2026年2月10日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑥》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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池袋に取り残されたタラメア合衆国の最新鋭兵器、YY-24とDD-24の残骸。この残骸は国家機密の塊であることからタラメアのリーク大佐は回収もしくは破壊を計画した。


彼のいる空母『クシャルボコス』には急遽招集された核弾頭や上陸部隊を乗せた輸送艦が合流したのであった。


合流した輸送艦とドッキングしつつ、リーク大佐は無線を取った。空母は太平洋上に展開しているためエーテルの影響を受けず、日本の内閣に対してホットラインを使用できた。


リーク大佐は大仲防衛大臣に、無線を繋ぐと一方的に語りだす。


「災害に見舞われし、同盟国の友人よ。我々タラメア合衆国は同盟国として、これよりUFBへの攻撃を行う。ポイントは池袋エリア。なお、現在池袋エリアには電子妨害が発生している。少しでも効果を上げるためにクラスター弾頭のミサイル攻撃を実施する。カウントは60分だ。我々の誠意だ、手出し無用で静観されよ」


この無線を聞いた大仲は即座に中止を申し入れようとする。だが、それを制したのは意外にも篠原だった。


「大臣。やらせましょう」


大仲の怒りの矛先が篠原にも容赦なく牙をむく。


「クラスター爆弾だぞ!無差別に広範囲を爆撃する兵器だぞ!もし私有シェルター民に生き残りがいたらどうする!見殺しか!!」


篠原は冷たい視線で大仲に言葉のナイフを向ける。


「見殺し?すでに見殺しでしょう?R連隊には救出作戦を実行する兵力はもうない。助けなければいずれ飢えて死ぬ。でも助けることはもうできない。これを見殺しと言いませんか?」


返す言葉のない正論に否定の言葉だけが先に出る


「だがーー」


しかし、続かない。喉元に突き立てられたナイフは急所を捕らえていた。篠原は言葉を差し込む。


「クラスター爆弾は面白い実験です。爆弾自体は非常にシンプル。電子機器は殆どありません。しかしミサイルは電子機器による誘導です。タラメアも電子妨害は把握しているはず。ということは太平洋から成層圏にミサイルを打ち上げて誘導が切れても近くに着弾するような”半誘導方式”にするはずです。これが有効なのか。費用は向こう持ちで実験できるのです」


実験。しかしそこに民間人が残っているかも知れない。大仲は時計を見つめながら篠原の言葉と信念を秤にかける。


ーーやはりだめだ。


残り1分。出た結論は中止要請だった。無線を取ろうとするとR連隊の駐屯基地から連絡が入る


「太平洋から高速で接近する飛翔体4!」


「馬鹿な!」


タラメアが先走った。そう思った瞬間、とぼけた声の篠原が一言。


「そういえば、あの時計よく遅れるんですよ。ふふふ。」


思わず篠原の服を掴む大仲。だが篠原は動揺すらしていない。


「大丈夫ですよ大臣。多分失敗します」


その言葉は、気休めではなかった。


数分後、飛翔体は爆発することなく地面に落下し「ボン」と小さく音を上げて瓦礫になった。


篠原は超望遠ドローンでその様子を観察して2つの言葉を発した。


1つ目は爆発しない理由


「今の池袋は電子妨害なんてレベルではないのです。実は私もドローンで色々と試したのですがR連隊が交戦した時よりもずっと妨害濃度が濃い。そこで気づきました。電気です。あのエリアでは電圧や電流と言った法則が全く通用しないのです。つまり、ミサイルを飛ばしてもクラスターを切り離すための最低限の電子回路すら動かない。そういうことです」


2つ目は意外な予言だった。


「この戦況、最終的には海戦になるでしょう。予備兵器『263番』を使うことになります。実戦配備の準備をしてください」


大仲は1つだけ確認した。


「263番。海上自衛隊の中でも古くから予備兵器として維持されてきた鉄くず艦。あれを持ちだすということはクシャルボコスを沈めるつもりか?」


篠原は何も答えなかった。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


翌日 千葉県舞浜にタラメアの揚陸艦が接舷し10組のYA-24とDD-24が姿を現した。


指揮はリーク大佐。補佐官にあの髭の長い高官も同行していた。


「兵よ聞け!これより、軍事作戦を開始する。自衛隊には黙認するよう指示をした。存分に怪物退治を楽しんでくれ!池袋ポイントに入り次第、政治家のケツを拭いて撤収する!」


