の残存数と東京周辺の自衛隊の配置状況です。赤く塗られている部分は兵器、もしくは兵士が不足しているエリアになります」


手元の資料を見ると、国有シェルターの周辺以外、ほぼすべてが真っ赤に染まった地図。


「先日の戦闘で一定のUFBは倒しました。ですが、雑魚を蹴散らしたにすぎません。その雑魚ですが、東京都内にはまだ五十万以上いるようです。さて、そのうちの十万がどこかの国有シェルターへ攻めてきたとします。シミュレーションが資料2になります」


1時間置きの自衛隊とUFBの勢力状況が24時間分並んでいた。


「このシミュレーションに、王とか女王と呼ばれるUFBは含んでいません。単純に雑魚十万を相手にしたとしても、24時間以内に東京周辺の自衛隊の残存戦力の95%が消滅します。これはかなり自衛隊が善戦する想定です」


「しかし、前回は自衛隊側が準備を整えて先手を取り、善戦しました。では、後手に回り防衛戦になった場合はどうでしょう。資料3になります」


そこには、たった10時間で全滅するという結果が書かれていた。


一人の議員が立ち上がる。


「バカバカしい! 迫撃砲も、レールガンも、無傷で残っているのだ! 今回も近づく前に叩き落としてやる! こんなものはシミュレーションと呼ぶものか!」


篠原は想定していたかのように返す。


「前回は時間をかけてUFBを事前にロックオンしておきました。一度ロックしてしまえば多少移動しても自動で補正できます。しかし、このケースは突然襲ってきたことを想定しています。ご自慢の迫撃砲も、レールガンもロックオンなしで……いわば、目を閉じた状態でどれだけ精度が出ますか? 熟練の砲兵で10%。レールガンのように特殊な兵器であれば5%程度です。仮に20%命中したとしても80%が残ります。つまり八万が弾幕を突破します。


味方に近すぎるUFBには迫撃砲もレールガンも使えません。最新の対地対空車両はほとんど残っていません。時速100kmで超低空から迫ってくる人型の的に対して、戦車砲が当たると思いますか? 仮に全弾命中したとしても、一万も倒せません。UFB七万との接近戦に、どうやって勝つおつもりですか?」


議員は何かを言い返そうと思考を巡らせるが、ロジカルな説明に自己矛盾しか生み出せず、力なく黙って腰を下ろした。


この後は篠原の独壇場だった。自衛隊が考えた迎撃プランの弱点を説明したり、内閣シェルターが陥落するシナリオを未来予測のように具体的に説明したり、たった30分。この短い時間で反対する議員は一人もいなくなった。


どちらかと言えば、内閣シェルターにいる自分たちの身の危険を直視することで、避難に肯定的な議員が大幅に増えたくらいだった。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


決議の翌日、大仲の演説が各メディアで報じられた。


「防衛大臣の大仲です。今、この国はご存じの通り、大きな国難に直面しております。全国民の皆様が東京の状態を知り、不安に過ごされていることも承知しております。その中で、特に国有シェルターに避難している皆様はずっと、太陽の届かない地下で過ごされております。率直にご説明すると、国有シェルターの皆様に地方への避難をお願いいたします。避難先は確保してあります。期日は明日、自衛隊が皆様をご案内いたしますので、日の当たる新天地へ避難をお願いいたします。急なお願いで心苦しくはありますが、R連隊が一部のUFBを退けた今、この瞬間が移動の好機なのです。ご協力をよろしくお願いいたします」


このニュースは一気に拡散した。

一部の国民は、R連隊がUFBを駆逐して、地上に戻れることを期待していた。しかしそれは、政府が隠蔽したR連隊の損耗率を知らないからである。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


国有シェルター内。


「ねえ、本当に地上に出られるの?」「……『地方へ避難』って言ってたろ」


「東京、もうダメってことじゃないのか……」


「でもさ、陽の当たるとこに行けるなら……もう何でもいいよ」


誰かのため息と、誰かの小さな笑いが交じり合い、ざわめきがシェルターの天井に反響した。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


翌日、大仲の予告通り、昼には各シェルターに自衛隊の先導部隊が現れた。受け入れ先の地方自治体からも多くの車両がシェルターの出口に集結していた。


こうして、その日の夜には、あれだけの人数が避難していたシェルターから、すべての人々が避難を終えた。たったの10時間で、各シェルター合計で五十万にも上る都民の大移動を完遂させた大仲と自衛隊は、世界から賞賛を集めた。


しかしタラメア合衆国の指導者たちは違っていた。尋常ではない脱出速度を成功させた要因を分析し、それが大仲や津田といった与野党の議員、そして足立・仲原といったR連隊の生き残りが、R連隊凱旋直後から地方への脱出を計画し、根回しや車両の調達を進めていたことが分かった。


そのことから、UFBがいかに脅威であるのか。それを再認識する結果となった。


そして私案にすぎなかった、ある一つの案――

「トーキョー・ステイビライゼーション」と名付けられた、東京一帯を核で“安定化”させる計画が、タラメアの中で多数を得る勢いで浮上し始めていた。


2025年11月2日日曜日

転生悪女の黒歴史 死亡フラグ(新)(一部レビュー)

<あらすじ>

自分の名をつけた主人公「コノハ・マグノリア」が可憐に活躍する、恋と魔法の冒険ファンタジー。

中学生の頃に自ら執筆した物語の世界へ転生した佐藤コノハは、なりたかった主人公「コノハ」ではなく、

その妹で稀代の悪女「イアナ・マグノリア」に転生してしまう。


――新感覚!死亡フラグ回避ラブコメ誕生!


<レビュー>

自分の小説の世界に転生してしまう「悪女転生系アニメ」です。

最近の流行に沿って「悪女」とは言いながらも、実際には根は善良な性格で、周囲のイケメンたちから次々と好意を惹かれてしまいます。


近年は「聖女」「悪女」「追放」「令嬢」×「転生」という組み合わせの作品が非常に多く、正直、タイトルだけでは混乱してしまうほどです(笑)。

しかも、どんなタイトルでも主人公は実は善人で、それに気づいた周囲がヒロインを支えていく――という定番の王道展開が多いため、差別化が難しいジャンルでもあります。


そんな中で本作は、「自分の黒歴史(=過去に書いた小説)」の世界に転生してしまうという点が特徴的です。

物語を執筆してから年月が経っているため、内容を断片的にしか覚えておらず、

本来なら未来を知っているはずの主人公が、記憶の曖昧さから後手に回ってしまうのが面白い設定です。


しかし、後手に回ることで物語に緊張感が生まれ、さらにシリアスな場面でその記憶がよみがえることで、

後手から一転して主導権を握る展開が訪れる――このバランスが非常に絶妙です。


また、ヒロインが原作者であるため、物語そのものに介入し、不幸なイベントを回避しようとする過程で世界が少しずつ歪んでいきます。

ところが、まるで修正力が働くかのように、再び本来の不幸なシナリオへと戻ろうとする。

この「運命の修正」が描かれることで、主人公が知り得ないエピソードが新たに発生し、自己創作と運命のせめぎ合いという興味深い構図が生まれています。


全体としては、王道の設定やネタを重ねていくタイプの作品ですが、

「自作世界への転生」というテーマをうまく生かして個性を出しており、

転生ファンタジーが好きな方には十分おすすめできる作品です。



2025年10月30日木曜日

とんでもスキルで異世界放浪メシ2(新)(一部レビュー)

