2025年11月30日日曜日

最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか #1~#9( 一部レビュー )

<あらすじ>

舞踏会の最中、婚約者である第二王子・カイルから、理不尽な婚約破棄を告げられた公爵令嬢・スカーレット。

“婚約者”という立場に甘んじて耐え続けてきましたが、ついに我慢の限界を迎えます。

「私の最後のお願いです。このクソアマをブッ飛ばしてもよろしいですか?」

こうして、スカーレットの“拳”が舞い踊る物語が始まります。


<レビュー>

本作は、婚約破棄から始まる悪役令嬢ものですが、最大の特徴は解決手段が“拳”=暴力的制裁である点にあります。さらに、主人公には隠された聖女設定があり、時間を操る能力を備えています。序盤では「超加速」によって周囲の時間を相対的に遅く見せ、自身の行動速度を上げる描写が中心でしたが、物語が進むと、物体を過去の状態へ“巻き戻す”ことで治癒に相当する効果を発揮したり、汚染された構造物を汚染前へ戻すといった応用も可能であることが示されます。


結果として、人の生死を直接左右できるかは別として、物質的な破損や負傷を実質的に「なかったこと」にできるため、彼女はヒーラーとしてもアタッカーとしても一流という、きわめて強力な立ち位置にあります。


この“チート級”の主人公が、「世のため人のため」というスタンスで悪人を見つけては殴って片づけるうちに、いつしか神々の対立に巻き込まれていきます。対立するのは、第1話でスカーレットに「クソアマ」と罵倒され、実際に殴り飛ばされた転生者にして異教徒の女神です。個人間の確執から、次第に神話的スケールへと広がっていく設計が印象的です。


また、ありがちな“王子たちに取り巻かれる”お花畑展開ではなく、どちらかといえば少年漫画的な段階バトルに近い構成です。強敵を打ち破って一区切りつくと、さらなる敵が現れる――その繰り返しによってテンポ良く見せていきます。作画は一見すると女性向けの繊細さがありますが、内容はバトルとギャグの比重が高いため、そのギャップも本作の魅力だと感じます。


総じて、聖女系の定番イメージから意図的に外しつつ、爽快な解決と高火力の能力演出を押し出した作品です。悪役令嬢ジャンルにアクション快感を求める方には特に相性が良いと思います。ご興味があれば、ぜひご視聴をおすすめします。



2025年11月27日木曜日

【軽い日記的なもの】迷惑メール実験。

こんばんは。管理人の緑茶です。

本日は、三連休に実施した小さな実験の結果をご紹介します。題して、「あやしげなサイトにメールアドレスを登録したら、三日後にどうなるのか」です。読者の皆さまには真似を推奨しません。危険回避の観点からの記録としてお読みください。


方法はシンプルです。


実験専用の使い捨てメールアドレスを新規作成します。


そのアドレスを、いかにも怪しいと感じるサイトに登録します。


登録後三日間、受信ボックスの動きを観察します。

※ スクリーンショット等は、手口の拡散防止と読者保護の観点から掲載しません。


それでは、結果です。


登録後・数分以内に、いわゆる恫喝系の迷惑メールが到着しました(「有料サイトにアクセスしたので支払え」等)。

ただし、その後一日目の残り時間は意外と静かで、新着は少なめでした。


二日目に入ると、商材系や投資系などのメールが少しずつ届き始めます。


三日目は、いわばフィーバー状態でした。件名や差出人の傾向は、知り合い装い系・アダルト系・誘導系・恫喝系・金融機関装い系・投資系・出会い系・メルマガ風・当選詐称・広告・○○社とのタイアップ装い系・外国語(中国語、ハングル、タイ語と思われるもの)など、実に多彩でした。

ただし、その後はプロバイダーの迷惑メールフィルターが効いたのか、受信数は減少に転じ、メルマガ風や広告系の、フィルターをすり抜けやすいものが散発的に残る程度になりました。


