2025年12月29日月曜日

【小説】外伝:駆け抜け!人類アンチ種族神 序章②

※この小説は、連載中の『人類アンチ種族神』のこれまでのあらすじをダイジェスト形式でまとめたものです。

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

-------

かつて人間として絶望の中で死んだ彼は、神として転生し、お台場の上空に居城を出現させた。


本来、この世界の神は異なる次元に存在し、姿を見せることなく干渉するものである。 だが、彼は違った。自らの存在を人間に誇示し、恐怖を刻み込むことに固執したのだ。


彼は空中の居城に立つと、世界への宣戦布告として最初の配下を生み出す。 指先から放たれた無数の黒いモヤは、瞬く間に濃縮され、翼を持った人型の怪物へと姿を変えた。


◆ ◆ ◆


その頃、高校生配信者のミナトは、秋葉原のメイド喫茶で看板娘コトハとコラボ配信を行っていた。


「あはは、今日はいい天気ですねー!」


あざとく笑うコトハの猫耳カチューシャ越しに映る青空。その一点に、黒い“シミ”のようなものがぽつりと湧いた。 コメント欄が『あれ何?』『合成?』とざわつき始める。 ミナトは「どうせゴミか何かだろ」と乾いた笑いを漏らした。――その楽観が凍りつくまで、三秒もかからなかった。


◆ ◆ ◆


同時刻、渋谷スクランブル交差点。


就活帰りの大学生・蒼井隆司は赤信号で立ち止まり、ハンカチで額の汗を拭った。


突如飛来した怪物は、交差点の中央で息を大きく吸うと、ゴゥッ! と高熱の炎を吐きだした。


「……マジかよ」


――紅蓮の炎が横断歩道を薙ぎ、観光バスが爆裂した。 焦げたタイヤの甘ったるいゴム臭と、肉の焼ける異臭がマスク越しに突き刺さり、隆司の肺が拒絶反応で痙攣する。 ガラス片と砕けたアスファルトが雨のように降り注ぐ中、隆司は反射的に走り出した。だが視界の端には、まだ“現実”を飲み込めずスマホを掲げたまま立ち尽くす人々がいた。


逃げ惑う阿鼻叫喚の群衆の中に、一組のカップルがいた。


女はヒールのまま走り、靴先でガラス片を弾くたびに足首が赤く染まっている。多くの破片が散乱する路面をヒールで走る彼女は、次第に彼氏から遅れていく。 『もっと! もっと速く!』 彼氏が叫ぶ。だが、スニーカーを履いた男と同じ速度で走れるはずがない。


彼氏は何度も彼女の腕を引き、振り返っては迫りくる黒い怪物との距離を測っていた。繋いだ手は冷や汗で滑り、指先が小刻みに震えている。『大丈夫だ、俺がいる!』と叫ぶ声は裏返り、優しさという仮面の下で、剥き出しの恐怖が脈打っているのが隆司にも見えた。 ──もう限界だ。


その時、逃げる群衆を無差別に襲っていた一体の怪物が、ふと二人のほうを向いた。 猛禽類が次の獲物を見つけた瞬間を思わせる、氷のように冷たい視線。


彼氏の喉がごくりと動き、その瞳に〈自分の末路〉が映ったように揺らいだ。 刹那、恐怖が理性を追い越した。


彼氏は繋いでいた手を、邪魔なものを排除するように強く振り払った。


「っ?!」 「悪いッ!」


その反動を利用し、彼氏は動物じみた加速で群衆の渦へ溶け込んでいく。それは謝罪とも拒絶ともつかない、生存本能だけの行動だった。


見捨てたのか──?! 隆司の胸に稲妻のような憤りが走る。同時に、助けへ踏み出そうともしない自分の足が恐怖で路面に縫い留められている事実が、避けがたい自己嫌悪を連れてきた。


「待って! お願い、置いていかないで!」


ヒールで踏みしめる硬質音と、か細い悲鳴。 直後に響く骨の砕ける音、肉の焦げる臭気。 隆司は耳を塞いでも鼓膜の奥でその音が反響し続け、喉の奥から胃液が逆流した。


◆ ◆ ◆


この神が生み出した怪物の正式な名前は誰も知らない。 それでもSNSのハッシュタグで、誰かがその名をつけた。


『ガーゴイル』


それが、この黒い怪物の名だ。 この日――大都市東京は、紅の奈落へと落ちた。


◆ ◆ ◆


東京を瓦礫に変えた神は、さらに3体の特別なガーゴイルを生み出した。


近接戦闘特化の個体、ベルガン。 索敵支援特化の個体、サーチ。 そして、全軍の指揮を執る参謀個体、ヴァロン。


彼らに与えられた最初のミッションは、妻を殺したトラックの運転手を捜すこと。そして、事実を捻じ曲げた弁護士を捜し出すことだった。 神の能力をもってすれば、特定の個人を発見するのは容易い。これは復讐であると同時に、産み落とした怪物たちの『狩り』の初陣でもあった。


数日後、サーチがあのトラックの運転手を発見した。


神はベルガンとサーチに冷徹な指示を出す。 「あの人間は、トラックで潰して殺せ」


神は神でありながら、人間として生きた怨念を忘れてはいなかった。単純には殺さない。意趣返しを込めた死を与えることで、内なる怒りを昇華させようとしたのだ。


ベルガンとサーチは、運転手を望みどおりの形――鉄塊による圧死――で葬り去った。能力としては優秀と言ってよい。 だが神は満たされてはいなかった。


ーー簡単すぎた。もっと、苦しみを。私が味わった地獄と同じだけの絶望を与えねばならない。


やがて弁護士も発見された。 神は前回の反省を踏まえ、彼にはより入念な意趣返しを用意する。


名付けて、「絶叫の法廷」。


神は、弁護士の家族を一人一人、被告として即席の法廷に立たせた。 弁護士にはその弁護を命じる。だが、彼が口を開こうとするたびに肉体的な苦痛を与え、決して弁護の言葉を紡がせない。 かつて神が人間だった頃、真実を封じられ、金と権力でねじ伏せられた理不尽な裁判の再現である。


「罪なき者を殺すのか、と問う眼だな」


神は弁護士の絶望的な視線を受け止め、冷たく言い放つ。


「私の妻も、罪などなかった。奪った者は、奪われる覚悟を持つべきだ」


神は彼のすべての家族を処刑すると、最後に弁護士へこう告げた。


「お前だけは殺さない。だが覚えておけ。お前に守るべきものが再びできたとき、この法廷は何度でも開かれる」


絶望に発狂する弁護士を置き去りにし、神と眷属たちはその場を去った。


復讐は完遂された。はずだった。 だが神の中には依然として黒い渦が感情を押し上げてくる。 一方で、種族神として「人間族を守ろう」とする本能が、神の完全な暴走をかろうじて押し留めていた。