YA-24とDD-24は光ケーブルで接続されている。光ケーブルさらに伸び、後方の揚陸艦へ。揚陸艦を中継し軍事衛星と通信ができる洋上のフリゲート艦とつながっていた。


「電子妨害が発生した場合に備え、有線接続に切り替えてある。本国の中枢AIにはR連隊から奪ったUFBのデータも入力済みだ!だが、レーダーが聞かない以上、目視による索敵だ!気を抜くな!」


髭の高官が、状況を共有しつつ士気を高める。



千葉県から東京に入ると、最初のUFBの群れ数十と交戦に入る。現場のデータが光ケーブルを通じ即座に中枢AIで処理をされYA-24とDD-24は最適な迎撃行動をとっていく。


兵士の一人が呟いた。


「これがYA-24とDD-24のリンク戦術…。こんなの、俺たち兵士は必要なのか?YA-24が発砲しその座標に吸い込まれるようにUFBが移動して命中する。瓦礫から飛び上がったUFBがコンマ1秒でDD-24の機銃で霧散する。まるで未来が見えているようだ」


隣の兵士も驚いた様子で


「有線ドローン、各車両の配置、射角で完全に相手を制御している。一定の射程に入った化け物は確実に仕留める。AIと戦争したらこうなるわけだ。恐ろしい光景だ」


そんな状況でリーク大佐だけは浮かない表情だった。


「確かに防衛エリアへの侵入は排除できている。だが、なんだこの違和感は?AIが一瞬再計算をしているような違和感。なんだこの気持ちの悪い感覚は?」


それは篠原が情報に混ぜた毒の効果である。膨大なデータの中に偽の情報を混入させたことで、予測と違う動きが発生しAIが再計算をしていたのだった。この僅かなストレスが最新兵器の能力を少しずつ蝕んでいた。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同時刻、神の居城デスランド


ベルガンが神にタラメアの対応を尋ねていた。


神は楽しそうに答える。


「この前と同じ玩具か。よし、今度はエーテルを下げず、このまま誘い込み戦ってみよ、ただし一般の兵だけだ。ベルガン、サーチ、ヴァロンの参加は認めない」


このような「遊び感覚」に敏感なヴァロンだが、反応は予想外であった。


「分かりました。エーテルが十分な濃度であれば、問題ないでしょう。ご存分に」


そういうと、ヴァロンは自分の執務室に戻っていった。


神は自分の能力で進軍してくるタラメア軍とガーゴイルの戦いを興味深そうに観察していた。

2026年2月8日日曜日

推しの子(3期)(新)

<あらすじ>

MEMちょの尽力の甲斐もあり、今やB小町はブレイク寸前。

アクアはマルチタレント、あかねは実力派女優の道を順調に歩んでいる。

一方で、かなは以前の明るさを失っていた。

そして、アイとゴローの死の真相を追い求め、ルビーは芸能界を駆け上がる。


<レビュー>

大人気作『推しの子』の第3期です。第2期からの続きのため導入はほとんどなく、早い段階で本題へ入っていきます。

第2期が「舞台」を中心に展開していたのに対し、今回は「テレビ業界」を軸に描かれているのが特徴です。


テレビ局の傲慢さを、テレビ局が流す地上波アニメで扱うという構図は、なかなか見ない題材です。

自虐ネタにも見えますが、一方で制作の現場事情を補足する描写にかなり尺を割いており、アニメ化に伴うテレビ局への配慮も感じられる作りでした。


また、傲慢に見えるプロデューサーも、周囲から「あの人はもうだめだ」と評される一方で、「作る番組は面白い」「ミスは認める。すべては俺の責任だ」といった面も描かれます。

完全な悪として断罪するのではなく、性根は悪くない昭和のテレビマンのような造形に寄せている印象です。


個人的には、この“配慮”が本当に配慮なのか、それともあえて分かりやすく配慮して見せる制作側の意図なのかが少し気になりました。つい裏を読んでしまい、そのこと自体も含めて楽しめています。