 <あらすじ>

ある日突然、異世界へと召喚された普通のサラリーマン・向田剛志。

彼は固有スキル『ネットスーパー』で取り寄せた現代の調味料を使い、料理を作って食べながら、伝説の魔獣フェル、スライムのスイとともに異世界生活を堪能していた。


<レビュー>

本作は、異世界転移系の“通販メシテロ系アニメ”です。

最大の特徴はやはり『ネットスーパー』の存在で、どう見ても現実世界にある某ネットスーパーそのままの見た目になっており、登場する食材や調味料も S&Bテーブルコショー や キッコウマン『いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ』 など、実在の商品が多数登場します。そのため非常に親近感のある作画となっています。


もちろん、これらの商品を無断で映像化しているわけではなく、公式サイトでは実物を紹介し、コラボ的な扱いで作中に登場しているようです。

そのため、コラボ商品の登場シーンをしっかりと確保する必要があり、通販+メシテロ系アニメの中でも圧倒的に食事シーンが多い作品になっています。


料理シーンの尺が長く、作り方も非常にリアルなのは、レシピ公開で知られる Cookpad(クックパッド) とタイアップしているからのようです。


当然ながら、これらは地上波アニメで放送されているため、無償ではないでしょう。

宣伝効果も高いため、作品の制作資金の一部として収益化されていると考えられます(確証はありませんが)。


もともとドラマなどで特定企業が商品を登場させる手法はありましたが、ここまで多くの商品を明確に登場させるアニメは珍しく、新しい試みといえます。


料理シーンが長いためメインシナリオの進行はゆるやかですが、日常系アニメのような安心感があり、食事描写の完成度の高さも相まって楽しく視聴できる作品です。

また、旅の仲間が定番の美少女ではなく、多彩なモンスターたちという点も個人的には好印象でした。




2025年10月28日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才②》

内閣シェルターで連日のように行われているタラメア合衆国への対応。

論調は分かれていた。

「先送り論」「虚偽報告論」「断片開示論」である。


勢力の割合は、先送りが50%、虚偽報告が10%、断片開示が35%、静観が5%という形になっていた。


メディアを完全排除し、また情報漏洩嫌疑のある「帝都復権党」は自主的に参加を見送ったこともあり、全体的に保守的な議論となっていた。


先送り論は大勢を占めているものの、日々強まるタラメア合衆国からの情報開示要請にどう対処するのか具体案もなく、会議を空転させる。そこへ虚偽報告派が時間稼ぎとしての虚偽報告を推すものの、タラメア合衆国を納得させられるだけの整合性ある報告の作成には時間がかかるという矛盾を抱えていた。


このような状況下で、防衛大臣の大仲は断片開示を支持していた。


理由は複数あった。


R連隊の損耗によって自衛隊全体の戦力が大きく低下していること。再度反転攻勢をかけるためにはタラメア合衆国の戦力が不可欠。


タラメア合衆国に都合の良い情報を渡すことで、ある程度のコントロールが可能になるという点。日々の開示圧力や虚偽報告作りより建設的。


タラメア合衆国を通じて世界の関心を維持すること。物資やエネルギーを国外に頼るこの国にとって、他国の援助は不可欠。


そしてもう一つ。


タラメア合衆国が情報を分析している時間に、都内に残る国有シェルターの避難民を地方へ移動し安全を確保するための時間稼ぎが欲しい。


大仲としては1〜3は本心であり方便でもあった。彼の中にはずっと4が最重要事項としてくすぶっていた。


空転する会議の途中、短い応酬が挟まる。


「二週間、虚偽報告で稼げます。数で押せば合衆国は一時は黙るはずだ」

「露見した後の二週間を、誰が防衛する? 我々か、あなたか」

「……断片開示で主導権を握る。出すのは、こちらが選んだ断片だけだ」


会議を終え、シェルター内の狭い防衛大臣室。大仲がソファーに横になり、議会答弁をシミュレーションしていると、野党の津田議員が護衛も伴わずにやってきた。


「大仲さん、タラメアの件ですが実際どう思いますか?」


探り合いのない率直な問いだった。


「先送りは不可能。虚偽は論外。静観も無責任。となれば私は情報開示一択です。津田さんもそうでしょう?」


体を起こしながら問うと、津田は肩をすくめた。


「常識的に考えて開示一択でしょうな。与党の半分が先送りとは、決めないことで身を守る流儀か」


「だとしても、野党の虚偽報告案には賛成できません。時間も信頼も失う。悪手です」


津田は大きくため息をつき、無言でうなずいた。


「それで津田さん。意見交換だけではないでしょう。何か用件が」


「そうそう、私はタラメアともパイプがあってね。ちょっと“独り言”を言いに来た」


永田町では、わざとらしい独白が情報の通路になることがある。津田は天井を見ながら独白を始めた。


「タラメアの一部には、この国のUFB問題が本国へ波及することを恐れる声がある。情報は出しても出さなくても、不安は“排除”へ流れる」


そして、ため息交じりに続ける。


「強硬派の中には、UFBがこの国にとどまっている間に、核で根絶やしに——というような議論が、委員会の“私案”で真剣に回っている。困ったものだ」


津田は首をさすりながら、そのまま大臣室を出ていった。


ーーこの国に核を。大仲は早急に国民の退避計画を考え始めた。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


数日前、神の居城デスランド。


傷ついたベルガンがサーチと共に帰還した。ヴァロンは面倒くさそうに出迎えると早速嫌味を言う。


「まったく。兵の扱いが雑すぎる。自分の兵だけではなく、相手の兵、布陣、将の思考、考えろ、馬鹿者!」


そう言ってヴァロンはベルガンに肩を貸し、神のもとへ連れていく。


玉座にて神は笑みを浮かべてベルガンを待っていた。


「ずいぶん傷ついたな、ベルガン。勝ち戦に負けた気分を聞かせてみろ」


ベルガンはひれ伏したまま搾り出す。


「申し訳ございません」


神は立ち上がり、肩を叩く。


「違うよ。謝罪はいらない。面白かった。俺が聞きたいのは“今の気分”だ」


ベルガンは顔を上げ、溜めていた言葉を吐き出す。


「悔しい。そして自分が許せない。圧倒的に有利な状況に慢心し、何度も相手の手のひらで踊らされた。そのたびに兵を失い、無力を痛感した。神の兵として失格。この身は分解し、新たな手下をお創りください」


神は笑みを深める。


「サーチも戻ったときに似たことを言った。だが君らの本心は分裂している。『分解してほしい』も本心、『人間への怒り』も本心。時間をかけた個体は思考が複雑でいい」


神はヴァロンに向く。


「今回の戦いをどう見た。ベルガンに足りないものは?」


ヴァロンは即答した。


「情報と射程です。人間の将は情報を細かく分析し、行動パターンを予測して複数の策から最良を選んだ。どんな計略も圧倒的暴力の前では脆いはずでしたが、彼らの兵器は射程が長すぎた。近接主体のベルガンは一方的に削られた。結論は明白。運用の小回りが利く長射程兵器が要る」


神は満足げにうなずいた。


「そう、届かぬ拳は意味がない。ベルガン、新しい肉体を用意した。来い」


サーチが待つ玉座の前に、一時間後、ベルガンが現れた。ひと回りスリムな体型、わずかに知的な顔つき。


「世話になったな、サーチ。借りは返す。……この体はすごい。パンパンに膨れた筋肉じゃない。しなやかで鞭のようだ。反射も移動も飛躍的に向上した」


ここでベルガンは、指先に極細の光を一瞬だけ走らせた。ピンホールの熱線が壁の同一点を連続で貫き、点が線へ“縫い合わさる”。


「さあ、人間ども。絶望の時間の始まりだ」


2025年10月23日木曜日

【第6回 隠れスライムフェスティバル】(レビュー)

・このイベントは、参加者とスライムたちとのかくれんぼです。

会場内に隠れているスライムを見つけて、しぐさ「見つけた!」でポイントゲット!

