この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
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大種族神が判決を終えたころ、防雷は東京湾を抜けエーテル圏を離脱していた。
無線が回復すると、篠原は安堵した表情も見せず、埼玉の国有シェルターに設置されたR連隊本部に無線を入れる。
しかし、応じる者はいない。
足立が目線を下げるながら辛そうに語る。
「本部の全チャンネル応答なし。無線は千葉にも、埼玉全域に届いているはず。本部を移動したとしても応答はあっていい。」
「これはもう……。くそ!俺たちが眠れる竜を起こしてしまったせいだ!」
それを聞いた仲原は、表情を崩さずにこれを否定する。
「隊長。今回の作戦は防衛大臣勅命であります。作戦としても有効でした。しかし、竜は想定をはるかに超えていました。これは隊長の責ではありません。」
それを聞いた篠原は、襟を正すと反論する。
「では誰の責任だと?私ですかぁ?私が竜を想定したプランを作らなかったからですかぁ?くだらないですねぇ。今は情報の収集が最優先ですぅ。
責任とか後悔とか怒りとかぁ、それは後でやっといてくださぁい」
その言葉に反射的に応戦しようとした仲原を遮ると、無線のチャンネルを変える。AI篠原に声を変更すると大仲へのホットラインチャンネルを叩く。
これを見た足立は察した。
「そうだよなぁ。本部が応答しない。その可能性は高いよなぁ。大仲大臣ッ頼む!」
「ザザザザ・・・・」
無線のノイズから声が聞こえてくる。
「こちらは、防衛大臣代行、津田です。手短にお名前とご用件をお願いします」
無線の後ろで自衛隊らしき人々が、何かを誘導したり設営しているような命令・金属音が聞こえてくる。
「津田議員。篠原です。防雷は主力火器90%以上を損失。現在東京湾を離脱しクシャルボコスと北上中です。大仲大臣は千葉ですか?」
「……ああ、君か。そうだ。君のプラン通りに舞浜へ竜の誘導作戦中だ!もう舞浜についているころだろう。すまんが避難民の対応で手いっぱいだ、そちらは足立、いなければ艦長の判断で動いてくれ」
そういうと無線は切れる。篠原はチャンネル切り替えクシャルボコスのリーク大佐に連絡する。
「兄弟。舞浜に要救助者がいる。火力が欲しい、一緒に来てくれるか」
「キョウダーイ。それはノーだ。同盟国のギムは果たしたハズでーす」
「確かに。だが要救助者は要人です。それもかなりのVIPです。自衛隊のDBから秘匿兵器の情報を消せるかもしれませんよ?」
「ハハハハッ。魅力的な提案だが、やはりノーです。一度公になった情報はすでに無価値でーす。ドラゴン退治とは釣り合いませーん」
「そうですか。兄弟。クイズです。満載排水量: 約120,000トン、動力: A1B加圧水型原子炉 4基、カタパルト: 電磁式カタパルト、積載能力80機、両舷ミサイル有効射角0から90度、換装方式、タラメア23式、AIリンケージ航法搭載。これは何でしょうね?」
「……。同盟国に対するハッキング。オイキョウダイ。オシオキが必要か?」
声のトーンが1つ下がった大佐の言葉に
「ハッキング?これはクイズですよ。冗談は抜きにしても並走していれば分かることを並べただけです。私はこういうの得意でして……もう少し細かくヒントを出しましょうか?」
「篠原!キサマッ。5分まて!」
「3分待ちましょう」
ブツリと切れた無線。容易に激昂するリークを想像し、足立と仲原は顔を見合わせた。
「なんであんなに煽るんですか!」
仲原が苛立ちを隠せない。
「えへ!だってリークっちはー、沸点低いでしょー。冷静に考えてぇ半壊の防雷と空母、フリゲート艦だけでぇ竜なんて戦えないですよぉ。だ・か・ら、ちょっと興奮させてぇ、他の海兵が冷静な意見を言いにくくしておきましたぁ」
「では?意図的に?」
仲原の質問を無視して、舞浜への航行ルートを篠原が確認していると、無線がなる。
「いいだろう!クシャルボコスおよび護衛艦は、同盟国の要人救助に加勢する。デカイ見返りがなければ、防雷は不慮の事故で沈む覚悟をシロ!」
一方的に無線がきれると、護衛艦の副砲が防雷に照準を合わせつつも、進路を舞浜に合わせたのだった。