神の生み出した怪物は東京都を焼き払った。だが、他県へは流れ込むことはなく、破壊と守護がせめぎ合う繊細なバランスのもと、新しい絶望の世界が幕を開けたのだ。


この未曽有の状況に、防衛大臣である真田は頭を抱えていた。 地下や建物に隠れて生き延びた人々。錯綜する情報。政府の官僚も多数が死傷し、機能不全に陥っている。


それでも「説明責任」という言葉で、安全圏にいる他の議員たちは真田を追い立てる。 ついに、運命の説明会見が開かれることとなった。

2025年12月28日日曜日

【小説】 外伝:駆け抜け!人類アンチ種族神 序章①

※この小説は、連載中の人類アンチ種族神のこれまでのあらすじを、ダイジェストにまとめつつ、描写や表現を加筆・修正したものです。

※この小説は、はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

------

これは、人間の種族神として誕生した若い神による、破壊と創生、そして審判と成長の記録である。


「ねえ!君はどんな神になるの?」


光に包まれた広大な空間で、丸い光の玉が、隣に浮かぶもう一つの玉に話しかけた。


「僕はねえ。地球という星の人間族の種族神だって!」


彼らは神の子。神になるべくして生まれた生命とは違う存在だ。


神の子は無数に存在する。次元、時間、場所、対象となる生物 と細かく割り振られる。


この神の子は、ある次元の地球の日本、人間の種族神となることが決められたのだ。


神の子は神になる前に、その種族に転生し生涯を経験しなければならない。掟に従い神の子は記憶を失い純粋な人の子として転生したのだった。


だが人の世は厳しいものだった。


二歳の春。――他人の不注意で信号無視の自転車が歩道に突っ込み、跳ね飛ばされた。

左半身は中程度の麻痺が残り、この傷が彼を生涯苦しめた。


中程度の麻痺は、外見にはほとんど傷が残らない。立つこともでる、ぎこちなくても歩ける。

だから大人たちは言った。


> 「努力が足りないだけさ」

> 「ほら、手を抜くな、怠けるな」

> 「泣くのは甘えだろ?」


左足が思うように上がらず、指先の感覚が半分しか戻らない、と訴えても

「できるはずだ」 と笑うだけ。健常な価値観で計った物差しは、彼の痛みを計測不能と切り捨てた。


十八で就職。体に負担の少ない軽作業を選んだ。それでも彼は人よりも頑張った。

脳裏に響く「手を抜くな、怠けるな」という大人の呪いが彼に休むことを許さないのだ。


だが、彼の上司は健常者だったが酷く怠け者であった。上司の怠け癖で度々止まってしまうライン。

ある時、経営者から大問題とされ、責任の追及を行った。


彼の上司は一番の働き者であった彼を「障害者だから」という理由で罪を擦り付け、彼は理不尽に職を失った。


二十二で再就職。次の職場は見下す視線と無言の圧が職場全体を湿らせていた。

「手が遅い」 「給料泥棒」――耳障りな陰口は、やがて彼は自分の心音と区別がつかなくなった。



そんな泥の底で、たった一輪の花が咲く。

家庭ができ、男の子と女の子が生まれた。


だが奇跡は長く続かない。


居眠り運転のトラックが妻をはね、死亡させてしまったのだ。


トラックの運転手も、自分の非を認めなかった。赤信号を妻が飛び出したと言い張った。


ーーそんなはずはない。


彼は何度も現場へ行って目撃者を捜した。そしてついに、現場近くの文具店から防犯カメラの映像を発見した。

青信号を渡る妻に、一切減速していないトラックが突っ込む瞬間を彼は深い悲しみを抑え何度も見返した。


だが、裁判でその証拠が使われることはなかった。


文具店の店主は、運送会社からの『謝礼』と、弁護士がちらつかせた『協力しない場合の不利益』に屈して、大切な証拠の映像を『誤って消去した』と証言したのだ。


裁判で彼はただ、妻への謝罪が欲しかった。すまなかったの一言でよかった。

だが会社も男も「保険が降りますので」と頭を下げただけで、その眼に感情はなかった。


正義は金で買われる。 その現実が胃の奥で錆びた鉄の味を広げ、胸を焼く憎悪に変わった。


妻を失った彼は、子供のために必死に働いた。寝食を忘れ妻の残したわが子のために身を粉にして働いた。


ある日、彼は朝から少し体が重かった。倉庫の奥で三十キロの段ボールを抱えていると、額を伝った汗が右目に入り視界が滲む。


そのときだ。胸のまん中を、赤く焼けたナイフでいきなり刺されたような痛みが走った。


「――っぐ……!」


荷が落ち、つぶれた箱からネジが散る。ひざが折れ、ほこりのにおいが鼻を突いた。


左手を伸ばすが、指先から力がすべて抜ける。心臓が一発ごとに強く打ち、そのたび視界のふちが暗くなる。


痛みは徐々に強くなり、彼は悟る。


――死ぬ? 今ここで?


恐ろしい。けれど同じくらい理不尽だった。


息が吸えず、口がぱくぱくと音もなく開くだけ。誰もいない倉庫に爪を立てても、助けは来ない。


ふざけるな……ふざけるな……!


胸を殴っても鼓動は弱まる一方で、世界の音が遠ざかる。ネジが転がるカラカラという音だけが、むなしく響いた。


涙は出なかった。かわりに熱い血が耳のうしろで波打ち、視界は真っ白に発光した。


「誰か――」

「子供たちの夕飯を……まだ作って……」


いや、せめて――最後に一目……!


心臓が、ひとつ、ぐしゃりと音を立てた気がした。次の鼓動は来なかった。


白い世界だけが残り、そして静けさがすべてを飲みこんだ。


(……おかえりなさい)


あの、丸い光の玉が再び彼に話しかけた。

次の瞬間、宇宙規模の記憶が洪水のように流れ込む。


彼は“神の子”であることを思い出した。


彼は人間としての人生を振り返る。理不尽と暴力、そして一片の希望さえも許されない人生だった。

彼の口から言葉が漏れる。


「人間の種族神か。ならば存分に破壊から始めるべきだろう。このクソ種族は守るべき価値から

 作り出してやろう。面白い。実に面白い。あははははは」


純粋培養された『隣の神の子』は、変わり果てた彼の深く黒い感情に震え上がり、言葉を失っていた。


人類を最も憎む人類の種族神。

「人類アンチ種族神」の誕生の瞬間だった。

2025年12月25日木曜日

活動レポート 2025年11月

管理人の緑茶です。こんばんは!

 

遅くなりましたが、今回は先月の活動レポートとなります。


【実績】

作家関連のお仕事は・・・・0(ZERO!)

今月も安定の0!(ZERO!)でした。


【雑感】

『レビューの話題』-------------------

秋アニメ終了に伴い、レビュー数は控えめとなりました。今回は日記記事を増やしすぎないよう、劇場版のレビューを掲載する方針で調整しています。日記も人気がないわけではありませんが、連続するとネタが弱くなりがちなので、趣向を変えてみました。読者の皆様に少しでも楽しんでいただければ幸いです。劇場版レビューは思った以上に伸びたので、今後も不定期で扱っていきたいと思います。


『DQXの話題』-------------------

最近はなかなかログインできていません。シナリオを始めると時間がかかることが分かっているので、どうしても未着手になりがちです。ゲーム開始から終了まで5分程度で済むコンテンツなら気軽に楽しめるのですが、そうなると日替わり・週替わり討伐くらいしかなく、プレイから遠ざかってしまっています。遊びたい気持ちは強いのですが、隙間時間が取れないのが実情です。加えて、ゲーム内ストレージ(かばんや装備枠)が常に一杯で、まず整理から始めなければならないのも腰が重くなる原因です(笑)


『YouTubeの話題』-------------------

春野菜の準備に向けて、農業系のチャンネルを色々と視聴していました。最近は真偽不明の動画が増えている印象です。たとえば、袋の側面に穴を開けて、ジャガイモを上下左右から育てて収穫量を増やすという内容の動画がありました。しかし、芽は基本的に重力と逆方向にしか伸びないため、理屈としてはかなり無理があります。浅く植えることで横から芽を出す可能性はありますが、それでは収穫量が減ってしまうため、現実的とは言い難いと感じました。


『小説の話題』-------------------

「人類アンチ種族神」を週一で更新しています。本サイトではすでに次の章に突入していますが、外部サイトでは年末前に前章がきれいに終わるよう調整できました。年末年始には「ふりかえり版」を掲載予定で、ほぼ予定通りの進行です。山場を連休に合わせたり、話が途切れないよう2日連続で更新したりと、読者に読まれやすい工夫を意識して取り組んでいます。それ自体も良い経験として楽しめています。


『その他の話題』-------------------

もう今年も終わりが近づいています。今年は本当にチャレンジの多い一年でした。うまくいったことも、そうでなかったこともありますが、実のある年だったと感じています。家庭菜園関連の活動が少し弱かったのと、リアルの多忙によりNサークルの活動に迷惑をかけてしまった点は反省です。来年もどうぞよろしくお願いいたします。



以上で、今回の活動レポートは終了です。


長文にお付き合いいただきありがとうございました!


