2025年7月31日木曜日

【日記】軽い日記的なもの「生態系」

こんばんは!


炎天下で職場の野菜の手入れをしていたところ、小さな畑(花壇)の中に、一つの生態系ができあがっていることを発見しました。

暑さで動く気力もなく……しばらくぼんやりと観察していたのですが、想像以上によくできていたので、メモ代わりに日記として残しておきたいと思います。


発端は、ゴーヤやキュウリの枯れ葉問題でした。

5月に植えたナス・キュウリ・ゴーヤは、暑さと天候の良さも手伝って、どれも大株に育ちました。

そして、それに伴って大量の枯れ葉が発生するようになったのです。


花壇の中だけでは納まりきらず、通路にまで黄ばんだ葉が落ちてしまうようになり、清掃会社の方からは「ここの清掃はやりがいがありますなぁ」と冗談まじりに言われてしまうほどでした。

そこで私たちは、落ち葉を見かけると拾い、花壇内に戻すようにしていました。


その落ち葉に、大量のダンゴムシとミミズが発生しました。

彼らは植物の老廃物を分解する「分解者」で、ダンゴムシは生きた葉も食べますが、落ち葉があるとそちらを優先的に食べるようです。

大量の虫が落ち葉を食べてフンを出し、そのフンが土壌の養分となって、野菜たちはさらに大きく育ちます。


その大きくなった葉を狙って現れたのが、バッタ・アブラムシ・カメムシたち。

密集しすぎた葉を食べてしまい、花にはミツバチやチョウも訪れてきます。


この虫たちを狙って登場したのが、カマキリ。

かなり大きな個体がいて、どこから来たのか、何匹か常駐しているようでした。

また、アブラムシを狙ってやってくるのがテントウムシ。こちらも団体で来ているようで、視点を変えれば必ず2〜3匹は見えるほどの密度で生息しています。


カマキリはともかく、テントウムシの食欲がとにかくすごい。

アブラムシのコロニーを一気に壊滅させてしまいます。

カマキリは大きなバッタなど、獲物としてのサイズ感を重視して狩っている様子でした。


しかし、この花壇の頂点はカマキリではありませんでした。

その地位にいたのはカナヘビです。

名前に「ヘビ」とつきますが、トカゲの仲間で、毎年見かける存在です。

今年は特に数が多く、しかも個体が大きい。動くとガサガサッと葉が揺れるほどの存在感で、正直ちょっと迫力がありすぎてかわいくないです(笑)。


とはいえ、小さくて可愛い個体もたくさんいます。尻尾の色からして若い個体のようで、成長の過程が見て取れました。


カナヘビはなんでも食べます。

ダンゴムシ、アブラムシ、バッタ、カメムシ……もしかすると、カマキリまで捕食しているかもしれないほどの勢いです。


それでも、花壇の生態系における最上位ではありません。

カナヘビを狙って、スズメ・カラス・名前のわからない鳥たちが朝と夕にやってきます。

彼らの狙いはカナヘビだけでなく、カメムシにも及びます。

どうやらカメムシの匂い攻撃も通じないのか、積極的に捕食している様子でした。


バッタのように瞬間的に逃げられるわけでもなく、カマキリのように反撃できるわけでもないため、

カメムシは鳥たちにとって狙いやすい存在なのかもしれません。


そして、鳥のフンもまた植物の栄養になります。


こうして、この小さな花壇には、分解者・草食昆虫・肉食昆虫・爬虫類・鳥類といった様々な生き物が集い、

お互いの「食」を通じてつながり合いながら暮らしていることに気がつきました。


朦朧とした意識の中でその光景を眺めていたら、なぜかとても楽しい気分になりました。

王様が城下町を見渡しているような──そんな不思議な感覚だったかもしれませんね。


こうして繁栄した花壇の野菜を、最終的に人間が食べる。

この花壇は、小さなスケールで完結する完璧な縮図だったのだと思いました。

2025年7月29日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑨ 大規模攻勢_1》

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※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

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神災《じんさい》から39日が経過した。


この日、ついに私有シェルターに取り残された人々を救うための、1000人規模の自衛隊。呼称「R連隊」が作戦を開始した。


深夜2時。


埼玉シェルターを出た先遣隊は東京と埼玉の県境にある荒川で偵察ドローンを展開していた。この偵察ドローンも、無線方式ではなく光ケーブルを使った有線式のもので、月明かりだけでも十分に映像を捉え、地上のガーゴイル達を映し出す。


先遣隊の中に、連隊長である足立と副長の仲原の姿があった。


足立は偵察ドローンの映像を見て確信した。


「仲原三佐、やはり予想通りだ。ヤツらも視覚に頼っている以上、夜間の飛行は少ない。ほとんどが地上におり、動くものも少ない」


仲原は興奮気味の足立に同調するように言葉を返す。


「寝ているのとは違いますね。刺激がないので反応していないような感じです」


「ああ、あいつらは人間を見つければ襲ってくる。いなければ探す。しかし、暗闇では探すこともできない。だからこそ、ああして夜明けを待っているのだろう」


「よし仲原、やつらの位置を特定して片っ端から後方のレールガンへ座標を送れ」


こうして、地上にいるガーゴイル達は、何も察知できないままレールガンの射撃管制機能に座標登録されていく。


「まだ撃つなよ。できるだけ多くの座標を送るんだ」


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


同時刻、埼玉シェルターGゲート付近。



テレビ局のリポーターが暗闇の中スタンバイをしていた。


先遣隊からは数キロ離れた位置、荒川の下流。川から少し埼玉側に入った山の上でテレビクルーが中継を始めたのだ。


迷彩服を着た若い女性リポーターが険しい表情でモニターに映る。


「ここは、埼玉県にある小さい山の山頂です。この後、自衛隊による私有シェルターの民間人救出作戦が始まるとの情報を得ました。我々は独占生中継で放送したいと思います!」


この放送が始まると、政府官邸は慌ただしくなった。


議員の怒鳴り声が聞こえる。


「おい!極秘作戦だぞ!なんで中継されているんだ!今すぐ止めさせろ!」


ところが、この放送は中継車には強力な通信機器が搭載されており、エーテル濃度が薄い埼玉側では依然、地上光ファイバーが生きていた。その回線を強力な送信装置で掴み、ネットへ直流配信していた。

