この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
-----
池袋に取り残されたタラメア合衆国の最新鋭兵器、YY-24とDD-24の残骸。この残骸は国家機密の塊であることからタラメアのリーク大佐は回収もしくは破壊を計画した。
彼のいる空母『クシャルボコス』には急遽招集された核弾頭や上陸部隊を乗せた輸送艦が合流したのであった。
合流した輸送艦とドッキングしつつ、リーク大佐は無線を取った。空母は太平洋上に展開しているためエーテルの影響を受けず、日本の内閣に対してホットラインを使用できた。
リーク大佐は大仲防衛大臣に、無線を繋ぐと一方的に語りだす。
「災害に見舞われし、同盟国の友人よ。我々タラメア合衆国は同盟国として、これよりUFBへの攻撃を行う。ポイントは池袋エリア。なお、現在池袋エリアには電子妨害が発生している。少しでも効果を上げるためにクラスター弾頭のミサイル攻撃を実施する。カウントは60分だ。我々の誠意だ、手出し無用で静観されよ」
この無線を聞いた大仲は即座に中止を申し入れようとする。だが、それを制したのは意外にも篠原だった。
「大臣。やらせましょう」
大仲の怒りの矛先が篠原にも容赦なく牙をむく。
「クラスター爆弾だぞ!無差別に広範囲を爆撃する兵器だぞ!もし私有シェルター民に生き残りがいたらどうする!見殺しか!!」
篠原は冷たい視線で大仲に言葉のナイフを向ける。
「見殺し?すでに見殺しでしょう?R連隊には救出作戦を実行する兵力はもうない。助けなければいずれ飢えて死ぬ。でも助けることはもうできない。これを見殺しと言いませんか?」
返す言葉のない正論に否定の言葉だけが先に出る
「だがーー」
しかし、続かない。喉元に突き立てられたナイフは急所を捕らえていた。篠原は言葉を差し込む。
「クラスター爆弾は面白い実験です。爆弾自体は非常にシンプル。電子機器は殆どありません。しかしミサイルは電子機器による誘導です。タラメアも電子妨害は把握しているはず。ということは太平洋から成層圏にミサイルを打ち上げて誘導が切れても近くに着弾するような”半誘導方式”にするはずです。これが有効なのか。費用は向こう持ちで実験できるのです」
実験。しかしそこに民間人が残っているかも知れない。大仲は時計を見つめながら篠原の言葉と信念を秤にかける。
ーーやはりだめだ。
残り1分。出た結論は中止要請だった。無線を取ろうとするとR連隊の駐屯基地から連絡が入る
「太平洋から高速で接近する飛翔体4!」
「馬鹿な!」
タラメアが先走った。そう思った瞬間、とぼけた声の篠原が一言。
「そういえば、あの時計よく遅れるんですよ。ふふふ。」
思わず篠原の服を掴む大仲。だが篠原は動揺すらしていない。
「大丈夫ですよ大臣。多分失敗します」
その言葉は、気休めではなかった。
数分後、飛翔体は爆発することなく地面に落下し「ボン」と小さく音を上げて瓦礫になった。
篠原は超望遠ドローンでその様子を観察して2つの言葉を発した。
1つ目は爆発しない理由
「今の池袋は電子妨害なんてレベルではないのです。実は私もドローンで色々と試したのですがR連隊が交戦した時よりもずっと妨害濃度が濃い。そこで気づきました。電気です。あのエリアでは電圧や電流と言った法則が全く通用しないのです。つまり、ミサイルを飛ばしてもクラスターを切り離すための最低限の電子回路すら動かない。そういうことです」
2つ目は意外な予言だった。
「この戦況、最終的には海戦になるでしょう。予備兵器『263番』を使うことになります。実戦配備の準備をしてください」
大仲は1つだけ確認した。
「263番。海上自衛隊の中でも古くから予備兵器として維持されてきた鉄くず艦。あれを持ちだすということはクシャルボコスを沈めるつもりか?」
篠原は何も答えなかった。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
翌日 千葉県舞浜にタラメアの揚陸艦が接舷し10組のYA-24とDD-24が姿を現した。
指揮はリーク大佐。補佐官にあの髭の長い高官も同行していた。
「兵よ聞け!これより、軍事作戦を開始する。自衛隊には黙認するよう指示をした。存分に怪物退治を楽しんでくれ!池袋ポイントに入り次第、政治家のケツを拭いて撤収する!」
YA-24とDD-24は光ケーブルで接続されている。光ケーブルさらに伸び、後方の揚陸艦へ。揚陸艦を中継し軍事衛星と通信ができる洋上のフリゲート艦とつながっていた。
「電子妨害が発生した場合に備え、有線接続に切り替えてある。本国の中枢AIにはR連隊から奪ったUFBのデータも入力済みだ!だが、レーダーが聞かない以上、目視による索敵だ!気を抜くな!」
髭の高官が、状況を共有しつつ士気を高める。
千葉県から東京に入ると、最初のUFBの群れ数十と交戦に入る。現場のデータが光ケーブルを通じ即座に中枢AIで処理をされYA-24とDD-24は最適な迎撃行動をとっていく。
兵士の一人が呟いた。
「これがYA-24とDD-24のリンク戦術…。こんなの、俺たち兵士は必要なのか?YA-24が発砲しその座標に吸い込まれるようにUFBが移動して命中する。瓦礫から飛び上がったUFBがコンマ1秒でDD-24の機銃で霧散する。まるで未来が見えているようだ」
隣の兵士も驚いた様子で
「有線ドローン、各車両の配置、射角で完全に相手を制御している。一定の射程に入った化け物は確実に仕留める。AIと戦争したらこうなるわけだ。恐ろしい光景だ」
そんな状況でリーク大佐だけは浮かない表情だった。
「確かに防衛エリアへの侵入は排除できている。だが、なんだこの違和感は?AIが一瞬再計算をしているような違和感。なんだこの気持ちの悪い感覚は?」
それは篠原が情報に混ぜた毒の効果である。膨大なデータの中に偽の情報を混入させたことで、予測と違う動きが発生しAIが再計算をしていたのだった。この僅かなストレスが最新兵器の能力を少しずつ蝕んでいた。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
同時刻、神の居城デスランド
ベルガンが神にタラメアの対応を尋ねていた。
神は楽しそうに答える。
「この前と同じ玩具か。よし、今度はエーテルを下げず、このまま誘い込み戦ってみよ、ただし一般の兵だけだ。ベルガン、サーチ、ヴァロンの参加は認めない」
このような「遊び感覚」に敏感なヴァロンだが、反応は予想外であった。
「分かりました。エーテルが十分な濃度であれば、問題ないでしょう。ご存分に」
そういうと、ヴァロンは自分の執務室に戻っていった。
神は自分の能力で進軍してくるタラメア軍とガーゴイルの戦いを興味深そうに観察していた。
0 件のコメント:
コメントを投稿