ハイスコアを狙って、ガンガン探し出そう!

※一緒に参加したパーティメンバー全員のスコア合計が自分のポイントになるので、みんなで協力しよう。


・今回の舞台はアグラニの町!

教会や宿屋が高台にある、高低差が特徴のフィールドです。

スライムたちは、回り込まないと「見つけた!」ができない場所にいることも……。

2025年10月21日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才①》

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

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◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆

自衛隊のR連隊が私有シェルターの救出作戦を行い、救出には至らず新種のUFB「王」と「女王」を発見、撃退したあの日から3日が経過した。


国会では大仲防衛大臣に質疑が集中した。


内容は主に3つ


1.R連隊の帰還率約30%(損耗約70%)に対する責任論

2.私有シェルターへの次なる施策、計画案

3.同盟国から再三要求されているUFBの情報開示対応


まず、1.責任論については大半の議員はポーズに過ぎず、議員として追及すべき姿勢は見せておきながら内心では想定外の新種との遭遇や後任問題を考慮すると大仲続投を期待していた。

そのため、追及も薄氷を踏むような踏み込んだものはなく、継続議論という名前の「先送り」「実質不問」となった。

 

つぎに、2.私有シェルターの件。多くの議員は人命救助を訴えてはいるものの、内心は「切り捨て」の方針だった。重要視していた日本有数の実力者、大荻山《おおぎやま》 剛三郎《ごうざぶろう》氏の生死が不明であること

そして、連絡が継続していた私有シェルターの数も減りつつあり、いくつかの私有シェルター内では内部的な暴動が発生し暴力的な人物のみが生き残っているシェルターもあった。

もはや貴重な自衛隊を再度投入し国民全体を危機に晒すべきではないという感情だった。


また、この件にこだわりを持っていた帝都復権党の舞岡氏は、前回の作戦情報のリーク犯として疑いをかけられており、後ろ盾の大荻山氏の生死不明も相まって強くは主張を出せずにいた。



問題は3である。


同盟国のタラメア合衆国がUFBおよび、王、女王の情報開示を迫っていた。表向きは軍事支援となっているが、UFBが出現したあの日、真っ先に東京から脱出したのがタラメア合衆国の軍隊である。

R連隊への参加打診もあったが、彼らの目的は自衛隊の最新兵器の性能にあることは明白だった。彼らはUFBというモルモットを使って、自衛隊の戦闘能力を知りたいのである。


それには理由があり、ロングレンジ・レールガンも含め、この国が所有する最新鋭機の機密情報は強固に守られていた。平和主義という理念を前面に出すことで兵器を開発・製造・量産していることすら公にはしておらず

配備状況も噂程度にとどめられていた。ところがこの有事にあたって、実践に投入されてきた。これは同盟国からみても予想外の脅威で、UFBは対岸の火事で済むが自衛隊の最新兵器は同盟国としての軍事バランスを揺るがしかねない身に迫る危機なのである。


UFBは死亡すれば霧になって消えてしまう。王と女王は逃がした。となると、UFBの情報開示は最新兵器の戦闘データ開示ということになる。同盟国は軍事的解析能力に優れた大国である。その国に戦闘データを送ることなど出来ようもない。

国会はメディアを追い出して、このテーマについて議論を交わしていたが、紛糾を極めた。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


政治家が議論に時間を溶かしているあいだに、自衛隊では戦闘データの解析作業が進んでいた。


解析には変人研究者の篠原《しのはら》涼音《すずね》が指揮を執り、スーパーコンピューターを超えるという天才的頭脳を存分に発揮していた。


研究室にR連隊の隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》と仲原《なかばら》香《かおり》三佐が進捗を確認するために入ってきた。


涼音は足立を見つけると足早に駆け寄った。


「足立隊長!涼音ですー!」


研究室では鉄の仮面とよばれる無表情の篠原だが、足立には表情豊かに笑顔で声をかける。


「篠原さん、解析はどうですか?」


すると待ってましたとばかりに、研究室の卓上モニター3体のUFBを映し出した。


そして嬉しそうに解説を始める。


「まずはこれ、これはぁ今まで私たちがぁ戦ってきた。ふつうの子」


次に中央の筋肉質の個体を差す


「これがぁ、王?でもぉたぶん王じゃないですねぇ。特攻隊長の子ですぅ」


そして女性の個体を差す


「この子はぁ、たぶんサーチって名前ですぅ。周囲の物質を集約硬化させて白い盾をつくれますぅ。みんなは女王って呼びますが、これはたぶん門番?みたいな守備型の子ですぅ」


足立は驚きが隠せなかった。解析と言えば速度や筋力といったスペックを差す。だが篠原はスペックではなく組織のポジション、特徴、名前などを説明したからだ。


「あの、篠原さん?」


「涼音でいいですぅ」


「じゃあ涼音さん」


黙っていた仲原三佐が割って入る。


「隊長!男性が女性の呼称に名前を使うのは規律が乱れます。篠原とお呼びください」


この言葉を聞いて睨みつける篠原を完全に無視する仲原。


険悪な空気を読んだ足立が話を戻す。


「それで、なぜ王ではないと?あと名前、サーチとは?いや、それ以前に頼んでいたUFBの性能解析はどうなってる?」


「はぁい!これはですね、想定される筋力などはこちらのボタンを押すと表示されまぁす」


そういうと、卓上スクリーンをタッチする。


「こーんな感じでぇ、脚力とかもぉ瞬発力とかぁ持久力とかぁ、稼働性能とかぁ、耐久力とかぁ跳躍力とかぁ、多面的に分析しましたぁー」


これがこの篠原涼音が変人研究者と呼ばれる所以である。普通の人間が想像する数倍斜め上まで詳細に研究してしまう執着力。そして僅かなデータから細かい情報を分析してしまう思考力、20代でUFB研究室の室長に抜擢されただけはある。

余りに細かい数値の羅列に仲原が少し後ずさりする。一方足立は前のめりになっていく。


「すごいじゃないか!UFBの能力が丸裸だ!!想定飛行限界高度4000mか・・・意外と低いな。ふむふむ。」


その様子を見た仲原がすぐに自身も前のめりになると問う


「これらの情報は後でゆっくりみますが、名前とか王ではないといった情報の根拠は?」


仲原の質問に篠原は無表情に答える。


「映像を見れば分かりますよね普通。まず、状況。我々が殲滅したのは池袋付近のUFBのみですよ?それで王様が激怒して城から出てくるのは不自然です。だって池袋の周囲にはまだ何万も兵がいるんですよ」


「それに、この子、王という割には戦闘力も半端。統率力も半端。カリスマ性もないですよ。群れの長は圧倒的な力とかまとめる能力が必要なんですよ。この子はその器ではないです」


「最後は味方のサーチちゃんに助けられてますし、総合的に見れば精々戦闘隊長級。もしくは特攻隊長みたいなポジですね」


足立が反応する


「そうだ。サーチ。なぜ、この女がサーチという名前だと分かった?」


篠原は、得意げに答え始める


「はぁい。それはぁ、この映像ですぅ。ここ、ボロボロになった特攻隊長君が、この女の子の名を呼んでいます。きっと予想外だったのだと思います。例えるならぁ、駅前で終電逃して絶望してたら、同期の異性にばったり出会ったみたいなぁ様子ですねー」