想定以上の量とバリエーションでしたので、これ以上の継続はプロバイダーや他者に迷惑がかかると判断し、実験用アカウントは削除して終了しました。


結論としては、メールアドレスの登録は極めて慎重に行うべきだとあらためて実感しました。

可能であれば、ふだんは使い捨てアドレスを使い、必要に応じて自動転送でメインのアドレスへ受け取る運用が安全です。間違った登録をしてしまっても、使い捨て側をすぐに停止・作り直しできます。加えて、危険なサイトにはアクセスしないという基本も、やはり最強の予防策です。


以上、本日の日記でした。皆さまも、どうか安全第一でお過ごしください。


本記事はセキュリティ意識向上のための注意喚起です。再現実験やスクリーンショットの公開は推奨しません。

危険なサイトへのアクセスや登録は行わないでください。

2025年11月25日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才⑥_神の兵_前編》

 【ここまでのあらすじ】

ある私有シェルターの代表、日本有数の実力者・大荻山《おおぎやま》剛三郎《ごうざぶろう》は、私兵と要人・愛人のみを連れてシェルターを出て東京脱出を試みていた。

神が作り出した怪物ガーゴイル(通称 UFB)の中でも特別にチューニングされた個体、武闘派ベルガンと支援型サーチは、神の気まぐれな命令で兵も連れずに、大荻山の率いるタラメア製の最新兵器と戦うことになった。

ベルガンはタラメアの戦車 YA-24 と装甲車 DD-24 に搭載された SUB11F(全方位対ドローン迎撃機構) に苦戦。ベルガンをかばい、サーチは負傷してしまった。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


傷ついたサーチを眼下に置いたベルガンの表情は、かろうじて知性を保っていたが、怒号に満ちた猛獣のようでもあった。

残された理性は多くない。だがベルガンは、自分が冷静さと判断力を欠いていることだけはギリギリで理解していた。


ベルガンは即座にヴァロンへ呼びかける。


「ヴァロン。すまない、サーチが負傷した。——また俺だ。俺に策がないばかりに。策をくれ、ヴァロン!頼む」


神の居城「デスランド」の王座。ヴァロンは神と二人、サーチの〈視覚共有〉で現場を眺めていた。


「創造主様。たしか、ベルガンやサーチが求めれば私の参戦は許可されていましたが……」


ヴァロンは、迂闊に口を挟むと不機嫌になる神を横目でうかがう。


「ああ、もちろんだとも! あのプライドの高いベルガンが、自分の欠点を分析してヴァロンに助言を求めるなんて面白い。ヴァロン、好きに手助けしてやれ!」


「私が策を与えれば、必勝となりますが——本当によろしいのですね?」


「くどい! “必勝”とやらにも興味がある。ヴァロン、お前の知性を見せてみろ!」


「では」


ヴァロンの口元が、不敵に緩む。本来は軍師——参謀型の特殊個体。これまで神の気まぐれとベルガンの暴走に振り回されてきた衝動が、解放宣言で一気に爆ぜる。


「ベルガン。視覚共有のマップを見ろ。黄色が敵の位置。小円がドローン、大円が戦車と装甲車、点滅は雑魚車両だ。赤い円が見えるな? そこがドローン陣形の“穴”だ。やつらは 8 機の“目”を立体的に使ってこちらの座標を正確に割り出している。まずは陣形を崩す。——サーチ、損傷は見えている。シールドと飛行は問題ないな?」


傷ついたサーチが応える。


「ええ、やられたのは腕と脚。翼・胴体・頭は硬化を強めて守ってあるわ。加速は厳しいけど、その程度なら」


ベルガンが割って入る。


「サーチ、強がるな! たとえ飛べても、戦闘には耐えられない!」


ヴァロンが冷静に指示を重ねる。


「わかっている。落ち着け、ベルガン。サーチはそのまま隠れて、まずシールドを 100% まで展開。展開できたら、その位置から西へ上昇——高度 1000m までだ。その後はシールド維持。最初は狙われるが、数分で終わる。シールドに専念しろ」


