2026年3月24日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑪》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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リークと篠原の共闘作戦によって、デスランド周辺のUFBを一掃した戦艦「防雷」だったが、篠原はデスランドから次の部隊が現れると予測する。


その予測は的中した。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


2時間前 デスランド大広間。


ベルガン、サーチ、ヴァロンが神と相談をしている。もちろん議題は「防雷」の対応である。


神は上機嫌だった。


「みたかヴァロン。特殊個体を投入しなくても一般兵だけでタラメアの陸軍は敗走。余裕じゃないか」


ヴァロンはため息交じりに応じる。


「神よ。必然の結果です。あまり遊び過ぎないよう。やりすぎると大種族神様の目に触れてしまいます」


"大種族神"その名を出されて神は気分を損ねる。


「大丈夫だ。ルールの範囲で痛めつけているだけさ。それより次は……ほら、タラメアと日本の海戦が始まりそうだぞ!」


防雷の姿を神の力で映し出す。


すぐにベルガンがくらいつく。


「これは大きい。全身鋼の船。私が沈めてきましょう!今沈めてきましょう!」


勢いよく飛び出そうとするベルガンをサーチが引き留めようとした。だがその行動よりも先に神の声が響く。


「駄目だ!ベルガン!お前は今から始まる人間同士の醜い戦いを見学しろ!俺の楽しみを理解しろ!」


一段と深いため息。ヴァロンだ。


「それが人間の種族神のお言葉ですか…。ですがベルガンやめておけ。あの船はお前とは相性が悪い」


神がその言葉にさらに重ねる。


「エーテルの範囲内で、一般兵で対応する。それが今回のルールだ。何度も言わせるな!」


相性が悪いと言われ感情的になるものの、神から制止され立ち尽くすベルガンにサーチが目で膝をつけと合図する。


渋々膝をつき、神が投影した防雷を俯瞰で見るベルガン。タラメアの空母と防雷が戦えばベルガンが見てもタラメアは負ける。弾の撃てない機関銃など、原始的な斧にも劣る。


ベルガンはタラメアが負け、残った鋼の船を神の兵が倒す際には指揮官として名乗り出ようと考えていた。


停泊する防雷に気付かぬ空母は徐々に距離を詰め、ついには防雷の射程に入ってようやく減速した。


防雷から1機のグライダーが空母に向かって飛んでいく。


神から声が漏れる。


「さぁ始まるぞ!何としても機密を守りたいタラメアと、主権をかけて反撃する日本の海戦だ!!」


だが、見つめる先では一向に戦う気配はない。神は苛立ちながら考える。


ーーそうか。鋼の船を見て劣勢を察したのか。なかなかタラメアも優秀じゃないか。


神はデスランドの周辺を飛行していた一般兵に指示を出す。鋼の船を攻撃しろと。


ーー手助けしてやろう。さぁ戦え!!


不規則に飛行していたガーゴイル(一般兵)は、吸い寄せられるように一斉に防雷に向く。そして攻撃を始めた。すると防雷の対空機関砲も一斉に命がともり、迎撃を始めた。


ヴァロンが一言漏らす。


「対応が速すぎる」


これに神も同意する。


「ああ、あの船、我々が攻撃することを予測していたな。海上は割と手薄にしてやったはずだが勘のいい指揮官でもいるのか?」


だが神に焦りはない。千を越える一般兵の群れが黒い渦になり防雷へ波状攻撃を仕掛ける。この状態でタラメアに討たれれば貧弱な彼らの通常兵器でもラインを超える。神は板挟みになっている鋼の船に興味を惹かれる。


ーーさあどうする。沈むか?逃げるのか?いや、勘の良い指揮官だ。相打ちが最善だと気がつくかもしれないな。


同様にヴァロンもこの盤面の行く末に意識を奪われる。ベルガンに至っては目を輝かせ、強靭な火力で一般兵に対抗する防雷に見入っている。


サーチだけは、やや冷ややかに思考していた。


ーーどうしてこうも、争いごとが好きなのか……。あんな鋼の船は私とベルガンで連携すればすぐに沈むのに……


だが、その日常は、一瞬で壊れることになる。


タラメアの放ったミサイルは鋼の船の頭上を越え、神の居城デスランドの上空を目指したのだ。サーチはすぐに感じ取る。何か危険なものが降ってくる。


サーチはいち早く大広間を飛び出すと、シールドを展開しながら城を飛び出した。眼前には2本のミサイルが白い線を引いて飛来していた。高度が高い。


一気に加速上昇し上空にシールドの傘を開こうとした瞬間、側面に大きな衝撃が走る。


ーー撃たれた?