物語全体としてはB小町の活躍を描きつつ、作品の中心へ踏み込んでいく流れで、どちらかというとシリアス寄りです。

第1期の「アイドルの妊娠」「転生」「前世の記憶による天才子役化」といった強いファンタジーのフックから、リアル寄りの推理サスペンスへ比重が移っているため、間口はやや狭くなりました。

ただ、そのぶんファンには深く刺さる内容になっていると思います。


本作は日本だけでなく海外でも第1期の時点で相当な視聴者を獲得しているだけに、「みんなに好かれる」方向へ寄せるより、「視聴者が楽しめる」方へ軸足を置く判断は良いと思いました。

原作はすでに完結しており、多くの読者が結末を知っている状況です。新規の間口を無理に広げるより、すでにファン化している視聴者を強く引き込む方が、作品としても商業的にも、IPとしての伸ばし方として筋が通っていると感じます。


今期もクオリティの高い作品ですので、ご興味があれば配信や書籍で追いかけて、ぜひ一緒に視聴したい一本です。



2026年2月5日木曜日

幼馴染とはラブコメにならない(新)

<あらすじ>

高校1年生のえーゆーには悩みの種がある。幼馴染の「しお」と「あかり」が可愛すぎるのだ。

しかし、えーゆーは幼馴染の二人の気持ちが分からず、距離感に戸惑う。

だが一方、幼馴染の2人はえーゆーのことが……!?

<レビュー>

ギャグと叡智要素に比重を置いたラブコメ作品です。全話ではありませんが、過激なエピソードには「オンエア版」と「プチドキ版」が用意されています。「プチドキ版」はdアニメストアかAnimeFestaで視聴可能です。


過激バージョンがある作品ではありますが、オンエア版でもかなり攻めている印象です。1話の中に複数の短いエピソードを詰め込む形式で、どのエピソードも着地となる場面に向けて割り切って組み立てられているように感じました。そのため、多少のご都合主義も積極的に使って押し切るスタイルです。


誤解がないように補足すると、シナリオが雑というわけではありませんし、面白さがないわけでもありません。作品の軸が叡智寄りに置かれているというだけで、この手の作品としてはキャラクターや物語も比較的よく整っていると思います。叡智シーンに尺を割くぶん、他のパートはテンポよくエピソードが始まって着地し、次へ進む流れが繰り返されます。深みは強くありませんが、娯楽としての回転の良さはかなり優秀です。


登場人物も記号化がはっきりしていて、複数のヒロインがそれぞれ立っています。そのおかげで似た流れが続いても飽きにくく、ギャグと叡智を純粋に楽しめるのが強みだと感じました。特に第1話は「プチドキ版」がない構成になっているため、導入で拒否感を持たれにくいような工夫も見えます。


とはいえ、オンエア版でも下着描写などは普通に出てきますので、視聴環境には気をつけた方がよさそうです。


個人的には、この程度の表現は昭和のアニメだと夕方の子ども向け作品にも混ざっていた記憶があります。そうした空気を思い出して、どこか懐かしい気持ちになりました。


割り切ったテンポとキャラ立ちで押し切るタイプの作品なので、刺さる人には迷いなく刺さる一本だと思います。




2026年2月3日火曜日

【軽い日記的なもの】休載のお知らせ

 本日は小説更新の日なのですが、小説の出来があまりよくなく休載という形に致します。


重いエピソードが続いたので、ちょっと日常回を書いてみたのですがビックリするほど虚無な文章になってしまいました。


筆が進まないとはまさにこれですね。本人が楽しく書いていないのと、そのエピソードの目的が日常というくくりでボヤ~っとしているのが原因だと分析しました。


どうにも足立×仲原のR連隊コンビの仲良しエピソードを書こうとすると、うまくいかないです。おそらくこの二人の未来を知っている(考えてある)ので、その間の日常を作者的に書きにくいというのもあると思います。


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なぜに日常を書こうとしたかというと、本編の流れもありますが、Nサークルで「あいさん」と「もこもこさん」の妄想を聞いてゲームのシナリオを書いた影響があります。

ものすごい願望を良い意味で楽しそうにぶつけてくるので、こんなシチュエーションにして、こうして、ああして、あれもいい!みたいな漏れ出るアイディア(願望)の渦に物語に出来ないのが不思議でなりませんでした。


