2026年6月2日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑮_4/5_天才の毒》

そして翌日、候補者の4人の元に神は再び訪れた。


最初はボンズ・タラ・ケリス。彼の答えは変わっていた。


「神よ、私はじっくり考えて結論を出しました。代行者は辞退します。私が作りたいものは世界ではない。昨日の篠原さんの言葉で気づいてしまいました。AIにも相談し、これがベストだと思います」


ベルガンは不満そうに尋ねた。


「お前が作ったオモチャで、世界を不安定にすればいい。作りたいものを使って神の代行をすればいい。簡単だろ?今なら撤回してもいいぜ?」


それでも返事は変わらなかった。


神はボンズに承諾を得たうえで、大種族神などの重要な記憶を消去し、王 雨桐の元へ向かう。


王 雨桐は神を見ると膝をついてこう述べた。


「神よ、お許しください。代行者の責務。私には重すぎると思います。私が代行者になれば私を核とした組織が出来てしまう。200年後に神と対峙してしまう未来を想像してしまったのです」


これを聞いたヴァロンがつい口を挟む。


「まてまて、もう1日考えたらどうだ。お前は候補者の中で組織を一番理解している。たしかに貴女は一時的にでも頂点に立つタイプではない。それは認めよう。だが、ならば我ら3眷属が表向きの頂点に立とう。その後ろで代行者として人々を導いてはどうだ?」


王 雨桐は何も言わず深く頭を下げた。


ヴァロンはその姿に決意の強さを感じ、それ以上は何も言わなかった。サーチの腕から少し力が抜けたのを神は目の端で追っていた。


王 雨桐も同様に記憶を処理し、大荻山 勝利の自宅へ移動した。


大荻山はパニックになっていた。


「神!神!神様!!聞いてください!代行者候補になったこと、そしてクソ女に言われた事実無根の妄言を、俺の親友たちに話したのです。そしたら”ついに壊れた”と言われ、縁を切られてしまいました。俺の大切なカネが!人脈が!」


サーチは黙って首を振り、ヴァロンが視線で神に否定を突き付ける。


神は大荻山に、縁を修復する代わりに代行者に関する全ての記憶を消していいかと尋ね、大荻山は頭が大きく上下に振って承諾した。神が大荻山の頭に手をかざすと、消えかけた光の筋が数本はるか彼方に伸びていた。サーチがその線に軽く触れ干渉すると光は強くなり光の線として機能を取り戻す。全ての筋が元に戻ると神は大荻山から記憶を消して、篠原の元へと向かった。


篠原はR連隊の研究室に足立、仲原と3人で神を待ち構えていた。


そして開口一番にこう言い当てた。


「全ての代行者候補が辞退した。そんな顔を眷属のみなさまがしてますねぇ。まぁそうですよねぇ。ふふふ。これで私が辞退したらぁ、残りの数日で代行者を決めるの大変そうですねぇ。お気持ちおっ察ししますぅ」


すると神はこう返した。


「お前が昨日、彼らに言葉の毒を盛ったからだろう。やられたよ。ああ、見事だ。やはりお前は面白い。おまけに、私がキレることを封じるために、観測者まで用意して。その能力、ますます興味深くなったよ」


◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆


3時間前、篠原は足立・仲原と作戦会議を行っていた。


まずは篠原からのこれまでの経緯と、神災の正体。竜の暴走と大種族神の審判。ポイントを絞って共有した。そしてこう語る。


「この神災を止めるためには、無能な代行者か人類に都合の良い代行者を立てるしかないんですよねぇ。そこで、お二人に協力をお願いしたいのですぅ」


「とりあえず、ボンズくんの使っているAIにはハッキングをしておきました。代行者についての相談には全力否定するよう昨日のうちに仕込み済みですぅ」


「王 雨桐にはメールを送っておきましたぁ。あなたが代行者になれば神を超える組織が組成可能だと。そして世界は貴方のものだと、ただ神との戦いは長きにわたるだろうと。ゆーとんはぁ裏の権力者タイプですぅ表で戦争なんて嫌でしょうねぇ」


これを聞いた足立がため息交じりに口を挟む。


「お前さ、マジで優秀だけど、本当に怖いよなぁ。つまり他の候補者は戦う前に離脱させるわけだろ。王 雨桐のプライベートメールアドレスなんて陸自のDBでも機密扱いなんだぞ!まったく」


仲原は眉をひそめて追及する。


「やり方には賛同しかねますが、そうなると残りは大荻山ですか。父親を失ったとは言え彼の人脈は厄介ですね」


この発言に一瞬場が和んだ。


「いやいや、仲原。大荻山は無視していいよ。あのタイプはプライドを刺激されると必ず誰かに愚痴をこぼす。こぼす相手は父親から受け継いだ要人だろう。要人が無能な若者から神だ代行者だと喚き散らせば結果は明白。自爆だよ」