「了解。30 秒もあれば、ベルガンのエーテルも借りてすぐ展開できる」


「よし。ベルガン、サーチが上昇したら 5 数えろ。隠れている瓦礫を破壊して、最短距離で“赤い円”へ直進。可能な限り高度を上げ、同じく 1000m を目安に接近。次の指示はすぐ出す」


30 秒後。サーチはシールドを完全展開し、上昇を開始。


「……1……2……」ベルガンのカウントも始まる。


再び射線に入ったサーチに SUB11F が即反応する。幸い、先ほど吹き飛ばされた位置関係の影響で YA-24 主砲の射程からは外れていた。


「ドドン!」


サーチのシールドに着弾。しかし 100% まで硬化したシールドは SUB11F の副砲程度では大きく損なわれない。


「……4……5!」


「バカン!」と分厚いコンクリ壁をぶち抜き、ベルガンが指定座標を目指して上昇。数秒で到達。


ヴァロンの次の指示が飛ぶ。


「右下のドローンを視認。エーテル滑空で追え!」


サーチの視覚共有により、小さな標的でも最速で捕捉できる。急降下するベルガンに、横方向への回避では逃げ切れない。5 秒で捕獲、破壊成功。


「よし。あのドローンは本体から離れるのを嫌う。エーテル干渉を警戒しているんだろう。サーチが注意を引いた瞬間に“DD-24”と”ドローン”の間へ割って入れば判断を誤る。——読みどおりだ。次! 左・後方のドローン。創造主からもらった飛び道具、ファイアアロー で貫け!」


ベルガンは掌にエーテルを集中させ、線状の熱線を放つ。「ドン!」即爆散する。

ヴァロンが畳みかける。


「相手は AI。初見の攻撃には対応が遅れる——当然だ。次! 爆散方向へ上昇。視覚共有で次の“円”を示した、そこへ」


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


(数分前)大荻山陣営。


「SUB11F 正常稼働、命中率 75%。すごい……魔法のような予測射撃だ」


私兵の声に、大荻山が汚く笑う。


「わはは。化け物どもは夜目も利かん。せいぜいドローンを見つけても AI 制御の回避で接近すら不可能。所詮は化け物だ。人間様の知性の前ではサル同然よ」


「先生、まもなく YA-24の主砲の射程に入ります!」


「AI 射撃管制に優先タスク設定。“突撃馬鹿”から始末しろ!」


「後方の女型は後回しで?」


「最強の“矛”と“盾”。どちらかを先に壊せるなら“矛”だ。盾は所詮盾、こちらへの脅威は薄い。まして女型。矛が死ねば逃げ帰るさ。わはは」


AI は確実にベルガンを誘導し、YA-24の主砲の射線へおびき出す。


「先生、射程に入りました!」


「よし。砲撃システムを SUB11F にリンケージ、タイミングを譲渡!」


数秒後——


「ロックオン……!? 女型が急降下、射線に割って入ります!」


「化け物にも同族愛か? くだらんロマンスだ。構わん、リンケージ継続!」


YA-24 の主砲が火を吹く。独特の低い砲声。

着弾——


「命中!……いえ、まだ活動中……嘘だろ……」


大荻山は一瞬だけ目を疑いながらも優勢を崩さない。


「西へ逃がすな。遮蔽物が増えると SUB11F の射線が取りにくい。東へ追い込め!」


数秒、緊張が張り詰める。


「先生、敵は東側の建物残骸に隠れました。射線取れず。ドローンの光学カメラもロスト、迂回ルート計算中」


「いらん! これ以上 DD-24 からドローンを離すな。ジャミングされたら失速してしまう。隠れているならそれもいい。SUB11F を冷却モードへ、予備弾装填、次に備えろ」


