2026年2月24日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑦》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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池袋に取り残された大国タラメアの最新鋭兵器、YA-24とDD-24の残骸。この残骸は国家機密の塊であることからタラメアのリーク大佐は残骸の回収、もしくは破壊を計画した。


太平洋上の安全海域にいる空母から、クラスター弾頭を取り付けたミサイルで残骸の破壊を試みたが、神の作り出したエーテルの干渉により不発に終わる。


リーク大佐は、次の手段として自衛隊を牽制しつつ、千葉県舞浜付近の海岸線から上陸作戦を強行する。


千葉から都内に入ると小規模なUFBとの交戦が始まった。だが、エーテル濃度はまだ低いエリアであり、光ケーブルによって通信を確保された兵器はタラメア自慢のAIが火器管制と索敵を最適化し、UFBを圧倒して撃破、車列は海岸から敷設された中継リールを引きながら池袋へ向けて前進していた。


都内に入ってから30分後、異変が発生し始める。


リークのもとへ、同種の報告が相次いだ。


「大佐、GPSの精度が低下しています。各車両の自己座標にズレが出ています」

「レーダー範囲が大幅に減少。これでは目視索敵とたいして変わりません」

「地形計測機器に異常。高低差の誤認が発生!」


どれも電子機器の異常を知らせるものだ。


それでも第二、第三と押し寄せるUFBの群れを次々と倒し、池袋への折り返し地点まで到達した。


電子機器の異変はついに兵器の根幹部分にも及ぶ。


光ケーブルで接続しているはずの索敵ドローンが、操縦不能になり次々と落下し始める。もともとマルチコプター型のドローンは小回りが利く代わりに各プロぺラの制御が難しく、内蔵している姿勢制御装置が操縦を大きくアシストしていた。


この姿勢制御装置が「天地を間違える」「方角を見失う」など、あり得ないほど原始的なエラーを発生させて操縦を困難にしたのだ。


このころから揚陸艦との通信も頻繁に途絶するようになる。車列と揚陸艦も複数の極細光ケーブルで接続されている。電波干渉のような現象は発生しないはずだった。


リーク大佐に同伴していた髭の高官は、大佐に呼びかけた。


「30%のドローンが落ちました。これ以上、目を失うのは危険です。AIも通信環境の悪化でパフォーマンスが出ません。撤退の決断を」


しかしリーク大佐は30秒応答しなかった。やがて足で指揮車両の椅子を蹴り飛ばし、決断する。


「転進。一旦クシャルボコスへ帰投する」


傲慢なリーク大佐であったが、この髭の高官とは長い付き合いだった。いくつもの窮地を共に生き延びた仲だった。リークは判断に迷ったとき、この高官の意見を聞き入れることが最善だと知っていたのだ。


ーー電子妨害の強さが自衛隊の報告とはまるで違う。やつらに喰わされたか?いや、大荻山もドローン戦術で戦ったログがある。

ーー負傷者を出す前に引き、フリゲート艦を連れて東京湾から艦砲射撃に切り替えるか。


最新鋭の空母「クシャルボコス」は空母でありながら左右に短距離ミサイルの発射口を持っている。核弾頭をも搭載可能なミサイルを発射でき、衛星誘導で射程100km。間接射撃で射程30kmを誇る。一世代前の護衛艦並みの性能である。


池袋は東京でも内陸に位置するため一度は捨てた案がリーク大佐の頭をよぎった。東京湾に入り、艦砲射撃で池袋エリアを潰す。だが、これは高官の猛反発によって廃案になったものだった。


なぜなら、護衛のフリゲート艦2隻の艦砲は有効射程20km前後で池袋には届かない。そのため旗艦である空母が東京湾に入ることになるからだ。


熱くなった頭を無理やり理性で、抑え込み転進を決断したリーク大佐の車列に再びガーゴイルの群れが襲い掛かる。


先頭の車両から無線が鳴る。


「大佐。前方、および左側面から怪物多数。電波妨害により総数不明。目視できる範囲で最低でも約50!」


リーク大佐よりも先に高官が無線を返す。


「各DD-24のAIリンク状況を報告しろ!」


「途絶」「途絶」「途絶」「途絶」「途絶」


どの車両も本国のAI本体とのリンクは切れている。これは端末AIのみでの戦闘を意味していた。


高官はすぐに注意を促す。


「いいか!オフラインでのAIは段違いに性能が落ちる。だが決して手動に切り替えるな。空中から高速滑空してくる怪物はAIに任せ、人間はサブマシンガンで撃ち漏らしを潰せ!撤退優先!」


リークも呼応する


「それでいい!撤退だ。あの程度のブレスならこの24シリーズなら耐えきれる!端末AIでも人間様10人分の処理性能だ。任せていい!」


だが、戦況は一瞬で傾いた。


順調に接近する怪物を撃退していた端末AIだが、徐々にその距離が縮む。リークが感じていた違和感。AIの再計算がほんの僅かに対応を遅延させていたのだ。


そして一匹の名もない怪物が瓦礫の裏に傷ついて落ち、揚力を失いながら低空で滑り、瓦礫の陰から車列へ飛び出して接近した。


すぐにサブマシンがこれを迎撃する。かすめる銃弾が怪物の体に傷をつけ、やがて体ごとスピンし地面に接触、停止した。


だが怪物は絶命の前に、ブレスを車列に放つ。


リーク大佐の予想通り、YA-24,DD-24は致命的なダメージは受けていない。だが、リンクしている極細光ケーブルはこの熱に耐えることはできなかった。YA-24とDD-24は相互リンクすることで真価を発揮する。YA-24単体には射撃統制用のAIはなくDD-24の端末AIがDD-24の対空機銃とセットで運用する設計だからだ。


DD-24とのリンクが切れたYA-24の主砲と副砲は一斉に追跡機能が停止。かろうじて射線上に敵が入ると自動的にロックオンし撃墜する程度に鈍化した。


DD-24の対空機銃だけでは威力に欠け、20もの怪物が500m圏内まで接近する。


リークが即座に指示を飛ばす「各車、無線リンクに切り替えろ。これだけ密集していれば電波妨害もくそもない!」


光ケーブルが切れた状態で放った無線。届くかどうかも分からなかったが、結果はすぐに出る。


放漫な射撃をしていたYA-24の主砲と副砲が息を吹き返し、一番近い敵から撃退し始めた。


だがリークは気づいていた。


ーー近すぎる。


近代戦において500mなど無いに等しい距離だ。もはやAIを以てしても完全に撃退するには物理的な限界がある。計算が追いついても、砲塔が追いつかない。


自衛隊の情報によれば、怪物は1tの人型パワードスーツを軽く持ち上げて上空から放り投げたという。大荻山の戦闘ログでもDD-24の後部ハッチを力任せに開けた形跡がある。


そんな相手に歩兵は出せない。しかし、密集隊形である以上、機銃も副砲も同士撃ちの危険があるため、AIは使わない。


ーー全滅する・・・。


リークに「全滅」が近い未来として浮かぶ。


だが、その未来を覆す事態が発生した。

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