今月も引き続き更新していきますので、ズズズイッとよろしくお願いします!



2025年12月23日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント②》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

-----------------------------------------------------------

R連隊研究室で偵察ドローンが撮影した映像を見ながら、変人研究者篠原《しのはら》涼音《すずね》の解説を防衛大臣の大仲《おおなか》晴彦《はるひこ》が聞いていたところ、一人の官僚が慌てて研究室に入ってきた。


それは、大荻山が死亡し、私有シェルターの脱出部隊が全滅してから、僅か数分後の出来事だった。


「大仲大臣!!緊急事態です!」


大仲は急いで官僚の元へ駆け寄ると、声を抑えて尋ねた。


「何があった?UFBか?」


「いえ、タラメアです!」


「タラメア?まさか核か!!」


「いえいえ、あの、舞岡議員が独断で……」


事の真相はこうだった。先ほど前触れもなくタラメアの使節団が埼玉の臨時内閣本部を訪問。しかも武装したまま暫く滞在するというのだ。そんな暴挙が許されるはずがない。国際的にも非難されるべき事案で、あり得ない話だった。


だが、使節団の言い分は「この国の舞岡議員の強い要請により、UFBと戦う同盟国の現状を視察に来た」ということだった。


舞岡議員は使節団の案内役として常に同行しており、話を聞くこともできない。国会にも「同盟国アドバイザー」という形で出席する意向で事実上、本会議の場で外交戦略についての話し合いは不可能になったというのだ。


大仲は愕然とするとともに、あまりにも節操のないタラメアに怒りが沸き上がった。


「同盟国でも武装して内閣本部に滞在するなどあり得ない!防衛大臣として即座に退去を要請する!!この非常時にタラメアまで相手にしていられるか!!」


つい、声が大きくなる。すると研究室の吊り下げ式のモニターにAI画像の男が現れた。AI男は無機質な合成音声で話し始めた。


「篠原です。大臣、まずは冷静に。舞岡議員の独断とはいえ、建前上はお招きした客人です。対処を誤れば代償は大きい。彼らの狙いは明白です。自衛隊の監視です。まずは情報の秘匿です。この研究所の場所を悟られてはいけません。ここには多くの秘匿情報が……」


プツン


突然映像が切れた。


入れ替わるように、入り口の方に、信じられない光景が現れた。


「ミチニ マヨッテイタラ ナニヤラ スゴイ トコロニ ツキマシタ。コンニチハ ミスター大仲」


官僚は座り込み、その人物の名前を口にした。


「タラメア使節団のリーク大佐ッ」


その様子を見て、リーク大佐は親しげに声をかけた。


「ココハ ドコデスカ?」


大仲がすぐに矢面に立った。


「リーク大佐。あなたはタラメア合衆国の情報部配属のはず。見当はついているのでしょう。そもそも入り口や通路に多くの警備兵がいたはずですが、道に迷うなんて不思議ですね」


リーク大佐は悪びれる様子もない。


「オー! キョウダーイ ココハ ドコデスカ?」


明確な煽りに大仲は乗らなかった。


「どうやって、というのはやめましょう。ここには外に出せない情報があります。つまり秘匿施設なのです。同盟国とはいえ、防衛大臣として立ち入りを許可できません!」


リーク大佐は退く気配もなく話を続けた。


「ハーン? キョウダーイ ココハ ドコデスカ?」


「大佐。そのウソくさい日本語もやめていただきたい。私は防衛大臣です。あなたのことは存じております」


リーク大佐の声のトーンが変わった。


「なら話は早いですね。何度要求しても怪物の情報を出さない!あんたは、いやこの国は合衆国の友人だろう?ならば情報を共有すべきだ。今すぐに。これはタラメア大統領の言葉だと思ってもらって構わない」



大統領の言葉。つまり断れば同盟に亀裂が入る。大仲の一存ではさすがに判断できない事案であった。だが、リーク大佐は「今見せろ」と譲る気配はなかった。


1分… 大仲は言葉に言葉を重ね、この場をしのごうと脳をフル稼働させていた。沈黙が続いた。


しびれを切らした大佐が沈黙を破った。


「大臣。この国にはあなたの家族もいる。”同盟国”として、居場所も把握している。大丈夫、怪物の情報をくれれば”友人として”我が国が安全を保障しよう」


「さぁ友人よ。情報を今すぐ開示してくれ」


大仲の顔がこわばった。


「ぬうう」


つくろう言葉は見つからず、絞り出した声は感情だけが前に出た絞りカスのような声だった。


そこへ篠原が現れた。胸には「山口」と書かれたプレート。どうやら状況を察して偽装したようだ。


そして、わざとらしく大声で叫んだ。


「きゃぁぁ!こんなところに外人さんが!オラこわいだぁぁ!」


そういうと、手元にあった資料を取ってはバラバラに裂いてリーク大佐に投げつけた。

そばにいた、R連隊隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》は仲原《なかばら》香《かおり》三佐にアイコンタクトを送った。


すると、仲原も暴れだした。


「こら!山口!山口さん!落ち着いて!!こちらは使節団のリーク大佐よ!怖くないわ!」


そう言いながら、手元にあったUSBメモリーなどの記録媒体を破壊しては投げつけ始めた。


足立も黙って見ているようで、足元に転がってきたSSD記録機器などを踏みつぶした。


大仲も気が付いた。


ーーこれは整理された情報を乱雑に混ぜることで時間を稼ぐ作戦だと。


そして同調した。


「仲原!山口!何をしている!今すぐヤメタマエ!」


当然止まることはなかった。


だが、茶番は長くは続かなかった。リーク大佐は胸元につけた銃のホルダーを見せ、大きな声で場を制した。


「小細工はやめろ!山口とかいう女!室長の篠原を連れてこい!」


山口(篠原)はぺたんと尻もちをついた。


その瞬間、再びモニターが映り、AI画像の男が現れた。


「室長の篠原です。初めまして。私は秘匿扱いのためこの姿で失礼する。情報はすぐにお渡しします。その代わり、この研究室のことは内密にお願いしたい。できないときは私が全て消去し、私も死にます」


大佐は初めて表情から余裕が消えた。


篠原の噂は大佐も知っていた。タラメアの分析結果としても常識がない人物である。全データを本当に消しかねない。その不安が思考を鈍らせる。


答えを聞かず、AI篠原は進めた。


「あなたを信頼しましょう。後ろの大型モニターに我々の解析結果を表示します。ご自由に撮影してお持ち帰りください。カメラは山口がお渡しします」


すると山口(篠原)がポケットからデジタルカメラを取り出すと、大佐に手渡した。


大佐は山口を睨みつけるとーー


「この女、やはり冷静じゃないか。このリークに馬鹿な芝居をするなんて、いい胆力だ。お前、タラメアに来るか?」


その言葉に、後ずさりし、また座り込む山口(篠原)。


それをみて上機嫌な大佐はデジカメの電源を入れる。すると、大型モニターにUFBの情報が映し出された。


AI篠原が補足した。


「そのデジカメは研究所用のものです。記録画像は3時間で自動消去されます。モニター情報を撮影したら、手早く本国へ送信されるとよいでしょう」


映し出されたUFBの情報を見て大仲は驚いた。


2025年12月21日日曜日

年末年始のお知らせ

本日は当サイトの年末年始のスケジュールをお知らせします。

今年も年末の休暇日が長いので、里帰りのため変則的になります。


外部サイトと同期をとって、小説の作者再編集版を休載日を中心に更新します。

数万文字の内容をギュッと圧縮して「これまでのあらすじ」的な内容になります。

この機会に、本作の序章などに触れて頂ければ幸いです。

最初のころの文章は凝りすぎて読みにくい部分もあったので、再編集版では読みやすくなっていると思います。(一部のミスも修正しています)