これを見たベルガンも我に返り広間を飛び出す。ヴァロンも神も止める間もなかった。


撃たれたサーチだが、エーテル濃度の濃いデスランド上空では無意識の方位であろうと、サーチのシールドは貫通しない。

だが、強い刺激臭がサーチを包み込む。さらに鋼の船から追撃の発砲音が響く。避ければ上空のミサイルが炸裂してしまう。サーチはシールドを全開にして迎え撃つ。


ーーこざかしい!人間!


防御に集中したサーチのシールドは固い。衝撃を受けることすらなく追撃の弾丸はシールドに弾かれる。


だが、その火花がまるで導火線のようにシールドをすり抜け、内部に侵入してきた。


ーーこれは可燃性のガス!


気づいた瞬間に爆発が起こる。固く閉じたシールドの内部で発生したガスの爆発は超高圧の高熱の刃となってサーチの肉体に制御不能なダメージを与えた。


サーチは全身を焼かれ、五感が失われていくのをスローモーションのように感じていた。聞き覚えのある声が聞こえるような気がした。


その声はベルガンのものだった。


ベルガンは重力に負けて落下するサーチを限界まで優しく受け止めると、すぐにデスランドへ引き返す。そして城の中に戻るとソファに寝かせ、僅かに残るサーチの息を確認する。


城の上空ではミサイルが炸裂し、灼熱の花が守備兵を溶かしていた。


ーー俺はなぜ。なぜいつもサーチを守れない!!!!!


ベルガンの心も烈火のごとく怒りに燃えた。


弓で引かれた一筋の弓矢のごとく、すさまじい速度で城を出ると鋼の船へ一直線に怒りの矛先を向ける。


神の咎めも問わない。自分の未熟さを全てこの船に叩きこみ、罰でも何でも受け止める。強い意志を持った特攻だった。


その特攻に防雷の対空機関砲は即座に反応する。


ヴァロンも我に返る。


「駄目だベルガン!読まれている!」


思わず神も声が出る。


「上昇しろ!!直撃するぞ!!」


神やヴァロンの声は聞こえていた。だが軌道は変わらない。ベルガンは直撃してもかまわない。サーチの痛みを少しでも分かりたい。そんな気持ちに支配され軌道を変えることなく速度を上げる。


視線の先には転進し後退する空母の姿。


ーー逃がすか!


視線を外した瞬間に防雷の対空機関砲が一斉に火を吹いた。重い衝撃が一気にベルガンの体力と速度を削る。まだブレスの範囲には遠い。むしろガードを崩す隙すら無い重い連撃に、ベルガンが回避を試みる。


無数の弾丸はベルガンの再加速を許さない。一呼吸、一拍でも隙があればこの程度の弾幕なら回避ができる。隙を待とうにもすさまじい速度でベルガンの体力は削られていく。


ーーうおおおお!!!


声を上げることすら許されぬ状況が、皮肉にもベルガンの理性を引き戻す。


ヴァロンの指示がエーテルを伝って聞こえてくる。


「10秒後に残存戦力を鋼の船に総動員する。その隙に戻れ!!」


長い10秒がベルガンの体力を容赦なく削っていく。


ーー持たない。


ベルガンの体が弛緩しかけたとき、弾幕が一瞬途切れた。ベルガンに加速の機会が訪れた。大きく息を吸い消耗した羽根を無理やり展開し、180度回転すると、左右に揺れるように城へ戻った。結果的に回避行動になっていたが、傷んだ翼がもたらした偶然だった。