その為、TV局に放送を止めるように連絡を入れても、スマホやPCで中継が続いてしまう。

TV放送だけを止めても意味がなかった。抜け穴に気が付いたTV局も、一度はやめた中継を再開し逆に話題性を高めてしまった。


これは、舞岡議員が仕組んだパフォーマンスだった。懇意のTV局長に作戦の場所、時間を漏洩し独占配信させようと画策したのだ。

当然中止要請が入ることは想定しており、スタッフの携帯電話はすべて回収し中継車の金庫に入れさせた。

これにより、ロケ部隊は外部から隔離され、中止の指示を聞くことはない。


しかも、ロケ地を詳しく言わないように指示しているため、TV局のスタッフや政府関係者が現地へ行こうにも場所が分からないのだ。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


同時刻、内閣シェルター内、作戦本部。


防衛大臣の大仲のもとに自衛隊の制服組が詰め寄る。


「大臣!作戦前に情報が洩れている!即刻作戦を中止すべきです!」


他の制服組も続く


「もしUFBがこの中継を見ていたら救出どころじゃありません。自衛隊の隊員の命が危ない!」


大仲も想定外の事態に「中止」の二文字が脳裏に浮かぶ。


だが、その声を遮るように舞岡議員の声が大音量のマイクに乗って響き渡る。


「おいおいおい、そんな弱腰でどうするの!中継をちゃんと見た方がいいですよ!迫撃砲の場所もばれてない。時間も正確にはばれていない。作戦内容もばれてない。規模もばれてない。なーんにも、なんにも漏れていませんよ!おそらくTV局が話題作りにでっち上げた番組がたまたま作戦とかぶってしまった。それだけじゃないですか!」


津田議員や大仲大臣が何かを言い返そうとしても、マイクのボリュームが絞られており舞岡議員の発言だけが作戦本部を支配した。


直後に大仲大臣の席に官僚の一人が駆け寄る。

「放送設備が故障したようです。舞岡議員のマイク以外のマイクは電源が切れました!」


そんな都合のいい故障はあり得ない。何らかの方法で意図的に起こした状況なのは明白だった。だが、追及しようにも声が届かない。

大仲大臣の黙れのジェスチャーを横目に、舞岡は持論をマイクにのせる。


「ちょうどいいじゃないですか!民間人を助ける自衛隊の有志を国民に、直接見てもらいましょう!もしかしたら私有シェルターの人々も視聴できるかもしれません。そうしたら、ほら、私たちが頑張っている姿も見せられるじゃないですか!」


津田議員は即座に察した。


--この男、私有シェルターに残された自分の支援者にアピールするために極秘情報を漏らしたな。

--なんという。なんという思慮のない男だ。もし作戦が失敗したら全国民が自衛隊に対して不信感を抱くことになるんだぞ!せっかく大仲大臣が不安を払しょくしているのに台無しだ。


津田は席を立つと、大仲の隣に座り、耳元で声をかけた。これなら舞岡のマイクの雑音も通らない。


「大臣。今回ばかりは野党としてではなく、同じ国会議員として言わせてもらいます。作戦の中止の決断をアナタがしてはいけない。続行もおなじだ。決断をすれば責任が生まれる。ここはこらえて、決断を現場に任せてみてはどうだろうか」


この発言は完全に議員として失言である。だが、この局面で大仲大臣への政治的なダメージは避けるべき。議席ではなく国益を考えた発言だった。


大仲もこの発言には驚いたが、津田議員の真っすぐな真剣なまなざしに少し冷静に考えた。そして責任の所在は自分にあるとしながらも、現場の意見を聞いてみることに価値は見出した。


大仲は作戦本部の別室へ移動すると、足立に無線で問う。


「作戦の実施がマスコミにバレている。中止か継続か。最終的には私が決めるが現場の意見を聞かせてくれ」


足立は仲原とアイコンタクトをとると即答する。


「継続を支持します。ドローンでの偵察状況見る限りですが、UFBに目立った動きはありません。またヤツラの知性で中継をみたところで理解できないでしょう。いま、まさにかなりの数のUFBをレールガンでロックオンしています。この好機は逃したくはありません」


大仲は無線を切ると目を閉じて情報を整理した。


そして答えは出た。


2025年7月27日日曜日

追放者食堂へようこそ!(一部レビュー)

 <あらすじ>

超一流の冒険者パーティーを追放されたデニス。

憧れだった“自分のお店を開く”という夢を叶え、

看板娘のアトリエとともに、人情食堂がついに開店!


<レビュー>

Lv99の料理人・デニスが営むこの食堂には、なぜかパーティーを追放されたり、居場所を失った人々が自然と集まってきます。

彼らの悩みに耳を傾け、温かい料理をふるまう──そんな人情味あふれる展開が作品の基本構造です。


この作品の特徴は、「美味しい料理で元気づけて終わり」ではなく、

場合によっては食堂を休業してでも、悩みを抱えた相手を直接助けに行くところにあります。

なにしろデニスはLv99。ダンジョンも敵もほぼ無双できてしまうという、圧倒的な実力を持っています。


それでいて主人公は“おじさん系”キャラ。

温和で包容力があり、戦力を誇示せず、むしろ力を表に出さないことで、物語に落ち着いた温かみを生み出しています。


実際には、相手の悩みに耳を傾け、アドバイスを送り、料理を提供し、

その上で本当に必要なら力を使って解決するという構造になっており、

視聴者が共感しやすく、納得できる流れが作られています。


最強系主人公でありながら、それを前面に出さず、

むしろ控えめに振る舞う姿勢が「おじさん主人公」らしい魅力となっています。

力をあえて見せず、相手が本当に困ったときにだけ助ける──

これはいわば“水戸黄門”的な古典演出であり、誰にでも分かりやすく、安心して見られる構成です。


基本的には1話完結型のため、途中からでも十分に楽しめます。

料理の作画も非常にクオリティが高く、深夜に観るとお腹が空いてくること請け合い。

心もお腹も温まる、非常におすすめの作品です!