「で、口元を拡大してぇ。コマ送りにするとぉ、ここが「さ」ですね。で、このまま口の形がしばらく変わらないので、「さー」と伸ばしていると推測できますぅ。次のコマが「ち」と言って口を閉じてます。つなげると、この女の子はサーチですね!」


「ついでにぃ、この口の使い方からしてぇ、この子達は日本語を使ってますねぇー」


足立は驚きに声も出なかった。

2025年10月19日日曜日

最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか(新)

<あらすじ>

舞踏会の最中、公爵令嬢スカーレットは、婚約者である第二王子カイルから突如婚約破棄を告げられます。しかも、理由はまったくの言いがかりであり、すでに新しい婚約者がいるとまで宣言されてしまいます。耐えがたい屈辱と怒りにスカーレットは「最後のお願い」として、自らに濡れ衣を着せた令嬢を殴らせてほしいと申し出るのでした。それは、彼女の“断罪”が始まる合図に過ぎなかったのです。


<レビュー>

本作は、悪役令嬢もののテンプレートを一度踏襲しつつも、序盤からその枠を破壊するような展開で始まります。主人公スカーレットが「令嬢らしからぬ」暴力で不正を正していくスタイルは非常にインパクトがあり、視聴者を強く引き込みます。


この作品の最大の特徴は、見た目が少女漫画風でありながら、アクション描写が非常にハードでリアルであるという点です。殴打のシーンでは血の描写や顔面の歪み、返り血までもが丁寧に描かれ、ただのギャグや演出ではなく、キャラクターの意思や背景を支える強さとして描かれています。


スカーレットは全員に暴力を振るっているわけではなく、相手の背景や状況に応じて、眠らせるなどの対応もしています。このバランスが、彼女をただの暴力令嬢にせず、正義感と判断力を併せ持つ主人公として成立させている点が非常に巧みです。


さらに、第二王子との婚約破棄によって、第一王子のお気に入りとして迎えられる展開も含まれており、いわゆる“追放”の末により高い地位に昇るという点では、近年の流行である「ざまぁ系」や「逆転劇」の要素も感じさせます。ストーリー構造においても、権力構造が変化することでスカーレットの行動の自由度が増し、それが彼女の持つ正義と行動力をより活かす形になっています。


現在3話時点で物語は最初のボス戦へと進もうとしており、今後どのような悪役が登場し、それをどう成敗していくのかという期待が高まります。作画、演出、キャラ描写、いずれも丁寧で完成度の高い導入でした。


悪役令嬢ジャンルに新風を吹き込む作品として、強烈な第一印象を残すシリーズの始まりでした。暴力系令嬢という異色の切り口に興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。



2025年10月16日木曜日

グノーシア(新)

 <あらすじ>

物語の舞台は漂流する宇宙船。

“人間に化けて人間を襲う未知の敵”――『グノーシア』が船内に紛れこんだことを受けて、

乗員たちは疑心暗鬼の中、毎日1人ずつ疑わしい者を投票で選び、コールドスリープさせることを決める。

グノーシアを全てコールドスリープさせることができれば人間の勝利。

なんと主人公・ユーリは、どのような選択をしても、最初の1日目にループする事態に。

わずかな時間を繰りかえす、一瞬にして永遠のような物語が、いま、幕を開ける。

<レビュー>

『グノーシア』は、ゲーム原作ならではの人狼ゲーム要素と、タイムリープの構造を組み合わせたSFミステリー作品です。視点人物であるユーリは、記憶を引き継ぎながら何度も同じ一日をやり直す立場にあり、ループの中で真実に近づこうと試みます。

冒頭では、ユーリが記憶も状況もわからないまま人狼ゲームに巻き込まれ、あっという間に敗北してしまう展開が描かれます。そこから再びループが始まるという、プレイヤー=視聴者と同じ無知な立場からスタートする導入は非常に没入感がありました。

作中の「グノーシア」は人狼と似た存在ですが、その正体や能力、増殖や移動の可否など、詳細が明かされていません。そのため、単純に「一人ずつコールドスリープさせれば勝てる」といった論理が通用しない点が作品に不気味さと深みを加えています。

とくに印象的だったのは、ユーリが前回の記憶を保ったまま再び同じ一日を迎える描写です。それにもかかわらず、状況が必ずしも前回と同じとは限らず、毎回異なる可能性が提示されることにより、視聴者もまた「何を信じればよいのか」と不安を掻き立てられます。

このあたりから、「実はタイムリープではなく、並行世界を渡っているのではないか」という疑念や、「ユーリ自身も無意識のうちにグノーシアなのではないか」というメタ的な推理を楽しめるようになっており、SF好きにとってはたまらない仕掛けが随所に仕込まれているように感じました。

演出も凝っており、閉鎖空間で進行する心理戦に加えて、キャラクターたちの個性がしっかり描かれているため、今後の人間関係の変化も楽しみです。

ゲーム的な仕掛けと重厚なSFミステリーを融合させた本作は、ループものや人狼系の作品が好きな方には強くおすすめしたい一作です。今後の展開次第では、大きな話題になる可能性も感じさせる作品だと思います。




2025年10月14日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑱ 大規模攻勢_10_終結》

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

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内閣シェルター作戦司令部


防衛大臣の大仲《おおなか》晴彦《はるひこ》は、私有シェルターに取り残された民間人を救出すべく、最新鋭の装備を備えた救出連隊「通称:R連隊」の報告を聞いていた。


報告はR連隊の隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》からの無線で行われている。


「大仲大臣。足立です。不測の事態が発生し、王を取り逃がしました。しかし、周辺のUFBは全滅。再度私有シェルターの救出を再開可能な状況です。ご判断を」


突如出現した、UFBの王。足立と仲原三佐のプランにもない存在だった。ところが彼らは準備していたプランを流用し、これを見事に追い詰めた。


彼らは「取り逃がした」というが、正体不明の敵対生物と交戦し、敵の王を退けたことは大きな功績といってよい。


だが、犠牲が多すぎた。王の熱線による奇襲で前衛の半数を失い、作戦全体としての無事帰還は約30%にとどまっている。この状況での判断は1つしかない。


「撤退してください」


大仲は冷静に告げる。


足立の隣にいた仲原《なかばら》香《かおり》三佐が無線に割って入る。


「大臣! 人命救助のチャンスです。最低でもこの地域に拠点を作ることを進言します!」


すぐに足立が無線を取り返す。


「大仲大臣。足立です。私も仲原三佐を支持します。この好機を活かさなければ死んだ仲間が浮かばれません」


大仲は一瞬だけ、隣に座る津田議員に視線を向ける。


津田は黙って首を横に振っていた。


「駄目です。敗走した王は自尊心が傷ついているはずです。もしUFBに感情があるとすれば、王を傷つけた自衛隊に怒りの反撃を試みるでしょう。そういった意味では、今の安全は一時の静けさ――台風の目のようなものです。すぐに撤退を始めてください。これ以上自衛隊を失えば国有シェルターの防衛や、東京以外の地域の国防に影響が出ます。わかりますよね?」


それでも仲原三佐は引かなかった。


「敵の弱点は把握しました。再度攻撃を受けても撃退してお見せします。ですから拠点だけでも作らせてください!」


大仲は少し沈黙すると、声のトーンを落として小さく告げた。


「実は、先ほどの王の熱波攻撃以降、私有シェルターとの通信が切れたのだ。光回線・銅線・非常波長の順で再試行し、近傍ビーコンも確認したが応答なし。熱波によるケーブル焼損か、施設損壊の可能性が高い」