さらに篠原が補足する。


「まぁ、お馬鹿さんですからぁ無謀にも残る可能性もありますねぇ。でもぉ昨日の眷属たちの表情からしてぇ、選んだら神への信頼が揺らぎそうですしぃ。その状態で無能な代行者なんて手のひらで転がせば大丈夫ですよぉふふふ」


自分の懸念が、足立と篠原には瞬時に考慮されていた。そして、それがすでに「大した脅威ではない」と結論づけられていたことに、あとから気づいた仲原は、少し耳を赤く染めてすぐに話題を変えた。


「で?私たちを呼んだ理由は何ですか?」



「あぁ。それですぅ。最初に結論ですが、私が代行者になって人類の最低保証になろうと思いますぅ」


「もちろん、まだまだ知りたいことは多いしぃ、神の能力にも興味があります。そこでぇ、この状況を作ったのですぅ。


候補者が私以外『全滅』となれば、神は焦りますぅ。私を代行者にするために、妥協もすると思うのですぅ。


そこで私は、足立隊長とぉ、仲原さんをぉ、私の協力者としてぇ、二百年の不老不死を与えるように条件を出そうと思いますぅ。


えへ。それで、二百年の人類の統治はお任せしてぇ、私は観察と研究を楽しもうかと思います。


あっ、違いますよぉ。怠けたいのではなく、ほらぁ、適材適所って『ゆーとん』も言ってた、あれですぅ」



200年の寿命。足立と仲原は顔を見合わせた。そして足立が少し困った表情で切りだした。


「おいおい、それは勝手だろ。俺はいいよ、もぅいい、定年まではしっかり働くからさぁ余生は楽をさせてくれよ」


仲原も続く


「私もです。200年の寿命。そんなものは人間の理(ことわり)から外れてしまう。私は人間として生きたい」


これを聞いた篠原は軽く笑うと切り返した。



「ではぁ、私がぁ一人で代行者をやった場合、どうなるでしょうねぇ。


人類を守っているつもりでも、世界を実験室に変えて、好き勝手に観察しちゃうかもしれませんよぉ。


その時、止められるのはぁ、あのUFBの三眷属ですがぁ……。


さすがに代行者とはいえ、神の力を持った私にぃ、どこまで抵抗できますかねぇ。


そこにお二人がいれば、少なくとも平手打ちはできると思うのですよぉ」



篠原の視線に仲原が映る。それを遮るように足立が改めて口にする。



「お前さ、マジで優秀だけど、本当に怖いよなぁ。はぁ…200年の労働かぁせめて20代に若返ったりしないかなぁ」


それを承諾ととらえた篠原は、作戦の続きを話し始める。


「唯一のリスクは、神が私の工作に気付いて、感情的に私を殺すことですぅ。


竜の件を考慮すれば、あの神は後先を考えないようですからぁ、五十%くらいはありえますぅ。


その安全装置として、お二人にはこのまま、神との交渉に同席して欲しいのですぅ。


足立隊長は、R連隊の重要人物ですぅ。


そして三佐は、あの白い竜を威嚇した実績がありますぅ。


これでぇ、もし神が私を殺せばぁ、目撃者である貴方がたも殺すことになりますぅ。


それは、大種族神の猶予に対する不義理となりますぅ。


つ・ま・り。


お二人がいるだけで、神は私に手出しできない。


そういうことですぅ。


あと、お二人も神様を見てみたいですよねぇ」


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


時は現在にもどる。


篠原に説得され、渋々同席した足立と仲原。そこへ神がやってきた。


神は篠原の工作、思考を即座に理解すると「やられた」と興味深そうに不敵にほほ笑んだ。


だがヴァロンの眉間には大きなしわが出来ていた。


余裕のある神とは違い、少し低い声で篠原に語り掛ける。


「おい女。この方は貴様ら人間の種族神である。こざかしい小細工で手を煩わせることは不敬だと思え。神が選んだ候補を潰した上に護衛を付けて待ち受けるとは神の代わりに私が罰を与えてやろうか」


それに答えたのは篠原ではなく、神だった。


「いいんだ、ヴァロン。篠原の良さはこの場をコントロールする計画力。そして僅かな情報から大きな理解を得て相手の立場を越えてくる観察力と思考力。各候補の良さは確かにあった。とくに大荻山は、神の代行者として独裁的な立場になれば

 素晴らしいスキルセットの持ち主だった。だが、篠原の才能はその力を発揮させる前に芽を摘むところにある。これが強いんだ」


その話を聞いて足立が思わず小さくうなずく、その姿を仲原が厳しい目で睨みつけ、足立は目をそらしてごまかした。


神は饒舌に篠原に促した。


「なぁ篠原、私が渡した僅かな代行者関連の記憶で、どこまで推理したのか、言葉にしてみてよ。私は神だから思考を読もうと思えば読めてしまう。だから隠す必要はない。篠原の口から能力を証明すれば、まぁヴァロンも黙るだろう」