1 分後——


「冷却 25% 完了、予備弾装填完了!」


大荻山が SUB11F を即座に射撃モードへ戻す——その瞬間。


「敵、上昇。西です!」


「逃がすな。射線に入り次第、撃ちまくれ!」


「ドドドン!」


SUB11F が西に逃げた個体を正確に叩く。


「ロックオン。高度750m、緩やかに上昇中。命中率 90%!」


攻勢を強める大荻山——その時。


「建物からもう 1 体出現! 上昇しつつ接近! AI がドローン回避モードに自動スイッチ!」


「駄目だ、それでは横回避になる。手動に戻せ! 距離を取れ、DD-24 から離れてもいい!」


「了解——なんてことだ……先生、ドローン 4 号機シグナルロスト!」


「くそがああ!」


「先生、続いて 3 号機もロスト!」


大荻山の計算が崩れる。


「3号機? 二機墜ちた? なぜだ、報告!」


「1号機の光学映像。レーザーでしょうか、敵から発射された線状の何かに貫かれています」


「まずい、飛び道具……! あいつは接近特化ではないのか?!これ以上ドローンを失うな。回避優先! 西側は砲撃続行。ただし YA-24 への誘導は中止、こちらの防衛を最優先!」


私兵が慌てて AI の命令を組み替える——刹那。


「先生、5号機・6号機、シグナルロスト! 4D 移動予測精度が 50% まで低下!」


「何だ、何が起きている。なぜ急に AI の演算を超えてきた? 読まれている? いや、違う……再計算……そうか、“意図的な状況の高速変化”で AI に再計算を強要し、その隙で精度を落とす——そこを突いているのか? しかし、そんな頭脳戦を——」


「先生! 8号機、落ちました!」


大荻山から血の気が引いていく。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同時刻 ベルガン


ヴァロンからの通信が入る。


「よくやった。残りのドローンは放置でいい。もう目としては数に劣る。戦車と装甲車を落とすぞ!」


2025年11月24日月曜日

グノーシア #1話~#6話(一部レビュー)

 <あらすじ>

物語の舞台は漂流する宇宙船。

“人間に化けて人間を襲う未知の敵”――『グノーシア』が船内に紛れこんだことを受けて、

乗員たちは疑心暗鬼の中、毎日1人ずつ疑わしい者を投票で選び、コールドスリープさせることを決める。

グノーシアを全てコールドスリープさせることができれば人間の勝利。

なんと主人公・ユーリは、どのような選択をしても、最初の1日目にループする事態に。

わずかな時間を繰りかえす、一瞬にして永遠のような物語が、いま、幕を開ける。


<レビュー>

本作は、ゲーム原作の人狼×タイムリープ作品です。毎回同じスタートから、人に化けた怪物「グノーシア」をあぶり出していきます。グノーシアを見つけても、逆に襲撃されても、投票で凍らされても――主人公が持つ“鍵”が満足するまで、世界は何度でも1日目へ巻き戻ります。


本作は人狼要素にかなり寄せた設計で、ロール(役職)が機能します。

 ・ドクター:前日にコールドスリープさせた人物が人間かどうかを翌日に判定します。

・エンジニア:1日1回、指定した1人が人間かグノーシアかを判定します。

・守護天使:航行(転移)中に起きるグノーシアの強襲から、自分以外の1人を保護します。

 

初期配置によっては実質詰みに近い回から始まることもあります。合理的に考えれば、主人公は“鍵”が要求する情報を集めるため自分の生存を最優先に立ち回るのが得策に思えますが、物語上はグノーシアの排除と人間側の勝利に尽力する姿勢が貫かれます。

ここはゲーム原作ゆえのシナリオと捉えるのが妥当で、知略よりも“誰を信じるか”を選ぶ物語として受け止められるかどうかで評価が分かれるところだと感じます。


とはいえ、“都合の良さ”や“ゲーム的ロール制”を気にしなければ、本作は毎回犯人が入れ替わるタイムリープ型ミステリーとして非常に相性のよい仕立てになっています。同じ時間へ戻りながら“毎回別の並行世界”へ滑り込むため、犯人・人数・関係性が都度変化します。視聴者も途中まで推理に参加できる点が大きな魅力です。


