2026年1月29日木曜日

アンドロイドは経験人数に入りますか??(新)

<あらすじ>

『あたしの人生、終わりかも……』

大手電機メーカーで働く”津田あかね(28)”がうっかり酔った勢いで購入してしまったのは、

所持しているだけで重罪確定!?

違法製造された大人用ロマンスロイドの”撫子”だった!?

<レビュー>

今期のいわゆる叡智枠です。この手の作品は、地上波版がいわばお試しで、実質的な本編は配信の規制緩和版に置かれていることが多い印象があります。地上波での表現制限を前提にシーンを組み立て、より踏み込んだ内容は配信へ、という流れが分かりやすいタイプです。


配信版にも「地上波準拠」と「規制緩和版」が用意されている場合がありますので、視聴前に公式サイトで、配信サイトごとの取り扱いを確認しておくと安心だと思います。


内容は、仕事で疲れ果てた主人公が、女性型のアンドロイドを買ってしまうところから始まります。違法品なので捨てるにも捨てられず、しかも用途が用途だけに他人にも相談もしにくい。見た目は妙にリアルで、距離感も近く、常に好意的な反応を返してくるため、主人公の方が徐々に情が移ってしまい、結果的に同居するような形になっていきます。


叡智枠という前提は置いておいても、この導入には妙な納得感がありました。アンドロイドは大枠では電化製品であるにもかかわらず、仕草や振る舞いを人間が好ましいと感じる形に寄せることで、もともと機械に抵抗感のある人でも、比較的受け入れやすくなる。そういう心理の入口を、分かりやすい形で見せているように感じます。


シナリオはご都合主義寄りで、作画も突出しているわけではありません。ただ、叡智枠として見るなら十分に水準を満たしていると思います。昔の叡智枠にあった、極端な低予算感だけで押し切るタイプとは違い、最近は通常アニメに近い見栄えを保ちつつ、見せ場にだけ妙に力が入る作品も増えてきました。本作も、その流れにある一本だと感じました。


一方で、題材的にどうしても視聴者を選ぶのは確かです。まずは地上波のお試し版で雰囲気を掴み、興味が湧いたら配信版を選ぶ、という入り方が一番安全だと思います。


叡智枠としての分かりやすさに加えて、アンドロイドが生活に入り込む心理の描き方が意外と面白い作品です。合う合わないは分かれますが、刺さる人にはきちんと刺さるタイプだと思います。



2026年1月27日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑤》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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リーク大佐が太平洋上の空母『クシャルボコス』へ帰還した翌日、埼玉県内の地下会議室で「会食」が開かれた。


出席者は大仲大臣、津田議員をはじめとする各省庁の大臣と与野党の大物政治家。そしてR連隊の隊長足立、副隊長仲原、さらにリモート参加としてUFB研究所室長の篠原である。


リーク大佐を除く、タラメアの使節団が国会に滞在している。


そのため、本会議で議論できない「対タラメア外交」について話し合うためにセッティングされた会食であった。


冒頭、大仲大臣が料理も待たずに状況を説明する。


「みなさま、急な招集にご賛同いただき、ありがとうございます。舞岡議員や同盟国使節団の耳に入らないよう、情報漏洩のリスクを最低限に抑える必要がありました。」


「さて、重要な情報です。先日、タラメアの最新鋭戦車YA-24および装甲車DD-24が、池袋周辺でUFBと交戦いたしました。結果はタラメア兵器の完敗です。YA-24は自爆、DD-24は炎上。搭乗員全員が死亡しました」


僅か1分程度の情報共有だったが、議員たちのざわめきは低く不安の渦を巻いているようだった。その状況で一人の議員が挙手をして質問を投げかけた。


「なぜ、タラメアの最新鋭戦車や装甲車が我が国に?R連隊の車両ですか?」


大仲は想定通りといった面持ちで返す。


「いえ、これは民間。大荻山氏所有とみられる兵器です。真実を聞こうにも、大荻山氏もこの戦闘で命を落とされております」


ここまで黙っていた津田議員は大荻山というキーワードで大筋の因果関係を読み取ると、議論を混沌から対策へと導き始める。


「大仲大臣。だとすれば、これは明らかに我が国へのタラメア側の内政干渉ですな。いや、権力を持った一個人に兵器を供与した。これはテロのほう助と言ってもいいでしょう。このカードをどう扱うおつもりか」


津田の一言で、議論の方向はカードの有効な使い道へ流れ始める。議員が乱雑に我先にと案を出し始める。


「このカードでタラメアに食料品を提供させましょう!」

「そんな安いカードではない!YA-24にDD-24を5台ずつ、無償供与を受けるべきです!」

「R連隊をタラメアの兵器と混成するのは危険です!ここは、この災害で住まいや家族を失った人々への支援金を要求すべきです!」

「いやいや、タラメアに東京のUFBを排除させましょう!それくらいは当然だ!」


そんな中、津田議員は大仲に意見を求めた。その眼光は鋭く大仲の防衛大臣としての資質を問うような深い探求にみちた眼差しだった。


「防衛大臣の立場としては、何かを要求すればタラメア国内での説明責任が発生します。つまり不問にすることを前提に何かを要求すれば矛盾が発生するのです。ですから私は、使節団の退去。および舞岡議員のタラメア訪問を要求したいと思います」


「がはははは」


場にそぐわない大きな笑い声の主は意外にも津田議員本人だった。


「使節団の退去。まぁそれが筋。というかこのカードの最良の使い方でしょう。私も同意見です。だが扱いが難しい「内通者」になっている舞岡議員を訪問という言葉で、国外に追放してしまうなんて、これは予想外だ。大仲大臣も人が悪い。がははは」


他の議員が恐る恐る質問をした。


「しかし、舞岡議員がタラメアで国家機密を売ったりしませんかね?」


その質問には大仲が答える。


「すでにタラメアを埼玉の臨時内閣本部に武装したまま滞在させています。彼が知る情報は全てタラメアに知られているとみていいでしょう。それに彼は例のマスコミへの情報流出以来、機密情報にはアクセスできません。彼の脳の価値はゼロだと見積もっています」


ご機嫌の津田が補足する。


「そうそう。今の舞岡議員の価値は我が国の内情を引き出すパイプ役。追放されてしまえばその機能も失うだろう。役にも立たない、成功実績もない、そんな議員を来賓として国費でもてなすタラメアのにがり顔が目に浮かぶようだ!がははは!」


騒然とした食事会だったが、料理が運ばれてくると次第に和やかになってくる。議員たちは大仲の考案した「使節団退去」と「舞岡追放」の話題で盛り上がった。この国は得はしないが、損もしない。だがタラメアは内通者を失い、無期限で内通者を自国で保護しなければならない。この皮肉が、緊張続きで疲弊していた議員の胸を撃ち抜いたのだ。


数分の間、会食の名にふさわしい楽し気な時間が流れた。


だが、その空気を断ち切ったのは、意外にもR連隊の隊長足立だった。


「議員の皆様、これはそういう問題ではないと思います。意見をよろしいでしょうか」


そう切り出すと、彼は自衛官としての視点から持論を語りだした。その内容は、自国の最新鋭兵器が他国で破壊された。これは戦略的にもっとも憂慮すべき事態であり。タラメアとしては残骸が自衛隊に回収されることを恐れるはず。といった内容だった。


だが議員たちには、真意は伝わらず軽くあしらわれてしまう。


「では、使節団の退去、舞岡の追放に加えて、怪物に破壊された自国の廃品回収もお願いしますかなぁ」


こんな具合で、議論にも発展しない。そこへ壁に投影されたプロジェクタから突然AI篠原が現れた。


マイクのハウリング音が「キィィィン」と鳴り響き、楽観ムードに水を差された議員の視線がAI篠原に集まる。


「篠原です。こちらの表をご覧ください。これは自衛隊の兵器の情報です」


そういうと、「耐衝撃性」「耐熱性」「耐貫通性」「重量」「薬剤耐性」など30項目もの詳細な情報が提示された。議員たちは突然細かい文字の羅列を提示され頭の数項目だけ読むと、面倒そうに篠原に意味を問う。