2025年7月24日木曜日

青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない ~3話(一部レビュー)

 <あらすじ>

空気を読み、ファッションも周囲の女子学生たちに合わせて、グループに溶け込む卯月。

普段と違う様子に、咲太は彼女の「思春期症候群」を疑う。


スイートバレットが出演するお台場での合同ライブの日、

不調を抱えていた卯月を心配する咲太は、麻衣とともにライブ会場を訪れる。


そして、スイートバレットのパフォーマンス中、卯月の声が突然出なくなってしまう──。


<レビュー>

今回のヒロイン「卯月」の思春期症候群は、「空気を読めるようになる」というものでした。

この「空気」というキーワードは、第1期でもたびたび使われていた要素であり、

ある意味で原点回帰ともいえるシリーズ構成になっていたと感じました。


物語としては、芸能活動が多忙になる中で、卯月が「空気を読めない」ことに悩みを抱えるようになります。

芸能の現場は多くの人間が関わる世界。その中で空気を読めないという性質は、卯月の中で将来への不安として膨らんでいたのかもしれません。


そんな卯月が思春期症候群によって「空気を読める」ようになったことで、

彼女本来の魅力――つまり天真爛漫で周囲に流されない明るさ――を失ってしまいます。


長所を失った卯月は現実を直視しすぎてしまい、芸能活動そのものに希望を見出せなくなっていきます。

そこへ咲太が現れ、仲間たちもまた現実を理解したうえで夢を追っていることを伝えます。

卯月は自らの悩みを克服し、再びスイートバレットに戻る決意を固めます。


物語の導線は丁寧で、ラストの演出も感動的でした。


ただ一方で、思春期症候群の“非現実感”が薄れてきている点はやや気になりました。

第1期では「認識されなくなる」「同じ日を繰り返す」「人格の分裂」など、現実離れした現象が中心でした。

対して今回は「空気を読めない→読めるようになる」という、成長にも解釈できる描写です。


しかも、今回も咲太が“治してあげる”という構図ですが、

「空気が読めるようになった自分を受け入れて進む」という選択肢も物語として十分あり得たはずです。

むしろその方が、卯月にとっては長期的な意味で成長につながった可能性もあるのではないでしょうか。


そのため、感情移入しづらい印象が残ったのが正直な感想です。


ただし、シナリオ以外の要素はとても良かったです。


まずは桜島麻衣。メインヒロインとして、高校生時代よりも大人っぽい作画になっており、

性格にも少し余裕が感じられ、咲太との関係の進展も自然に伝わってきました。

運転免許を取得したことなども描かれ、出番は少なめながらも、咲太と共に“成長している”ことが強く伝わり、非常に好印象でした。


また、麻衣の異母妹である豊浜のどかの描写も素晴らしかったです。

表情や顔つきが、かつての麻衣に少しずつ似てきており、姉妹としての絆がじんわりと感じられる、感動的なシーンになっていました。


作画全体も非常に良く、そしてこの2期シリーズ全体に漂う「サンタクロースの謎」の匂わせも、

少しずつ興味を掻き立ててくる構成で、見応えがあります。


卯月編の次はどのような物語になるのか──

今後の展開がとても楽しみな作品です!