比較対象としては『Re:ゼロから始める異世界生活』(以下、リゼロ)は、固定世界で死に戻り→最善ルートを探索する構造です。一方で『グノーシア』は、世界側が毎回シャッフルされる“人狼卓”に近い構造を取ります。固定解を目指すルート探索ではなく、確率と会話で切り抜ける反復推理という趣であり、そのため週単位で視聴しても飽きにくいと感じます。第6話時点でも、会話の癖・嘘のつき方・投票の流れが生む“微妙な手触り”にドラマが息づいています。


総じて、繰り返すほど面白くなるタイプの作品だと評価します。世界の“底”に触れていく手応えが少しずつ積み上がっていく感覚は、アニメ化との相性も良好です。まずは数話、続けて視聴してみていただければと思います。



2025年11月21日金曜日

友達の妹が俺にだけウザい #1~#7(一部レビュー)

 <あらすじ>

学校では清楚な優等生として大人気の彩羽は、明照にだけやたらとウザい。

そんなハイテンション系ウザかわ女子・彩羽に振り回される明照の前に、

塩対応女子・真白が出現。

それをきっかけに、明照、彩羽、そして仲間たちの日常は激変し――!?

ウザかわ女子が(頼んでないのに)寄ってくる! 悶絶必至のいちゃウザ青春ラブコメ、開幕

<レビュー>

親友の妹と、お嬢様の同級生から好意を寄せられる主人公が、無自覚にモテまくるという鈍感系主人公ラブコメです。テンプレの鈍感系ラブコメを抑えつつ、独自要素としてゲーム制作チームという裏の顔と、悩みを持っているヒロインを大胆に手助けする青春要素という表の顔を持っている設定多めの作品です。


設定は多いですが、主要登場人物は少なめで5人位覚えれば楽しく視聴できる情報量を上手くコントロールしている作品です。複数のヒロインとの鈍感系ラブコメだと常時「主人公の取り合い」になってしまうので、多くの作品は主人公にフォーカスしすぎないようにモブを投入し、群像劇のような側面をもたせることがありますが、この作品は取り合いを楽しむことにスポットしつつ、設定を盛ることで少ない人数でも単調にならないような工夫を感じます。

 

作画も安定していますし、なによりキメカットのクオリティは結構高いと思います。原画の工数を上手にメリハリをつけて予算を有効に使用している印象です。


また作品の系統的に、親友の妹が負けヒロインぽく見えてしまい、お嬢様が優位になりがちですが妹の露出の回数を増やすことでどちらがヒロインになるのか、先が読めない(むしろ作者も決めていない)ような面白さがあります。


ハーレム要素もありますが、下ネタや露骨なエロ描写での視聴者アピールは少なく、内容で勝負している気合がとても好感の持てる作品ですので、ややタイトルで損をしている感じはありますが一度見ると面白いと感じる作品ですのでご興味があれば、おすすめです。



2025年11月18日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才⑤》

ある私有シェルターの代表、日本有数の実力者、大荻山《おおぎやま》剛三郎《ごうざぶろう》は、私兵と要人・愛人のみを連れてシェルターを出て、東京脱出を試みていた。


しかし、地下のシェルターから大型エレベータで地上に出た車列を襲ったのは、エーテルによる大規模なシステム障害だった。戦車の駆動系など構造的に単純な部分は動いていたが、早期警戒システムや自動照準システムなど精密機器に関しては機能が停止。

最高性能のタラメア製の戦車や装甲車も精密機器が動作しないとなれば、ただの硬くて重い戦車である。


すぐに私兵のリーダーが大荻山に指示を乞う。


「先生。想定以上にジャミング(電子妨害)が強い。そのせいで、性能の高いシステムが全く使えません。脱出を取りやめますか?」


大荻山の回答は早かった。


「何を寝ぼけている! 自衛隊の兵器はドローンやロックオンシステムを使用していた。つまり、このジャミングには穴がある。少なくともR連隊との戦闘地域まで行けば弱まるはずだ! 進め!!」


号令をきっかけに、車列は埼玉方面へ移動を始めた。先頭はタラメア製の最新鋭の戦車YA-24と装甲車DD-24である。そのあとに私兵を乗せた輸送トラック、バス、自家用車などが続く。