「これは自衛隊の戦車に使われている装甲「5cm角」の破片から導き出せる情報です。最新鋭機「2台分」の残骸となれば情報量は百倍を超えるでしょう」


この言葉に、津田が反論する。


「だが篠原君。外交とは信頼の積み重ねだ。リスクがあるからと言って対話を閉ざせば、それこそ戦端の口実を与えることになる。我々が誠意を見せれば、タラメアも引かざるを得ない。それが国際社会のルールではないかね?」


政治家として歴戦の猛者である津田の言葉に、数人の議員が無言でうなずき同意する。


「その理論には条件があります。それは自国に大きな損害がでなければ、という前提です。今回は違います。最新鋭機2台分の情報と国際社会のルールを天秤にかけているのです」


そういった、前提付きの政治交渉は数多く経験してきた。津田は慣れた表情で反論を重ねる。


「言いたいことは分かる。残骸は情報。タラメアに正しく返さなければ交渉は成立しない。そういいたいのだろう」


「違います。正しくも返してはなりません。兵器の価値は二つに分かれます。一つは純粋な性能。もう一つは秘匿性です。特に最新鋭兵器は「性能が分からない」ことにとても意味があるのです。1つの兵器が10の力なのか1000の力なのか曖昧にすることで、他国へのけん制になるのです」


「だから、正しく返せば秘匿性は守られる。よかろう?」


「いえ、秘匿性は守られません。正確には守られたことを証明できません。渡した残骸は本当に全部なのか?渡す前に解析したのでは?とタラメアに疑問を持たれた時点で秘匿性は下がり、兵器の価値が下がります。これは、タラメアの国家防衛にかかわる事態なのです。まだ分かりませんか?もし、正直に残骸を全て解析せずに渡したとしても、タラメアは信じない。秘匿性を守るために、関係した人物、施設は全て破壊してもおかしくはないのです。そこに例外はなく議員の皆様も標的になり得るのです」


この発言に言葉を返す議員は誰も居なかった。大仲だけは自身が自衛官出身でありながら永田町の思想に染まっていたことを認識し奥歯に力がこもる、そして即座に対抗策を考え始めていた。


だが、篠原の冷静な言葉は思考に大きな打撃を与えた。


「皆さん。99%タラメア軍が来ます。おそらく一週間以内でしょう」


凍り付いた空気が、事態の深刻さを物語っていた。

2026年1月25日日曜日

グノーシア #15(2期)(新)

 <あらすじ>

物語の舞台は漂流する宇宙船。

“人間に化けて人間を襲う未知の敵”――『グノーシア』が船内に紛れこんだことを受けて、

乗員たちは疑心暗鬼の中、毎日1人ずつ疑わしい者を投票で選び、コールドスリープさせることを決める。

グノーシアを全てコールドスリープさせることができれば人間の勝利。

なんと主人公・ユーリは、どのような選択をしても、最初の1日目にループする事態に。

わずかな時間を繰りかえす、一瞬にして永遠のような物語が、いま、幕を開ける。

<レビュー>

1期に続く形で2期が始まりました。基本的には人狼ゲームをベースとした会話主体のアニメ作品です。1期では世界観やゲームのルール、そして推理の導入部分が丁寧に描かれており、グノーシアの正体を巡る騙し合いの土台が築かれていました。


本作では、前期で培った視聴者の理解を前提に、より複雑なルールや人数を加えた本格的な人狼ゲームが展開されています。グノーシア側の戦略も高度化し、最大15人で行われる騙し合いは、推理ゲームとしてかなりの見応えがあります。


例えば、Aがグノーシアに見える。しかしBとCはAを人間だと主張し、A自身はBがグノーシアだと反論する――このように、表面上の情報だけでは真偽が判断できず、1日目からの発言内容や投票先、行動の流れを複合的に分析する必要があります。


それでも、グノーシア側は巧みに盤面を操作し、主人公の発言を「虚言」に見せかけようと流れをつくってきます。この駆け引きの緊張感がたまらず、視聴者も思わず一緒に頭を悩ませてしまいます。


会話中心で派手な演出こそ少ないですが、1期で情報が整理されているため、2期では知的興奮に満ちた頭脳戦を存分に楽しむことができます。



2026年1月22日木曜日

貴族転生 ~恵まれた生まれから最強の力を得る~ (新)

<あらすじ>

平凡な村人がある日、帝国の十三親王「ノア・アララート」へと転生した。

従えた他人の能力を自分の能力にプラスできるチートスキルをもったノアは、 

兄から魔剣レヴィアタンを譲り受けそれを従えたことにより更に強力となっていく。

<レビュー>

特別な力を持ち、さらに帝国の十三親王に転生した男の物語です。

転生ものですが、前世の記憶は所作や思考には反映されつつも、人格としては完全に「ノア・アララート」に統合されており、前世の恨みを晴らすようなタイプの物語ではありません。


そのため、主人公が“強くてニューゲーム”状態で立身出世していく王道的な構成となっています。転生前は「平凡な村人」とされていますが、明らかに博識で先見の明があり、立ち振る舞いも村人とは思えない知性と品格を持っています。この点から、単なる村人ではなく“元王族や官僚が貴族に転生した”ような印象を受けました。


物語の魅力は、常識を超えた主人公が異母兄弟たちや王族、貴族、商人などを圧倒的な頭脳と戦闘力でねじ伏せていくところにあります。


たとえば、6歳という年齢でありながら宰相のような思慮深さを持ち、かつ子どもらしい無垢さも残しているというギャップが主人公の個性をより際立たせています。

また、魔剣から過去の記憶を得たことで剣術の達人を技で打ち倒すシーンもあり、知恵だけでなく戦闘面でもチート級の実力を発揮しています。


本来、技術は体と共に身につくもので、6歳の少年が剣の達人に勝てる道理はありませんが、魔剣の力によって“記憶”ごと戦闘技能を継承し、それを実戦で使いこなすというロジックはファンタジーとして非常に納得感があります。


一方で、内政面でもその有能ぶりを発揮します。

洪水による土地の買い叩きの動きを察知し、即座に先手を打って周囲を驚かせます。これらの行動力と判断力は前世の記憶を活かしつつも、「ノア・アララート」自身の資質として描かれており、非常に説得力があります。


あまりの有能ぶりに、3話では早くも暗殺されかけてしまいます。今後も兄弟間での嫉妬や陰謀が絶えない展開が予想され、目が離せません。


また、登場人物の多くが「御意」「恐悦至極にございます」といった時代がかった言葉づかいをしており、日本人にとっては非常に親しみやすく、世界観にもよく馴染んでいます。


王道のチート転生作品が好きな方にはぜひおすすめしたい一本です。




2026年1月20日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント④》

 この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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自衛隊のUFB研究所を飛び出し、太平洋上の空母『クシャルボコス』へ高速ヘリで帰還したリーク大佐。


