※この小説は、連載中の『人類アンチ種族神』のこれまでのあらすじをダイジェスト形式でまとめたものです。
※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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未曾有の災害。後に『神災』と呼ばれる怪物の出現により、日本政府は混乱の極みにあった。
防衛大臣である真田が沈黙を貫いたことに世論は爆発。それに呼応した野党や身内の議員からも突き上げられる形で、真田はようやく国民に向けた緊急会見を開いた。
「えー、国民の皆様におかれましては、えー、落ち着いて行動を……してください。現在東京は謎の怪物……えー、我々はこれを“未確認飛来生物(UFB)”と呼称しておりますが、えー、現在、鋭意情報を収集しておりまして……」
真田は脂汗をハンカチで拭いながら、視線を泳がせる。
「対策を検討する準備の話し合いを、直ちに始めようとしております。えー、東京都全域にUFBが確認されており……都民の皆様におきましては、えー、お住いの地方自治体からの指示に従い、えー、各自で最善の行動をとっていただきますよう、お願いいたします」
この放送はインターネット上にも拡散され、「実質ゼロ回答」「丸投げ」と猛烈な非難を浴びた。 半日後、再度の会見で真田は「未曾有の状況であり、各人の判断が最良と言わざるを得ない」と釈明したが、これが火に油を注ぎ、翌日には辞任に追い込まれた。
この有事に担当大臣が不在となる事態は、政府にとって致命傷になりかねない。 総理は苦渋の決断として、元自衛官という異色の経歴を持つ衆議院議員、大仲晴彦を急遽後任に抜擢した。
まだ若い、48歳の新防衛大臣の誕生である。
就任翌日、大仲は即座に会見を開いた。
「昨日より防衛相の大臣に任命されました、大仲 晴彦です。現在、我が国は危機的な状況にあります。昨日の就任から、つい先ほどまで夜を徹して事務方と優先すべき事項を話してきました」
大仲は手元の原稿を見ることなく、カメラを真っ直ぐに見据えた。
「結論を申し上げますと、まずは国民。とくに被害の大きい首都圏で、今、この瞬間も救助を必要としている人を迅速に助けることが必要です!」
「経験のない国難に対し、軽率に動くべきではないという意見もあると思います。しかし私は大臣としてスピード感をもって対応することが大切だと思います」
「そこで、国の所有するシェルターを解放します。シェルターは2か所、神奈川県側と千葉県側にあります。詳しい場所は防衛相のホームページに、このあと、1時間後には掲載できる見込みです」
「シェルターの解放時期ですが、これも自衛隊のみなさんと、一部の民間の皆様のお力でなんとか12時間後には、第一陣としてケガ人や高齢者、妊婦など緊急性があるかたを各シェルターで10,000名ずつ受け入れられる見込みです」
「また、第一陣受け入れ後、6時間程度の準備を経て第二陣として、女性と子供を各シェルターで10,000名ずつ受け入れます」
そこで大仲は一度言葉を切り、意を決したように息を吸った。
「男性の皆様には大変申し訳ないのですが、まずは体力の少ない人々を優先することにしました。この件については私が大臣としての権限と責任をもって決断いたしました」
「男性の皆様には、少し遠いのですが埼玉側に現在急ピッチで使用されていなかったシェルターの再整備を進めております。こちらは、地元の建設業者さまのご協力で、すでに作業が始まっており24時間後には解放できる見込みです」
「埼玉側のシェルターの広さは十分にありますので性別、年齢問わず無制限に受け入れる準備を進めております。家族が離れ離れになるのがどうしてもつらい方は、ご家族でこちらのシェルターに避難してください」
「次に避難方法です。都内の地上部はUFB・・・みなさんの間ではガーゴイルと呼ばれる怪物が、数多く目撃されております。そのため、比較的安全な地下鉄に自衛隊を展開し、地下鉄網を避難ルートにできるよう昨晩から、地下鉄内のガーゴイルの排除を行いました。すでに幾つかのルートで安全が確保されましたので、まずは最寄りの地下鉄へ行き、自衛隊の指示に従っていただければ地上よりも数倍安全にシェルターまで移動できるように調整いたしました」
「医療体制や、食糧問題、抜本的なUFBへの対応などの課題はありますが、まずは緊急を要する方へスピード感を持った避難を優先したいと思います」
「以上を持ちまして就任会見といたします。今、私がお伝えした内容はこの後すぐに文字に起こして、防衛相のホームページおよび、私のSNSでも発信いたしますので、聞き取れない部分などございましたらご確認ください。」