それを聞くと仲原三佐はさらに語気を強める。


「ならばなおさら――」


その言葉を遮ったのは足立だった。


「了解しました。残存部隊を集め撤退します」


「隊長! 何でですか!」


「確実な人命救助なら俺も前に出る。だが、この状態は違う。もし手遅れだった場合、残存兵力では撃退できたとしても確実に犠牲が出る。大仲大臣の集めたこのR連隊は各地方の防衛ラインに配属されている最新鋭部隊だ。これ以上失うことは国防にかかわる。確実ではない人命救助に対してリスクが高すぎる」


足立の握る拳に仲原は心情を察した。そして自身もまた、国防と不確実な人命救助を天秤にかけ、足立の発言に反論することはできなかった。


自衛隊は即座に再集結すると、埼玉の防衛ラインまで後退した。あれほど多くの最新鋭の兵器が出立したその場所に、無事に帰還できたのはおおよそ30%。また損傷している車両、隊員も多く、この国は忘れかけていた戦の凄惨さを思い出すこととなった。


それでも埼玉シェルターでは凱旋パレードが行われた。


メディアは自衛隊を英雄と称えた。


レポーターのマイクにも感情が乗っている。


「私有シェルターには至りませんでしたが、我が国の自衛隊はUFBの王をあと一歩まで追い詰め、撃退しました。今まで一方的に侵略されていた我が国が、侵略者に対して大規模攻勢を成功させたのです! 勇者の凱旋です!」


内閣広報室は、治安安定化のため戦果の要約のみを公表する方針を決定。強い情報統制の下で、自衛隊側の損失は一切報道されていない。事実として多くのUFBを倒したこと、そして王と対峙し、撤退させたこと――その部分だけが国民に伝えられた。


また凱旋パレードに参加した兵器も、最新鋭装備は出さず、国民が知る型のみが形式的に並べられた。


そのパレードの車列に仲原三佐と足立の姿もあった。


「隊長。これはプロパガンダですよね。実際はほとんど敗走に近いのに」


そういうと、虚しそうに喜ぶ国民を見つめる。


「そうだな。だがこれも仕事だ。世論次第では大仲大臣の議員生命も危うい。世論を徹底的に味方に付けるんだ。ほら、笑顔笑顔!」


足立は乗っていた装甲車のハッチから顔を出し、敬礼して国民に勝利をアピールした。


この光景にSNSは懐疑的だった。


<< ドローン部隊が全然いなくね? >>

<< 勝利? シェルターには行けなかったのに? >>

<< なんで王を追い払ったのに、手ぶらで帰ってきたの? 馬鹿なの? >>


辛辣なコメントが並ぶ。

だが、そのコメントも政府が準備した「賞賛チーム」のポジティブコメントで上書きされていく。


<< 大勝利!! >>

<< あの総理を説得し、勝利をもぎ取った大仲大臣すごい! >>

<< なんか自衛隊が頼もしくなった >>

<< 賛否はあるかもだけど、スピード感はあった >>


それを見る大仲大臣と津田議員は複雑な表情であった。本当は戦死した隊員に最大の感謝と賛辞を送りたい。だが、そこに注目してしまうと国民感情が不安定になり、治安の悪化になりかねない。


大仲は戦死者・行方不明者リストを見ながら、ひとりひとりの家族に宛てて感謝の意と追悼の気持ちを記した手紙を書こうと心に決めていた。


数日後、王との戦いを分析していたチームから報告が入り、大仲は自身の決断が正しかったと確信した。


超高性能偵察ドローンのカメラが恐ろしいモノを捉えていた。


女性のような姿をした未知のUFBが映っていたのだ。この個体は高速で上空から白いシールドを展開しつつ王に接近し、熱源の尾を残してそのまま王を連れ去った。


王のような特殊な個体は、王ひとりではなかった。その真実は自衛隊に大きな衝撃を与えた。


誰かがこの個体をこう呼んだ――「女王」。

2025年10月12日日曜日

味方が弱すぎて補助魔法に徹していた宮廷魔法師、追放されて最強を目指す(新)

 <あらすじ>

突然の“追放宣告”をきっかけに、再び運命の歯車が回り出す――。

王太子レグルス・ガルダナを陰で支えてきた宮廷魔法師アレク・ユグレット。

かつての仲間と再び出会い、伝説のパーティーが再集結する。

新たな物語が幕を開ける――。始めよう、新しい伝説を。あの日の続きを。


<レビュー>

今のところ、王道の「追放系ファンタジー作品」という印象です。補助魔法に徹するように命じられ、その通りに戦っていた主人公が、王太子から無能とみなされて追放される、という導入は、ある意味このジャンルのお約束とも言えるでしょう。


物語は、かつての仲間と再会し、冒険者として再スタートを切る形で始まります。作画も安定しており、特にキャラクターの表情描写が豊かで、喜怒哀楽の表現に力が入っているのが印象的でした。声優陣の演技とも相まって、キャラクターの感情や個性がよく伝わってきます。補助魔法専門と思われた主人公が、実は攻撃にも長けた万能タイプだったという設定も、王道でありながら安心感のある構成でした。


追放系の作品はすでに飽和気味のジャンルですが、その中で生き残るには「強烈な個性」か「安心の王道」が求められます。本作は後者の道を選んでおり、視聴者が期待する展開をきちんと抑えてくれている点が魅力です。


また、1話時点でヒロインがすでに主人公に強い好意を持っている様子も描かれており、今後のラブコメ展開や王太子パーティー側の混乱・焦燥も含め、物語としての広がりが感じられました。


まだ1話のみの評価ではありますが、王道の追放ファンタジーが好きな方には安心しておすすめできる作品です。まずは2話目以降の展開を楽しみに視聴を続けてみたいと思います。



2025年10月9日木曜日

素材採取家の異世界旅行記 (新)

<あらすじ>

異世界へと転生したごく普通のサラリーマン・神城タケル。

彼が新たな人生をスタートさせたのは、剣と魔法の世界『マデウス』。

そこでは、身体能力の強化や莫大な魔力、さらに価値あるものを見つけ出せる「探査能力」など、

数々のチート級能力が与えられていた――。

タケルの“異世界・素材採取の大冒険”が今、始まる!


<レビュー>

本作は、いわゆる異世界転生ものの中でも、「採取能力」と「魔力」に焦点を当てたタイプの作品です。


戦闘が主軸ではなく、素材集めや冒険を軸に据えた物語構成のため、「戦闘で無双!」系とは異なり、異世界を旅する雰囲気をじっくり楽しめるのが特徴です。


とはいえ、主人公には明らかなチートスキルが備わっており、「探査能力」や「魔法」によってイージーモードな展開が多いのも事実です。ただし、呪文の使用には発動条件があり、「呪文の言語(基本的に英語)」を知らないと発動できないなど、適度な制約も盛り込まれています。この「少しだけ不便さが残る仕様」が、物語のバランスを上手く保っているように感じました。


ちなみに、呪文の言語は英語ベースになっており、「飛ぶ」は「フライ」、「鑑定」は「サーチ」など、視聴者にも意味が推測しやすい構成になっています。一部では「identificationの方が正確では?」と感じる場面もありましたが、アニメ的演出として受け入れられる範囲でしょう。


さらに本作では、ヒロインよりも先に「マスコットキャラ」が登場します。近年の異世界転生作品では珍しくないパターンですが、マスコットを最初に据えることで、作品全体に落ち着きと継続性を与える狙いがあるように思えます。