城に戻ると、最後の力を振り絞ってサーチの部屋に戻る。飛び出したときに開けっ放しになっていた扉の前でベルガンの意識は途切れてしまう。


ヴァロンはベルガンの帰還を確認すると、神に参戦の許可を乞おうと視線を移す。


その目に入ったものは、先ほどまでの神ではない。神自身も戸惑うほどの怒りを帯びていた。


ーー許可の是非もない。


確信したヴァロンは、デスランド内にいた兵に召集をかける。


「招集だ!神に牙をむいた天罰をくれてやる!」


デスランド内には1500の兵が残っていた。もっとも、都内全域ではまだ数十万の兵もいる。だがこの戦力を使うことはヴァロンのプライドが許さなかった。


城の背面から一斉に兵が下りていく。降りた兵は半数に分かれ、片方は鋼の船の上空を旋回し、弾を浪費させる。もう一方は地上に降りると瓦礫を抱え上昇し、鋼の船めがけて上空から投げつけた。コンクリート塊は、一瞬で粉々に砕かれ鋼の船の火力を物語る。


それでも投石攻撃は続く。ヴァロンはじっと待っている。大きな船だが弾は無限ではない。そしてじっくりと観察する。僅かな砂の破片が、船の細かい隙間に入り込み、ほんの僅かに動きが鈍くなる様子を。熱を帯び、連射速度が落ちてくる状況を冷静に、蜘蛛が獲物を弱らせるように、確実に追い詰めていく。


そして違和感に気付く。


ーー鋼の船の指揮官は優秀だ。

ーーこの持久戦を想定していないはずがない。

ーーなぜ主砲まで対空防衛に回している?


その先に、篠原の存在を感じ、思考が流れ込んだ。


「囮だ」


ヴァロンは索敵を開始する。サーチを失い範囲は狭い。だがポイントを絞ればそれなりの情報は一般兵の目で集められる。


候補地をいくつか潰し、荒川に沿って索敵していると一斉射撃態勢に入っているロングレンジレールガンを発見する。

デスランドは浮遊しているが移動はしていない。狙いはこれだ。


すぐに射線上に兵を飛ばす。直線で飛来するロングレンジレールガンの弾は、兵を肉の壁にすれば軌道がそれる。


兵の動きを察するようにロングレンジレールガンが火を放つ。だが、炸裂する前に肉の壁に阻まれる。20ほどの兵を割き、レールガンを潰しにかかる。この状態でもヴァロンは手駒1500から作戦を立て続ける。


プライド。それもあった。だがヴァロンの中に不謹慎だが高揚する何かがあった。


不意に鋼の船の主砲がデスランドを向く。


ヴァロンは対空機関砲を確認すると、確信した。


ーー鋼の船は限界だ。


「総攻撃!」


僅かな守備兵を残し、上空を旋回し疲弊を誘っていた部隊と投石部隊が挟み込むように鋼の船に迫る。


対空機関砲の死角を狙った前後からの攻撃には主砲を使うしかない。主砲の先端がデスランドから離れる。


投石が命中したのか、僅かに主砲の旋回速度も遅くなっていた。


主砲が火を吹き、ガーゴイルの群れの先端が被弾するが、その衝撃を避けた部隊が距離を詰める。


その時、デスランドの上空に再び灼熱の花が咲く。


神奈川県側からの攻撃だ。埼玉に集結させていたレールガンの一部を、神奈川に移動していたようだった。


僅かに残った守備兵が灼熱の花に飲まれ、霧散する。


ついにヴァロンは1500以外の兵を動かす。神奈川沿いにいた兵が一気にレールガンを強襲する。デスランドの上空に灼熱の花が何発か炸裂するが、もはや守る兵もおらず、城壁や園庭に熱波が降り注ぎ城の大地が紅蓮に染まる。



その間も、鋼の船に距離を詰める攻撃部隊。


ついに鋼の船はガーゴイルに取りつかれ、煙を上げていく。一つ、また一つと対空機関砲は無力化されていく。


主砲は再びデスランドを狙おうとするが、取りついた部隊がこれを阻止、鋼の船はもはや糸に絡めて取られた蝶だった。


--勝負あり。


ヴァロンは鋼の船の指揮官に敬意を示す。


だが、この一瞬の油断を見逃さない人物がいた。

2026年3月22日日曜日

【軽い日記的なもの】引っ越しシーズン到来!