2025年7月22日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑧ 大規模攻勢》

神災《じんさい》から38日が経過した。


大仲《おおなか》大臣の組織した、私有シェルター救出作戦部隊、通称「R連隊」は埼玉シェルターの軍事用会議室にて最後の人員調整を行っていた。


議題はこのR連隊の連隊長と副隊長の選抜である。


激論が真夜中の蛍光灯を揺らす。机を挟んで向かい合うのは――


防衛大臣 大仲《おおなか》晴彦《はるひこ》


立国平和党 津田《つだ》一郎《いちろう》


帝都復権党 舞岡《まいおか》幸三《こうぞう》


自衛隊幕僚・秘匿兵器開発部門長


他、与野党を代表する有力議員である。



大仲は熱弁した。


「連隊長についてですが、まずはUFBとの交戦経験をもつ、敵を知る人物が必要です。我々はUFBの正体を把握していません。

 必要なのは、実戦の肌感覚を持つ人物、少しでも、敵を知る人物ということです」


この言葉を聞いた舞岡議員は、この作戦の重要性を強く打ち出した。むろんこれは方便で、本音としてはシェルターに取り残されている

重鎮にして帝都復権党の資金源、大荻山《おおぎやま》 剛三郎《ごうざぶろう》の救出である。

前回の失敗を強く叱責されており、再び救出作戦に失敗すれば、大荻山から資金提供を絶たれるか、舞岡本人の議員生命が危ないのだ。


舞岡議員が拳で天板を鳴らす。


「大仲さん、その口ぶりでは敗戦の将に挽回の機会を与えたいように聞こえますが?まさか、一度敗北している指揮官を再起用したりしませんよね?」



大仲は意を決して発言する。


「敗戦の将ですか、確かにそうなのかもしれません。しかし、言い方を変えれば交戦経験者であります。しかも貴重な生還者でもあります。

 私が任命したい足立《あだち》 昭介《しょうすけ》は確かに完璧とは言えないかもしれません。だけどこれだけは言えます。

 足立が一番マシです。いくら座学の成績の良い指揮官でも、実戦経験に勝るものはありません。足立自身も、前回の戦闘を執念深く

 解析し、今、自衛隊の中でUFBにかなり詳しい人物となっております。ですから、隊長には足立を推薦します。対案があればお聞かせください」


苦しいが正論でもある。だが舞岡は納得しない。いやできないのだ。


「正気ですか大臣。野球で例えるのなら、ホームランを打たれまくったピッチャーを、翌日また起用するようなものですよ?敗戦の経験者が敗戦回数を

増やすだけですよ!しかも今回は連隊規模です。野球でいえば国威をかけたオリンピックですよ!またホームラン打たれたら謝罪じゃ済みませんよ!」


この声に反応したのは意外な人物だった。


「えー。立国平和党の津田です。まず舞岡議員、この作戦は人の命がかかっています。救出対象はもちろん自衛隊員の命も等しくかかっています。

 その作戦と野球と一緒にしちゃぁいけないと思いますよ。それとも舞岡議員は足立さんよりも適任者をご存じですか?」


まるで子供をたしなめるような、低いトーンの語り口調に舞岡は感情が高まったものの、対案として出せる人材はいない。むしろ対案を出して万が一失敗した場合の

リスクを考慮すると対案を出したくないまであった。


苦し紛れに一言


「津田さん、私も本気なんです。連隊規模を投入して失敗は許されえないと思うのです。ですから、大仲大臣のいう、経験者ではなく、私としては

 大仲議員が連隊長をお務めになるべきだと思っています」


議員を戦場の指揮官にする。苦し紛れの一言は議会に失笑を誘う。津田は空気をコントロールする。


「舞岡議員、少し冷静になりましょう。政《まつりごと》のプロである大仲大臣が、実戦の指揮をとれるわけがないですよ。大仲議員は確かに元自衛官です。

 しかし、もう20年も前の話ですよ?現役でUFBとの交戦経験をもつ指揮官と、20年も自衛隊を離れていた経験もない指揮官。こんなものは

 天秤にものりませんよ」


舞岡は思慮の浅い発言の足元を見事にすくわれて、完全にこの調整会議での発言力を失った。


さら津田は続ける。


「大仲大臣。気持ち的には私も舞岡議員と同じく、不退転の決意で挑むべきだと思います。その為には、少しでも勝てる見込みを上げておきたいのです。

 その足立さんで、勝算はあるんですよね?」


舞岡にかぶせる形で自身にダメージはなく、大仲に全責任を負わせる。熟練した舌戦の達人である。


大仲も退路を断たれて進むしかない。


「あります。連隊長には足立。副長に仲原《なかばら》香《かおり》三佐をつけます。二人とも前回の救出作戦の指揮官・副官であり経験者。そして

 生還者です。前回の交戦で全滅を免れたのは二人の資質によるものが多いと思います。そのうえで敗因はやはり戦力不足でありました。

 その部分は私も反省しなければならないと思います。ですから、今回は早急に集められる戦力を結集し、この二人に託すことで絶対に

 成功できるとは言えませんが、一番マシな選択であると私は確信しています」


こうして、足立・仲原を連隊長・副長に据えた、R連隊は翌日には作戦会議を経て出陣することとなった。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


調整後の会議室。


出席していた議員たちは声を潜めて話している。


「大臣を連隊長にするなんて、舞岡議員は正気なんだろうか」


「あれですよ、パトロンの重鎮から強い圧力を受けてるらしいですよ」


「ああ、彼に生殺与奪権を握らせるなんて、舞岡議員も若いですな」


「本当にそう思いますよ。議員に支援者は不可欠ですが相手は慎重に選ばないと、議員生命にかかわりますからね」


「しかし、それで焦って大臣を連隊長にとは、思慮の方も浅そうですな」


「ははは、何人か声に出して失笑してましたね」


小さい声だが、舞岡の耳には大音量の罵倒のように、脳に突き刺さった。

彼は顔を真っ赤に染めて怒りと悔しさ、敗北感が混ざり合った表情で会議室を足早に立ち去って行った。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


デスランドの玉座。ヴァロンは高空投影の戦力図を眺め、唇を歪めた。


「連隊規模、長射程……人間の玩具が集まってきてますね」


玉座の上で神は短く笑う。


「退屈しのぎには丁度いい。――へし折るか。花を持たせるか。どちらが楽しめるかな」


その夜の月は、神の不敵な笑みを照らしていた。

2025年7月21日月曜日

【お知らせ】休載のお知らせ

 こんばんは!管理人の緑茶です。


本日の更新ですが、青ブタの卯月編のまとめを掲載する予定でしたが、伝えたいことがうまくまとまらない記事になってしまい、ボツにしました。

大変恐縮ではございますが、本日は代原もなく、やむなく休載とさせていただきます。


申し訳ございません。


2025年7月17日木曜日

異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ ~2話(新)

<あらすじ>

ユーザーランキング一位を獲得した伝説のプレイヤー・伊良拓斗は、入院中に意識を失う。

気が付くと拓斗は、まるでゲームの中のような世界、イドラギィア大陸に降り立っていた──。

<レビュー>

本作は、異世界転移モノのファンタジー作品です。

派手なバトルというよりも、建国や内政を中心にじっくり楽しむタイプの作品です。


ゲームの世界に転生し、主人公が地道に勢力を拡大していく「立身出世型」の物語は、ある意味で王道とも言える展開でしょう。

その一方で、後発作品ならではの宿命として、既存作品の影響が多少見られるため、それを探しながら見るのも楽しみの一つです。


注目したいのは、主人公とヒロインの対話の多さです。

主人公が一方的に思いつきで突っ走るのではなく、

・発案

・ヒロインとの相談

・実行

・軌道修正

と、段階を踏んだ試行錯誤が描かれています。


ヒロインは少し天然系ながらもしっかりサポートしてくれる存在で、

この二人の関係性が丁寧に描かれている点も、本作の魅力の一つです。


今のところ物語は平和に進行していますが、

公式ページの主人公の紹介には、以下のような一文があります:

「いわゆるコミュ障である。内政と平和を好むが、敵には容赦しない苛烈な一面も」

今後、外敵との接触を通して、彼の“苛烈な側面”がどのように発揮されるのか、非常に楽しみです。


また、主人公は「緊急生産」というスキルを持っており、

知っているものであれば大体なんでも生み出せるという、かなりのチート能力を持っています。

ただし、MPの概念がゲーム時代と同様に存在し、使用には制限があります。


この“制限付き万能スキル”をどう使いこなしていくのか──

内政・外交の戦略にどのように活かされていくのかも注目ポイントです。


総じて、定番ながら丁寧に作られた作品という印象です。

興味を持たれた方は、ぜひご視聴されてみてはいかがでしょうか!




2025年7月15日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑦ 救出作戦2》

神災《じんさい》から35日が経過した。


内閣シェルター内の防衛省会議室。


防衛省の制服組、秘匿兵器開発部門の責任者が大きな声が超高性能防音室の壁面に吸収されていく。


「認められるわけがないでしょう!!!」


「他国からの攻撃に備えた、ロングレンジ・レールガンを10台も東京に集めるのは不可能です!」


怒りの矛先は防衛大臣の大仲《おおなか》である。先日失敗した救出作戦の第2回の準備に

本土防衛用の射程の長いレールガン。もちろん超極秘兵器を10台も投入するというのだ。


他国に存在を知られることすら禁忌とされているものを、公に出す。

しかも10台も出してしまえば、この国の防衛力を世界に宣伝してしまうことになり、国を守るための重要なカードを

1枚どころか何枚も失うことになりかねない。


しかし大仲も引かなかった。


「前回の戦いで、通常の誘導型レールガンでは射程距離の問題で、UFBに気付かれた場合にUFBとの接触まで30秒しかなく

 多くの犠牲がでました。つまり、今、必要なものは、UFBと距離を置いて安全な後方から長い射程で攻撃できる、ロングレンジな

 レールガンだということです!」


責任者はそれでも納得していない。


「大臣。民意を得て勢いがあるのは存じています。ですが、これは国防用の秘匿兵器です。万が一、マスコミや他国のスパイに

 撮影でもされれば、辞任じゃすみませんよ!大臣の家族にも不幸があるやもしれません。その覚悟はありますか!」


大仲は即答する。


「ある。だが、だからこそ、偽装工作を依頼している。レールガンではなく、迫撃砲に偽装して出してくれと依頼しているのです。

 ロングレンジの迫撃砲なら公開された既存兵器です。問題ないでしょう!」


「ありますよ!東京に10台も集めれば国土防衛網に歪みが生じます。他国に侵略の隙を与えるおつもりか!」


「隙ですか。今、首都である東京がこの状態で隙のない国土防衛網が機能していますか?していませんよ。していたら東京をUFBに

 焼き尽くされたりしていない」


大仲は少しうつ向くと、意を決したように顔を上げて訴えた。


「あまり、こういうことは言いたくなかったのですが、今、多くの人が苦しみ、多数の死者が出ているのは防衛省の失態でしょう!