マスコットは序盤のインパクトを狙う要素ではなく、物語全体の「可愛げ」や「読後感の良さ」を支える存在です。この点に着目することで、制作陣が安易にヒロインやバトル、セクシャルな要素に頼らずとも「視聴者をつかめる」という自信を感じました。


まだ1話目の段階ではありますが、演出・キャラクター・設定すべてに誠実さと意図が感じられ、今後に期待できる“雰囲気重視の異世界作品”として注目したい一作です。




2025年10月7日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑰ 大規模攻勢_9》

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

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ベルガンは窮地《きゅうち》に立たされていた。


自衛隊の考え抜かれた作戦行動にベルガンの長所を潰され、自衛隊車両の攻撃や自爆ドローン。

設置されたTNT爆弾を使ったトラップにダメージを受け、翼は機能を失い、片足も失っていた。


そしてまさに今、眼前には20~30の自爆ドローンがベルガンに向かって直進していた。


特殊弾を装備した自爆ドローンの破壊力は、直撃すれば翼を壊すほどの威力である。その自爆ドローンが大量に迫る状況はベルガンに敗北を告げていた。


「くそがあああ!」


最後の力を振り絞り吠えるベルガン。


だが、もはや反撃する体力も、回避する機動力もベルガンに残されていなかった。


迫る自爆ドローン。ベルガンには、その数秒が数分にも感じられ、悔しさ、不甲斐なさ、怒り、様々な感情が渦巻いた。


自爆ドローンは2mまで接近。


ーー駄目だ。


ベルガンがあきらめ、空を見上げると。白い一筋の光が見える。


「チャージ完了!シールド展開!」


円形のエーテルで作られた美しい白い障壁が瞬時にベルガンと、そのシールドを発生させた本人。サーチを包み込んだ。


「サーチ!」


「話はあとにしましょう。この障壁も長くは持たない。私の尻尾をつかみなさい」


その僅かな会話の最中も、幾重もの自爆ドローンが障壁に当たり轟音《ごうおん》をあげる。


サーチはベルガンが差し出された尻尾をつかんだことを確認すると、障壁を展開したまま一気に上昇し、居城デスランドへと撤退を始めた。


ベルガンは助けられたことに驚きながらも、尋ねずにはいられない。


「サーチ、この障壁は一体?、それに何か体型も変わってないか?」


サーチは一瞬振り向くと、すぐに前を向いて答える


「私は自衛隊の最初の攻撃で機能を失って、デスランドに撤退したのよ。そこで、創造主さまからこの体をいただいた」


「以前よりも速く、そして味方を守る力を持ったこの体でもギリギリだったわね。ごめんなさい」


そういうと、さらに加速し、居城へと向かった。



◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


10分ほど前 自衛隊の視点


足立《あだち》昭介《しょうすけ》と副長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐は、モニターと無線、計器類を凝視しベルガンの動きを分析していた。


仲原三佐が声をかける


「隊長。やはり、UFBの王であっても目視による索敵ですね。こちらの部隊を見つけると直進してくる行動パターンはUFBと変わりません。ただ、速度が異常に早いですね。あとは被弾してもダメージが見受けられません」


足立は仲原に視線を向けることなく首を振る。


「いや、ダメージはある。先ほど自爆ドローンが左翼に命中した。そこから左側への旋回能力が落ちている。おそらく翼に異常があり、空気抵抗をコントロールしにくいのだろう。右旋回に比べ1.5倍は左旋回の方が大きい」


「え!では特殊弾は効果がありますね」


仲原はすぐに無線を取る。


「UFBは左旋回に異常アリ。各攻撃部隊はUFBの左側面から攻撃。右側面の部隊は攻撃を中断」


ー右側からの中断


この言葉に各部隊の隊員たちは違和感を覚えた。

左側面からの攻撃を優先は理解できる。しかし右側攻撃すれば相手は左右への注意が必要となり、より多くの着弾を狙える。


その疑問は次の命令で納得に変わる。


「いい?徹底的に左から狙い続ければ絶対に、距離を取るか上昇するはず。ダメージが少なくても弱点から攻撃されるのは心理的なプレッシャーになるわ。だから必ず一度冷静になるために距離をとるはずよ。その時に自爆ドローンで右の翼ももらうわよ!」



足立が作戦を聞くと少しだけ表情が緩む


「ほんと、三佐の作戦はおっかないねー。例えるなら敵を水中にたたき落として息継ぎに顔を出したら”顔面いただきます”みたいだもんなぁ」



「隊長。無駄話は後にしてください。作戦中です」


仲原には答えるだけの余裕はなさそうだった。


ーーちょっと緊張をほぐしてやろうと思ったのに……


少々切ない気持ちになる足立であった。


しかし、その間も戦況は仲原三佐の予想通りの展開になっていく。


無線が入る。


「UFBの王。TNTのトラップにかかりました!誘導成功です!」


仲原はすぐに返す


「右側の分かりやすい地点に配置したのだから当然でしょ!そのまま、3時の方向へ追い込んで!ソロソロ距離を取るはずよ!自爆ドローンは近づいて!きづかれないでね!」


まるで予言のようにベルガンの動きは仲原の射撃統制によって誘導されていく


「左の翼の動きがさらに落ちたようね!距離を取りに来るわよ!左側からの弾幕集中!後ろか上に逃げたくなるくらい撃ち込んで」


その予言は直ぐに的中する。ベルガンは大量の発砲音に反応し、本能的に大きく上昇した。


「きた!今よ!自爆ドローン、右側の翼へ全速突撃!」


モノの数秒で接近していた自爆ドローンがベルガンの右羽根の根本で爆発する。



「ぐあああああ」


ベルガンが声を上げ、旋回するように落下していく。


仲原は手を緩めない。


「隊長!レールガンの使用許可を!」


すぐさま足立が許可を出す。


旋回しなが落下するベルガンの頭上で、ロングレンジレールガンの特殊弾が炸裂する。


「埼玉シェルターで待機中の自爆ドローン部隊。全機離陸して!ポイント126にある装甲車に追い込んで!大丈夫!もう飛べない。敵は足の速いチーターよ!」


特殊弾の影響で、移動範囲を大きく制限されたベルガンに対し、逃げ道をふさぐように自爆ドローンが囲いこんでいく。


2分ほどで、ポイント126へ追い込んだ。


そして、そこにある装甲車はTNTを満載しているトラップである。


装甲車に起爆装置はないが、自爆ドローンが衝突することで容易に誘爆した。


「装甲車トラップ成功!」


現場の士気も上がっている。


「これで終わりよ!自爆ドローン全方位から突撃!!TNTのダメージでもう速くは動けないはずよ!」


一斉にベルガンに向かって急降下するドローン群。


ーー勝った。


そう思った、その時。


「自爆ドローン命中!!いや、何だあれは?」


仲原が想定外の出来事にすぐに気づく。


「白い球体が、UFBの王を覆っています。まるで卵の殻のようです。自爆ドローンの爆風でも破壊不能。こちらの残機も減ってきました!」


仲原は指示を出す


「大丈夫!奥の手ってことでしょ!ここまで使わなかったということは、何か弱点があるのよ!ありったけの自爆ドローンで押し切って!」



次々とサーチのシールドに自爆ドローンが衝突する。


「駄目です!残機10%!ダメージ確認できず!」


「隊長!ロングレンジレールガンを再度使います!」


「座標を送れ!レールガンで焼き払う!」


通信兵が急いでドローン部隊から回収した座標情報をロングレンジレールガンに送る。


ーー先頭車両が残っていれば、自動でロックオンできたのに!