こんばんは!管理人の緑茶です。

本日の記事は、引っ越しシーズン到来!ということで、引っ越しにまつわる小話を掲載します。

2026年3月20日金曜日

【お知らせ】休載のお知らせ

管理人の緑茶です。

帰宅が遅くなり、本日の更新は休載となります。

次回、日曜日の更新まで少々お時間を頂戴します。

2026年3月17日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑩》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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篠原から送られた座標・射角はほぼ垂直に近い、前方の防雷とそれを取り巻くUFBのはるか頭上を飛び越えて、デスランドの頭上を狙う軌道だった。


ーーなるほど。艦砲射撃では不可能な軌道でも、クシャルボコスのミサイルなら…というわけか。


リークは軌道の軍事的価値をすぐに理解すると、指示を出した。


「両舷ミサイル、弾頭換装!焼夷弾に切り替えろ!自動信管をタイマー式に変更。カウント30だ!」


ーー灼熱の雨。R連隊が使った戦術を怪物の居城に使うとは。恐ろしいやつだ。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


その頃、防雷では足立・仲原・篠原が奮戦していた。


足立が迫りくるUFBの群れを凝視しつつ、指示を出す。


「主砲発射!目標UFB要塞!」


この命令を仲原が即座に分解する。


「主砲1番、2番、逐次射撃、目標UFB要塞。撃て!」


UFBの層の一番厚い部分に46cmの鉛球がめり込んでいく。衝撃で何体ものUFBが霧散するが、貫通には至らない。


しかし、2発、3発と同じ箇所を狙われると、デスランドを守るためにUFB側の陣形が崩れる。


「いいぞ!対空機関砲、弾幕を張れ!」


圧倒的な数量差。しかし、主砲による牽制と、機関砲による掃射を巧みに使い、UFBを一切防雷に寄せ付けない。


防雷の艦長も唸る。


「なんという豪胆で、繊細な戦い方だ。あいつらは陸自だろ。こんなに的確に操船するなんて・・・」


篠原が頷きながらそれに答える。


「対UFB戦は経験が重要なのですよ。足立さんはぁ何度も戦ってるからぁ無意識に相手の行動パターンを覚えつつあるのでしょうね!」


「クシャルボコス、換装を始めた模様!」


報告が割って入る。


「ほぉらぁ。あの大佐ぁシッカリ私の意図を読み取ったみたいですねぇ。戦える軍人さんはぁただの軍人さんですがぁ、行間をよめる軍人さんはぁ素晴らしい軍人さんですぅ!」


「隊長~っ。あと1分で空母が焼夷弾かクラスターを撃ちますよぉ、準備お願いしま~す」


仲原がこれに反応する。


「交戦中です!緊張感を持ってください!」


足立がいさめる。


「はいはい。主砲撃ち方やめ!クシャルボコスの面制圧兵器に合わせて換装し、一舷射撃準備!」


仲原が腑に落ちない表情のまま各所に指示を出す。


「主砲1番、3番。撃ち方やめ!2番、4番。30秒後に撃ち方やめ!一舷射撃準備!1番、3番はUFB特殊弾に換装」


10秒、20秒、対空機関砲が近づこうとするUFBを容赦なく霧散させていく。


足立の表情が曇る。


「早くしてくれよ!主砲抜きじゃ、さすがにキツイぞこれ!」


30秒…すべて主砲が沈黙する。


「クシャルボコス、両舷からミサイル発射。射角・座標共にこちらの依頼通りです!」


はるか頭上を越える二筋の雲。その雲に向けてデスランドから白い何かが飛び出した。


篠原が嬉しそうに叫ぶ。


「来ました!サーチちゃん!今ですよ!」


仲原が即座に指示を出す。


「撃て!!!」


この言葉をきっかけに、防雷の主砲が、デスランドから飛び出したサーチへ一斉に火を吹く。


大きな爆発音。見るまでもなく命中。しかし大きなダメージは見受けられない。


仲原は事前の作戦通り指示を続ける。


「2番、4番。撃て!」


再度、巨大な弾丸がサーチのシールドに激突する。