 少しでも助けられる命を、少しでも救う。その為に兵器を出すのを拒むのは、失態に失態を重ねる行為だと

 なぜわかってもらえないのですか?」



防衛省のトップが防衛相の失態を指摘する。これは正論を盾にした禁じ手である。相手が国家でもテロ組織でも、未確認の生物でも

国土を守るのが防衛相の仕事。今の東京は国土を守れているとは言えない。


責任者は強く大仲を睨む。しかし、言い返す言葉はない。失態を重ねるなと言われ、その責を問うような圧力をかけられれば

彼に残された発言は一つ「YES」だけなのだ。



◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同日、国会



大仲は連日のように野党から救出作戦失敗の責任を追及されていた。


中心は舞岡議員だ。1日でも早く民間のシェルターへ救出に行くように執拗に攻め立てている。


「大仲大臣。あなた人の心があるんですか?だってそうでしょう。もう一か月も私有シェルターの人々は怪物に怯え、食糧や燃料の残量に怯え

 疲弊しきっていますよ。なぜ救出しないのですか?」


大仲が答えようとすると、遮って舞岡議員は発言を続ける。


「私には分かります、大仲大臣は、神奈川、千葉、埼玉方面の3シェルターに避難した

 一般の人々が助かればよい。大勢の安全のためには少数の犠牲はどうでもいい。そういうことでしょう」


そういうと、自分に正義があるといわんばかりに、質疑の書類をバンと叩いた。

その音に呼応するように、帝都復権党の議員がヤジを入れる。


「それじゃあ独裁者じゃないか!」


「命は数字じゃないんだぞ!」


「全員助けるのが仕事だろう!」


その時、大仲が手を挙げて議長から発言権を得る。


「先ほどですが、次の救出部隊の組成を行いました。詳しい内容は国防上の観点で申し上げられませんが、投入する戦力は小国なら殲滅できる程度です。

 人数も前回の少数精鋭ではなく、1連隊となります。これで必ずや取り残された人々を救出できるでしょう」


この発言に場内が大きくざわついた。


自衛隊の小隊規模の行動であれば、それは救出作戦として容認される通常の活動の範囲である。


しかし、連隊規模となると、通常の活動ではなく内戦である。自国の中で敵性勢力と戦争をするという意思表明なのだ。


大仲はたたみかけた


「兵器も、前回の機動性重視の機動部隊ではなく、各地からロングレンジ・迫撃砲を移送します。射程20㎞です。埼玉から東京23区すべてが射程に入ります」


この発言に与党も驚きを隠せない。


「馬鹿な。射程20㎞の迫撃砲?そんなものはもう短距離弾道ミサイルじゃないか」


「迫撃砲とは、そんなに射程がでるのか?」


「命中精度は大丈夫なのか?」


そこへ、あの秘匿兵器開発部門の責任者が登壇する。


「その点は私からご説明します。この兵器は25式滑空迫撃砲と言います。通常の迫撃砲との違いは弾丸に姿勢制御翼が搭載されていることで、これにより

 自由落下ではなく、あらかじめ狙ったポイントへ自立的に滑空して着弾します」


この答弁はあらかじめ大仲と握っていた嘘である。さすがに20㎞も飛翔する迫撃砲はない。本来のロングレンジ迫撃砲の射程はせいぜい10㎞前後だ。


しかし、舞岡を黙らせるのには十分な材料だった。


「この兵器は出力に比例して、かなりの大型兵器になります。移送に3日。準備に2日。作戦実行は6日後が最短です」


舞岡がすかさず、手を挙げて発言を試みるが、これを大仲が遮る。


「遅い。2日で移送。1日で準備。作戦は4日後に行う」


これも計画通りの発言だ。

そもそも、自走式のロングレンジ・レールガンは半日で埼玉に集められる。しかし、偽装に時間がかかる。これが2日。これを見越して作戦は4日後が最短だと

秘匿兵器開発部門の責任者と話がついているのだ。


こうして、2回目の救出作戦の計画は始まったのだった。


2025年7月14日月曜日

【日記】超かるい日記的なもの ~雑記~

 こんばんは!管理人の緑茶です。

急な寒暖差で風邪をひいてしまい、今日は短めの日記記事になります。(ヘックショイ)


①野菜系

・庭に植えていたゴーヤなんですが、暖かかったせいかすでに実が付き始めています。スーパーで値段をみたところ、まだ一本200円!ゴーヤが金のなる木に見えました(笑)

間もなく8月になれば98円くらいになるんでしょうねー。ゴーヤを生産しているので98円でも最盛期のゴーヤは利益が出ると思います。最盛期はゴーヤの花の独特な匂いが畑に充満し、それこそ見逃して腐らせてしまうくらいに大量にそして高速に育つのです。

②青春ブタ野郎系

・2話まで見ました。ちょっと難しいというか1クールや映画みたいに問題が明確に可視化されず「今何の話?」と聞かれると「アイドルが自分探ししている話」みたいに答えてしまう視聴者が多そうです。

やや“思春期症候群”と結びつけづらく、戸惑うかもしれませんね。読解力と想像力が問われそうな感じです。


③ドラクエ系

・劇場オープンについては活動レポートに書いたので、モンスターバトルロードについて。

毎回思うのですが、耐性が重要なレグナードとか入れないでほしいです。ブレス100にしていないライト勢がしにまくり。かなりストレスを感じているようでした。

あとは報酬系はナーフされたといいますが、あまり気になりませんでした。確かにチケットは減りましたが、だいたいカンストして捨てていることを考えると、チケットはキャンペーンに合わせた金策用になるので多すぎるとキャンペーンがナーフされそうな気がします。


以上です!

やや書きなぐり気味なのと、青春ブタ野郎の酷評がきになりますが、青春ブタ野郎に関しては基本的に面白いという前提の上で、1期目と比べてという意味なので誤解のないようにお願いします!










2025年7月11日金曜日

活動レポート 2025年6月

管理人の緑茶です。こんばんは!