ヘリのローター音が止むのも待たず、彼は甲板を蹴った。向かうはCIC(戦闘指揮所)。その形相は鬼気迫り、通路ですれ違う兵たちが恐怖に道を空けるほどだった。


「状況はどうなっている! 我が国の最新鋭、YA-24が破損したとはどういうことだ!」


厚いCICのドアが開くと同時に、リークの怒号が薄暗い指揮所に響き渡る。張り詰めた空気の中、一人のオペレーターが弾かれたように起立した。その顔面は蒼白だ。


「はッ! 大荻山に売却したYA-24からの信号を確認! 戦闘ログを受信した直後、管理者権限による『自爆命令』が実行されました!」


リークの足が止まる。


「自爆だと? 馬鹿を言うな。大荻山に売却したYA-24とDD-24は電子妨害で通信ロスト中のはずだぞ!」


「そ、それが……数時間前に通信が回復し、軍事衛星とのリンクが再開しました。我々が座標を特定しログを受信していた最中に、自爆を……!」


リークは大股で歩み寄ると、オペレーターの胸倉を締め上げた。


「ログの解析はどうなってる? 最新鋭の戦車を自爆させなきゃならんほどの『何か』があったと言うのか!」


「か、怪物です……! たった二体の怪物と交戦し、随伴していたDD-24と共に……DD-24はハッチの異常開閉アラートを最後に沈黙しました!」


リークの手から力が抜ける。オペレーターが咳き込みながら崩れ落ちた。


「YA-24に加えて、DD-24までも……だと?」


リークは信じられないモノを見る目で虚空を睨む。片方だけでも国家機密の塊。さらにDD-24はYA-24とリンクすることで、AIが瞬時に最適な戦術を計算するタラメア技術の最高峰である。


彼は実戦配備前のDD-24およびYA-24と、模擬戦を行ったことがある。リーク側は500名の特殊工作兵。対するDD-24とYA-24側は、24時間の操作訓練を受けただけの新兵3名と開発スタッフ3名、そして指揮官の陸軍少佐1名の計7名だった。


開始から30分間はDD-24がリンクをしていない状態だったため、リークは彼らを盆地の不利な地形に誘導し、すでに愉悦に浸っていた。


ーー道具が最新でも、使用者がポンコツだとかわいいものだ。


しかし、DD-24がYA-24とリンクした瞬間、戦況は反転した。 追い込んでいたつもりの部隊が背後からドローンに襲撃され、陣形が一気に崩れる。立て直そうとプランを変えれば、AIに先を読まれ先手を取られる。 どこへ逃げても、攻め込んでも、守りを固めても、奇策を打っても、必ずそこにはワナがあるかYA-24の砲身が向いていた。近づくことも離れることも許されず、リーク大佐の部隊は砂の城が崩れるように、なす術もなく壊滅したのだ。


あの圧倒的な戦術が怪物に負けた。信じがたい現実が彼のプライドを深く刺す。


「やはり大荻山ごときに売るべきではなかったのだ! 最新鋭の兵器を政治の道具にするから真価を発揮できない! 政治家はいつもこうだ!」


激情を露わにするリークに対し、あえて冷静さを保った低い声が響く。


「大佐。怒鳴っても戦車は戻りません」


座席から立ち上がったのは、長い顎髭を蓄えた参謀の高官だった。彼は周囲に聞こえぬよう、リークにだけ耳打ちする。


「YA-24は自爆により機密保持されたでしょう。問題はDD-24です。ご報告があるので、奥の作戦室へ」


その冷静な指摘に、リークの瞳に理性の光が戻る。彼は先ほどまで対峙していた、日本の防衛大臣と、あの食えない研究者の顔を思い浮かべた。


そのときリークは、ポケットからある物を取り出した。UFB研究所から持ち帰った、デジタルカメラだ。


「そうだ。すぐにこのSDカードを解析班へ! 最優先だ!」


リークは勝ち誇った笑みを浮かべ、まるで王の首級でも取ったかのようにカメラを高官に押し付けた。


「自衛隊が隠し持っていたUFBの生データだ。ついでに奴らの最新鋭兵器の交戦記録も入っている。奴ら、私が少し揺さぶったらマヌケにも撮影させてくれたよ」


「このデータさえあれば、我々は怪物の弱点を丸裸にできる。ついでに自衛隊の性能もな! そのSDカードはあと1時間程度で消えるらしい。バックアップを取って解析を急げ!」


リークは上機嫌で指示を飛ばすと、高官と共に別室の作戦室へと入った。扉が閉まり、二人きりになると、リークの声から熱が消える。


「結論から言おう。YA-24の残骸回収は必達任務だ。そしてDD-24の所在もすぐに割り出せ。大荻山が生きていれば確保して吐かせろ」


リークの命令に、高官は首を横に振った。


「先ほどは部下の前ゆえ控えましたが……沈黙したDD-24も恐らく大破。大荻山氏の生存も絶望的でしょう」


高官は胸ポケットから一枚の衛星写真を出し、机に広げた。


「不鮮明ですが、この黒い焦げ跡。これが自爆したYA-24です。そして、そのすぐ先にある別の黒い染み……位置的にDD-24のロスト座標と一致します」


写真を見たリークの眉間が、深海のように深く沈む。


「……おい。では何か? 最強の矛と盾がリンクした状態で、たった数匹の怪物に力負けした。そう言いたいのか?」


「認めがたい事実ですが。そうなります」


張り詰めた沈黙が、タラメアの最新兵器が敗北したという事実を、重く、冷たく告げていた。


高官は続けた。


「DD-24のAIは回収可能な状態で残置されていると推測されます。自爆したYA-24に比べて破損が少ない。これが問題です」


リークの顔に再び焦りの表情が浮かぶ。


「それはダメだ!あのDD-24は独立型のAIが搭載されている。自衛隊に回収される前に絶対に回収する。できなければ破壊する」


高官がため息をついて同意する。


「はい。他国への輸出でしたのでAIをタラメアのネットワークから切り離したのが仇になりましたな。ネットワーク型なら汎用AIと大差ありませんでしたが・・・」


リーク大佐は高官に不敵な笑みを向けると、恐ろしい一言を放つ。


「一部の政治家が『トーキョー・スタビライゼーション』とかいう、核攻撃を議論していたな。政治家の不始末だ。政治にケツを拭いてもらうのもいいだろう」


こうして、核を搭載した潜水艦が東京に迫り、空母『クシャルボコス』には急遽招集された上陸部隊を乗せた輸送艦が合流したのであった。


2026年1月18日日曜日

お気楽領主の楽しい領地防衛~生産系魔術で名もなき村を最強の城塞都市に(新)

 <あらすじ>

8歳の時に授かった力は、その世界で“役立たず”とされている「生産系魔術」だった!

そのせいでヴァンは貴族に相応しくないと父親により失格の烙印を押され生家を追放。

名もなき辺境の村の領主として赴任することに。

小さく貧しい村は、徐々に様々な人が集まる巨大都市へと発展していき――!?

<レビュー>

少しひねりの効いた転生・追放&ビルド系アニメの新作です。原作は「小説家になろう」出身で、主人公は生産特化の魔法使い。しかし、戦闘訓練を積んでおり、野盗程度であれば十分に倒せる実力を備えています。


戦闘で一人無双するのかと思いきや、この作品はパーティー型の物語構成になっています。領主である主人公(生産系)を中心に、参謀役の執事(魔法系)、そして騎士団や冒険者(戦闘系)といった役割が揃い、2話時点で既に「最強に近い体制」が整っています。この「みんなで無双」という構図はとても現代的で、好印象です。


もちろん主人公自身も負けていません。大量生産能力という、極めて強力なスキルを持っています。素材さえあれば何でも生産できるという能力ですが、その「素材の定義」が非常に広く、たとえば木材から「繊維の塊」が生成できるのはもちろんのこと、そこから短剣や斧、さらには豪邸まで作れてしまいます。


つまり、質量さえ合えば、木材から金属やガラス、土壁など、どんな材質のものでも生産可能というわけです。さらに、生産系魔法は一般的に魔力効率が悪いとされている世界観ですが、主人公はほぼ無制限に生産可能。服、装備、住まいまで自作できるため、経済的にも自立しやすく、ビルド系の主人公としては最強クラスの能力を持っています。


領民が100人以下の小さな村から始まる街づくりが、どのような発展を遂げていくのかも非常に楽しみなポイントです。ある程度都市が成長すれば、追放した側の王や貴族からの嫌がらせ、嫉妬、妨害といった「追放系作品ならではの見どころ」も期待できるでしょう。


主人公は8~9歳の少年という設定で、明らかに中身は大人。転生者ならではの冷静さと行動力で、周囲を魅了し、民衆の信頼を一気に獲得していく様子も見どころのひとつです。


物語のテンポも良く、設定もわかりやすいため、今期のなろう系アニメの中でも安心して視聴できる作品です。今後の展開に期待が持てます。



2026年1月15日木曜日

ハイスクール!奇面組(新)

<あらすじ>

令和の時代にハイテンションなギャグアニメ放送決定!