一人のリーダーがつぶやく。


「YA-24。なんて恐ろしい戦車なんだ。精密機器が使えない状態でも進行方向にある大きな瓦礫は崩し、後続車両が通れる程度の“地ならし”をしやがる。まるで道を切り開きながら進んでいるようだ」


すると隣の隊員が答える。


「馬力も重量も自衛隊の25式とは比較にならないスケールだからな。さらにこいつは大荻山さんの指示で、オプション装甲のARM40(前方掃討機構)とSUB11F(全方位対ドローン迎撃機構)を装備している。最強の中の最強だな」


しばらく前進していると、突然「ピピピッ」と計器の起動音が鳴り始めた。どうやら精密機器が息を吹き返したようだ。


直後に大荻山から指示が飛ぶ。


「予想通りだ。ジャミングには穴がある! 索敵ドローンを上げろ!」


装甲車DD-24の上部はドローン格納庫になっている。格納庫の扉が重い音を立て開くと、8基のドローンが勢いよく舞い上がった。


装甲車の中にあるモニターに映し出された索敵情報の範囲は、驚くべき速度で拡大し周囲のガーゴイルを発見する。


大荻山はモニターを睨みつつ呟く。


「どの敵も遠い。そして動く気配もない。やはり暗闇ではヤツラは鈍い。このまま瓦礫の山を抜ければ先日の戦闘の高熱で溶けた区域に入る。そこまでだ。そこまで行けば速度が出せる」


20分後、ついに大荻山の車列はR連隊の残骸が点在する区域までやってきた。その時、索敵システムが反応する。


「何事だ!」


大荻山が無線で声を張る。


「後方より急速に接近する敵影です。数2!」


大荻山は直ぐにその正体を看破した。


「例の王とか女王とかいう特殊個体だ! 一般車両は散開しろ! YA-24とDD-24は光ファイバーリンク。座標をYA-24へ送信! YA-24はSUB11F(全方位対ドローン迎撃機構)で迎撃!」


まるで軍人。一般人である大荻山がタラメアの兵器を持っていた理由はここにある。彼は兵器マニアなのだ。彼は実力者である。その分だけ命も狙われてきた。

自分の命を守る武器――それは護身用ナイフから始まり、銃、機銃と強力な兵器になり、行きついたのがこのタラメア製の兵器である。自分の命を守る武器だけに、その性能は熟知していた。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