焦る仲原に無線が入る。


「UFBが上昇しています。現在は高度150」


「そんな!翼は確実に痛めたはず。回復した?」


「逃がさないで!残りのドローン全機攻撃!」


「UFBは離れていきます!どんどん加速中。近距離用の自爆ドローンでは爆薬が重すぎて追いつけません!」


仲原はそれでも引かない!


「戦車部隊、対地対空車両前進!移動射撃!撃ち落とせ!」


そこへ足立が割って入る


「足立だ!全軍追撃中止!」


「なぜですか!あと少しですよ!」


「あの状態から上昇した上に、あの速度で飛行している。想定を超えた状態だ。深追いは厳禁だぞ!落ち着け!」


そういうと、すぐに内閣の防衛省司令部に無線を取る


「大仲大臣。足立です。不測の事態が発生し、王を取り逃がしました。しかし、周辺のUFBは全滅。再度私有シェルターの救出を再開可能な状況です。ご判断を」


大仲からの返答は早かった。

2025年10月5日日曜日

友達の妹が俺にだけウザい(新)

 <あらすじ>

馴れ合い不要、彼女不要、青春のすべてを“非効率”として切り捨てる高校生・大星明照。

そんな彼の家には、なぜか親友の妹・小日向彩羽が入り浸っている。

ハイテンションな“ウザかわ女子”彩羽に日々振り回される中、塩対応の美少女・真白も現れ――?

思春期のど真ん中、ウザくて可愛い青春ラブコメディが幕を開ける!


<レビュー>

本作は、鈍感系の主人公・明照と、奔放なヒロインたちによる王道ラブコメ作品です。

1話を視聴した限りでは、作画の安定感が高く、ヒロインの描写には特に力が入っている印象を受けました。表情の変化や構図に工夫が見られ、視覚的にも楽しめるアニメに仕上がっています。


構成としては、主人公とヒロインの軽快な掛け合い(いちゃいちゃパート)と、物語を進行させる若干シリアスなパートが交互に展開される構成で、視聴者を飽きさせない工夫がされています。


また、メインヒロイン2人に加え、今後登場すると思われる複数のサブヒロインを含むハーレム構成となっており、ラブコメファンには刺さりやすい内容です。


このジャンルにありがちな「ご都合主義」や「唐突なイベント」もなく、全体的に設定が丁寧に構築されており、シナリオに説得力があるのも魅力だと感じました。


キャラクターの描き分けも的確で、髪型や髪色、話し方などの記号的要素をうまく活かし、登場人物の個性が一目で把握できる構成になっています。作画自体は比較的シンプルなスタイルですが、演出の工夫によって視認性と没入感を両立させているのは好印象です。


まだ第1話のみの視聴ですが、主人公の内面には「ただのハーレム系主人公」では終わらない要素もありそうで、今後の成長やシリアスな側面の掘り下げにも期待が持てそうです。


2025年10月2日木曜日

青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない(終)

 <あらすじ>

「驚いた。わたしのこと見えてるんだ」

どこかで聞いたような台詞。思春期症候群を“プレゼントしている”と語るミニスカサンタは、咲太に告げる。

「……わたしはね、霧島透子って言うの」

SNSで流行する予知夢、正体不明のネットシンガー、ポルターガイスト……

謎めいた現象とともに、心揺れる少女たちとの不可思議な物語が再び始まる。

思春期は、まだ終わらない――


<レビュー>

『青春ブタ野郎』シリーズ第2期がついに完結しました。

全体としては楽しめましたが、個人的には第1期ほどの完成度や感動には届かなかったというのが正直な感想です。


とくに、本作のもう一人のヒロイン「霧島透子」の正体が映画に持ち越しとなった点は賛否分かれると思います。

こうした構成は「続きが気になる」余韻を生む反面、視聴者に対する不親切さや商業的な引き延ばしと受け取られる可能性もあります。


■ それぞれの編の感想と違和感

今期は4人のヒロイン編で構成されていましたが、どれも設定や結末にややモヤっと感が残りました。


卯月編:思春期症候群が「空気を読めるようになる」という成長の一環のようなもので、解決しなくても良いのでは?と感じました。


赤城編:パラレルワールドの自分と入れ替わる設定は面白いですが、「体に落書きできる」仕組みの説明が不十分。


姫路編:恋愛感情が引き金で「相手のことを覗き見られる」設定はロジックの接点が薄く、ややこじつけ感あり。


寧々編:人格が変化したはずなのに、福山拓海と少し話しただけで一気に解決してしまい、描写の省略が気になりました。


■ 映画館への誘導構成と個人的考察


最終的に「霧島透子の正体は映画で」という構成になりました。

私自身はこのように視聴者の時間や興味を引き延ばすようなマネタイズ手法には疑問を感じます。


とはいえ、ここで少し考察を――

私の推測では、霧島透子の正体は「美東美織」ではないかと思います。理由は以下のとおりです:


作中で思春期症候群にかかっていない唯一の登場キャラ


寧々が「誰からも認識されない状態」だったにもかかわらず、美東だけは彼女を認識できていた


PVに登場する透子の髪色・前髪の形状が美東と酷似


不必要なキャラを何度も登場させないという作劇の原則から、彼女の存在は何らかの意味を持っているはず


思春期症候群がSNSや人間関係にまつわるものであることを踏まえると、彼女にも何か心の傷や願望がありそうです。


■ 総評


2期全体としては作画・演出・キャラクターの描き方において高い水準を保ち、「日常に潜む不思議」と「思春期の心の葛藤」を描くシリーズとしての魅力は健在でした。


ただ、終盤で重要な謎を映画へと持ち越すことで、作品単体としての「完結感」にやや欠ける部分があったのも事実です。


私としては映画には行かない予定ですが、本作の良さは確かにあり、シリーズ全体として見れば心に残る作品でした。



2025年9月30日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑯ 大規模攻勢_8》

足立《あだち》昭介《しょうすけ》率いる「R連隊」は急速に接近するUFB特殊個体に対処すべく、散会陣形で待ち受けていた。


副長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐はこの短い期間でも、できる限りの情報を集めようと複数のドローンを使い、その挙動を分析した。


「足立隊長。特殊個体の速度ですが水平飛行で時速80kmです」


足立が報告を聞き、仲原に目線を向ける。


「はい。どうやら我々を見失ったようです。先ほどの熱線で破損した戦車の黒煙も視界を遮っています」


「仲原、後方のロングレンジ・レールガンに座標を送れるか?」


「可能です。特殊弾で焼き払いますか?」


「手札としては持っておこう。だが、UFBの王の武器は熱線だ。当然自身の耐熱性能も高いと見よう」


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


同時刻 ベルガンの視点


ーーチッ。味方の損耗が早くファイアバレットの出力は40%といったところか。

ーーどこまで破壊できた?


ベルガンは眼下に映る自衛隊の兵器の残骸を眺めつつ、残敵を探していた。


しばらくすると、ふと残骸が途切れる。


ーーここまでか。全滅させたのか?