今回は先月の活動レポートとなります。

【実績】

 作家関連のお仕事は・・・・0(ZERO!)

 今月も安定の0!(ZERO!)でした。

【雑感】

『レビューの話題』------------------

春アニメの最終回と夏アニメのレビューを掲載しました。

現在、文章の構成や癖を修正中のため、少々読みづらい部分があるかもしれませんが、できるだけ整理し、分かりやすい記事を目指しています。


青春ブタ野郎シリーズについては、今後〇〇編ごとにレビューしていきたいと思います。

レビューの着眼点がやや偏っていると感じつつも、それを一つの基準として残しつつ、作品ごとに魅力的な視点を加えるスタイルにしていく予定です。


『DQXの話題』------------------

今月はあまり時間が取れず、イベントや週課のみの参加でした。

グランゼドーラの劇場がオープンするそうですが、有料とのことで少し残念です。

100円程度なら試してみようかと思えますが、2200円は普通のライブ配信と同じ価格帯なので、気軽に試すには少々高額です。


個人的には、オープン記念としてドラクエのPVを無料で視聴できるようにして、そこから少額課金に移行する形が理想的だったのではと感じました。

ユーザーのニーズや端末環境を確認した上で、後に「本格配信」として通常料金へ戻す方が商業的にも良さそうです。


また、初心者向けの初心者講座の無料シアターと、有料シアターを分けてもよかったのではとも思います。


『YouTubeの話題』----------------

「鳥人間コンテスト」を視聴しました。

海外版もあるようで、海外はエンタメ要素が強く、日本は技術力重視の傾向があるなど、同じテーマでも見せ方が大きく異なるのが興味深かったです。


技術といえば、過去には「ヘリコプター部門」なるものも存在していました。

個人や団体で挑むには超高難度で、離陸の難しさや、羽の回転と本体の回転を相殺する制御技術など、個人で搭載するには難易度が高すぎたようです。

現在では部門自体が消滅しているようですが、当時の挑戦は非常に面白いものでした。


『小説の話題』----------------

「人類アンチ種族神」を週1で投稿中です。

構想から執筆まで非常に難航しており、読みやすさ、描写のわかりやすさ、キャラの魅力、シナリオの緩急など、毎回試行錯誤の連続です。


ChatGPTにも添削を頼んでいますが、誤字脱字を見逃したり、意図的な比喩表現を「誤り」と指摘したりするため、頼りすぎは禁物。

あくまで校正ツールの一つとして捉えるのが良さそうです。


『その他の話題』----------------

米の価格高騰が話題になっていましたが、大臣交代後に一気に値下がりし始めました。

急な変化には裏があるのではと少し心配になります。


近くのスーパーでは、備蓄米が通常通りに並ぶようになりましたが、一般の米と比べて値段のインパクトが大きいためか、別コーナーで販売されていました。

しかし、レジで備蓄米を持って並んでいたところ、他のお客さんが私の備蓄米を見て購入を切り替えていた場面がありました。

意外と消費者は銘柄にそこまでこだわっていないのかもしれませんね。


ちなみに備蓄米、普通に美味しかったです。ただし、夜に炊いて朝食べると味が少し落ちるので、食べきるか冷凍するのがおすすめです。

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 以上で今回の活動レポートは終わりです。
 
 それでは長文お付き合いありがとうございました!
 
 今月も引き続き更新しますのでズズズイッとよろしくお願いします!!