篠原はいつもの調子で話し出した。


「ではぁ、最初にぃ。隊長と仲原さんはぁ保険ですがぁ、この場で私が死ぬ確率は0%ですぅ。ずっと疑問に思っていたのですぅ。神様たちは転移や記憶の操作が可能ですぅ。つまりチートどころか万能に近い存在だと思いますぅ。本当に人類に試練を与えるだけなら

 こんな戦争ごっこをしなくても、大仲大臣や、足立隊長、仲原さん、そして私のような対抗勢力の急所を殺すか、記憶を奪って廃人にしてしまえばいいはずですぅ。ではなぜ、それをしないのか?答えはルールにあるとおもいましたぁ。

 大種族神様の件をみてもぉ、神の世界にもルールがありますぅ。そのルール内でしか神様は動けない。だからー、こんな方法を取るのですぅ」


ヴァロンの目に一層の力が入る。


「女。神は確かに万能だ。何を疑う余地がある」


篠原はゆっくりとヴァロンに向かいながら話し始めた。


「万能ならぁ。なぜ代行者を捜しているのですかー?」


一言でヴァロンの視線が一瞬揺らぐ。篠原はその様子を観察し確信したように進めた。


「それはぁ。きっと神様が寝ていると不都合があるんですぅ。なんでしょうねぇ。サーチちゃんたちがぁ出来なくてぇ、神様しかできないことですよねぇ」


2,3秒口を閉した篠原は、笑顔で結論を出した。


「エーテルですぅ!神様の記憶に大種族神様の審判のシーンがありましてぇ。神様はエーテルを3眷属に大量に流し込み、強制的に竜化させたと・・・」


「これぇ。裏を返せば、3眷属の皆様は自分で竜化できない。つまりぃ、エーテルを生み出せるのは神様のみ。神様が眠るとぉ眷属の皆さんはエネルギーの供給が絶たれてしまう。

 そんなところですかぁ?。ねぇ神様」


神は余裕の表情のままヴァロンに話しかけた。


「な、面白いだろ?ヴァロン。この感じだと、他にもいろいろ感づいてそうだぜ?まだ続けさせるかい?」


ヴァロンは足立と仲原を僅かに目の端でとらえると。


「いえ。これ以上は。代行者としての素質はゼロではなさそうです」


口調は穏やかだが、明らかにヴァロンの表情は厳しい。


篠原はこれを見て、本題に入る。


「ではぁ。私がぁ代行者になるのかという、お話ですぅ」

2026年6月1日月曜日

休載のお知らせ

本日予定していた記事ですが、内容に不備があったため掲載を見送りました。

言い訳にはなりませんが、現在連載中の「人類アンチ種族神」の最終話の推敲に多くの時間を費やしています。1年連載した作品の最後は納得できる形で閉じたいと思っています。

もう物語は書きあがっています。それでも何度も読み返して、表現を変えたり文字を足したり引いたり、時間があれば1mmでも良くなるように仕上げたいと思っています。

その代償で、今回のようなミスが多くなっており、先月も投稿日を間違えてしまいました。折角楽しみに見ていただいたのに、残念な気持ちにさせてしまうことは心苦しいのですが、完結までは小説に力点を置かせてください。

お願いいたします。



2026年5月28日木曜日

自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。(一部レビュー)