個性的なキャラ達と共に疲れを笑い飛ばそう

“奇面”を個性ととらえて、プラスに変えて引き伸ばしていく奇面組の5人。

さらに “色男組” “番組” “腕組” “御女組”などおなじみの個性豊かなキャラたちも登場。

『ハイスクール!奇面組』で笑って、日々の疲れを吹き飛ばしていこう!

<レビュー>

本作は昭和のギャグ漫画を原作としたアニメーションのリメイクで、いわゆる近年の「昭和名作掘り起こし枠」のひとつと位置づけられます。今回は第1話の感想ですが、まず一言、「面白い」と感じました。


キャラクターデザインは、最低限の現代的(令和)アレンジを施しつつも、基本的には原作に忠実なものとなっており、ノスタルジックな印象を強く受けました。作品の核である“変態ギャグ”、すなわち論理や常識を飛び越えたナンセンスな笑いも健在です。空間をワープして机の中から出てきたり、ロボットに変形して空を飛んだりと、まさに“発想の自由”の原点を見るような展開が詰まっています。


一方で懸念もあります。それは放送時間帯です。原作準拠であればターゲットは小学生寄り。しかし本作は深夜枠で放送されており、視聴者層は明らかに大人です。このミスマッチが気になる点ですが、配信サービスでの視聴が主と考えれば、土曜12時という配信タイミングはむしろベストかもしれません。


内容面では、令和の感覚で見てもなかなか“攻めた”部分が目立ちます。豪くんは「酒」とは言いませんが、それを匂わせる“魔法の水”を飲みまくり、7人乗りの改造自転車で街中を爆走。大くんの女性趣味も相変わらずの方向性です。現代ではやや問題視されそうな設定を、劇中で「個性を認めろ!」とキャラに叫ばせる演出で押し切っており、制作陣の本気が感じられました。


今後の展開も楽しみな点です。奇面組という作品は、漫画版とアニメ版で軸足が微妙に異なっていました。アニメは恋愛要素を強めた構成で、漫画は変態ギャグ中心。このリメイク版がどちらの軸に寄っていくのかが気になるところです。初代アニメは、おニャン子クラブによる恋愛ソング風の主題歌も印象的でしたが、今作ではオープニングがギャグ寄りの印象で、漫画版へのリスペクトを感じました。


初見の方にとっては、変態ギャグがやや分かりづらいかもしれませんが、理屈ではなく直感で笑い飛ばせる作品です。今期の注目作のひとつとして、ぜひ一緒に視聴して楽しんでみてください!



2026年1月13日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント③》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

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突如UFB研究所に現れたタラメア合衆国のリーク大佐。恫喝とも取れる情報開示要求に、篠原は応じ、大型モニターにUFBの情報が映し出された。


AI画像の偽篠原の指示で、「山口」と偽名を使った本物の篠原が、3時間で外部に保存しないと画像が消えてしまう特殊なデジカメをリーク大佐に渡す。


「そのデジカメは研究所用のものです。記録画像は3時間で自動消去されます。モニター情報を撮影したら、手早く本国へ送信されるとよいでしょう」


映し出されたUFBの情報を見て大仲は驚いた。


それは、篠原がその変人たる才能を過分に発揮した詳細のデータではなく、一般的な議員に見せるために作成した表面上の情報であった。


脚力一つとっても、本来は「瞬発力・持久力・機敏性・柔軟性・跳躍力・反転性能・翼との連携機構・最高速度」など細かに分析されていた。 しかし、開示された情報は「脚力・人間の2倍~3倍」これだけである。


しかも、この情報自体も王や女王と言った特異個体には一切言及しておらず、相手の知るはずのない情報は一切出さない。しかし、相手が望んでいる情報は最低限出す。 こんな細かな情報統制は簡単にできるものではなく、タラメアの強行を篠原は「可能性」としてあらかじめ想定していた証拠だった。


リーク大佐が一通り撮り終えると、天井のモニターに映し出されたAI篠原に問いかける。


「おや? R連隊との交戦記録がありませんね? これは困りました。現代兵器との戦力差は外せない情報でーす。なぁ兄弟。隠し事はやめてもらえんか?」


山口に扮した篠原は、誰にも気づかれないように白衣のポケットに手を忍ばせた。指先にあるたった一つのボタンを、カチリと押す。


するとAI篠原が、待ってましたとばかりに答える。


「では次のページに切り替えます。前のページには戻れません。10秒後に切り替えます」


リーク大佐は舐めるように画面をみると、軽くうなずき、最初のページの撮り漏れがないことを確認する。


ページが変わると大佐の表情が一変した。


それは先ほどの「薄い情報」とは対照的な「濃い情報の渦」だった。


「車両101、左側面装甲破損、破損規模12cm、このダメージによる機動力への損壊ナシ、乗務員への被害ナシ」など車両単位に全損壊箇所が事細かに記されていた。


足立と篠原はすぐに気が付いた。「これは嘘だ。ブラックボックスにもこんな詳細な情報は残らない。しかも大破してブラックボックスも回収していない車両についても詳細に記載されている」


仲原三佐が足立に耳打ちした。


「あの変人、さすがですね。残っている車両については正しい報告。大破して確認のしようがない車両のデータはデタラメです」


足立も小声で返す。


「ああ、バレようのないウソを真実に混ぜる。心理的な毒ってことか。怖い怖い…」


仲原三佐もそれに返す。


「ロングレンジレールガン。しれっと『射程不足で支援不能』って書いてありますね。大嘘じゃないですか」


二人とも含み笑いが止まらない。


それに気が付かないリーク大佐は満足げに声を上げる。「ほうほう。対地対空戦闘車両の機銃で多くのUFBを掃討。戦車砲では20体まとめて! いやぁ頼もしい性能だなぁ兄弟!」


しかし笑みはすぐに消え、鋭い眼光がAI篠原に向けられる。


「なぁ兄弟。ちょっと聞きたいんだが‥‥‥これだけ戦っておきながら、なぜR連隊は私有シェルターの救出を断念した? 目と鼻の先まで行ったんだろ?」


タラメアの頭脳。タラメア情報部の大佐は伊達じゃない。情報から戦況を想定し、すぐさま不自然な部分に着目する。


沈黙するAI篠原。実はこのAI篠原は、侵入したリーク大佐に対して即興で作られたAIである。事前に用意していた資料を順に表示することや、決められたセリフを順番に話すことはできても、質問に応答することはできない。


篠原はポケットの中のボタンから指を離し、じっと様子を伺う。これ以上の操作はボロが出る。


「どうした兄弟。無視すんなよぉ。おぃ。なぁ」


口調が荒れるリーク大佐。これをみた大仲が口火を開く。


「それは私の判断です。理解しにくい事象ですので納得できないのはわかります。まず、補給です。大破した車両に補給車も含まれます。これにより弾薬数の懸念がありました。つまり弾薬の不足が想定されました。そして、報道にもありましたが王や女王と呼ばれる強個体。これらの排除に多くのリソースを割きました。自衛隊からは当然シェルター救出続行の声もありましたが、これは私の責任で止めました。被害を拡大させないための政治的判断です」