28日までは通常通りの更新となります。


28日(日曜日) 掲載日 → 小説】人類アンチ種族神(振り返り:序章①)

29日(月曜日) 休載日 → 【小説】人類アンチ種族神(振り返り:序章②)

30日(火曜日) 掲載日 → 休載日

31日(水曜日) 休載日 → 休載日

01日(木曜日) 掲載日 → 掲載日(新年のご挨拶)

02日(金曜日) 休載日 → 【小説】人類アンチ種族神(振り返り:対決①)

03日(土曜日) 休載日 → 【小説】人類アンチ種族神(振り返り:対決②)

04日(日曜日) 掲載日 → 休載日

05日(月曜日) 休載日 → 休載日

06日(火曜日) 掲載日 → 掲載日

…⇒ 以降通常通り


以降、通常スケジュールとなります。30日は休載になってしますが、申し訳ございません。ご容赦頂ければと思います。

記事に関するDMやコメントに関しては5日以降に確認する形になりますので、ご了承お願い致します。


では、今年もあとわずかですが、本年も最後までよろしくお願いします!

2025年12月18日木曜日

機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム(レビュー)〔Netflix独占配信〕

 <あらすじ>

一年戦争期の東ヨーロッパ戦線を舞台に、新兵器モビルスーツの投入でジオン優勢だった戦局が大きく揺らぐ中、物語は進みます。

ジオン軍の宇宙降下部隊「レッド・ウルフ隊」は、地球連邦軍の最新鋭モビルスーツ「ガンダム」に追撃されながらも、生き残りを図ります。


<レビュー>

本作は、地上にいるジオン側の視点で初代『機動戦士ガンダム』の世界を描いたシリーズです。最終話とそれ以外のエピソードの色合いが大きく異なり、最終話以外は“怪獣映画的”な演出が強い印象でした。“ガンダムらしさ”が最も濃いのは最終話だったと思います。


とはいえ、エンタメとしての推進力は非常に高いです。映画ではなく連続ものにもかかわらず、中だるみなく視聴を引っ張る構成で、毎話しっかり次を見たくなる作りでした。


とりわけ印象的なのは、ガンダムを“無敵の怪獣”として描く視点です。ガンダム登場前には圧倒的だったザクでさえ歯が立たず、逃げても逃げても追ってくる“鉄の怪獣”としての脅威が、ジオン側の恐怖体験としてよく伝わります。「連邦の切り札」を“未知の天災”として提示する手法は、既存ファンにも新鮮に映りました。


一方で、人物や背景のCG表現はやや気になります。メカには十分なリソースが投下されている反面、人間キャラクターのモーションやリップシンク(発話と口の動きの同期)、視線や表情芝居がやや旧世代的に見えるカットが散見されました。メカは抜群に格好いいだけに、このギャップは少し惜しいところです。


演出面では“強襲”展開の頻度が高く、数回重なると先読みが効いてしまう点も気になりました。緊張感維持のための演出であることは理解しますが、強襲以外の揺さぶり(人的ドラマや状況戦術の駆け引き)をもう一手増やすと、恐怖の質にバリエーションが出たはずです。たとえば、モビルスーツ戦だけでなく、生身の人間の判断が勝敗を左右する“地上戦の息づかい”を強調すれば、違ったドキドキ感を提供できたように感じます。


細かな指摘はあるものの、結局は一気見してしまう面白さが勝りました。年末年始に腰を据えて楽しむのにぴったりの一本だと思います。



2025年12月16日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント①》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

-----------------------------------------------------------

大荻山《おおぎやま》剛三郎《ごうざぶろう》とベルガン・サーチが死闘を繰り広げていたころ、埼玉に避難したR連隊研究室では

偵察ドローンが撮影したリアルタイムの映像が、中央にある大型モニターに投影されていた。


それを、R連隊のUFB研究室の室長、変人研究者篠原《しのはら》涼音《すずね》はドローンを通して興味深く観察していた。


同席するのはR連隊隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》と仲原《なかばら》香《かおり》三佐、そして防衛大臣の大仲《おおなか》晴彦《はるひこ》である。



同席した彼らは饒舌に解析する篠原に驚愕していた。


篠原は足立に向かって様々な情報を語っていく


「あは!みてぇ!あの戦車ー!あれは既存のデータにはないですねぇ。あ!でもハッチの形状や装甲の傾向から、タラメアの戦車ですねぇーうわー。かっこいいですねぇ。無駄に大きくて重量があるあたり痺れますぅ」


大仲はこの一言でも血の気が引く


「ばかな!何で他国の戦車が東京の地下にあるんだ!」


篠原は大仲を視界の外でとらえながら、淡々と大仲に説明する。


「大臣。そんなの、あのシェルターにいる大荻山がタラメアとつながっていて、両者の信頼の証として売買されたのでしょう。自衛隊のデータベースにない車両なので、おそらく噂の24シリーズでしょう。車両上部に副砲を備えたオプション兵器が付いています。拡張性の高い戦車型新兵器。YA-24?みたいな名前じゃないですか?だとすれば、後ろにいる装甲車はYA-24とリンク可能な新兵器。装甲車タイプなのでDD-24ということです」


大仲は信じられないという面持ちで一言。


「YA-24、DD-24、大きな声では言えないが防衛相の情報機関が最近入手した呼称。なぜ・・・それを?」


篠原の意識は映像に戻り、大仲の質問は聞こえていない。すぐに足立への語り掛けに戻る。


「足立たいちょぉー!見てくださぁい!この副砲、UFBの行動を先読みして発砲してますぅ。このセンサーとしてドローンを飛ばして立体的に演算してるんですよぉ。なかなかの予測性能なのでぇ、I社製のCPU(P200)、メモリは1024GBといったところでしょうかぁ」


足立への言葉に大仲が反応してしまう。


「数秒の映像からスペックまで?いや、あってるのか?いや、分かったところで役に立つのか?」


篠原が面倒臭そうに答える


「大臣。あのですね。この子のCPUとメモリが分かれば、性能限界が分かります。性能限界が分かれば、それを超えてやれば異常を起こせます」


元自衛官の大仲大臣だったが、それでも飲み込めていない様子。

しぶしぶ篠原は解説する。


「大臣。えっと。この子はメモリは多く積んでいますが、CPUとのバランスは良くないです。多くのメモリを活かすためにはI社製よりもN社製のCPUが向いています。政治的にI社を選ばざるを得ないのでしょう。ここが弱点で、意図的に再計算を強要すれば折角のメモリも活かしきれずに頭脳が追いつかないのです」


見かねた足立が補足する。


「戦術としては陣形を連続的に変えたり、敵の知らない兵器や作戦を織り交ぜることで簡単に性能限界に達します。そうなれば処理速度が落ちて命中精度や照準速度が壊滅的に落ちます。対ドローン用の兵器でこの弱点は致命的。と篠原は言っております」


「なるほど!」


大仲と仲原三佐が同時に声を上げ、気まずい空気が流れる。


そんなことには興味がないのか、刻々と変化する大荻山と神の兵との戦闘に篠原の解説は止まらない。


「このUFBの特攻隊長くんは、別人?いや、サーチちゃんとの連携や行動の癖をみていると同一?身体能力が全然違ってるじゃない!うっはー!パワーよりも速度、柔軟性を上げてきたかんじぃ!面白ーい!」


今度は足立が即座に反応する


「能力が変わってる?どういうことだ?」


篠原は足立に体を寄せて説明する


「えっとですねぇ~。今まではぁパワーがあるもののぉ筋肉が硬いのでぇ一瞬だけ力をタメるような動きでしたぁ。でもぉ、いまのこの子はぁほらぁ移動もしなやかでぇ、加速力や機動力が1.5倍くらいになってますぅ」