そしてとても私も楽しく執筆出来ました。この経験を日常回という形で活用しようとした結果、本当に何もない虚無な文章になってしまったわけす。

それでは次回は、木曜日にまたお会いしましょう。


2026年2月1日日曜日

聖女なのに国を追い出されたので、崩壊寸前の隣国へ来ました シーズン2(新)

 <あらすじ>

理不尽な理由で母国から追放され、隣国の国王に助けられた聖女リーシャ。

崩壊寸前だった隣国をリーシャは聖なる力で復興させ、国王ラオウハルトとも良い関係を築き上げていきます。

人気コミックをそのまま映像化させた、通称「アニコミ」のシーズン2です。


<レビュー>

漫画を動画として見せる形式のアニメで、低予算制作の突き詰めた形にも見える作品の第2期です。シナリオ自体は面白いので個人的にはうれしいのですが、この作風で地上波の第2期が成立していることには、少し複雑な気持ちもあります。


映像はかなり動きを付けていますが、基本は漫画のコマ割りをアップにし、目パチや口パク、髪の動きなどを足して見せる作りです。感触としては、かつてのFlashアニメに近い部分があります。


ただ第2期では、この「アニコミ」手法に磨きがかかった印象でした。漫画を加工して見せるという土台は変わりませんが、動きが自然になり、コマ枠を取り払う場面を挟むことで、アニメらしい空間の広がりも意識されているように感じます。


吹き出しのセリフも声優の演技に合わせて表示されるため、ネット上の縦読み漫画や、ただ少し動く漫画とは一線を画す作り込みになっています。見慣れてくると違和感も薄れ、シナリオの面白さも相まって想像以上に没入できました。


シナリオ面では、第1期で追放から新天地での成功までを描き切っているぶん、やや後日談の雰囲気もあります。とはいえ、聖女として元の国で冷遇されていた理由の掘り下げや、新天地で進む国王とのラブストーリーなど、追放系の骨格に要素が積み増され、面白さの層が厚くなっていると思います。


アニメ的な作画のリッチさではなく、漫画的な視覚効果と限定的な動き、そしてシナリオと声優の演技でエンターテインメントを追求する姿勢は、シナリオライター目線でも非常に興味深いです。




2026年1月29日木曜日

アンドロイドは経験人数に入りますか??(新)

<あらすじ>

『あたしの人生、終わりかも……』

大手電機メーカーで働く”津田あかね(28)”がうっかり酔った勢いで購入してしまったのは、

所持しているだけで重罪確定!?

違法製造された大人用ロマンスロイドの”撫子”だった!?

<レビュー>

今期のいわゆる叡智枠です。この手の作品は、地上波版がいわばお試しで、実質的な本編は配信の規制緩和版に置かれていることが多い印象があります。地上波での表現制限を前提にシーンを組み立て、より踏み込んだ内容は配信へ、という流れが分かりやすいタイプです。


配信版にも「地上波準拠」と「規制緩和版」が用意されている場合がありますので、視聴前に公式サイトで、配信サイトごとの取り扱いを確認しておくと安心だと思います。


内容は、仕事で疲れ果てた主人公が、女性型のアンドロイドを買ってしまうところから始まります。違法品なので捨てるにも捨てられず、しかも用途が用途だけに他人にも相談もしにくい。見た目は妙にリアルで、距離感も近く、常に好意的な反応を返してくるため、主人公の方が徐々に情が移ってしまい、結果的に同居するような形になっていきます。


叡智枠という前提は置いておいても、この導入には妙な納得感がありました。アンドロイドは大枠では電化製品であるにもかかわらず、仕草や振る舞いを人間が好ましいと感じる形に寄せることで、もともと機械に抵抗感のある人でも、比較的受け入れやすくなる。そういう心理の入口を、分かりやすい形で見せているように感じます。


シナリオはご都合主義寄りで、作画も突出しているわけではありません。ただ、叡智枠として見るなら十分に水準を満たしていると思います。昔の叡智枠にあった、極端な低予算感だけで押し切るタイプとは違い、最近は通常アニメに近い見栄えを保ちつつ、見せ場にだけ妙に力が入る作品も増えてきました。本作も、その流れにある一本だと感じました。