政治的判断。この言葉は大仲も昔、自衛隊にいたときに何度も聞いた嫌な単語である。


現場にいる兵のリアルな声を聴いておきながら、政治家が自身の損得で判断するときに使われる言葉だ。


当然タラメアの情報部でも同じ有様である。すべてを納得できてしまう魔法の言葉としてそれは機能した。


「ち。これだから政治家は! 篠原ぁあんたも苦労してるなぁ兄弟!」


AI篠原が回答できないことを察した足立がすぐにフォローを入れる。


「リーク大佐。もう1時間経ちますが、デジカメの画像を早く本国に送らないと消えてしまいますが……」


それを聞くや、慌てた大佐は急いで残りの撮影を終え、足早に出ていった。


大仲は見送ると同行し、二人は研究所を後にしたのであった。


研究所の外で大仲が大佐に、今回の暴挙を二度と行わない様に強く要請していると、一人のタラメア兵が駆け寄ってきた。 二人は小声で話した後、慌てて一度太平洋に浮かぶ空母クシャルボコスへ高速ヘリで帰っていった。


大仲は心中で安堵した。そして「電子妨害で安全だった地下に比べ、電子妨害の届かない埼玉はタラメアの脅威が大きくなった」ことを改めて理解したのだった。


だがこの緊急帰還は、大きな試練の幕開けになるのであった。

2026年1月11日日曜日

転生悪女の黒歴史 死亡フラグ(終)

<あらすじ>

自分の名をつけた主人公『コノハ・マグノリア』が可憐に活躍する、恋と魔法の冒険ファンタジー。

自らが中学生の時に執筆した物語の世界に転生した佐藤コノハは、なりたかった主人公『コノハ』ではなく、

その妹で稀代の悪女『イアナ・マグノリア』に転生してしまう。

新感覚!死亡フラグ回避ラブコメ誕生!! 


<レビュー>

本作は、主人公が自分で創作した世界に「悪役令嬢」として転生してしまうという設定の作品です。特徴的なのは、転生前の人格である「佐藤コノハ」と転生後の「イアナ・マグノリア」の人格が完全に同居していることです。


多くの転生ものでは、転生後の人格が主軸となって過去の記憶は徐々に薄れ、成長とともに新たな人生を築いていきます。しかし本作では「佐藤コノハ」の人格が最後まで主人格として存在し、思考・選択は「イアナ」と共に行われます。あくまで一人のキャラクターとして二人分の記憶と感情が整理され、コミカルに描かれている点がこの作品の大きな魅力です。


テーマはシリアスで、「黒歴史を修正し、物語内の全員を幸せに導く」というもの。しかし、全体としてはギャグ要素が強く、「ドキ」「バタ」などの擬音がキャラクターのセリフとして音読される演出もあり、この“わざとらしさ”が「創作世界である」ことを強く印象づけています。


また、悪役令嬢モノとしての王道も忘れておらず、「イケメンに囲まれる」「弱っている美形男子を助ける」といった少女漫画的要素も健在です。登場する男性キャラはほぼ全員が美形、逆にモブ女性キャラは平凡な外見で描かれており、主人公の特別感を視覚的に強調する作画設計になっています。


アニメーションとしては動きが少なめな印象ですが、それを補うようにキャラを二頭身にしたり、大胆な変顔をさせたりと、「動かさずに面白く見せる」演出力が光っており、むしろ退屈さを感じさせません。


1話から12話までが緩急よく繋がっており、物語としての流れも綺麗にまとまっていました。特に最終話は、しっかりと締めつつも2期への期待を抱かせる構成になっており、続編があればぜひ見たいと思える仕上がりです。


黒歴史、悪役令嬢、恋愛鈍感系ギャグというユニークな要素が融合した作品で、少しでも設定に興味があればぜひ視聴をおすすめしたい一作です。



2026年1月8日木曜日

友達の妹が俺にだけウザい(終)

【あらすじ】

学校では清楚な優等生として大人気の彩羽は、明照にだけやたらとウザい。

そんなハイテンション系ウザかわ女子・彩羽に振り回される明照の前に、

塩対応女子・真白が出現。

それをきっかけに、明照、彩羽、そして仲間たちの日常は激変し――!?

ウザかわ女子が(頼んでないのに)寄ってくる! 悶絶必至のいちゃウザ青春ラブコメ、開幕


【レビュー】  

最終話は、いわゆる「俺たたエンド」で締めくくられました。

作画は可愛らしく、設定やテーマ性にも魅力がありました。ただし、それらの良質なパーツをうまく噛み合わせきれなかったという印象が残ります。


五階同盟は主人公が偽恋人を引き受けるきっかけとなり、物語の軸を作る存在として登場します。しかし、活動内容に関しては誕生秘話を語った程度で、後は何か裏で作業をしているような描写に留まり、十分に描写されませんでした。作品内で繰り返し名前が出てくるにも関わらず、実態の情報量が非常に少ないのです。


例えるならば、本来「要素×要素×要素」として相乗効果を狙った構成が、「要素+要素+要素」と並列的にしか機能していなかった。そんな印象を受けました。キャラクターの魅力や作画、声優の演技など個々の要素は非常に良質ですが、シナリオとのシナジーが薄く、唯一印象に残ったのは、元いじめっ子から真白を守るために彩羽が演技で追い払ったシーンくらいでした。


少し辛口になりますが、作品として伝えたい情報の整理が弱く、視点が定まりにくかったように思います。視聴者が「五階同盟」「恋愛」「主人公の有能さ」のどれに注目すべきか迷っているうちにシナリオが進行してしまい、せっかくの名シーンやコミカルなやりとりの魅力が十分に伝わらなかった印象です。


しかし視点を変えれば、この作品は1話単体として見ることでその完成度の高さが際立ちます。全体のストーリー展開ではなく、1話ごとの起承転結を意識して視聴すれば、本来の面白さがクリアに見えてきます。(情報が絞られるので・・・)


また、「ウザかわ」というテーマ自体が難しい中で、主人公にダル絡みすることによって“ウザさ”を演出しつつも、映像では過度に描かず、セリフによって視聴者に伝えるという手法は非常にうまくバランスを取っていたと思います。キャラが本当に嫌われてしまうリスクを最小限にしながら、しっかり立たせていた点は参考になります。


ヒロイン同士の掛け合いも魅力的だったので、もっと見たかったというのが正直なところです。全体的にポテンシャルの高い作品だったと感じます。もし二期があれば、期待値の高い作品でした!





2026年1月6日火曜日

最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか(終)

※火曜日ですが、小説が続いているため通常レビュー記事となります。


【あらすじ】

舞踏会の最中、婚約者である第二王子・カイルから、理不尽な婚約破棄を告げられた公爵令嬢・スカーレット。

“婚約者”という立場に甘んじて耐え続けてきましたが、ついに我慢の限界を迎えます。

「私の最後のお願いです。このクソアマをブッ飛ばしてもよろしいですか?」


こうして、スカーレットの“拳”が舞い踊る物語が始まります。

【レビュー】  

何度か各話のレビューを掲載してきましたが、今回は全体を通しての感想をまとめます。


本作は「悪役令嬢が拳で世直しをする」という、非常に個性的なテーマの作品です。令嬢と鉄拳という組み合わせ自体はユニークですが、実際にそれを物語として成立させるには難しさもあります。その点、本作は最後まで面白く展開し、見事にまとめられていました。


ギャップ萌えが本作のキモではありますが、それだけに頼ると単調になりがちです。しかし本作では、十分に成立するエピソードに「悪役令嬢×鉄拳」という要素を追加してテンポ良く展開することで、単調さを回避しています。


13話という短い尺の中で、「導入」「小ボス」「ラスボスチラ見せ」「中ボス」「ラスボス」とテンポ良くエピソードが展開されており、視聴者の「早く続きが見たい」という期待を裏切らない構成になっていました。引きのある展開と、スカーレットの爽快な活躍を交互に織り交ぜた構成が、現代の視聴習慣に非常にマッチしていたと思います。


