<あらすじ>
「剣の才能がない」と言われながらも、騎士を目指す少女・フィーア。
死にかけた彼女が思い出したのは、300年前に「大聖女」として生きていた前世の記憶だった。そして記憶と同時に、規格外の聖女の力まで蘇る。
前世で自分を殺した魔王の右腕から、「聖女として生まれ変わったら殺す」と脅されていたフィーアは、その力を隠しながら騎士として生きることを決意する。
果たして、聖女であることをひた隠し続けることができるのか……!?
<レビュー>
転生系の聖女ものです。
近年ではすっかり定番ジャンルの一つになった聖女ものですが、今期の作品としてはかなり良いと思います。
まず面白いのが、300年という転生期間を単なる時間経過ではなく、「聖女という存在の変化」に利用しているところです。
主人公はもともと大聖女で、規格外の回復能力を持っていました。
そして転生後も、その力はそのまま蘇ります。
一方、300年後の世界でフィーアが初めて目にした聖女たちは、彼女の知る聖女とは大きく違っていました。
つまりフィーアから見れば「強くてニューゲーム」どころではありません。
「強くてイージーモードでニューゲーム」です。
この力の差も映像で非常に分かりやすく表現されています。
現代の聖女たちが、かすり傷のような傷を3人がかりで治療する。一方、騎士たちが命懸けで魔物と戦っている横では、聖女たちが安全な場所で会話をしている。
単純に治癒能力が弱くなっただけではありません。
フィーアが知っている300年前の聖女とは、「聖女とは何をする存在なのか」という役割意識そのものが変わっています。
ここが面白いところです。
そして、その光景を見たフィーアは怒るのではなく、泣いてしまいます。
ここはシナリオがかなり良いですね。
もし、
「今の聖女は何をやっているんだ!」
と怒鳴れば、現代の聖女を批判するだけの場面になります。
しかしフィーアは泣く。
自分が人生を懸けて戦い、命まで失った。その300年後の未来が、自分の想像していたものとは違っていた。
その落差にショックを受け、怒りよりも悲しみが先に出てしまう。
だからこの場面は、「弱くなった現代の聖女」という話だけではなく、
自分が信じていた未来を失った人の悲しみ
として見えるのです。
この感情の選び方はかなり印象に残りました。
もう一つ良いのが、シーン単位ではかなりシリアスなのに、作品全体としてはライトに見られるところです。
前世では魔王の右腕に殺され、転生しても聖女だと知られれば再び命を狙われる可能性がある。さらに300年後の聖女の変化に傷つく。
設定だけを並べれば、かなり重い作品です。
しかし主人公のフィーア本人が明るく前向きで、少し天然な性格なので、作品全体まで重くなりません。
シリアスな場面ではしっかり感情を描き、それ以外ではフィーアの明るさでライトに進める。
この温度調整も上手いです。
「規格外の力を持った聖女が無双する」という分かりやすい型に、「300年の間に変わってしまった聖女文化」という独自の要素を重ねる。
テンプレの入りやすさと、本作ならではの設定がうまく融合しています。
今後、フィーアが現代の聖女たちとどう関わり、300年前から変わってしまった聖女という存在をどう受け止めていくのか。
そして何より、本人は本当に最後まで「大聖女」であることを隠せるのか。
かなり楽しみな作品になりました。