 <あらすじ>

バーティアは現実世界から乙女ゲームの世界に転生する。

前世の記憶を持つという彼女は、ここはかつてプレイした乙女ゲームの世界であり、自分は悪役令嬢であると言う。突飛な発言は、退屈だったセシルの心に好奇心を芽吹かせる。

<レビュー>

※以下、学園編のネタバレに触れています。未視聴の方はご注意ください。


学園編も盛り上がってきました。

ゲーム内転生ものですので、本来のゲーム内の主人公であるヒローニアと、バーティアが本格的に接触するようになりました。

当然、ゲーム内主人公であるヒローニアとしては、本来なら好意を向けられるはずの男性陣たちがバーティアに夢中なので、嫉妬を抱えています。


さらに、ヒローニアは魅了の加護のようなものを持っているので、何もしなければ異性からも同性からも勝手に好かれるはずです。

しかし、バーティアに厳しく接する姿を目撃されることで好感度は下がり、さらに不満が蓄積していきます。


乙女ゲーム転生作品としては、主人公、つまりヒローニアがラスボスというのは鉄板ではあります。

ただ、本作は少しひねりがあるようです。


ヒローニアが、そこまで悪党ではないのです。

さらに、賢いわけでもなく、魅了の力が極端に強いわけでもない。能力的には、バーティアに比べて魅了の加護があることくらいの違いしかありません。


逆にバーティアは、幼少期からセシルと交流を深め、無意識に味方に引き込んでいます。

さらには、セシルの取り巻き男性陣も根こそぎ味方にしているので、ヒローニア側から見ると、かなり分が悪い状況です。


なんとなく、かわいそうに見える。

同情しかけたところで、悪態をつくシーンが入ります。


この構成は、視聴者の感情をとてもよく読んでいます。

作画も通常の顔つきではなく、狂気じみた表情に変わり、声も普段の悪口より一段、二段上がっています。

そのため、ヒローニア本人が話しているというより、ヒローニアの皮を被った“もう一人の転生者”が表に出ているように見えました。


ここは、制作側の作品に対する熱量が感じられる場面で、視聴者として作品に引き込まれてしまいました。


まだ残りの話数もありますので、この後もう一騒動ありそうな本作。

期待して次回を待ちたいと思います。



2026年5月26日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑮_3/5_代行者候補》

 篠原は無表情でその様子を見ながらつぶやいた。


「これがリアルな死……。大臣でも兵士でも民間人でも等しく死ぬ。そっか、いつか私も。」


そう言うと顔色を悪くして空を眺めた。黒煙に染まった空は篠原の気持ちを表しているようだった。


2日後、津田議員は大仲大臣の遺言により、正式に防衛大臣に任命された。


野党議員でありながら異例の就任であるが、その実は与党も含め誰も引き受けない重責職を押し付けられた形だ。


その頃、デスランドでは神による休眠中の代行者選定が行われていた。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


崩れた居城デスランドは外見上そのままだが、内部構造は神の力で修復されていた。


重い空気の中、会議室では議論が交わされていた。


「ですから!サーチもヴァロンもわかっておりません!神様の代行者に相応しいのは、人情があって強くてカッコイイ人物であるべきです!カリスマです!」


ベルガンの大声が響く。サーチがため息交じり返す。


「代行者の任期は200年。カリスマよりも人間を理解できる人物であるべきです。無難に過ごし、神様のお目覚めを待つのです」


ヴァロンも黙っていない。


「そうではない。代行者だぞ。代行するモノだ。何を代行する?神は何をされてきた?わかるだろう。人類の査定だ。守護すべき種族であるか継続して調査すべきなのだ」


神はそれを聞きながらほんの少し笑みを漏らしていた。

そして切り出した。


「まてまて、この二日間、俺の力で候補を4人に絞った。それを見てから意見を聞かせてくれ」


そういうと、4人の人物の映像が順に宙に映し出される。


「まずは一人目、タラメアの ボンズ・タラ・ケリス。彼は青年時代に紛争に巻き込まれ、両親兄弟を失っている。ゆえに争いを強く憎む人物だ。

 だが彼はトップクラスの兵器開発者。世界中の悪を倒し、世界を平和にするために兵器を作る。思想が俺に近い。だが倒すべき悪とは誰の悪なのか、気づかぬ所が面白い」


青い研究服に身を包んだ、30代くらいの眼鏡をかけた男性だ。



「そして二人目、華花人民国(かなじんみんこく)の 王 雨桐(おう ゆーとん)。彼女は人材運用の天才だ。人の行動から心理や特性を見抜き、適材適所で10社以上の大企業を生み出した。それでも目立たないのは自身がトップに立たず、適切な人材をトップに据えるためだ。

 その力は組織的に人類を導くには最適だ。だが、彼女の判断には本人の意思が入らない。体力があれば体を使う仕事へ、器用であれば職人へ、だが、それは人類が幸福になるのか、ただ効率よく飼われるのか。そこが面白い」


30代前半の容姿端麗。長い黒髪に鋭い目つきの女性だ。


「次は三人目、日本の 篠原 涼音(しのはら すずね)。国内で上位3人に入る頭脳の持ち主だ。特に知識欲が強く僅かな情報からでも思考を巡らせ多くの事実を推測する。

 ヴァロンと戦った鉛の船の指揮官だ。冷静沈着、人間に対しても俯瞰的で思い入れも特にない。欠点らしい欠点は知性と体験の剥離だが、経験を積めば見込みがある」


どこかの施設で机にしがみつき、何かのプランを練っている篠原が映る。


「最後は4人目、こいつも日本。大荻山 勝利(おおぎやま かつのり)。権力者の長男だ、父親の影響で国内外への人脈も広い。損得勘定と状況判断能力は父親よりも優れている。この男は今はまだ凡人だ。

 だが秘めた才能は財を築いた父から引き継いでいる。目的を達成するために手段を問わない冷徹さ。そして必ず達成させる実行力はその片鱗だ。才能だけではなく父親と同じく他者を道具として認識している歪みが興味深い」