一方で、題材的にどうしても視聴者を選ぶのは確かです。まずは地上波のお試し版で雰囲気を掴み、興味が湧いたら配信版を選ぶ、という入り方が一番安全だと思います。


叡智枠としての分かりやすさに加えて、アンドロイドが生活に入り込む心理の描き方が意外と面白い作品です。合う合わないは分かれますが、刺さる人にはきちんと刺さるタイプだと思います。



2026年1月27日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑤》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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リーク大佐が太平洋上の空母『クシャルボコス』へ帰還した翌日、埼玉県内の地下会議室で「会食」が開かれた。


出席者は大仲大臣、津田議員をはじめとする各省庁の大臣と与野党の大物政治家。そしてR連隊の隊長足立、副隊長仲原、さらにリモート参加としてUFB研究所室長の篠原である。


リーク大佐を除く、タラメアの使節団が国会に滞在している。


そのため、本会議で議論できない「対タラメア外交」について話し合うためにセッティングされた会食であった。


冒頭、大仲大臣が料理も待たずに状況を説明する。


「みなさま、急な招集にご賛同いただき、ありがとうございます。舞岡議員や同盟国使節団の耳に入らないよう、情報漏洩のリスクを最低限に抑える必要がありました。」


「さて、重要な情報です。先日、タラメアの最新鋭戦車YA-24および装甲車DD-24が、池袋周辺でUFBと交戦いたしました。結果はタラメア兵器の完敗です。YA-24は自爆、DD-24は炎上。搭乗員全員が死亡しました」


僅か1分程度の情報共有だったが、議員たちのざわめきは低く不安の渦を巻いているようだった。その状況で一人の議員が挙手をして質問を投げかけた。


「なぜ、タラメアの最新鋭戦車や装甲車が我が国に?R連隊の車両ですか?」


大仲は想定通りといった面持ちで返す。


「いえ、これは民間。大荻山氏所有とみられる兵器です。真実を聞こうにも、大荻山氏もこの戦闘で命を落とされております」


ここまで黙っていた津田議員は大荻山というキーワードで大筋の因果関係を読み取ると、議論を混沌から対策へと導き始める。


「大仲大臣。だとすれば、これは明らかに我が国へのタラメア側の内政干渉ですな。いや、権力を持った一個人に兵器を供与した。これはテロのほう助と言ってもいいでしょう。このカードをどう扱うおつもりか」


津田の一言で、議論の方向はカードの有効な使い道へ流れ始める。議員が乱雑に我先にと案を出し始める。


「このカードでタラメアに食料品を提供させましょう!」

「そんな安いカードではない!YA-24にDD-24を5台ずつ、無償供与を受けるべきです!」

「R連隊をタラメアの兵器と混成するのは危険です!ここは、この災害で住まいや家族を失った人々への支援金を要求すべきです!」

「いやいや、タラメアに東京のUFBを排除させましょう!それくらいは当然だ!」


そんな中、津田議員は大仲に意見を求めた。その眼光は鋭く大仲の防衛大臣としての資質を問うような深い探求にみちた眼差しだった。


「防衛大臣の立場としては、何かを要求すればタラメア国内での説明責任が発生します。つまり不問にすることを前提に何かを要求すれば矛盾が発生するのです。ですから私は、使節団の退去。および舞岡議員のタラメア訪問を要求したいと思います」


「がはははは」


場にそぐわない大きな笑い声の主は意外にも津田議員本人だった。


「使節団の退去。まぁそれが筋。というかこのカードの最良の使い方でしょう。私も同意見です。だが扱いが難しい「内通者」になっている舞岡議員を訪問という言葉で、国外に追放してしまうなんて、これは予想外だ。大仲大臣も人が悪い。がははは」


他の議員が恐る恐る質問をした。


「しかし、舞岡議員がタラメアで国家機密を売ったりしませんかね?」


その質問には大仲が答える。


「すでにタラメアを埼玉の臨時内閣本部に武装したまま滞在させています。彼が知る情報は全てタラメアに知られているとみていいでしょう。それに彼は例のマスコミへの情報流出以来、機密情報にはアクセスできません。彼の脳の価値はゼロだと見積もっています」


ご機嫌の津田が補足する。


「そうそう。今の舞岡議員の価値は我が国の内情を引き出すパイプ役。追放されてしまえばその機能も失うだろう。役にも立たない、成功実績もない、そんな議員を来賓として国費でもてなすタラメアのにがり顔が目に浮かぶようだ!がははは!」