登場人物の配置も秀逸で、主人公スカーレットを中心に据えつつ、彼女に関わるイケメン王子、聖女、従者たちが個性を発揮します。一方で、敵側はボスと取り巻き程度に絞ることで、視聴者の注目を常に主人公に集める工夫が施されていました。


群像劇や重厚な背景設定を詰め込みすぎることなく、スカーレットを常に主軸に置き、背景説明などは必要最小限の回想で処理するなど、非常に割り切りの良い構成でした。この「軸がぶれない」姿勢は、物語づくりにおいても非常に参考になります。


ラスボスである敵側の聖女についても、動機や後ろにいる(嫉妬深い)女神が丁寧に描かれていたため、最終戦に至るまでの説得力があり、視聴後の満足感も十分でした。


どこから観ても楽しめる作品であり、バトルシーンの迫力も十二分。配信などでの視聴にも適した構成ですので、悪役令嬢というジャンルに新たな風を感じたい方にはぜひおすすめしたい一作です。



2026年1月3日土曜日

【小説】外伝:駆け抜け!人類アンチ種族神 対決②

 ※この小説は、連載中の『人類アンチ種族神』のこれまでのあらすじをダイジェスト形式でまとめたものです。 

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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神災から39日が経過した。


数日前に行われた会議にて、都内に残る私有シェルターに取り残された避難民の「再救出作戦」が決定された。 初戦ではたった2体の怪物(正式呼称UFB)に蹂躙された自衛隊は、規模と装備を格段に増やし、雪辱戦に臨むこととなった。


この作戦には、私有シェルターに残されている財界の重鎮・大荻山氏の救出という、公表できない裏の目的があった。そのため、地方に配備されていた最新鋭のロングレンジレールガンまでもが埼玉戦線に集結し、政府は移動可能な多くの戦力投入し決行を命じた。


動員された自衛隊は1000人規模。呼称「R連隊」は、深夜2時に行動を開始する。


埼玉シェルターを出た先遣隊は、東京と埼玉の県境にある荒川ラインで偵察ドローンを展開した。 前回の教訓から、無線妨害を受けない光ケーブル有線式のドローンが採用され、月明かりの下で蠢く無数のガーゴイルたちを鮮明に映し出した。


先遣隊の中には、連隊長である足立と、副長の仲原の姿もあった。 二人は前回の敗北から、徹底した「超遠距離戦」を立案していた。近接戦闘では生物的なスペック差で勝てないことを、骨の髄まで理解していたからだ。


「攻撃開始」


暗闇に紛れ、夜目が利かないUFBを大量に事前ロックオンすると、一斉にロングレンジレールガンによる面制圧が開始された。


キィィィイン ドン!ドドン!


空気を裂く音と共に放たれたのは、対UFB用に調整された特殊な焼夷弾だ。 空中で炸裂した弾頭は、高温を発しながらゆっくりと落下する「灼熱の傘」となる。上空から高熱で蓋をされたUFBの群れは、逃げ場もなく断末魔を上げながら燃え尽きていった。


「今だ、渡河作戦開始!」


灼熱の雨でドロドロに溶けた地面に、即座に冷却ジェルが散布される。強制冷却された道の上を、最新鋭の兵器群が惜しげもなく投入されていく。


「おい、計器の調子はどうだ?」 「オールグリーンです! 今日は電子妨害が全くありません!」 「よし、油断するなよ!」


兵士たちは計器異常(エーテル干渉)がないことを幸運だと喜び、士気を高めた。それが神の気まぐれによる「ハンデ」だとは知る由もなく。


その戦場の中心に、神の眷属であるベルガンとサーチもいた。


ベルガンは直撃した熱波に焼かれたが、素体の耐熱性能の高さに助けられていた。だが、溶けて泥状になった大地に足を取られ、身動きが取れない。 一方のサーチは、自身の長所である鋭敏な感知能力が仇となった。強烈な閃光と爆音で視覚・聴覚を完全に奪われたのだ。 平衡感覚を失ったサーチは、かろうじてグライダーのように翼を広げ、本拠地であるデスランド方面へ無様に滑空して逃げるしかなかった。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


神の居城、デスランド。


眼下の戦場を見下ろしながら、神とヴァロンが会話を交わしていた。


「創造主様。攻撃が始まりました」


ヴァロンが冷静に戦況を分析し、報告する。


神はゆったりと玉座に腰かけ、笑みを浮かべた。 「正常なのはヴァロンだけか。ベルガンは行動不能。サーチは敗走中。……思ったより面白いじゃないか」


「ガーゴイルも随分減りましたな。巻き添えも含めて10万は消えましたか」


必死に攻撃する自衛隊。状況を伝えようと奮闘するレポーター。弾薬の雨に混乱し、熱で霧散していくガーゴイルたち。 そして、少し手間をかけた特殊個体が追い詰められる様。どのシーンも、神の心を心地よく高揚させる。


「さて、そろそろバランス調整といこうか」


神が生み出した物質「エーテル」は、濃度が上がれば人間の精密機器を狂わせる。 だが神は今回、戦場のエーテル濃度を局所的に下げることで、自衛隊がスペック通りの戦力で戦えるように「盤面」を整えていたのだ。


神は、傷ついたベルガンに回復ポーションを届け修復させると、新たに5万のガーゴイルを統率させて迎撃を命じた。


修復されたベルガンは猛然と反撃を開始する。 しかし、ドローンで厳重な警戒網を敷いていた自衛隊に早々に発見され、再びロングレンジレールガンの飽和攻撃に行く手を阻まれた。


ベルガンは兵を統率し、灼熱の砲弾を回避しながら接近を試みる。だが、その猪突猛進ともいえる戦闘スタイルは、熟練の指揮官である足立と仲原に容易に看破されていた。 動きの癖を読まれ、誘導された先で集中砲火を浴びる。ベルガンは防戦一方の苦戦を強いられた。


その頃、デスランドに戻っていたサーチは神から新しい肉体を与えられ、ベルガンの加勢へと向かっていた。


ヴァロンは神に問う。


「想像以上に自衛隊の指揮官が優秀のようです。ベルガン単独では厳しいのでは?」


神は満面の笑みで答えた。


「ははは。そのようだね。ここで踏みとどまれるか、それとも折れるか。ベルガンの将としての器も楽しみになった」


神にとって、これは戦争ではない。自分の作り出した創造物に成長の余地があるのかを知るための、テストプレイに過ぎないのだ。


ヴァロンは不機嫌そうに眉を寄せる。


「創造主様。あのレールガンは厄介ですな。射程も長く精度も高い。あれだけでも、私が潰してきましょうか?」


神の表情から、スゥ……と感情が消えた。


「つまらないことを言うな」 「……ッ」 「お前はベルガンの矜持を守ってやらないのか? もしスポーツでお前が応援しているチームが負けていたら、お前はフィールドに降りて敵チームに妨害工作をするのか?」


ヴァロンは神の余興に水を差したことに気づき、即座に膝をつく。


「申し訳ありません。私情が入りました」


その様子を見て、神は再び上機嫌に笑った。


「ははは。参謀タイプのヴァロンでも私情が入るか。いいぞ! 俺の希望通りの仕上がりになっている」


ヴァロンの忠誠心もまた、神にとっては創造物の試運転の項目の一つでしかなかった。


やがて、戦場のベルガンは圧倒的劣勢に追い込まれていた。


チェスの盤面で駒が削ぎ落されるように、逃げ場をコントロールされ、ダメージは蓄積していく。強靭な肉体を持って生まれたベルガンでも、戦車や対空砲、自爆ドローンの衝撃を何度も受ければ速度は落ち、動きも雑になる。