20歳前半の体格のいい男が、大きなソファーに偉そうに座り、両脇に女性を座らせている。


神は4人を紹介すると改めて眷属に意見を求めた。


まずベルガンは不満そうだ。


「神様、これらは戦いに出て役に立ちますかねえ?特に大荻山。見るからに我先にと逃げ出しそうですよ!ボンズは面白そうですが、王や篠原はサーチやヴァロンで十分ですよ!」


つぎにサーチ。


「王 雨桐。組織を作る天才。組織を作るのは神の特権。代行者が勝手にすべきではないと思います。ボンズと大荻山は代行者の器とは思えません。篠原は神様に近いものを感じます。それが少し怖いです。」


最後にヴァロン


「なるほど。まず、ボンズ。この男にエーテルを持たせれば面白い反応が期待できます。つぎに王 雨桐、我々眷属が作った組織を運営させればうまく活用できそうです。

 篠原 涼音、鉛の船の指揮官。戦術的には惜しいところでしたが教育すればよき士官になりそうでした。大荻山。あの男の息子ですか、能力は高そうですが思想は再教育でしょう」


このコメントに神は黙ってうなずいて聞いている。

そしてこう切り返した。


「大荻山は、まだ若い。再教育は200年もあれば変わるだろう。王 雨桐については問題は組織力ではなく人類への情だろうな。篠原の良さは戦ではない、その観察力だ。50年後、再戦したら負けるんじゃないのかヴァロン!。

 ボンズのエーテル研究は面白そうだ。エーテルを使った兵器で眷属とは違う脅威を人類に与えることができそうだな」


ヴァロンは、からかわれて苦笑しつつも、こうまとめた。


「実際に話してみなければ結論は出ないでしょう。本人の意思も聞いてみたいところです。いかがでしょう神様、彼らをこのデスランドに召集してみては?」


「ふむ。代行をお願いするわけだから呼びつけるのも気が引ける。今回は俺の失態が招いているしな。こちらから出向くとしよう」


そういうと、パチンと指を鳴らし空中に光の環を作り出した。その光は一瞬で神と3眷属を飲み込むとその場から消え、遠く離れたタラメアの一室で球体となって表れて、彼らを放出した。


目の前には自宅で本を読んでいたボンズが、驚いて硬直していた。


「やぁボンズ。私は神だ。詳しい話は脳に直接送るので理解してくれよ」


すると神はボンズにすぅっと指を向ける。その瞬間、ボンズの脳内に大種族神の審判、神の代行者選定など、これまでの経緯がまるでゲームのセーブデータのように一瞬で焼き付いた。


「な、なるほど・・・。それで私の元に。私が代行者となれば素晴らしいエーテルと科学を融合させた兵器で人類に脅威を。そして判定AIを作り出し査定を行いましょう。そして悪を根絶やしにし、平和な社会を構築して見せます」


その言葉を聞くと、神は再びパチンと指を鳴らす。再び光の輪が現れ、神と3眷属、ボンズを王 雨桐のオフィスへ転送した。


神は同じように王 雨桐に記憶の一部を転送する。怯えていた王 雨桐も理解をすると落ち着いて話し出す。


「神様、私が代行者となれば200年後、あなたが驚くような理想郷を作ってみせましょう。そこの皆さんとも共存共栄できる素晴らしい人間の世界をお見せしますわ。

 私はこう思うのです。なぜ人は、あえて困難な道へと迷い込むのでしょう。なぜ、正しき道を選べないのでしょうか。それはきっと、まだ知らないからです。本当に帰るべき場所を……」


王 雨桐の慈悲に満ちた瞳にサーチが、思わず半歩下がってしまう。迷いのない真っすぐなまなざしにサーチの共感能力が作用したのだ。


次は篠原、ではなく、大荻山の豪邸だった。ヴァロンが呟く。


「なるほど、本命は最後ですか……」


神が現れた瞬間、大荻山は大慌てで袖机から銃を取り出すと、何も聞かずに反射的に発砲した。しかし弾丸は一瞬で速度を失い地面に落ちる。すると、横にいた女性を神に投げつけると、そのままソファーを飛び出し出口へ逃げようとする。

当然、サーチがこれを捕らえ、やっと記憶の転送となった。ベルガンの冷めた目が彼に刺さる。


「神なら神と言ってくださいよ!この大荻山、人脈には自信があります。神の手勢を汚すことなく人間を神に従属させて見せますよ。その時は私にもポストをお願いいたします」


ヴァロンのため息とともに、再び転送、全員がR連隊臨時研究室の所長室に移動した。


篠原は一瞬驚いたが、すぐに言葉を返した。


「大荻山?王 雨桐?それにボンズ・タラ・ケリス?・・・えっと、ここはR連隊の研究室に何か御用ですか?所長の篠原は席を外していますが・・・」と嘯いた。


しかし神が記憶を転送するとすぐに理解する。


「代行者ですか。見返りは不老不死に近い寿命。はぁ、魅力的ですがぁ、意外と不老不死も大変そうですしぃ、少し考えていいですかぁ?」


神に対しても変わらぬ態度にサーチの心がチクリとする。篠原は続ける。


「ただぁ ボンズ・タラ・ケリスさんはぁ本質的に開発者なので、モノづくりに没頭するでしょうねぇ、神になれば何でも作れる。それは恐ろしい兵器ができるでしょうねぇ。虐殺の」