ーーいや、それにしては綺麗すぎる。半壊車両の一つもないなんてことはあり得るのか?ここまで距離が離れればファイアバレットの威力も相当低下しているはず。


ベルガンがあたりを見回していると、1機のドローンを発見する。


ーーまた羽虫か。


しかし、驚くことにその羽虫はベルガンに語り掛けてきた。


「私に敵意はない。私は自衛隊R連隊隊長、足立である。なぜ我々を攻撃する。話し合う余地はないのか?」


ーーほう。この羽虫が人間どもの隊長か。


ベルガンは羽虫に近寄ると答える。


「貴様らに名乗る名はない。貴様らを攻撃する理由だと?目障りだからだ。虫ケラごときが私と話し合うなど思いあがるな!」


そういうと、高速回し蹴りでドローンを破壊してしまう。


3秒間ほど、ドローンが落下する音だけがその場を支配した。


だが次の瞬間、瓦礫の陰から自衛隊の攻撃が始まった。


「ドドドドン」


ベルガンの背中に数発命中する。


その衝撃で体勢を崩すベルガンに、別の方角から再び攻撃が降りかかる。


ベルガンの体は戦車よりも硬い皮膚に覆われている。だが、対戦車を想定した弾丸の直撃は、一定のダメージをベルガンに与える。


数発被弾したベルガンは、素早く上昇すると攻撃の発射地点を探しだす。


「そこか!」


急降下で自衛隊車両を襲うベルガン。その強襲速度は通常の滑空ではない。エーテルを推進力に変換した超高速滑空である。


ベルガンはその勢いのまま自衛隊の兵器の外装を突き破る。


生き残った隊員が武器を持ち銃口を向けるが、ベルガンを捉えることなどできようもない。銃を構えた瞬間に首をはねられ視界が回転し、落下する。


通常のガーゴイルでも近接戦では自衛隊を圧倒する。これがベルガンとなれば一方的な蹂躙《じゅうりん》。狙われた車両は確実に乗員ともども破壊されていく。


だが自衛隊側も車両を遮蔽物に隠したり、バルーンダミーという車両型の風船を使ってベルガンをかく乱する。


ベルガンは自衛隊の兵器に接近する必要がある以上、ある程度の行動を予測されてしまう。1発のダメージは少ないものの、何度も被弾しているとベルガンにも変化が起こる。


それは偶然の一撃から始まった。10台以上の自衛隊の兵器を破壊したベルガンが索敵のために高度を上げた。


その時、側面から自爆型ドローンがベルガンの翼に直撃する。自爆型ドローンが装備しているのは例の高熱反応を起こす特殊弾である。


直撃を受けた翼には亀裂が走り一部が溶け、ベルガンの機動性を奪った。被弾した左翼が思うように動かないベルガンだったが、それでも自衛隊への攻撃には支障はなかった。


「いてええなあ!おい!万倍にして返してやるよ!」


そう吠えると、ベルガンは次々と自衛隊の兵器を狙う。


やがて変化が起こる。攻撃が左側からばかり狙われるようになったのだ。ダメージを受けた左翼は、ベルガンの左側への旋回能力を制限する。


制限されると、軌道が大きくなり被弾する弾薬も増えていった。


また煙幕を巧みに利用され、左側の視界も封じられた。


「くそがあああ!こんなものを何度当てようと、俺様は止まらねえぞ!隠れているヤツラ全てを破壊するからなぁ!」


そういうと、なんとか接近した自衛隊の戦車を軽々と破壊し、再び上昇する。


再び、左側から幾重もの自衛隊の弾薬が飛んでくる。さすがのベルガンも学習し、さらに高度を上げてこれをかわす。


しかし、その行動は自衛隊に読まれていた。


左側にばかり気を取られていたベルガンの右側に、あの自爆型ドローンが炸裂する。


「ぐあああああ」


思わず声が出る。


もちろん致命的なダメージは受けない。だが、両翼を失ったベルガンは旋回するように高度を落とし、地面へ落とされてしまう。


そこへあの「灼熱の雨」が再び降りかかる。ベルガンは機動力を活かし、すかさず自衛隊と距離をとり被弾を回避した。


だが、距離を取ったことで、戦車の主砲がベルガンを捉える。


「ズゥゥン」


重たい炸裂音は、ベルガンへのダメージを物語る。


「くそぉぉぉぉ!」


大地を蹴り、灼熱の雨を迂回して迫るベルガン。捉えたと思った瞬間、戦車は仕込まれていたTNT火薬によって自爆。


爆風と瓦礫がベルガンにさらなるダメージを与える。


それでもベルガンは止まらない。弾丸の角度から敵を割り出し1つ、また1つと自衛隊車両を破壊していく。


だが、それも長くは続かなかった。


埼玉シェルターに待機していた、数百の自爆ドローンがベルガンに対して攻撃を始めた。


翼を傷め、飛べないベルガンは辛うじて直撃は避けるがダメージは避けられない。これまで蓄積したダメージと合わせ、ベルガンの機動力と体力を確実に削っていた。


頭上からのドローンの自爆攻撃を避け、何とか距離を取ったベルガンだったが、そこには1台の破損した装甲車が置かれていた。


ドローンの追跡を逃れるため、この装甲車を盾にすべくベルガンが接近すると、その装甲車には大量のTNT爆薬が隠されており、自爆ドローンの攻撃で誘爆。


ベルガンは片足を失うほどのダメージを受け、地面にひれ伏した。


そしてベルガンが見たものは、20~30の自爆ドローンが自身に直進してくる光景だった。

この数の直撃には耐えられない。ベルガンは天に吠えた。

2025年9月29日月曜日

その着せ替え人形は恋をする Season 2 (終)

 <あらすじ>

ある日の出会いをきっかけに、コスプレを通して交流を深めていく喜多川海夢(まりん)と五条新菜(わかな)。

まだまだやりたいコスプレ、作りたい衣装はたくさん。

クラスメイトたちとの交流や、新たなコスプレ仲間との出会いを通じて、ふたりの世界はさらに広がっていく──。


<レビュー>

『その着せ替え人形は恋をする』Season 2は、コスプレを主軸にしながら、主人公とヒロインの恋愛要素を織り交ぜたラブコメ作品です。

恋愛の進展自体はスローペースですが、それゆえにコスプレに興味のある視聴者にとっては、リアリティある描写や知識の深さが非常に魅力的でした。


■ コスプレ描写のリアルさと広がり

衣装制作、撮影、スタジオの種類、用語解説など、初心者でもわかりやすい構成が随所に見られました。

中でも、カメラやレンズの取り扱い、ポージングの工夫などを説明するパートは、単なるアニメの枠を超えて“知識コンテンツ”としても楽しめました。


撮影機材に実在するメーカー名が登場するなど、現実の企業とのタイアップが推察されます。

マネタイズの手法として、こうした“作品との親和性が高い広告”は非常に上手な例だと感じました。


■ クライマックスの演出とやや惜しい点

とはいえ、最終回のクライマックスシーンにおいて、特定メーカーのロゴが映し出されていた点は少し引っかかりました。

ヒロイン・海夢が、1期からの思い出をフラッシュバックする感動的な場面だっただけに、商業的な意図が前面に出ることで感情の波から少し離脱してしまった印象です。


ただし、これは作品全体を損なうほどではなく、他の要素が非常に丁寧に作り込まれていたことで十分に帳消しにできる範囲でした。


■ 作画・キャラクター描き分けの工夫

本作はコスプレ描写が多く、髪型や衣装が頻繁に変わるため、記号的なデザインでのキャラ識別が難しい作品でもありました。

それを補うように、所作や表情、表現のトーンなどでキャラクターを描き分け、さらに「このコスプレは誰がしているのか」というテロップまで表示されるなど、視聴者の理解をサポートする細やかな配慮が印象的でした。


■ 総評

恋愛・ファッション・創作が交差する良作。最初から見直したくなる完成度でした。