「1.5倍、ただでさえ速いのに……」


足立の反応をみて篠原はさらに続ける。


「あは!サーチちゃん!きれいですねー!あの白いのがこの前、特攻隊長君を助けた防御膜ですねー!頑丈そうですが、一度消してしまうと再展開に時間がかかりますねぇ50秒位ですかぁ。あとぉ、あの防御膜はぁ長時間展開出来ないようですねぇ」


ここぞとばかりに仲原三佐が切り込んでいく


「いや、あの白いやつは上空で展開してから、一度も切れてないじゃないか!」

「・・・・」


「答えろ。私は一応三佐だぞ!」


「はいはい。よく見てください。確かに、展開していますが明らかに強弱あります。格闘技のガードと同じでダメージを受ける寸前に硬化して、安全なときは力が抜けています。ほら、彼をかばって後ろから直撃されたとき、貫通してますよね。あれは意識が彼に向いていてシールドが不完全だった証拠でしょう」


そういうと、すぐに足立の方に振り向いて話しを戻す。


「それでぇ、あの防御膜ですがぁサーチちゃんの反応からぁ、ある程度の光、音、電波は通すみたいですぅ。あとぉ、映像から煙も一部貫通してますぅ。なのでぇ、あれは先に可燃性のガス系をぶつけてぇ引火させれば内部で大爆発。余裕で対応できそうですぅー」


足立の声が漏れる。


「すごい。リアルタイムで映像をみながら、ここまでわかるのか・・・?この子には一体どれだけの情報が見えているんだ・・・」


同じく大仲も言葉も出なかった。


そこへ一人の官僚がやってきた。


「大仲大臣!!緊急事態です!」

2025年12月14日日曜日

劇場版「オーバーロード」聖王国編 (レビュー)

<あらすじ>

聖王⼥カルカを元⾸とするローブル聖王国は、

その国⼟を⻑⼤な城壁に守られ平和な時代を謳歌してきた。

悪魔の出没に聖騎⼠団と従者ネイアを伴い、とある国へと助けを請いに向かった。

その国の名はアインズ・ウール・ゴウン魔導国。

 

<レビュー>

本作は『オーバーロード』の劇場版で、単体でも楽しめるように配慮された構成になっています。未完結シリーズの番外編という立ち位置のため、本編の成長や大きな因果は極力持ち込まず、登場人物のフォーカスもアインズ、デミウルゴス、シズに絞られています(他メンバーはモブ的な登場に留まります)。


物語の狙いは、人間側の醜さや脆さをあえて強調しつつ、人間側のヒロインをアインズの隣に置くことで、彼女が人間社会から“アンデッド側”へと傾いていく心理を描く点にあります。

構図としては人間(+アインズ)対 悪魔(デミウルゴス)ですが、初戦から後衛の要を前線に出す判断が裏目に出て、要となる指揮・知略の要員を同時に失ってしまいます。その結果、アインズとデミウルゴスの“出来レース”に、人間側が翻弄され続ける展開になります。


作風は本編同様に苛烈です。人間側が容赦なく殺害され、序盤から聖王女の顔面損傷など、残虐描写も含まれます。ここを割り切って“パニックもの”として俯瞰できるかが、受け止め方の分かれ目です。割り切れる方には、アインズの底知れない強さと人間社会のもろさという両極のコントラストが、第三者視点で非常に魅力的に見えるとおもいます。


人物紹介や世界設定の前置きは最小限で、シリーズ視聴(または原作既読)を前提にした語り口です。そこに抵抗がなければ、常識外れの暴力が支配する世界と、聖性を盲信し自壊していく人間達の姿を、映像の力でストレートに味わえる劇場作品だと感じました。グロテスク表現に耐性がある方にはおすすめです。



2025年12月11日木曜日

【軽い日記的なもの】ケンタッキー「鳥の日パック」改悪…なのでしょうか?

 12月から、ケンタッキーの毎月28日限定メニュー「鳥の日パック」の内容が変わりました。

以前はオリジナルチキン5本で1,100円、サイドメニューは任意で割引オプションという、いわば“欲しいものだけ足せる”設計で、とても優れたメニューだと感じていました。


この考え方は、KDDIのpovoに近い発想だと思います。

「基本だけ安く買い、必要なトッピングだけを自分で足す」――選択権が購入者側にあることが大きな魅力でした。


一方、他社の一般的な値引きはスマホでいうセット割に近く、必要なもの+半ば強制的なオプションを束ね、総額を大きくしてから割引する方式が多いです。見た目はお得でも、不要品を含むため実質値引きが小さくなることがあります。

その点、旧「鳥の日パック」は主力(チキン)だけで完結でき、サイドが欲しい人だけ割安で追加できるため、納得感とお得感の両立がありました。


数字で見ると、当時は――


チキン通常価格:1本 310円

旧パック:5本 1,100円 → 1本あたり 220円

ところが今回、内容が「チキン4本+ナゲット5個 1,250円」に変更されました。

チキンが食べたい人にとっては

1,250円 ÷ 4本 = 1本あたり 312.5円(ナゲット分を無視した場合)

あるいは“チキン1本は実質192円に見える”という訴求も成立しそうですが、ナゲット(5個)が約480円と高額なため”いらない感”が一層強まってしまいます。


つまり、純粋にチキンだけ食べたい人にとっては、不要なナゲットが“抱き合わせ”に感じられ、選択権が後退した印象になります。これは、折角の個性を捨て、他社に埋もれてしまうセット割的な束ね方に近い考え方です。


私はこの変更を“改悪寄り”と受け止めました。とはいえ、ケンタッキー側にも年末の繁忙期に28日に注文が集中しないよう平準化したいといった狙いがあるのだろうと推測します。企業側の気持ちは理解できますが、毎月28日はケンタッキーを買うという定期行動の芽を、やや摘んでしまった印象もあります。一度きりの購入より継続購入のほうが長期的な価値が大きいのは言うまでもありません。


もし私が企画するなら、年末の動線は次のようにします。


12/24・25: クリスマス向けの「クリスマスパック」(セット割で客単価を上げる)


12/28〜31: 期間拡張の「ロング鳥の日パック」(旧来の“チキン5本中心”で選択権を担保)


1/1〜3: 「お正月パック」(家族・親族向けの需要に対応・お年玉クーポンを付けてリピート狙い)


こうしてセット割(客単価)と選択権(満足度・リピート)を交互に配置し、「年末年始はケンタッキーがお得」という記憶を育てつつ、28日一点集中の混雑をやわらげます。

ゲーム業界でいう「ナーフ(=意図的な弱体化)」のように、ユーザーの楽しみを削ぐ方向ではなく、“楽しみの場を増やす”方向の調整が、長期のファン形成には効くと考えます。


数字だけが売り上げではありません。未来の常連候補を増やす絶好の機会に、水を差すようでケンタッキーファンとしては残念な気持ちになりましたので、記事にしてみました。

2025年12月9日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才⑥_神の兵_後編》

 この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

-----------------------------------------------------------

大荻山《おおぎやま》剛三郎《ごうざぶろう》は、焦燥に駆られていた。


ここまでは、圧倒的な演算能力を誇る兵器の力で、UFBの特殊個体を蹂躙《じゅうりん》できていたはずだった。だが、直線的で読みやすかった怪物の動きが、突如として変貌したのだ。


AIの予測を超える機動力で「目」となるドローンを次々と破壊し、8機あった機体は残り2機まで数を減らした。


最強のAIは目を失って情報が不足、ただの箱に成り下がろうとしていた。


そしてその牙は今、大荻山の乗る装甲車(DD-24)へ向けられている。



本能的な恐怖が大荻山を突き動かした。「SUB11Fを手動に切り替えろ! 当たらなくてもいい! 直線軌道に弾幕を張れ! 特攻されれば20秒で接近されるぞ!」


度重なるAIの指示変更で右往左往していた副砲は、手動への切り替えでようやくその首振りを止めた。 といっても、狙いが定まったわけではない。高度な迎撃システムはただの『火を噴く筒』へと成り下がり、暴力的に弾丸をばら撒き始めたに過ぎなかった。