すると、炸裂した炎はまるで魔法のようにサーチのシールドを貫通し、巨大な爆発をシールド内で発生させる。


サーチのシールドが消え、明らかに意思を失い落下する彼女を、城から飛び出したベルガンが慌てて回収、デスランドへ連れ戻した。


その刹那、デスランドの上空で二つの美しい花が開く。それは化学反応で数千度に達する灼熱の炎の花。


花はゆっくりと高度を下げると、デスランドを防衛していたUFBを溶かしていく。


「クシャルボコス!2射目発射!」


唖然としていた防雷のクルーに再び緊張感が戻る。


通信機からリークの声が響く。


「キョーダイ。アニの テダスケは マダイルノカ?」


篠原がAIボイスに切り替えて応じる。


「兄上。転進されたし。護衛艦をつれて電子妨害外へ。貴艦が沈んでは国際問題だ」


暫くの沈黙、そしてリークの笑い声が聞こえる。


その間に二射目のミサイルが炸裂、一度焼かれたデスランドの上空を再度高温の花が咲く。


通信を切った篠原が予言する。


「メチャクチャに怒り狂った特攻ちゃんがきますよ。真っすぐ来ますぅ!防雷の対空機関砲で迎撃おねがしまぁす!」


足立の指揮が行動に変える。


「右舷対空機関砲は特殊個体に注意!直線で来るのなら当てられる!勢いを殺したら二度と加速させるな!」


予想通り、デスランドからひときわ大きい個体が防雷めがけて一直線に接近してくる。


対空機関砲が射程に入ると、一斉に迎撃を開始する。ベルガンは勢いを削がれ、左右に逃げようとする。だが、防雷の対空機関砲は一撃が重く、すぐに動きが鈍る。


――仕留められる!


足立が確信した瞬間、かろうじて灼熱花から逃れていた残りのUFBが一斉に防雷に襲い掛かる。


ベルガンのみを捕らえていた対空機関砲も、これに対応を迫られた。そのわずか十数秒の隙だが、射線から離れることができたベルガンは左右に揺れながらデスランドへと消えていった。



篠原が上機嫌で告げる。


「できれば仕留めたいところでしたねぇ。でもこれでぇ敵の既存戦力は全滅ですぅ。ここからが本番ですよぉ。賢い子。軍師みたいな子が出てくるはずですぅ!敵の動きが一気に複雑になりますよぉ!」


「足立さん、埼玉から半分移動したあれぇ。使えますかぁ?」


足立は誇らしげに答える。


「ああ。2ヵ所とも準備万端だ! みんな、ここが踏ん張りどころだぞ!!」


言葉通り、時を開けずにデスランドから新たなUFBが現れる。


だが、それはただのUFBではなかった。

2026年3月15日日曜日

グノーシア2期(終)(全体レビュー)※ネタバレ含む

 <あらすじ>

物語の舞台は漂流する宇宙船。

“人間に化けて人間を襲う未知の敵”――『グノーシア』が船内に紛れこんだことを受けて、

乗員たちは疑心暗鬼の中、毎日1人ずつ疑わしい者を投票で選び、コールドスリープさせることを決める。

グノーシアを全てコールドスリープさせることができれば人間の勝利。

なんと主人公・ユーリは、どのような選択をしても、最初の1日目にループする事態に。

わずかな時間を繰りかえす、一瞬にして永遠のような物語が、いま、幕を開ける。


<レビュー>

本作は、一度セツのいない世界線でエンディングを迎えた後、延長戦のような形で物語が続く、かなり珍しい作りでした。率直な感想としては、とても面白い作品です。人狼ゲームの面白さをまだ十分に理解できていない私でも面白いと感じたので、人狼要素だけでなく、物語としての完成度も高いことが分かります。


一方で、残念だった点もあります。最後の最後に、宣伝色が強く出てしまい、少しだけ現実に引き戻されたように感じました。ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください。


物語上、主人公はセツのループを終わらせたことで消滅する、という解釈が成り立つ描写でした。ただし主人公は「僕にはまだ時間がある」と嘘をつき、バグユーリのように振る舞い続けます。なぜそうしたのか。延長戦のループでは主人公がグノーシア側にいる、という構図に落とし込むためだと私は受け取りました。