騒然とした食事会だったが、料理が運ばれてくると次第に和やかになってくる。議員たちは大仲の考案した「使節団退去」と「舞岡追放」の話題で盛り上がった。この国は得はしないが、損もしない。だがタラメアは内通者を失い、無期限で内通者を自国で保護しなければならない。この皮肉が、緊張続きで疲弊していた議員の胸を撃ち抜いたのだ。


数分の間、会食の名にふさわしい楽し気な時間が流れた。


だが、その空気を断ち切ったのは、意外にもR連隊の隊長足立だった。


「議員の皆様、これはそういう問題ではないと思います。意見をよろしいでしょうか」


そう切り出すと、彼は自衛官としての視点から持論を語りだした。その内容は、自国の最新鋭兵器が他国で破壊された。これは戦略的にもっとも憂慮すべき事態であり。タラメアとしては残骸が自衛隊に回収されることを恐れるはず。といった内容だった。


だが議員たちには、真意は伝わらず軽くあしらわれてしまう。


「では、使節団の退去、舞岡の追放に加えて、怪物に破壊された自国の廃品回収もお願いしますかなぁ」


こんな具合で、議論にも発展しない。そこへ壁に投影されたプロジェクタから突然AI篠原が現れた。


マイクのハウリング音が「キィィィン」と鳴り響き、楽観ムードに水を差された議員の視線がAI篠原に集まる。


「篠原です。こちらの表をご覧ください。これは自衛隊の兵器の情報です」


そういうと、「耐衝撃性」「耐熱性」「耐貫通性」「重量」「薬剤耐性」など30項目もの詳細な情報が提示された。議員たちは突然細かい文字の羅列を提示され頭の数項目だけ読むと、面倒そうに篠原に意味を問う。


「これは自衛隊の戦車に使われている装甲「5cm角」の破片から導き出せる情報です。最新鋭機「2台分」の残骸となれば情報量は百倍を超えるでしょう」


この言葉に、津田が反論する。


「だが篠原君。外交とは信頼の積み重ねだ。リスクがあるからと言って対話を閉ざせば、それこそ戦端の口実を与えることになる。我々が誠意を見せれば、タラメアも引かざるを得ない。それが国際社会のルールではないかね?」


政治家として歴戦の猛者である津田の言葉に、数人の議員が無言でうなずき同意する。


「その理論には条件があります。それは自国に大きな損害がでなければ、という前提です。今回は違います。最新鋭機2台分の情報と国際社会のルールを天秤にかけているのです」


そういった、前提付きの政治交渉は数多く経験してきた。津田は慣れた表情で反論を重ねる。


「言いたいことは分かる。残骸は情報。タラメアに正しく返さなければ交渉は成立しない。そういいたいのだろう」


「違います。正しくも返してはなりません。兵器の価値は二つに分かれます。一つは純粋な性能。もう一つは秘匿性です。特に最新鋭兵器は「性能が分からない」ことにとても意味があるのです。1つの兵器が10の力なのか1000の力なのか曖昧にすることで、他国へのけん制になるのです」


「だから、正しく返せば秘匿性は守られる。よかろう?」


「いえ、秘匿性は守られません。正確には守られたことを証明できません。渡した残骸は本当に全部なのか?渡す前に解析したのでは?とタラメアに疑問を持たれた時点で秘匿性は下がり、兵器の価値が下がります。これは、タラメアの国家防衛にかかわる事態なのです。まだ分かりませんか?もし、正直に残骸を全て解析せずに渡したとしても、タラメアは信じない。秘匿性を守るために、関係した人物、施設は全て破壊してもおかしくはないのです。そこに例外はなく議員の皆様も標的になり得るのです」


この発言に言葉を返す議員は誰も居なかった。大仲だけは自身が自衛官出身でありながら永田町の思想に染まっていたことを認識し奥歯に力がこもる、そして即座に対抗策を考え始めていた。


だが、篠原の冷静な言葉は思考に大きな打撃を与えた。


「皆さん。99%タラメア軍が来ます。おそらく一週間以内でしょう」


凍り付いた空気が、事態の深刻さを物語っていた。