「よし、それでいい。戦車(YA-24)とのケーブル切断。我々は戦車を盾に後退する! 散開させていた一般車両も戻せ。もう囮《おとり》にもならん!」


戦車に搭載されたSUB11Fは、本来なら精密なAI制御でドローンを撃墜するシステムだ。

手動での連射など想定外であり、残弾的にも排熱的にも30秒が限界だった。


さらに、AI本体を搭載している装甲車とのケーブル切断は、AIアシストの完全放棄を意味する。AIを前提にした兵装が、AIを切る。

誰の目にも明らかだった。戦車は、捨て駒にされたのだ。


慌てて後退を始める装甲車。それを援護すべく戦車が火を噴くが、手動の乱射が怪物に当たるはずもない。弾丸は怪物の回避行動の前に虚しく空を切り、時間だけが浪費されていく。


それは、まさに「死への時間稼ぎ」でしかなかった。



◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


戦車内では、女性リーダーの鋭い怒号が響いていた。


「もっと右! 相手の切り返しをよく見て! 気合で食らいつきなさい! 主砲、弾種換装! L2炸裂弾よ、信管設定は1秒! 急いで、あと20秒で副砲が尽きるわ!」


しかし、重量級のSUB11Fを手動旋回させ、超高速機動する物体に直撃させるなど、土台無理な話だった。照準は遅れ、焦りだけが募る。



「クソッ! せめてAIのアシストさえあれば……ッ! 換装、急ぎなさい!!」

「あの老害《ジジィ》はどうでもいい! でもね、後ろの同胞と民間人は守るのよ! 気合入れなさい!!」


悲痛な叫びも虚しく、SUB11Fは一発も命中させることなく、静かに弾切れを迎えた。弾幕が止む。

それを見透かしたように怪物は回避行動を止め、一直線に戦車へ突っ込んできた。


「今よ! 主砲、撃てェッ!」

「ズゥゥン!」


低い独特の砲撃音とともに、砲口から閃光が迸《ほとばし》る。放たれたL2炸裂弾は瞬時に起爆し、無数の子爆弾をショットガンのように撒き散らした。


ーーこの至近距離!しかも直進コース!『点』ではなく『面』で叩けば落ちるはず!


 女性リーダーの勝算は、一瞬で砕け散る。


「敵、直前で軌道変更! 上です! かわされました! ダメージなし!」


彼女の目が見開かれ、張り詰めた汗がこめかみを伝う。コンマ一秒の硬直。それを自らの怒号で無理やり断ち切った。


「回避! 全速で下がりなさい!!」


だが、その命令に車両はピクリとも反応しない。


「どうしたの、回避よッ! 上から来るわよ!!」



操縦士が、震える声で答えた。 

「操……作、不能。管理者によるコマンド介入です……コマンドは、『自爆』」


女性リーダーが怒りと絶望に顔を歪めた、その時。


戦車の上部ハッチが飴細工のようにぐにゃりと押し潰され、車内にあの化け物が降り立った。

生じた衝撃波が、搭乗員たちを一瞬で肉塊へと変える。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


数秒前。装甲車(DD-24)内。


「先生! いくら何でも見捨てるなんて!」 


「うるさい! 女風情が口を出すな! それに、無駄死にはさせんよ。YA-24には機密保持機構があってな、私のコマンド一つで火薬庫を誘爆できる。……全弾薬で吹き飛ばせば、たとえ怪物だろうと無事で済むものか!」


「先生! 戦車の上から怪物が!!」


 激しく揺れる車窓越しにも、炸裂弾の閃光を背に影を落とす怪物の姿が見えた。そいつは躊躇なく、戦車の直上から降下を始めている。


「死ね!!」


大荻山は愉悦に顔を歪め、自爆命令を確定させた。


数秒後。


直上から貫かれた戦車が、一拍も置かずに爆縮し、弾け飛んだ。逃げ場のない爆圧が分厚い装甲を内側から押し上げ、鋼鉄の巨体が粘土のように歪む。


裂けた装甲の隙間から紅蓮の炎が噴き上がると、それは驚くほど美しく、そして残酷に、すべてを粉々に爆散させて黒煙に変えた。


「がはははは! サルがぁ! 自ら檻に飛び込んで自殺しおったぁぁ!」


黒煙が風に巻かれ、燃え盛る残骸の中から「白いもの」が揺らめく。


「先生! ああ……あ、あれ!!!」

同乗していた愛人が、引きつった悲鳴と共に指さした。



大荻山は我が目を疑った。


あろうことか、怪物は上空で「女王」と呼ばれる個体と合流し、二人掛かりで戦車へ突入していたのだ。

当然、女王型はあの白いシールドを全方位に展開している。


やがて、傷一つないシールドをすり抜けるようにして、王と呼ばれる怪物が、ゆらりとその姿を現した。



大荻山が、裏返った声で絶叫した。


「全速で逃げろ!! 一般車両は私の盾になれ!! 生き残ったら何でもくれてやる! 死んでも家族に金を出す! とにかく守れ!!」



装甲車(DD-24)は、最高速度こそ戦車を上回るが、唯一の欠点はその初速の鈍さにあった。

重量級の装甲車がトップスピードに乗るまでには、相応の助走距離を要するのだ。


YA-24に自爆コマンドを確実に送るために減速していたことが、ここに来て致命的な仇《あだ》となる。再加速には、絶対的な時間が足りない。


さらに、追い打ちをかけるような事態が発生した。


大荻山の命令に反し、装甲車が急ブレーキをかけて停車してしまったのだ。


「な、な、何をやっている! 速度を上げろ、死にたいのか!! 一般車両も早く盾になれ!! もたもたするな! 私が死ねば恩賞もないのだぞ!」


だが、装甲車はピクリとも動かない。操縦兵が悲鳴に近い報告を上げる。 


「先生! い、一般車両が……前方に停車して進路を塞いでいます……」

「ばかな! 何をやっている!!!」


バス、トラック、乗用車。それらが示し合わせたように、装甲車の進路を塞ぐ形でバリケードを作っていた。人々は次々と車両を放棄し、蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。