セツは経験からSQをグノーシアだと断定しますが、世界線が無限にあり、場合によっては性別すら変わるほど条件が揺らぐ中で、同じ相手と同じ関係のループに入る確率は極めて低いはずです。ですがセツは主人公の入れ替わりに気がつかず、最後にグノーシアユーリが笑って終わります。


人間側勝利で一度締め、延長戦ではグノーシア側が勝つ。いわばバッドエンドですが、延長戦という位置づけであれば許容できます。ただ、その結末を明確に言い切らず、余韻のある締め方で終えた直後に、間髪入れず「舞台化」を告知する流れはさすがに早いと感じました。楽しく視聴していたぶん、そこで急に宣伝の現実に引き戻されてしまったのが惜しかったです。せめて一週間ほどでも発表を遅らせて、バッドエンドの余韻を味わいたかった。これが私の一番強い印象でした。


とはいえ、それ以外は非常に勉強になる作品でした。まず驚かされたのがキャラクター造形です。登場人物は15人ですが、人間側とグノーシア側で振る舞いが変わるため、15人分の「二つの顔」を扱うことになります。さらに、特定の組み合わせでのみ変化する要素まで含めると、実質的に扱う人格の数は膨大です。それを破綻なく描き分けているのは、すごいの一言に尽きます。


たとえるなら、学園物で1クラス全員を準主人公級の密度で描くようなものです。一人ひとりに性格があり、過去があり、それを矛盾なく回し続けるのは容易ではありません。書き手として考えると、二人なら比較的回せますが、三人になると一気に関係の線が増え、負荷が跳ね上がります。この作品はその難所を、さらに大人数で成立させています。


構成もダイナミックでした。まずはゲームに忠実なループ人狼編を1クールしっかり描き、人狼ファンが満足できる時間を確保します。次に人間勝利編で、視点をループから物語へ一気に移し、人狼編で積み上げたキャラの魅力をシナリオの中で開花させます。そして一度終えた後のエピローグ編では、ダイジェストで骨格だけを見せ、視聴者の想像に委ねる方向へ変わります。前段の積み上げがあるため、投げっぱなしにはならず、短い話数でも濃密に楽しめました。


最後に、説明の取捨選択も巧みでした。ループもの、人狼ものは説明しようと思えばいくらでも説明できます。例えば、ユーリの二重存在を否定するために別宇宙へ向かったセツの話も、突き詰めると「ではその世界のセツはどうなるのか」と疑問が残ります。作中にも、セツが軍人だと言って倉庫をこじ開ける場面があり、その世界にセツが存在していた痕跡が示されます。しかし、本作はそこを深追いしません。


何でもありの世界線だからこそ、説明を増やすほど蛇足になりやすい。必要な説明だけを必要なタイミングで提示し、視聴者の理解のメモリがパンクしないよう整理している点が見事でした。


前半で触れた不満はありますが、全体としては今期のベスト3に入るほど楽しい作品だったと思います。


人狼の枠を超えて、ループSFとしての物語に着地させた構成力が圧巻でした。余韻の扱いだけは惜しいものの、総合的には強く記憶に残る作品です。


2026年3月12日木曜日

お気楽領主の楽しい領地防衛~生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に~ ~9話(一部レビュー)

 <あらすじ>

8歳の時に授かった力は、その世界で“役立たず”とされている「生産系魔術」だった!

そのせいでヴァンは貴族に相応しくないと父親により失格の烙印を押され生家を追放。

名もなき辺境の村の領主として赴任することに。

小さく貧しい村は、徐々に様々な人が集まる巨大都市へと発展していき――!?