同時刻、ベルガンとサーチは合流し、大荻山の車列を追っていた。


サーチがすぐに異変に気付く。


「ベルガン、人間の車列が散開を始めたわ! あとはドローンが8機上がってきたわよ!」


ベルガンも答える。


「創造主様がエーテルを抑えたからな。ご自慢のコバエが動けるようになったのか! まずはコバエを潰すぜ!」


ベルガンはサーチの視覚共有でドローンを察知すると、一直線に破壊に向かう。


すると、狙われたドローンは即座にベルガンから離れ始める。


「クソがぁ! 逃げてやがる!」


ベルガンがさらにギアを上げた。その瞬間、サーチが制止を促す。


「危ない! よけて!」


ベルガンがその声を理解した瞬間、「ドン」と鈍い衝撃がベルガンの横腹に刺さる。


「痛ってえ!」


「続けてくるわよ! 上昇して!」


反射的に急上昇するベルガン。僅か数秒後に、数発の弾丸が通過していく。


「ベルガン! 私たちの位置がかなり正確に知られているわ! 一旦距離を取りましょう!」


だがベルガンは知っている。距離が離れれば人間が有利になることを。


「駄目だ! むしろコバエを落とし、接近する!!」


そういって、姿勢を立て直したベルガンに再び弾薬が刺さる。「ドン!」


「ぐあああああ!」


ベルガンは上下左右に回避行動を行いつつ、最も近いコバエ(ドローン)を目指す。


だが、ドローンは狙われると離れていく。


「くっそ! コバエの分際で!!」「ドン!」


「ぐああああ!」


サーチがしきりに通信を入れる。


「ベルガン! 相手はあなたの回避を計算し砲弾を撃ってきている! 回避を複雑に!!」


サーチがベルガンに意識を向けていた隙を、ドローンは見逃さない。


「ドン!」「きゃぁ!」


サーチの脚部に着弾。サーチもベルガン同様、肉体の強化を受けているため一撃で致命傷を受けることはない。

だが、タラメアのYA-24のSUB11F(全方位対ドローン迎撃機構)は大型ドローンを想定した自動迎撃システムである。


それゆえに威力の高い弾薬を装備している。


「サーチ! クソ!!! コバエはダメだ! 追えば逃げる! 深追いすれば撃たれる! 先にあの戦車をブチ壊す!!」


ベルガンはサーチが被弾したことで、怒りがさらに増加する。


「ベルガン! だめ! 直線的な動きは相手の――」


言いかけた言葉が終わる前に多数の着弾音。


「ドン! ドドドン!」


「うおおおお!」


被弾しながらもさらに加速するベルガン。


するとタラメアの戦車YA-24の主砲がベルガンを捉える。


「いけない!」


サーチは急降下してベルガンを止めに入る。


当然この直線的な動きも、迎撃システムの餌食となる。SUB11Fの特徴の一つが、主砲とは独立した複数の砲門からなるドローン迎撃攻撃にある。


「ドン! ドドド! ドドン!」


サーチの体に何度も激痛が走る。サーチは新しい体で手に入れた自己硬化能力で、何とか砲弾のダメージを軽減する。そしてさらに加速。ベルガンを助けるため、シールドの展開準備も進めていた。


「お願い! 早く! 早くシールドを!」


サーチのエーテルシールドは、周囲のエーテルを集約し物質化することで盾として機能する。その特性上、エーテルの濃度が低い地域では、必要なエーテルの集約に時間がかかる。


ベルガンもSUB11Fの砲弾を正面から浴び続け、速度が落ちつつあった。


そしてついに、主砲の射程に入ってしまう。


「ズウウウン」


YA-24の主砲が重音を上げて火を吹いた。三種の火薬を多層的に詰め込まれた砲弾は、発砲後に加速する推進力となる火薬、相手の戦車の装甲を貫通して内部でまず小規模な一次爆発、そして強烈な二次爆発で大きなダメージを生む機構だ。


この主砲が直撃すれば、ベルガンといえど無事では済まない。


だが、SUB11Fの砲撃で姿勢を崩されるベルガンも、これを避ける術はなかった。


直撃。


そう見えた瞬間、サーチがベルガンの盾となって割って入った。


エーテルシールドはまだ完全には展開できておらず、主砲の貫通を許す。そして一次爆発。サーチはベルガンに向かって大きく吹き飛んだ。そして直後に二次爆発。大量の鋼の屑を含む殺傷力の高い爆風が、サーチの体に無数に刺さる。


「あああ!」


思わずサーチの声が漏れる。


ベルガンがサーチに目を向けると、あの美しい右腕と足の一部が大きく損傷していた。一方ベルガンは、サーチが盾になったことで大きなダメージは受けていない。


――また助けられた。


ベルガンは己の顔面を殴ると、サーチを抱きかかえ、射線から離れるため、瓦礫の奥に着地した。


「サーチ。すまない」


傷ついたサーチを眼下に置いたベルガンの表情は、かろうじて知性を保っていたが、怒号に満ちた猛獣のようになっていた。

2025年11月16日日曜日

【軽い日記的なもの】AIによる脅威の文字認識!

こんばんは、管理人の緑茶です。

本日は日記記事です。


先日、とある工場を見学しました。そこは、納品された原料を加工して出荷する工場。長年の悩みは「納品書」と「支払い」の突合でした。理由は、この業界では注文数と納品数にバラつきがあり、分納が常態化しているからです。たとえば、4月の発注500個が「5月に300個、6月に150個、同じく6月に50個」といった具合で分納されます。これが複数の原料で毎月発生します。


たとえば5月だけ切り取ると、工場側の受け取りはこんな感じです。