自衛隊の考え抜かれた作戦行動に長所を潰され、自衛隊車両の斉射や自爆ドローン、設置されたTNT爆弾のトラップを踏み抜き、翼は損傷し、片足も吹き飛ばされた。


そしてトドメとばかりに、眼前には20~30機の自爆ドローンがベルガンに向かって殺到していた。


特殊弾を装備した自爆ドローンが直撃すれば、さしものベルガンといえど無事では済まない。 死の群れが迫る状況は、ベルガンに明確な「敗北」を告げていた。


「くそがあああッ!」


最後の力を振り絞り吠えるベルガン。 だが、もはや反撃する体力も、回避する機動力も残されていなかった。


迫る自爆ドローン。その数秒が数分にも感じられ、悔しさ、不甲斐なさ、怒り、様々な感情が渦巻く。


ドローンが2メートルまで接近。


ーー駄目だ。終わる。


ベルガンが諦め、空を見上げたその時。 白い一筋の光が空から降り注いだ。


「――シールド展開!」


エーテルで作られた美しい純白の円形障壁が、瞬時にベルガンと、そのシールドを発生させた本人――サーチを包み込んだ。


「サーチ!」 「話はあとです! この障壁も長くは持ちません!」


幾重もの自爆ドローンが障壁に激突し、激しい轟音と炎が二人を包む。障壁に衝撃波が伝わる。

サーチは自身の長い尻尾をベルガンの目前に突き出した。


「私の尻尾を掴みなさい! 早く!」


ベルガンは咄嗟にその尻尾を強く掴む。 サーチはそれを確認すると、障壁を展開したままジェット噴射のような勢いで一気に上昇し、居城デスランドへの撤退を開始した。


こうしてベルガンとサーチは戦場から離脱。 自衛隊は損耗率70%という壊滅的な損害を出しながらも、神の軍勢を初めて「撃退」することに成功したのだった。


だが、神側の次の攻撃(報復)を警戒した大仲大臣の決断で、本来の目的である私有シェルターの救出は断念。 R連隊は埼玉シェルターへ帰還することとなった。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


翌日、埼玉シェルター周辺では凱旋パレードが行われた。


メディアは自衛隊を英雄と称えた。 レポーターのマイクにも、過剰なほどの感情が乗っている。


「私有シェルターの解放には至りませんでしたが、我が国の自衛隊はUFBの王とされる個体をあと一歩まで追い詰め、撃退しました! 今まで一方的に侵略されていた我が国が、侵略者に対して大規模攻勢を成功させたのです! まさに勇者の凱旋です!」


ベルガンはその戦闘力の高さから、今回の神災の首謀者と誤認され「王」と呼ばれていた。


内閣広報室は、治安安定化のため「戦果の要約」のみを公表する方針を決定した。強い情報統制の下で、自衛隊側の甚大な損失は一切報道されない。 事実として多くのUFBを倒したこと、そして「王」と対峙し、撤退させたこと――その輝かしい部分だけが国民に伝えられた。


パレードの車列に、仲原三佐と足立の姿もあった。 二人は傷だらけの装甲車の上で、沿道の歓声に応えている。


「……隊長。これはプロパガンダですよね。実際は、7割を失って敗走に近い状態で帰ったのに」


仲原の脳裏には戦闘で失われた部下の最後が浮かぶ。


「そうだな。だが、これも仕事だ。世論次第では大仲大臣の政治生命も危うい。今は嘘でも希望が必要なんだ。世論を徹底的に味方に付けるぞ」


足立は引きつりそうになる頬を無理やり上げ、仲原の肩を叩く。


「ほら、笑顔笑顔!」


足立はハッチから身を乗り出し、満面の笑みで敬礼して「勝利」をアピールした。 その隣で仲原もまた、血の滲むような思いで作り笑いを浮かべた。


この光景に、SNSの反応は冷ややかで懐疑的だった。


<< ドローン部隊が全然いなくね? >> 

<< 大勝利? 結局シェルターには辿り着けなかったんだろ? >> 

<< 王を追い払ったのに手ぶらで帰還とか、意味わからん >>


辛辣なコメントがタイムラインに並ぶ。 

だが、そのコメントもすぐに、政府が準備した「賞賛チーム」による大量のポジティブコメントで上書きされていく。


<< 自衛隊大勝利!! >>

<< あの総理を説得して作戦を通した大仲大臣すごい! >>

<< 自衛隊ありがとう! 頼もしい! >>

<< 賛否はあるかもだけど、このスピード感は評価できる >>


数日後。 「王」との戦いを分析していたチームから極秘報告が入り、大仲は自身の「深追いせず撤退」という決断が正しかったと確信し、戦慄した。


超高性能偵察ドローンのカメラが、恐ろしいモノを捉えていたのだ。


映像には、女性のような姿をした未知のUFBが映っていた。この個体は高速で上空から白いシールドを展開しつつ「王」に接近し、熱源の尾を残してそのまま王を連れ去っていた。


王のような特殊な個体は、王ひとりではなかったのだ。 しかも、その個体は王を守り、従えているようにも見えた。


その真実は、政府と自衛隊上層部に大きな衝撃を与えた。 誰かが震える声で、この個体をこう呼んだ。


――「女王」。


サーチが人類にとっての新たな脅威として、正式に認識された瞬間だった。

2026年1月2日金曜日

【小説】外伝:駆け抜け!人類アンチ種族神 対決①

※この小説は、連載中の『人類アンチ種族神』のこれまでのあらすじをダイジェスト形式でまとめたものです。 

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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未曾有の災害。後に『神災』と呼ばれる怪物の出現により、日本政府は混乱の極みにあった。 

防衛大臣である真田が沈黙を貫いたことに世論は爆発。それに呼応した野党や身内の議員からも突き上げられる形で、真田はようやく国民に向けた緊急会見を開いた。


「えー、国民の皆様におかれましては、えー、落ち着いて行動を……してください。現在東京は謎の怪物……えー、我々はこれを“未確認飛来生物(UFB)”と呼称しておりますが、えー、現在、鋭意情報を収集しておりまして……」


真田は脂汗をハンカチで拭いながら、視線を泳がせる。


「対策を検討する準備の話し合いを、直ちに始めようとしております。えー、東京都全域にUFBが確認されており……都民の皆様におきましては、えー、お住いの地方自治体からの指示に従い、えー、各自で最善の行動をとっていただきますよう、お願いいたします」


この放送はインターネット上にも拡散され、「実質ゼロ回答」「丸投げ」と猛烈な非難を浴びた。 半日後、再度の会見で真田は「未曾有の状況であり、各人の判断が最良と言わざるを得ない」と釈明したが、これが火に油を注ぎ、翌日には辞任に追い込まれた。


この有事に担当大臣が不在となる事態は、政府にとって致命傷になりかねない。 総理は苦渋の決断として、元自衛官という異色の経歴を持つ衆議院議員、大仲晴彦を急遽後任に抜擢した。


まだ若い、48歳の新防衛大臣の誕生である。


就任翌日、大仲は即座に会見を開いた。


「昨日より防衛相の大臣に任命されました、大仲 晴彦です。現在、我が国は危機的な状況にあります。昨日の就任から、つい先ほどまで夜を徹して事務方と優先すべき事項を話してきました」


大仲は手元の原稿を見ることなく、カメラを真っ直ぐに見据えた。


「結論を申し上げますと、まずは国民。とくに被害の大きい首都圏で、今、この瞬間も救助を必要としている人を迅速に助けることが必要です!」


「経験のない国難に対し、軽率に動くべきではないという意見もあると思います。しかし私は大臣としてスピード感をもって対応することが大切だと思います」


「そこで、国の所有するシェルターを解放します。シェルターは2か所、神奈川県側と千葉県側にあります。詳しい場所は防衛相のホームページに、このあと、1時間後には掲載できる見込みです」


「シェルターの解放時期ですが、これも自衛隊のみなさんと、一部の民間の皆様のお力でなんとか12時間後には、第一陣としてケガ人や高齢者、妊婦など緊急性があるかたを各シェルターで10,000名ずつ受け入れられる見込みです」