<レビュー>

生産系無双アニメで、ビルド要素も多彩な作品です。同ジャンルの「貴族転生」と比べると作風は大きく差別化されており、シリアス寄りの「貴族転生」に対して、こちらはライトでギャグ寄りの雰囲気になっています。


目的も明確で、僻地の村の住人を豊かにし、みんなで幸せに暮らすこと。そのささやかな目標とは裏腹に、万能級の人材が集まり、さらに主人公の生産系魔法も万能すぎる。このギャップが面白さの核になっています。


異種族や王族など幅広い登場人物が主人公の村を見て「なんだこれはー!」と驚く。そんなお約束の展開を武器に、毎回さまざまな建築物やアイテムを生産しては、視聴者と登場人物の両方を驚かせてくれます。


都合よく飛んでくるドラゴンを、バリスタや仲間たちが軽快に倒してしまう場面もあり、危機的な展開ですら全体のトーンは軽めです。深刻になりすぎず、気軽に楽しめるのが本作の強みだと思います。


終盤も近いですが、気になった方はこの機会に視聴してみてはいかがでしょうか。



2026年3月10日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑨》

 この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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怒りに我を忘れたリークは短距離ミサイルの弾頭を核へと変え、池袋を射程に収めるために東京湾へ向かっていた。


東京湾の手前まで来ると、電子妨害はレーダーを殺し、目視警戒を余儀なくされるほどだったが、すでに上陸作戦で経験済みのリークは動じることなく東京湾へと船を進める。


「護衛艦はここで待て!あの篠原のことだ。核は読んでいるだろう。核を撃つ前に沈める‥‥合理的だが、指揮官として作戦が浅い」


護衛艦はギリギリ最低限の電子機器が機能する地点で停泊し、東京湾へ近づく船舶があれば、無条件に破壊するミッションに入る。


単身東京湾へ進む空母クシャルボコス。操舵手が不安そうにリークの様子をうかがう。


「クシャルボコスとはいえ、単身で敵陣へ入って大丈夫でしょうか…」


「この電子妨害下での脅威は、怪物だけだ。総員機銃を取れ。有効なのは確認済みだ。対空砲は手動モードで散弾弾頭を使え」


この言葉と同時に電子戦オペレーターが、紙に書かれた池袋への射角と起爆タイマーの時間を持ってくる。


リークはその情報を眺めつつ、低い声でうなる。


「精密機器が使えないなら、使えるところで結果を出し、持ち込めばいい。簡単なことだ」


時間と共に表面的な怒りは消えつつあったが、リークの瞳の奥にはなお怒りに滾る炎が宿っていた。


20分後、湾内に入る。


すると靄の中に艦影のようなものが見え始めた。靄の中の艦影からクシャルボコスへ1機のグライダーが射出される。


リークは双眼鏡を手に取ると、グライダーを確認する。グライダーには日本とタラメアの国旗が両翼に書かれ、その後ろに光ケーブルらしいものが光って見える。


ーー罠か?いや、この状況で罠を張る意味は薄い。日本の先制攻撃と見るべきか?


リークが思案していると、艦影からモールス信号が送られる「ツ・ウ・シ・ン・キ・ヲ・ウ・ケ・ト・レ」


ゆっくりと近づいてくるグライダー。双眼鏡を覗くリークはその奥に僅かに見える黒い点を発見する。


ーー怪物だ。即座に理解したリークは応戦命令を優先する。


「怪物が来るぞ!前方の艦影が囮になるはずだ!抜けてきたヤツらを叩き落とせ!」


驚くほどの速さで、前方の艦影に近づく怪物。しかし、リークはさらに驚愕することになる。艦影が怪物に対して迎撃を始めるとその風圧で靄がブワッと晴れ、その姿が鮮明になる。


その姿はまるで旧世界大戦時を思わせる、巨大な鉄の塊。46cm砲と思われる巨大な砲塔を前後に備え、両舷には無数の対空機関砲。普段なら鉄くずともいえる旧式の戦艦であった。だがリークは即座に理解する。このエリアに限定すれば、この巨艦は最適解であると。


4km離れたクシャルボコスにも戦闘音が伝わってくる。響く重低音と、機械的な機関砲の音が空母内まで届いた。


クシャルボコスの高官たちはリークの顔を見る。高官たちの顔色だけで、答えは十分だった。


戦況に気を取られていると、グライダーはもう、空母の数百メートル目前まで迫っていた。リークは腹をくくりグライダーを回収する。すると、グライダーは想像以上にシンプルで、機体のほとんどは格納スペースだった。格納スペースには黒い通信機と思われる丸い機器が入っていた。そして案の定、光ケーブルが内部から伸び、巨艦とつながっているようだった。