この会見は、多くの支持を得た。 結果、自衛隊のみならず民間の協力も加速し、3つのシェルターへの避難作戦は、犠牲を出しながらも成功を収めることとなる。
◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆ ◆◆◆◆
神災から27日が経過した。
前日の閣議決定に基づき、私有シェルターに取り残された要人の救出部隊が設立された。
隊長は足立昭介。副隊長は仲原香 三佐である。
ブリーフィングにて、仲原三佐は編成を発表した。
・偵察ドローン ×20機
・ドローン母艦 ×1両
・二七式自走レールガン ×3両
・二七式戦車(特装) ×2両
・特殊耐熱装甲車 ×2両
・耐熱輸送車 ×3両
・二七式迫撃砲 ×1両
・人型パワーユニット(二足歩行) ×2機
兵員は50名。 対怪物用として急造された最新兵器を揃えたとはいえ、絶対数が少なすぎる。さらに作戦エリア内での原因不明の計器異常を理由に、航空支援も望めない状態だった。
それでも、大仲と仲原は知恵を絞った。 比較的UFB(ガーゴイル)の少ない埼玉方面から進軍。レールガンや迫撃砲による長距離攻撃で進路上の敵を排除しつつ、迅速に突入・離脱する作戦を立案した。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
6時間後 荒川付近
部隊は橋を渡る前に、埼玉側から対岸の状況をモニターしていた。 ドローンのカメラには、廃墟と化した街を徘徊するガーゴイルが映っている。
「効果測定を開始する」
足立の号令で、ドローンの誘導を受けたレールガンが火を噴く。 キィィィン…ドン! と独特の発砲音と共に、超高速の弾丸が飛行中のUFBを一撃で粉砕した。肉片となって散る怪物を見て、隊員たちから歓声が漏れる。
「続いて迫撃砲、撃て!」
こちらも着弾と同時にターゲットのUFBを吹き飛ばした。人類の兵器は、決して無力ではない。
だが――この2射が、眠れる獅子を起こしてしまった。
『敵襲! 上空より二体、高速で接近!』
上空から急降下し、荒川を一瞬で越えてきたのは、たった二体の怪物だった。 だが、その二体だけで十分だった。
怪物は自衛隊の陣形中央に弾丸のように突き刺さると、恐るべき怪力とスピードで暴れまわった。後方支援のレールガンは役に立たない。ガーゴイルは装甲車の開閉部を素手でこじ開け、中身をくり抜くように隊員を食い荒らしていく。
「うわあああ! いやだ、助け――」 『ひぎぃっ!』
たった二体に、最新鋭の部隊が蹂躙されていく。 断末魔と咀嚼音が無線を埋め尽くす中、二体のガーゴイルは前衛の装甲車に取り付き、まだ生きている隊員を引きずり出そうとしていた。
ーー全滅する。
誰もが思考停止したその時。 後方の特装戦車から、重機関銃が火を噴いた。
ダダダダダダッ!
大口径の弾丸が、二体のガーゴイルを――そして、捕まっていた隊員ごとハチの巣にする。 肉と装甲が混ざり合い、動くものは誰もいなくなった。
撃ったのは仲原副隊長だ。 車中でモニターを凝視していた彼女は、二体の敵が近づいた瞬間を狙い、躊躇なく引き金を引いたのだ。
それを見た足立隊長が、血相を変えて通信に割り込む。
「仲原ァ! 貴様、まだ生きていた隊員もいただろう! なぜ撃った! 1発目2発目は威嚇、3発目から当てろと習わなかったのか!」
無線の向こうで、仲原の声は冷徹だった。
「隊長、これは実戦です。威嚇などしていたら、その隙に全滅してしまいます」
「だからと言って味方を撃つか!」
「全滅と、一部の犠牲による生存。隊長はどちらを選ばれますか?」
「どちらも選ばん! 仲間の犠牲を出さずに敵を無力化する方法を考えるのが指揮官だ、アホたれ!」
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
同時刻・地下、防衛省指揮所。
地下司令室のメインモニターに、赤い “作戦失敗” の文字が点滅していた。
大仲は無線越しの報告を聞き、痛恨の表情で目を閉じた。 「生存35。うち負傷11、死亡15……以上」
近くにいた官僚が思わず声を漏らす。 「出撃からたった6時間……わずか二体の個体に、最新鋭の精鋭部隊が敗走したというのか……」
隣席の幕僚が震える声で囁く。 「いえ、正体不明の相手です。これでも想定より被害が少ない、という見方も……」
「馬鹿を言うな! 15人の命だぞ!」
官僚たちの気休めを怒鳴りつけると、大仲は決断を下した。
「撤退だ。これ以上の消耗は避けろ。即時撤退させろ!」
大仲は机に拳を叩きつけた。 政治家として覚悟を決めても、現場の暴力には抗えない。人類はまだ、この神災に対抗する術を持っていないのだ。
この日、救出作戦は荒川を渡ることなく失敗に終わった。
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