大荻山は慌ててバスの運転手に無線を飛ばした。

「何事だ! 邪魔だ! バスをどかせ!」


無線から、冷え切った、それでいて怒りに震える返答が返る。


『先生! もううんざりだ! 盾になれだと? あんたは、これまで何人殺した! 盾になって死ぬくらいなら、先生を盾にして俺たちは逃げさせてもらう!』


「なっ……きさまら!!」


それを聞いた装甲車の操縦兵が叫ぶ。

「ダメです先生! DD-24はあくまで後続車、戦車ほどのトルクはありません! バスやトラックを無理やり押しのけるには時間がかかります!」


その間にも、怪物の王は確実に距離を詰めてくる。


距離はすでに5mを切っていた。



「いやぁぁ、たすけてぇええ!」


愛人の女がパニックを起こし、その恐怖は同乗する他の要人にも伝播する。


「先生! 何とかしたまえ!」

「これはどういうことですか! ミスター大荻山!」



装甲車はバスの側面に直角に接触すると、エンジンを唸らせて全力で押しのけようとした。焦った操縦兵が、アクセルを床まで踏み込む。


怪物が目前に迫る極限の恐怖。


だが、その状況でも大荻山は、アクセルをベタ踏みする操縦兵のミスを見逃さなかった。


ーー空転するエンジン音

大荻山は操縦兵に具体的な指示をまくし立てた。


「馬鹿者! コイツはタラメア式オートギア制御だぞ! アクセルを一気に踏むな! 回転数に合わせてゆっくり踏み込め! 空転して動かんぞ!!」


その不毛なやり取りの間に、怪物はDD-24へとたどり着いた。



大荻山は、震える声で虚勢を張った。


「狼狽《うろた》えるな! この装甲車はYA-24の主砲すら弾き返す! 耐衝撃、耐熱、最強のシェルターだ。落ち着いてバスをどかせばいい!」


その言葉が終わるか終わらないかの時だった。


装甲車の後方ハッチ、そのロック部分が赤熱し、まるで水飴のようにドロリと溶解し始めた。


「きゃあああああああ!」

愛人の悲鳴が鼓膜を裂く。


直後、溶けた装甲の隙間から怪物の手がねじ込まれた。


「グギィ」


嫌な金属音が響き、分厚いハッチが紙屑のようにこじ開けられる。


大荻山、愛人、要人、そして私兵たちが凍りつく中、怪物は不敵な笑みを浮かべてそこに立っていた。


驚くことに、怪物は流暢な日本語で問いかけた。


「……お前らが指揮官か。俺をここまで無様に追い詰めた人間の顔を拝むために、丁寧におもちゃを壊してみたんだが……どいつが大将だ?」


「この人よ!!」

愛人が即座に叫び、大荻山の背後へ飛び退く。


「この、バカ女ぁぁぁ!!!」

大荻山が激昂するが、他の乗客もこれに乗じた。

こともあろうか、彼が金で雇った私兵たちまでもが、大荻山の背中を怪物の前へと押し出していく。


「やめろ! おまえら!! 私を誰だと思っている! 大荻山だぞ! お前らごときとは命の重さが違うのだ! なぜわからん!!」

「やめろ!! 押すな! こんなことをしてタラメアが黙っていると思うか! おい、お前の今の地位は私があってこそだろう!」

「頼む、やめろ!! なぁ、愛し合った仲だろう! やめてくれ、ああ、おい! 誰か、金ならやる! 助けろぉぉぉ!」


大荻山の必死の訴えに耳を貸す者は、誰一人としていなかった。


怪物の鼻先へ突き出された大荻山は、引きつった顔で怪物にすがった。


「に、日本語が分かるのか! 私は大荻山。この国でもっとも尊い人間だ! 私を殺さずに上手く使えば、この国、いや大国タラメアさえも簡単に占領できる! どうだ! 私を助けてもらえないか!」


怪物は、氷のように冷たい目で大荻山を見下ろした。 

「どんな切れ者かと思えば。はぁ。……時間の無駄だったな」


吐き捨てるように言うと、怪物は装甲車の車内へ向けて、深紅のブレスを解き放った。

超高温の吐息は一瞬ですべての酸素を奪い、肺を焼き、車内の人間は全員、断末魔の一言も発することなく灰となった。



◆◆◆   ◆◆◆  ◆◆◆



ベルガンは自分の無能さを悔いていた。

気高い敵の指揮官に押されていたと思っていたが、顔を拝んでみれば保身しか能のないクズだった。

そんなものに後れを取った自分が、情けなくてたまらない。


だが、感傷に浸る時間はない。神の命令は絶対だ。

『一人でも逃がせば負け』——その勝利条件を満たさねばならない。


ベルガンは冷徹な思考に切り替えると、サーチの追跡能力を借り、散り散りに逃げた人々を一人残らず捕捉し、始末していく。

慈悲も、愉悦もない。ただの作業として、すべての命を刈り取った。



静寂が戻ると、ベルガンはサーチの元へ戻った。


「サーチ、お前大丈夫か?」


サーチは少しだけ勝気な笑みを浮かべる。


「何? 私がこれくらいで、どうにかなると思ったわけ? ふっ。おやさしいこと!」


ベルガンは元気そうなサーチに安堵を覚えつつ、ヴァロンに報告した。


「任務完了。逃亡者なし。……おかげで完全勝利だ。帰還する」




だが、その一部始終をじっと見つめる「目」があった。

超高性能赤外線カメラを搭載した、一機の自衛隊偵察ドローン。


その眼差しの主は、天才——篠原《しのはら》涼音《すずね》であった。

2025年12月7日日曜日

素材採取家の異世界旅行記 #1~#9( 一部レビュー )

<あらすじ>

異世界へ転生した、ごく普通のサラリーマン・神城タケル。

剣と魔法の世界『マデウス』で新たな人生をスタートすることになった彼には、数々の能力が備わっていました。

身体能力の強化にとんでもない魔力、そして価値のあるものを見つけ出せる探査能力。

与えられたチート級の力を駆使して、タケルの異世界大旅行が幕を開けます。


<レビュー>

本作は、シナリオに軸足を置いた異世界チート系のアニメです。序盤こそ能力が物語を引っ張っていましたが、話数を重ねるにつれ、主人公の万能ぶりそのものを楽しむ作りになってきたと感じます。


マスコット的存在に加え、不足していたヒロイン枠にも仲間が加わり、パーティが賑やかになっていく様子は、王道ながらやはり楽しい見どころです。

一方で本作のヒロイン像は、いわゆる“人間的な可憐さ”に寄せず、人外要素の強いキャラクター(例:「いつも汚いエルフ」「馬の姿の女神さま」など)で構成されています。台詞や振る舞いも含めてギャグ寄りの造形が多く、たとえば語尾が「ひひーん」になるようなシーンもあります。

この設計から、作者が積極的にラブコメ的な絡みを抑え、世界観と探索要素を前面に置いている意図が伝わってきます。恋愛を足すと要素が渋滞しやすいタイプの作品だからこそ、あえて“外す”判断をしているのだと思います。


とはいえ、キャラクターデザインはもう一歩洗練できたのでは、という印象もわずかにあります。ヒロインの女性的な魅力を控えた結果、モノノケ感が前面に出すぎるシーンがあり、そこを魅力として楽しめる一方で、ヒロインが少しかわいそうに映る瞬間もありました。


進行テンポは非常によく、1話で1エピソードがまとまり、次のエピソードの導入まで進むことも多いです。裏を返せば、1話見逃すと展開の把握が難しくなる場合がありますので、見逃してしまった際は各配信サービスで追いついておくと、次の回をより楽しめます。


まもなく最終回ということで、かなり序盤から伏線が張られていたヒロイン・ブロライトにスポットが当たるエピソードに突入しました。どのような着地で締めくくるのか、非常に楽しみにしています。




2025年12月5日金曜日

【軽い日記的なもの】日々雑記

こんばんは。管理人の緑茶です。


12月になり、秋アニメ(10月スタート)の最終回ラッシュの時期がやって来ました。毎回日記でもお伝えしていますが、この時期はレビューを書くタイミングが難しく、いま書いてしまうと最終回直後にまた書くことになってしまいます。そのため、どうしても日記が増えがちになります。


ということで、本日は近況の雑記をいくつか書いていきます。


・Nサークルの話題です


私はゲーム制作サークルの Nサークル に所属しています。メンバーの多くが社会人のため、年末年始は例年どおり多忙です。私自身も「年末までにお願いします!」という作業が重なり、コミュニティツールを眺める時間はあるものの、ほとんど参加できていません。ふだんは活発なサークルも、この時期は「シーン」と静まり返っています。


制作進行のあいさんが進捗や成果物の話題を投げてくれているのですが、ほぼ全員が既読スルーの状態が続いており、申し訳なく感じています。私もすぐに良い返事ができていないので、もどかしい気持ちです。


そんな中、ふだんはゲームをイチから作らないイラストレーターのもこもこさんが、RPGツクールMZで試作版のゲームを披露してくれました。手探り感が画面全体から伝わってきたのがかえって印象的で、繁忙期が明けたら私も腰を据えてがんばろう、と良い刺激をもらいました。