「それに 王 雨桐さんはぁ組織力が最大の魅力ですがぁ、強力な王がいる場合はあんまりいらないんですよねぇ。むしろ求心力がある部下は分裂の火種っていうかぁ」

「あと大荻山はぁ、あなたの人脈は父上のものですからぁ、今後は衰退するのではぁ?むしろ少し衰退がはじまってるマスよね。腕時計が最新型の特注品ではなくなってますしぃ」

「そう考えると、私以外微妙でありますねぇー。神様1日もらえますか?」


神は黙ってうなずいた。

その後、それぞれは元の場所に転送されていった。篠原に罵詈雑言を浴びせる大荻山をみて、再びヴァロンがため息をついた。


その頃、日本では津田防衛大臣の着任演説が行われていた。


「国民の皆様。防衛大臣に着任いたしました、津田です。


先日のドラゴン発生時、政府が情報をフェイクニュースと断定したことについて、一部SNSなどで批判の声が上がっています。

そのご指摘は、重く受け止めています。


しかし当時、国民の皆様の間に大規模なパニックが起きていれば、被害はさらに拡大していた可能性があります。

皆様が冷静さを保ち、道路網が機能していたからこそ、大仲前大臣と有志のR連隊は赤い竜を舞浜方面へ誘導し、埼玉での被害を大きく抑えることができました。


神奈川方面でも、陸上自衛隊と航空自衛隊によるかく乱行動により、被害の拡大を防ぐことができました。

避難誘導に多くの人員を割かずに済んだことも、作戦遂行に大きく寄与しています。


政府の判断に対する批判は、私たちが受け止めるべきものです。

そのうえで、国民の皆様の冷静な行動とご協力に、心より感謝申し上げます。


最後に、大仲前大臣についてお伝えします。


大仲前大臣は、最後まで赤い竜と対峙しました。

回収されたブラックボックスの記録から、最終的に自らの命を賭して攻撃を行ったことも確認されています。


少なくとも、あの判断は保身のためのものではありませんでした。

国民を守ろうとした、その一点だけは、どうか知っておいていただきたい。


以上をもちまして、私の着任の挨拶とさせていただきます」


大仲大臣の自爆は、世論に大きなインパクトを与えた。広がりつつあった政府への不満。千葉の住人の80%が死亡したという事実で広がっていた不安。これらが最小限の被害であったという認識が広がったのだ。


