<あらすじ>
ここは乙女ゲーム「銀の聖女と五つの誓い」の中――。世界を救うはずのヒロイン(聖女)のメロディは、なぜか能力をすべてメイド業務に捧げ、完全無欠のオールワークスメイドへと変貌を遂げていた!
メロディの主人・ルシアナは教室を荒らした犯人だと疑われ、落ち込むルシアナを励ますメロディたち。攻略対象たちはゲームとは異なる性格で、まるで攻略済みのような様子……。さらにルシアナは、アンネマリーに水をかけたという身に覚えのない罪で、生徒たちから糾弾されてしまう。
<レビュー>
無自覚聖女系+お仕事ファンタジーです。序盤はメイド要素が強く出ていた本作ですが、徐々に物語の中心は「本来のゲームシナリオと、現在の世界とのギャップ」へ移っていきます。
そのギャップを生み出している最大の原因もメロディです。視聴者は早い段階からそのことを知っていますが、作中人物の多くは知りません。そのため、登場人物たちが「なぜゲームと違うのか」と真剣に悩んでいる横で、視聴者だけは「だいたいメロディのせい」と分かっている。この構図が、本作全体の面白さを支えています。
後半に入り、ゲームシナリオそのものが前面に出てくると、今度はルシアナに物語の焦点が当たります。本来のゲームでは「嫉妬の魔女」になり、ヒロインを陥れる側だったルシアナが、メロディのチート級のバックアップによって幸せな環境を手に入れ、今度は自分自身がヒロインのような立ち位置になっているのです。
この構成は個人的にとても新鮮でした。作品そのものの主人公は、間違いなくメロディです。タイトルにも登場し、彼女の行動によって世界そのものが変わっていきます。しかし、学園で進行しているゲームシナリオの主人公を担っているのはルシアナです。事件に巻き込まれ、濡れ衣を着せられ、少しずつ魔術を覚えながら成長していく。よくあるW主演とも少し違う、「作品の主人公はメロディ、劇中シナリオの主人公はルシアナ」という関係になっています。
この二重シナリオがバランスよく並走しているため、ゲームシナリオの行方も気になれば、メロディの活躍も気になります。しかも二つは独立しているわけではなく、メロディの行動がルシアナ側のシナリオを次々と変えていく。普通の聖女系とは少し違った、本作独自の魅力だと思います。
時折見せるメロディの圧倒的な強さも、相変わらず本人は無自覚のままです。物語の要所ではメイド同士の交流も描かれ、主人の評判が仕えるメイドの評価にも影響するといった描写もあります。学園シナリオが中心になっても、世界観としての「メイド成分」はきちんと残っています。このあたりにも、二重シナリオを破綻させず進める作者の世界観づくりと構成力を感じます。
一つ惜しいところを挙げるなら、「メイドという職業そのもの」にフォーカスした描写は序盤に比べると少なくなりました。中盤以降は、メイド業務そのものを詳しく描くというより、メイドという立場から主人や事件、人間関係へ関わっていく方向が強くなっています。そのため、かなりニッチだとは思いますが、「メイドという職業そのものを詳しく知りたい」という層への訴求は序盤より少なめです。
ただ、これは必要な取捨選択でもあると思います。現在でもメロディ側のメイド物語と、ルシアナ側のゲームシナリオという二本を走らせています。そこへさらにメイドの詳しい仕事内容や苦労まで詰め込めば、1クールでは収まりきらず、現在の絶妙なバランスを崩してしまいそうです。
作画も安定しており、登場人物のビジュアルも良いです。聖女系作品が好きな人にはおすすめしやすい作品ですし、視聴する際にはぜひ、メロディ自身の活躍だけでなく、「作品の主人公」と「劇中シナリオの主人公」が分かれている、この二重構造にも注目して楽しんでみてほしいです。