・小説の話題です


『人類アンチ種族神』〈混乱と天才〉を書き終えました!(拍手) このサイトでも、外部サイトでも年内に当章は完結させます。かなり手の込んだシナリオで、設定資料とにらめっこしながら書き上げました。大筋は前章の〈対決〉で固まっていたのですが、頭の中の物語を具体的な文字に落とし込むまでに思った以上の時間がかかりました。


当サイトでは、年末年始ごろに総集編として、〈序章〉〈対決〉〈混乱と天才〉の作者再編集版を掲載する予定です。〈序章〉は〈対決〉以前の第1話~〈復讐〉をまとめたものです。連載開始当初は長期連載にするか悩んでいたため、『人類アンチ種族神 I』『II』という短編寄りの形式で公開していましたが、今回あらためて再編集・再構成します。


年末年始の読み物として楽しんでいただけましたら幸いです。〈混乱と天才〉から読み始めた方は、導入部である〈序章〉もぜひ手に取ってみてください。





もちろん物語はこの先も続きます。次章の伏線はすでに張ってありますので、順次回収していきます。骨格だけは書き出してあり、かなり刺激の強い章になりそうです。



・その他の雑記です


ここ最近は物価の上昇が続いており、特に食費のコントロールが難しく感じます。私は少し足を延ばして、地元で有名な安売り店に通うようになりました。このお店は今でも数量限定の告知なし特売があり、キャベツ98円、白菜98円、卵98円といった価格に遭遇できることがあります。うまく当たると本当に助かります。


一方で、ペットボトル飲料の「綾鷹」が220円になるという話を耳にしました(情報源は未確認です)。さすがにお茶に200円を超えて支払うくらいなら、まずは食材を買うべきか……と、家計のバランスを考えてしまいます。需要があるのかもしれませんが、しばらくは様子見になりそうです。


気になる話題は多いのですが、まずは目の前の繁忙期と小説執筆、そして「これはそれ」。に全力で取り組もうと思います。


本日はこんな日記でした。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

2025年12月2日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才⑥_神の兵_中編》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

-----------------------------------------------------------

大荻山《おおぎやま》剛三郎《ごうざぶろう》は、焦燥に駆られていた。


ここまでは、圧倒的な演算能力を誇る兵器の力で、UFBの特殊個体を蹂躙《じゅうりん》できていたはずだった。だが、直線的で読みやすかった怪物の動きが、突如として変貌したのだ。


AIの予測を超える機動力で「目」となるドローンを次々と破壊し、8機あった機体は残り2機まで数を減らした。


最強のAIは目を失って情報が不足、ただの箱に成り下がろうとしていた。


そしてその牙は今、大荻山の乗る装甲車(DD-24)へ向けられている。



本能的な恐怖が大荻山を突き動かした。「SUB11Fを手動に切り替えろ! 当たらなくてもいい! 直線軌道に弾幕を張れ! 特攻されれば20秒で接近されるぞ!」


度重なるAIの指示変更で右往左往していた副砲は、手動への切り替えでようやくその首振りを止めた。 といっても、狙いが定まったわけではない。高度な迎撃システムはただの『火を噴く筒』へと成り下がり、暴力的に弾丸をばら撒き始めたに過ぎなかった。


「よし、それでいい。戦車(YA-24)とのケーブル切断。我々は戦車を盾に後退する! 散開させていた一般車両も戻せ。もう囮《おとり》にもならん!」


戦車に搭載されたSUB11Fは、本来なら精密なAI制御でドローンを撃墜するシステムだ。

手動での連射など想定外であり、残弾的にも排熱的にも30秒が限界だった。


さらに、AI本体を搭載している装甲車とのケーブル切断は、AIアシストの完全放棄を意味する。AIを前提にした兵装が、AIを切る。

誰の目にも明らかだった。戦車は、捨て駒にされたのだ。


慌てて後退を始める装甲車。それを援護すべく戦車が火を噴くが、手動の乱射が怪物に当たるはずもない。弾丸は怪物の回避行動の前に虚しく空を切り、時間だけが浪費されていく。


それは、まさに「死への時間稼ぎ」でしかなかった。



◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


戦車内では、女性リーダーの鋭い怒号が響いていた。


「もっと右! 相手の切り返しをよく見て! 気合で食らいつきなさい! 主砲、弾種換装! L2炸裂弾よ、信管設定は1秒! 急いで、あと20秒で副砲が尽きるわ!」


しかし、重量級のSUB11Fを手動旋回させ、超高速機動する物体に直撃させるなど、土台無理な話だった。照準は遅れ、焦りだけが募る。



「クソッ! せめてAIのアシストさえあれば……ッ! 換装、急ぎなさい!!」

「あの老害《ジジィ》はどうでもいい! でもね、後ろの同胞と民間人は守るのよ! 気合入れなさい!!」


悲痛な叫びも虚しく、SUB11Fは一発も命中させることなく、静かに弾切れを迎えた。弾幕が止む。

それを見透かしたように怪物は回避行動を止め、一直線に戦車へ突っ込んできた。


「今よ! 主砲、撃てェッ!」

「ズゥゥン!」


低い独特の砲撃音とともに、砲口から閃光が迸《ほとばし》る。放たれたL2炸裂弾は瞬時に起爆し、無数の子爆弾をショットガンのように撒き散らした。


ーーこの至近距離!しかも直進コース!『点』ではなく『面』で叩けば落ちるはず!


 女性リーダーの勝算は、一瞬で砕け散る。


「敵、直前で軌道変更! 上です! かわされました! ダメージなし!」


彼女の目が見開かれ、張り詰めた汗がこめかみを伝う。コンマ一秒の硬直。それを自らの怒号で無理やり断ち切った。


「回避! 全速で下がりなさい!!」


だが、その命令に車両はピクリとも反応しない。


「どうしたの、回避よッ! 上から来るわよ!!」



操縦士が、震える声で答えた。 

「操……作、不能。管理者によるコマンド介入です……コマンドは、『自爆』」


女性リーダーが怒りと絶望に顔を歪めた、その時。


戦車の上部ハッチが飴細工のようにぐにゃりと押し潰され、車内にあの化け物が降り立った。

生じた衝撃波が、搭乗員たちを一瞬で肉塊へと変える。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


数秒前。装甲車(DD-24)内。


「先生! いくら何でも見捨てるなんて!」 


「うるさい! 女風情が口を出すな! それに、無駄死にはさせんよ。YA-24には機密保持機構があってな、私のコマンド一つで火薬庫を誘爆できる。……全弾薬で吹き飛ばせば、たとえ怪物だろうと無事で済むものか!」


「先生! 戦車の上から怪物が!!」


 激しく揺れる車窓越しにも、炸裂弾の閃光を背に影を落とす怪物の姿が見えた。そいつは躊躇なく、戦車の直上から降下を始めている。


「死ね!!」


大荻山は愉悦に顔を歪め、自爆命令を確定させた。


数秒後。


直上から貫かれた戦車が、一拍も置かずに爆縮し、弾け飛んだ。逃げ場のない爆圧が分厚い装甲を内側から押し上げ、鋼鉄の巨体が粘土のように歪む。


裂けた装甲の隙間から紅蓮の炎が噴き上がると、それは驚くほど美しく、そして残酷に、すべてを粉々に爆散させて黒煙に変えた。


「がはははは! サルがぁ! 自ら檻に飛び込んで自殺しおったぁぁ!」


黒煙が風に巻かれ、燃え盛る残骸の中から「白いもの」が揺らめく。


「先生! ああ……あ、あれ!!!」

同乗していた愛人が、引きつった悲鳴と共に指さした。


大荻山は我が目を疑った。


あろうことか、怪物は上空で「女王」と呼ばれる個体と合流し、二人掛かりで戦車へ突入していたのだ。

当然、女王型はあの白いシールドを全方位に展開している。


やがて、傷一つないシールドをすり抜けるようにして、王と呼ばれる怪物が、ゆらりとその姿を現した。