2025年7月8日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑥ 神の御心》

◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆

〈デスランド、神の居城の王座――神災から27日目〉

――これは、まだ誰も知らない上空の出来事。


神である俺は、居城の王座に座り少しぼんやりしていた。

何度かヴァロンから人間達の蹂躙状況を聞く。

しかし、人間としていて生きた時代に受けた悪意は、神の力で断罪した。

その結末が俺から人間達への興味を失わせる。


「暇だ。暇だぁぁぁ!」


つい声として出てしまうくらいに俺は暇を持て余している。

俺が作り出したガーゴイル。1体で人間3人分の戦力に相当する。

これが50万も放たれたのだ。東京は掌中に収めたといって過言ではない。

散発的に行われる人間の反撃も、俺やヴァロン達が手を出すほどの脅威もなく

遭遇の報告を聞いて、意識を向けてみた時には、早々に人間側は全滅していた。


その時、現場のガーゴイル達を統率する「ちょっと良いガーゴイル」正式名称は小隊長個体から報告が入った。


「創造主様。未知なる兵器を携えた自衛隊の小隊を発見」


「埼玉方面から、ポイント101の橋へ向かっています」


俺は直ぐに意識を向けた。急がないとまた全滅してしまうからだ。俺にとっては

動画サイトのショート動画程度のエンターテインメントだが、ライブで見れるものは

見て楽しみたい。


意識を向けると、自衛隊の最新鋭兵器を並べた1個小隊が荒川へ向かっていた。

兵器の中にはレールガンまである。昨年ロールアウトしたばかりの兵器を投入するなんて

自衛隊の本気を感じざるを得ない。


俺は即座に指示をだす。小隊長個体だが、知的レベルはヴァロン達とは比較にならない。

当然理解力も乏しいので、ヴァロンを使うよりも俺が直接情報を付加して言葉で命令したほうが早い。


「気づかぬふりをして、2体を荒川付近に潜ませろ。あとは出方を待て」


地図情報や潜伏方法、出方を待つ陣形など細かい部分は情報として直接小隊長の脳へ送る。



やがて、埼玉と東京を分断する荒川の手前で小隊は停止すると、ドローンを飛ばして偵察行動を開始した。


--おいおい。そんな精密機器がエーテルの充満するエリアで使えるはずがないだろう。


俺は暇をつぶしたいがゆえに、最低限だが彼らに協力してやることにした。


--エーテルの濃度を少し下げてやるか。無線が使える程度にしておけば、多少楽しめるだろう。


その後、ドローンを使った弾道誘導で最新兵器が何体かのガーゴイルを倒した。

強じんなガーゴイルも、対戦車を想定した兵器の攻撃が直撃すれば一撃で爆散してしまう。


別にガーゴイルが何体倒されようと俺は気にもとめない。

彼らは定めた規則に沿って動いている生体ロボットに過ぎないからだ。

そもそもエーテルで構成されている肉体なので「生体」と言っても「生体風」なのだが。


彼らに与えた基本概念はこうだ。


1.神の命令は絶対である

2.神への危害/予兆は即時、これを排除する。

3.1.2に反しない限りできるだけ味方を攻撃してはいけない。また可能な限り協力する。

4.1.2.3.を遵守して、人間を襲う


これだけだ。

あとは行動範囲などは神の命令として、今は東京から主体的に出ることを禁じている。


俺は小隊長個体に相手の出方で臨機応変に対応しろと命じてみた。

だが、1体、2体と倒されても指示を出す気配はない。


一方、潜んでいた2体のガーゴイルは自衛隊の発砲音に反応し、撃退を開始した。

これは恐らく「2.神への危害/予兆は即時、これを排除する。」に抵触したからだろう。


自衛隊の最新鋭兵器相手だが、ガーゴイルの性能は素晴らしいものだった。

急降下飛行による加速。

その速度を利用して重い兵器を空中へ持ち上げ、落下させることで破壊した。


自衛隊の二足歩行兵器のカーボン素材を使った自慢の防御性能も、高度50mからの落下は想定していない。

瞬時に近接戦では破壊が難しい相手の弱点を突いた的確な判断である。


それに加え、陣形が崩れた自衛隊の懐に飛び込んで歩兵を狙うことで、自衛隊に立て直す隙を与えない。


計算ではないだろうが、人間を狩る生体兵器としては合格点の戦術だ。


想定外だったのは、自衛隊の中に全滅と同士討ちを天秤にかけ、全滅回避のために仲間ごと機銃でガーゴイルを

薙ぎ払うことができる胆力の持ち主がいたこと。


そして増援が到着する前に、撤退を判断し速やかに撤収した判断力のある人物がいたことだ。


--面白い人間を発見した。


俺は暇つぶしの1シーンから、楽しめそうな素材を見つけてしまった。俺の知る醜悪な人間とは違うタイプの人類。

生かすに足るものか、俺の種族神としての本能が好奇心で踊っていた。


さらにもう一つ、今回の戦闘で小隊長個体の性能不足も明らかになった。

まず判断が遅い。判断しても配下への命令が曖昧で「増援に行け」としか命令せず、配下は飛行するのか歩いていくのか

そもそもどの地点に増援に行くのか混乱を極めていた。


結局、増援が到着したころには2体のガーゴイルは倒れ、自衛隊は撤退していた。


改善の余地がある。創造主としての俺も少し楽しくなってきた。

2025年7月6日日曜日

青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない 1話(新)

 <あらすじ>

大学に入学して半年。

高校時代からの友人や恋人である桜島麻衣に加え、新たな出会いも得て、

穏やかなキャンパスライフを過ごしていた梓川咲太。

しかし、授業に現れた卯月の様子に、咲太は違和感を覚える――。


<レビュー>

ついに始まりました、今期の注目作品です。


まずは楽曲面から。前期のキャッチーな印象とは異なり、今期はやや大衆向けに寄せた印象です。

オープニング・エンディングともに、何度聴いても耳に心地よく、疲れない楽曲構成となっています。

これは、制作サイドの方針が「尖った深夜アニメ」から「ヒットを狙う深夜アニメ」へと変化した結果とも言えそうです。


作画についても、SNS上では細かな意見も見られますが、全体的に非常に高いクオリティです。

特にキャラクターの動きには、制作者のこだわりが随所に感じられ、深夜アニメとは思えないレベルのアニメーションでした。

また、舞台が高校から大学へと移ったことに合わせて、登場人物たちの年齢的な成長も丁寧に描かれており、

もともと大人っぽかったヒロインたちを老けさせることなく、美しく成長させた描き分けにはアニメーターの技術力と作品への情熱を感じました。


物語的には第1話ということで、新キャラを含めた登場人物の導入と、新章の幕開けをほんの少し見せる構成となっており、

詳細なキャラ紹介こそありませんが、「サンタクロースの夢を見ない」から視聴を始めた新規層にも、

最低限の関係性が理解できるよう工夫されており、既存ファンにも新規視聴者にも配慮された構成でした。


印象的な演出として、サンタクロース姿の女性も登場し、視聴者の知的好奇心を刺激しながら第1話を終えています。

今後の展開が楽しみになる、期待値の高い導入でした。


期待を裏切らない完成度の高い作品ですので、ぜひ配信サイトなどで視聴してみてはいかがでしょうか。

非常におすすめです!



2025年7月3日木曜日

アポカリプスホテル(終)