そして翌日、候補者の4人の元に神は再び訪れた。


2026年5月25日月曜日

【軽い日記的なもの】日々雑感

こんばんは!管理人の緑茶です。


本日は、予定していた記事を少し修正したいので、日記記事になります。


最新話を視聴したところ、思った以上に良いエピソードでした。

そこまで含めて、後日あらためて掲載します。


さて、日々雑感です。


某ゲーム会社が、ゲームのコンテストを企画しているようです。

賞金もかなり高額なので、興味がある方はチェックしてみてもよいと思います。


ただ、個人的に少し気になった点がありました。


このコンテスト、入賞すると著作権を主催会社と共有する形になるようです。

割合も50%なので、作品の権利を半分ずつ持つ形ですね。


さらに、著作者人格権も行使できない条件になっています。

チーム制作の場合でも、チーム側が50%、主催者側が50%という形です。


もちろん、これが悪いという話ではありません。

コンテストに入賞したという実績や賞金、宣伝効果が、作品の権利50%に見合うと考えるなら十分ありだと思います。


ただ、自信のある作品や、今後も自分のIPとして育てたい作品で応募する場合は、少しだけ慎重に見たほうがよさそうです。


こういう条件自体は、コンテスト系では珍しくありません。

ただ、賞金が大きいと「おお、すごい!」となって、勢いで応募してしまいそうになるので、応募前に規約だけは軽く確認しておくと安心です。


せっかく作った作品ですからね。

あとで「そこ見落としてた!」となるのは、ちょっともったいないです。


さて、話題は変わります。


最近のAIは本当にすごいですよね。


特にプログラム領域では、人間が仕様をしっかり決めてあげると、かなり高い精度で形にしてくれます。

まったくコードが書けない人でも、AIを使えば簡単なツールやゲームを作れる時代になりました。


ポジティブに考えれば、ものすごく可能性が広がったわけです。


ただ、AIを使ってきた感覚としては、「全部知らなくていいけれど、少し分かっていたほうが圧倒的に強いな」と思いました。


理由は単純です。

AIのモデルは定期的に変わります。


モデルが変わると、前より賢くなることもありますし、逆に出力の癖や優先順位が変わることもあります。

つまり、AIはずっと同じ性格で動く不変の相棒ではなく、変化し続ける相棒なんですよね。


そのため、完全に丸投げしてしまうと、プログラムの仕様がいつの間にかAI側の都合で変わっていても、気づけないことがあります。

気づけなければ、当然修正もできません。


ただ、これは「AIを使うな」という話ではありません。

むしろ逆で、少し知識があるだけで、AIはかなり頼もしい道具になります。


たとえばイラストでも、絵を描ける人がAIに指示すると、構図や光、表情、塗りの方向性をかなり細かく指定できます。

一方で、イラストの知識がない状態で「いい感じにして」と頼むと、出てくるものはどうしてもガチャになりがちです。


プログラムも同じです。


AIは便利ですが、仕様が曖昧な部分はAIが勝手に補います。

その補完が正解かどうかは、最終的には人間側にしか分かりません。


依頼する側が少しでも知識を持っていれば、


「ここはこういう仕様にして」

「この処理は分けて」

「この条件では動かさないで」


と、かなり解像度の高い依頼ができます。


逆に解像度が低いと、AIが行間を補完してくれます。

それ自体は便利なのですが、その補完が正解かどうかを確認できないと、そこがガチャになってしまうわけです。


エンジニアがAIを使うと強いのは、たぶんここだと思います。

プロンプトが細かく、要点が整理されていて、AIに任せる部分と人間が決める部分の切り分けがうまい。


つまり、AI時代だからといって、必ずしも全員がプログラムを一から書ける必要はないと思います。

ただ、AIに何を作らせたいのかを説明する力と、出てきたものが正しいか確認する力は、これまで以上に大事になっている気がします。


少しでもプログラムの考え方を知っていると、AIはかなり頼もしい相棒になる。

そんなことを感じた今日この頃です。


……ということで、本日の雑感でした。


次回は火曜日。

小説を掲載します!



2026年5月22日金曜日

RPGツクールU2U発表!(速報)

RPGツクールシリーズの最新作、RPGツクールU2Uが発表されました。

今回の基盤には、Unity Engineが使われているようです。


はい。

かつて「Unity税」と呼ばれたRuntime Fee問題で大炎上した、あのUnityです。


個人的には、Unityに対する印象はあまりよくありません。

Unityは過去に、普及したところでマネタイズを強化するような戦略を打ち出し、大きな批判を浴びました。

一部のゲーム制作者が他エンジンへの移行を検討・表明するなどの騒ぎになり、結果的にRuntime Feeは撤回されました。


ゲームは、制作途中でプラットフォームを変えることが非常に難しい分野です。

それだけに、急に高額な利用料や不利な収益条件へ舵を切られるリスクについては、最初に触れておきたいところです。


ただし、Unityへの不信感と、U2Uという制作ツールそのものの設計評価は分けて考えるべきだと思います。


さて、ここからはU2Uのシステムについて分析します。


制作者が一番気にするのは、ツクール最大の強みである「ハードルの低さ」です。

これは、制作ツールを覚えるための労力がどれだけ少ないか、と言い換えてもいいと思います。


この点については、発表情報を見る限り、かなり良さそうです。

従来の見下ろし型エディターで基本地形を作り、クォータービュー、つまり斜め見下ろし型の視点で立体を構築するようです。


立体もポリゴンから作るわけではなく、マインクラフトのようにブロックを積み上げて作る形式に近いようです。

また、「家」のようなオブジェクト型の完成済みパーツを配置することもできるようです。


マップ作成だけを見ても、作りやすさは高そうです。

さらに、作ったゲームの視点は固定のようです。2.5D、あるいは疑似3Dに近い表現ですが、公開映像を見る限り、視点を自由に回転させることはできません。


これは一見欠点のようですが、2.5Dであることを考えれば、ゲーム制作をシンプルにできる点で良い選択だと思います。


視点を回転できるメリットは、没入感や、視点によって見え方の変わるギミックを作れる点です。たとえば、壁の裏にある紋章を見つけるような仕掛けですね。

ただ、そこまで凝ったものを作るなら、プラットフォームであるUnity単体で作ればいいと思います。


ツクールでは、そういった「難しい仕組み」はできるだけ排除し、アイデアさえあれば誰でも手軽にゲームが作れるシステムを最優先にするべきです。

その意味では、視点固定は正しい設計だと思います。


UnityベースのRPG Maker Uniteとの住み分けなど、今後の続報を楽しみにしたいと思います!