「また、第一陣受け入れ後、6時間程度の準備を経て第二陣として、女性と子供を各シェルターで10,000名ずつ受け入れます」


そこで大仲は一度言葉を切り、意を決したように息を吸った。


「男性の皆様には大変申し訳ないのですが、まずは体力の少ない人々を優先することにしました。この件については私が大臣としての権限と責任をもって決断いたしました」


「男性の皆様には、少し遠いのですが埼玉側に現在急ピッチで使用されていなかったシェルターの再整備を進めております。こちらは、地元の建設業者さまのご協力で、すでに作業が始まっており24時間後には解放できる見込みです」


「埼玉側のシェルターの広さは十分にありますので性別、年齢問わず無制限に受け入れる準備を進めております。家族が離れ離れになるのがどうしてもつらい方は、ご家族でこちらのシェルターに避難してください」


「次に避難方法です。都内の地上部はUFB・・・みなさんの間ではガーゴイルと呼ばれる怪物が、数多く目撃されております。そのため、比較的安全な地下鉄に自衛隊を展開し、地下鉄網を避難ルートにできるよう昨晩から、地下鉄内のガーゴイルの排除を行いました。すでに幾つかのルートで安全が確保されましたので、まずは最寄りの地下鉄へ行き、自衛隊の指示に従っていただければ地上よりも数倍安全にシェルターまで移動できるように調整いたしました」


「医療体制や、食糧問題、抜本的なUFBへの対応などの課題はありますが、まずは緊急を要する方へスピード感を持った避難を優先したいと思います」


「以上を持ちまして就任会見といたします。今、私がお伝えした内容はこの後すぐに文字に起こして、防衛相のホームページおよび、私のSNSでも発信いたしますので、聞き取れない部分などございましたらご確認ください。」


この会見は、多くの支持を得た。 結果、自衛隊のみならず民間の協力も加速し、3つのシェルターへの避難作戦は、犠牲を出しながらも成功を収めることとなる。


◆◆◆◆   ◆◆◆◆   ◆◆◆◆   ◆◆◆◆


神災から27日が経過した。


前日の閣議決定に基づき、私有シェルターに取り残された要人の救出部隊が設立された。 

隊長は足立昭介。副隊長は仲原香 三佐である。


ブリーフィングにて、仲原三佐は編成を発表した。


・偵察ドローン ×20機 

・ドローン母艦 ×1両 

・二七式自走レールガン ×3両 

・二七式戦車(特装) ×2両 

・特殊耐熱装甲車 ×2両 

・耐熱輸送車 ×3両 

・二七式迫撃砲 ×1両 

・人型パワーユニット(二足歩行) ×2機


兵員は50名。 対怪物用として急造された最新兵器を揃えたとはいえ、絶対数が少なすぎる。さらに作戦エリア内での原因不明の計器異常を理由に、航空支援も望めない状態だった。


それでも、大仲と仲原は知恵を絞った。 比較的UFB(ガーゴイル)の少ない埼玉方面から進軍。レールガンや迫撃砲による長距離攻撃で進路上の敵を排除しつつ、迅速に突入・離脱する作戦を立案した。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


6時間後 荒川付近


部隊は橋を渡る前に、埼玉側から対岸の状況をモニターしていた。 ドローンのカメラには、廃墟と化した街を徘徊するガーゴイルが映っている。


「効果測定を開始する」


足立の号令で、ドローンの誘導を受けたレールガンが火を噴く。 キィィィン…ドン! と独特の発砲音と共に、超高速の弾丸が飛行中のUFBを一撃で粉砕した。肉片となって散る怪物を見て、隊員たちから歓声が漏れる。


「続いて迫撃砲、撃て!」


こちらも着弾と同時にターゲットのUFBを吹き飛ばした。人類の兵器は、決して無力ではない。


だが――この2射が、眠れる獅子を起こしてしまった。


『敵襲! 上空より二体、高速で接近!』


上空から急降下し、荒川を一瞬で越えてきたのは、たった二体の怪物だった。 だが、その二体だけで十分だった。


怪物は自衛隊の陣形中央に弾丸のように突き刺さると、恐るべき怪力とスピードで暴れまわった。後方支援のレールガンは役に立たない。ガーゴイルは装甲車の開閉部を素手でこじ開け、中身をくり抜くように隊員を食い荒らしていく。


「うわあああ! いやだ、助け――」 『ひぎぃっ!』


たった二体に、最新鋭の部隊が蹂躙されていく。 断末魔と咀嚼音が無線を埋め尽くす中、二体のガーゴイルは前衛の装甲車に取り付き、まだ生きている隊員を引きずり出そうとしていた。


ーー全滅する。


誰もが思考停止したその時。 後方の特装戦車から、重機関銃が火を噴いた。


ダダダダダダッ!


大口径の弾丸が、二体のガーゴイルを――そして、捕まっていた隊員ごとハチの巣にする。 肉と装甲が混ざり合い、動くものは誰もいなくなった。


撃ったのは仲原副隊長だ。 車中でモニターを凝視していた彼女は、二体の敵が近づいた瞬間を狙い、躊躇なく引き金を引いたのだ。


それを見た足立隊長が、血相を変えて通信に割り込む。


「仲原ァ! 貴様、まだ生きていた隊員もいただろう! なぜ撃った! 1発目2発目は威嚇、3発目から当てろと習わなかったのか!」


無線の向こうで、仲原の声は冷徹だった。


「隊長、これは実戦です。威嚇などしていたら、その隙に全滅してしまいます」


「だからと言って味方を撃つか!」


「全滅と、一部の犠牲による生存。隊長はどちらを選ばれますか?」


「どちらも選ばん! 仲間の犠牲を出さずに敵を無力化する方法を考えるのが指揮官だ、アホたれ!」


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


同時刻・地下、防衛省指揮所。


地下司令室のメインモニターに、赤い “作戦失敗” の文字が点滅していた。


大仲は無線越しの報告を聞き、痛恨の表情で目を閉じた。 「生存35。うち負傷11、死亡15……以上」


近くにいた官僚が思わず声を漏らす。 「出撃からたった6時間……わずか二体の個体に、最新鋭の精鋭部隊が敗走したというのか……」


隣席の幕僚が震える声で囁く。 「いえ、正体不明の相手です。これでも想定より被害が少ない、という見方も……」


「馬鹿を言うな! 15人の命だぞ!」


官僚たちの気休めを怒鳴りつけると、大仲は決断を下した。


「撤退だ。これ以上の消耗は避けろ。即時撤退させろ!」


大仲は机に拳を叩きつけた。 政治家として覚悟を決めても、現場の暴力には抗えない。人類はまだ、この神災に対抗する術を持っていないのだ。


この日、救出作戦は荒川を渡ることなく失敗に終わった。

2026年1月1日木曜日

2026年のご挨拶

皆様、明けましておめでとうございます。


本年もよろしくお願いいたします。


 さて、2025年を振り返りますと、チャレンジの年となりました。
特に小説「人類アンチ種族神」の連載を開始し、約30エピソードを投稿いたしました。
たくさんの方に読んでいただきDMなどで感想も頂戴しまして
本当にありがとうございました。

 今年は午年ということで、勢いよく前進を心掛けたいと思います。
小説だけではなくゲームのシナリオやこのサイトのレビュー記事、日記記事なども楽しんでいただけるよう上手いこと波に乗っていきたいと思っております。
実直に発信を続けることで沢山の人に楽しんでいただけるサイトを目指し
着実に進んでいきたいと思います。

 それでは、今後とも当サイトをご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

2026年元旦 管理人緑茶

※明日(2日)・明後日(3日)は、「人類アンチ種族神」の振り返り(対決①②)を
掲載させていただきます。序章①②と同じく加筆修正をしつつ
数万文字の内容をギュッっと圧縮していますのでこの機会に
気軽に読んでいただけると幸いです。