「爆弾では?」


一人のクルーが呟くと、甲板がパニックになりかける。だがリークの一言ですぐに収束する。


「あの巨艦の主砲であれば、姑息な手を使う必要ない。つまりこれは間違いなく通信機だ」


スイッチを捜すリークを見ていたかのように、球体からAI篠原の声がする。


「聞こえますか。篠原です」


無線もろくに使えず、レーダーも効かないような状況で、肉声のようにクリアな通信に、リークは思わず応じてしまう。


「なぜ精密機器が使える」


AI篠原は予想通りの答えに即答する。


「私はこの現象をずっと観察して気づいたのです。この電子妨害は我々もまた利用できると。そんなことより、あなたに知らせがある」


球体を囲む船員とリークは顔を見合わせて、電子妨害を利用できることよりも大きな知らせに興味が移る。


リークはハンドサインで工兵に球体を船室に運ばせると、話を続けた。


「一体何の知らせだ?いまさら退避勧告でもないだろ。俺はお前にもムカついてるんだ。こんな球は海に投げ捨ててもいいんだぜ」


篠原は全く動じない。


「その割にはご丁寧に船室に引き込んでもらったようで。丁重な扱いに感謝します」


別にカメラやセンサーが付いているわけではなかった。ただ声の反射が変わったことで篠原は状況をすぐに分析してしまったのだ。


そして本題に入る。


「私怨は後で聞きましょう。私も兄弟を自称する大佐が研究室に無断で侵入した。

 これについては、意図を聞きたいと思っていたところです」


リークの顔が濁る。単独侵入はごく限られた士官しか知らない極秘行動である。それを暴かれた動揺が、わずかに顔に出た。


篠原はたたみかけるように続ける。


「あなたの目的は既に破綻しました。あなたのミッションは秘匿兵器の残骸の処理。ですが、残念ながら我々が既に解析し、自衛隊のDBに登録してしまいました。

 AIを用いた相互リンクシステム。二台の車両を役割特化させることで強みを倍増させる。その新世代兵器としての発想は素晴らしい。

しかし、部品の組み合わせは良くない。政治的な関与でしょう。最善を選べないのはつらいですね。兄弟」


突然の秘匿情報の解析結果に、士官たちのざわめきはさらに強まっていく。


「本当か?ブラフじゃないのか?」

「いや、もし本当だとしたら、もう攻撃する意味は…」

「残骸を回収したのか?衛星写真ではそんな様子はないが‥‥」


リークだけは確信していた。手段はわからない。だが確実に解析されている。


「転進。本国へ帰投する」



先ほどまでとはまるで別種の、力の抜けた命令だった。核使用という重圧が去ったのだと、タラメア兵たちにもすぐに伝わる。艦内の空気はわずかに日常を取り戻した。


だが、篠原の通信は終わっていない。


「大佐。手ぶらで転進ですか。ずいぶん丸くなられた。東京湾への侵攻は明らかに領海侵犯です。軍事裁判が待っていますが」


リークは無言で拳を握る。


「大佐、あなたは我が国の兄弟として我々を支援するために、東京湾に侵攻したのです。我々の任務はお台場に浮くUFBの居城デスランドの破壊」


「この戦艦『防雷』は電子機器を使っていません。射角、射撃統制は私の観察と暗算。そして指揮は足立隊長の経験です。情報をリンクします。そちらも手動で照準を合わせてください。ともに撃ちましょう兄弟」


すぐさま、球体の側面に文字が浮かぶ。


それは、現在の空母の位置から、正確にデスランドを攻撃するための座標情報であった。


「防雷の火器でUFBの大半を引き付けます。そのすきにその射角で直上から通常ミサイルを叩きこんでください。電子制御は全てオフ。大丈夫です。当たります」


この会話の最中もずっとUFBの波状攻撃を受けている防雷。しかし、武骨な鉄の塊は皮肉にもUFBに対してこれ以上のない強さを誇っていた。


ーー勝てる。そしてあの高官の死に花を添えられる。


リークの決断は誰よりも早い。