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【編集後記】
差し替えで掲載がおそくなりました。

2026年5月19日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑮_2/5_リアルな死》

 この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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舞浜までは20分、防雷は修復できそうな対空機関砲を修理、船体に積もった瓦礫の撤去に追われていた。


篠原は双眼鏡で舞浜方面を第一艦橋からじっと見ていた。


やがて20分後、肉眼でも陸地がうっすらと水平線に見えてくる。甲板で撤去作業をしていた足立の無線に篠原が問いかける。


「足立さん、25式指揮装甲車ってみたことありますか?」


「ああ、連隊の活動で何度か使ったな。それがどうした?」


「いえ、大きなタクティカルアンテナがある車両ですよね。ボンネットにRとでも書きましたか?」


「ん?ああ、R連隊専用の25式指揮装甲車だと分かるようになー。だからそれがどうしー」


足立は何かを察すると、瓦礫を海に投げ捨てて第一艦橋へ向かった。心臓が締め付けられる。他の隊員を押しのけてブリッジを駆け上がると篠原の元へ汗だくでやってきた。


「指揮装甲車が見えたのか!どうなった!」


篠原は黙って双眼鏡を渡す。


そこに映ったものは、運転席部分と中央の2ヵ所に穴の開いたスクラップだった。燃え残った一部に特徴的なタクティカルアンテナ。そしてボンネットにRの一部分が見えていた。


竜の姿はすでにないが、まだ一部の車両は黒煙をあげている。


直後にクシャルボコスから偵察ドローンが飛び立つ。


誰も何も言えない時間が流れ次第に陸地が近づいてきた。


防雷の甲板にはクシャルボコスからタブレットを積んだドローンが飛んできた。タブレットには偵察ドローンの映像が映し出され、そこに映されたものは黒い大地。瓦礫の山。そして人の肉片。


生命を一切感じない死の世界。


10分後、偵察ドローンにより安全が確認された死の大地に足立、仲原、そして山口と名前を変えた篠原、リークと海兵隊20名が上陸した。


真っ先に指揮装甲車の残骸に向かう足立と仲原、篠原は少し顔色が悪い。モニター画面で見るものとは情報量の違う本物の戦地に戸惑っていた。

不満げだったリークも、焦げた土を踏んだ瞬間、そこに広がる惨状に言葉を失った。


そんな中でも足立の声が響く。


「仲原、ブラックボックスは回収できるか!」


「指揮装甲車のブラックボックスは、D6型です!核でも落ちない限り残るはずです!」


二人は瓦礫を押しのける。瓦礫に飲まれた軍用車は本来なら簡単には掘り起こせない。だが二人は正解を知りたい一心で掘り起こす。自分の骨が軋む音も聞こえない。砕けた破片が頬かすめても気が付かない。


その様子を見ていたタラメアの海兵隊も無言で手を貸した。足立が助手席のドアを引きはがし閉まらないように抑え、仲原が助手席の下にあるブラックボックスに手を伸ばす。


ドアに支えられていた瓦礫の重みが、車体のフレームへ一気にのしかかる。


「ギッギギ」


潰れそうになる車体を屈強な男が咄嗟に支えた。


「キョウダーイ。なるべくイソグ OK?」


リークの腕から流れた血が、ポタポタと仲原の背中に落ちる。仲原は小柄な体型を活かして車体からブラックボックスを回収する。


仲原が指揮装甲車を離れ、足立とリークが息を合わせてその場を離れると、ガシャンと大きな音を立てて指揮装甲車は使命を終えた。


リークは無線で技師を呼ぶとブラックボックスの解析を指示する。


技師は背負ってきた携帯機器をブラックボックスに接続すると、後ろにいる足立に声をかけた。


「同盟国として、タラメアに解除コードの共有を」


足立は無言でうなずくと、技師に近づいて耳元で一言。


「俺が直接入力する。同盟国は解除コードよりも中身が知りたいだろ?」


そういうと、答えも聞かずに手元を体で隠し入力し、音声を再生させる。


それは、壮絶な戦いと大仲の最後をノイズ交じりに記録していた。


リークが無言で十字を切った。


「あああああぁぁぁぁぁぁぁ!」


声を上げたのは意外にも足立だった。


「一人で竜に特攻なんて駄目ですよ大臣!あなたにはできることがあった!あなたにしかできないことがあった!あなただからできることがあった!」


「なぜ?なぜですか大臣!R連隊は貴方が作った連隊です。あなたが先に逝ってどうしますか?」


「おれが、竜を起さなければ、あああああああああ!!!」


地面を叩きつける手に大粒の涙が落ちる。仲原も顔を伏せているが、頬をつたった涙が焦げた地面に落ちた。


篠原は無表情でその様子を見ながらつぶやいた。


「これがリアルな死……。大臣でも兵士でも民間人でも等しく死ぬ。そっか、いつか私も。」


そう言うと顔色を悪くして空を眺めた。黒煙に染まった空は篠原の気持ちを表しているようだった。