<あらすじ>

人類がいなくなり、長い年月が流れた地球。

日本の首都・東京の銀座にあるホテル『銀河楼』では、

ホテリエロボットのヤチヨと従業員ロボットたちが、

オーナーの帰還と、再び人類のお客様を迎える日を待っていた。


そしてついに、人類が帰還する。


<レビュー>

地球に取り残された職業ロボットたちの、ほぼ永遠にも思える日常を描いた作品です。

地球外生命体との接触をきっかけに、止まっていた時間が動き出し、次第に活気が戻ってきます。


その様子を、ヤチヨの視点からコミカルに描いた物語でした。

派手なバトルはありませんが、ホテル業務を愚直に繰り返すヤチヨが、

少しずつ人間のような感情を持ち始め、ロボットでありながら悩んだり喜んだりする姿には、

コミカルな作風の中にも深い感動がありました。


最終話直前までは「人類滅亡ルートか?」と思わせる展開でしたが、

実は人類は惑星間航行船で生き延びており、健在でした。


しかも、それなりの人数と文明も維持していることが判明します。

しかし、長年地球を離れ、整備された船内で生活していたことから、

人類は汚染耐性を大きく失っていました。

現在の地球は徹底的に浄化され、かつてないほどきれいな大気が充満しているにもかかわらず、

人類が宇宙服を脱いだ瞬間、アレルギー反応により倒れてしまうのです。


それでも、宇宙服を着用すれば滞在できることが証明され、

ヤチヨたちは「母星としての地球」ではなく「宿泊先=ホテルとしての地球」を提案し、

人類との新たな関係性を築くことになります。


視聴者としては、「人類が戻らなければロボットの修理もできない」という前提がある中で、

観光客という形でも人類との接点が生まれたことで、ヤチヨたちの“未来の安心”が担保されたように感じられ、

とても心地よい読後感を残す作品でした。


派手な展開はありませんが、どのエピソードもテーマ性に富んでおり、興味深く視聴できました。

配信などで視聴してみてはいかがでしょうか。




2025年7月1日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑤ 代償と推論》

神災《じんさい》から30日が経過した。


埼玉側シェルター内の救出部隊待機室。


部下を15人も失った隊長の足立《あだち》 昭介《しょうすけ》は、あの日のガーゴイルとの戦いの映像を寝る間もなく凝視していた。

そこへ副隊長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐がやってきた。


仲原は純粋に驚いた。足立の一人反省会は24時間、不眠のはずなのに、いまだ続いていた。



「隊長。まだ見てるんですか?交戦時間はたったの180秒ですよ。そんなに見直しても死んだ隊員は返ってきませんよ」


「わかってる。だが15人も失ったんだ。この180秒からできる限りヤツらの情報を入手するんだ」


目が座って、クマができた足立の表情。だが目の奥には怒りにも似た何か執念のようなものが輝いていた。


「しかし、180秒の映像ではほとんど何も分からないと分析チームも言ってますが……」


足立は仲原の方を振り返るとモニターを指さした。

足立の分析はこうだ。


1.ガーゴイルの敵認識の能力


 「では三佐。ガーゴイルは対岸いた。我々の発砲音に気が付いて上空に上がって視認したあと、一直線に襲っている。これをどう見る?」


 「音に反応して、飛び上がり、即座に我々を認識する視力を持っている。つまり、音が聞こえる。離陸能力が高い。視力もよい。こんなところでしょうか?」


 足立はため息をつくと、慣れた手つきでガーゴイルの映像を拡大した。


 「まず、敵は未知の生物だ。そこから弱点を探さねばならない。このシーンで分かるやつらの弱点は、目視しないと敵の位置を把握できないということだ。

  当たり前のようだが、コウモリのように視覚以外の空間把握器官がないことがわかる」


 ⇒【つまり、ヤツラも目に頼っている】


2.ガーゴイルの飛行性能


 「それだけではない。飛び上がった時の高度にも疑問がある。荒川の周囲一帯を見渡すために上昇したとしても高度が高すぎる。高度を上げすぎれば我々からも発見しやすく

  我々との直線距離も伸びてしまう。なのになぜ、ここまで上昇した?」


 「知性がないからですか?」


 「かもしれん、三佐はタカを知っているか?タカという鳥は、高速で獲物を狩るイメージがあるが、じつは水平飛行は80km/hくらいなんだ。だが、急降下飛行になると

  300km/hを超える。奴らは並行飛行が苦手で急降下したかったというのが私の仮説だ」


 「確かに……こうしてみると上昇時の映像がなく、憶測にはなりますが我々を視認してから急降下しているように見えます。この速度が異常に早く我々の陣形を崩しました」


 ⇒【水平飛行は苦手。急降下することで速度を得る】


3.ガーゴイルの陣形


 「このシーンではまだわかることがあるぞ」


 「まだあるんですか?」


 「ああ、これは偵察の情報との合わせ技なんだが、ヤツラは荒川の対岸付近にいた。そして作戦前の偵察情報をもとにした観測地点の地図がこれだ」


 「!!見事に荒川を挟んで埼玉側に1匹もいませんね」


 「そうだ。人間の軍隊なら渡河《とか》の問題があるだろうが、飛行できるヤツらがなぜ荒川を超えない?」


 「縄張りですかね?」


 「かもしれん。だが我々を発見したら躊躇なく超えてきた。これは縄張りというより防衛線。つまり指揮系統が存在すると見て取れないか?」


 ⇒【荒川を境界線とした防衛陣形】


4.ガーゴイルの知的レベル


 「そうなると、ヤツラの知性は相当高いことになりますよ?」

 

 「そうだ、でだ、次に我々が強襲されているシーンだ。2体のガーゴイルに蹂躙された形だが、二体の位置取りと向きを見て何か感じないか?」


 「……これは、互いに背中を守りながら機動的に、連携して戦っている???」


 「ああ、訓練されたものではないが、味方を認識し背後を互いにカバーしている。少なくとも霊長類クラス。もしくはライオンのような高度な集団戦闘技術が必要だ。」


 「加えて、この戦闘でヤツラは一度も炎を吐いていない。これも同士討ちを警戒したとみれば妥当な行動だと思わないか?」


 「そうですね。私も格闘技の経験がありますが、味方との協力戦闘は瞬発的な判断能力や相手の行動予測などの知性が問われます」


 ⇒【霊長類クラスの知性。もしくは集団戦に長けた戦闘技術を持っている】


5.導き出した答え


 「だとすれば、どうだ。指揮官、もしくは群れのリーダーがどこかにいて、これを叩けばーー」


 「そうだ。統制を失い瓦解する可能性もある!」


 仲原は興奮した面持ちで、立ち上がる。


 「すぐにこの情報を大仲大臣に!」


 だが、足立はそれを静止した。


 「まだだ、まだ情報が得られるはずだ。もっと決定的な何かを探すんだ!」


二人の分析は明け方まで続くのであった。



◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  


その頃、帝都復権党本部。


極秘に引かれた光ファイバーを使用し私設のシェルターと党本部で話し合いが行われた。


帝都復権党からは舞岡氏。シェルター側の代表は、日本有数の実力者、大荻山《おおぎやま》 剛三郎《ごうざぶろう》である。


大荻山は、淡々と話を進めた。


「昨日の救出作戦。これはどういうことですか?池袋に最短でくるルートと聞いていますが、荒川も渡れず撤退したそうですが?」


大荻山は帝都復権党の資金源として、大きな影響力があり、舞岡の議員バッジを取り上げることなど簡単にできる。

それゆえに、舞岡は対応に苦しんでいる。


「そのことですが、防衛省の大仲議員が一般の避難民の安全を優先するので、救出部隊の規模が小さく、この件は本日の国会で追及いたします」


「一般人ねぇ。その一般人の生活を支えているのは誰ですか?経済を回して衣食住を提供しているのは誰ですか?守るべき対象を間違えていると思わないかね?」


「そうなんです!あの、大仲議員は大衆ウケばかりで、救うべき人々を間違っている。私は何度も国会で提言しましたが、全く聞く耳を持たず。ですから救出作戦の失敗も大仲議員の失策でして、私は帝都復権党として大荻山さんを一番に助けられるように計画を作っているのですが、大仲議員が邪魔をするので進まないのです!」


大荻山はやや低いトーンで舞岡に迫る。


「1日に3億だ。私が動かしていたカネだ。このカネが動かせない状況を賢い君ならわかるだろう。舞岡君。きみが最優先にすべきことは何かね?」


怯えた様子の舞岡は苦し紛れに答えを返す。


「ですが、自衛隊は防衛大臣の管轄です。せめて防衛大臣が大仲でなければ……!!!!」


数秒の沈黙が重鎮の思考を感じさせる。


「大仲か。ふむ嫌いではなかったが」