エリーのもとに、王国の属国サージャス小王国が帝国に宣戦布告したと急報が入る。
侵攻ルートに商会の新たな商品の生産拠点計画地があることに気づいたエリーは、事態を確かめるべく、手練れの冒険者たちを雇い最前線へ向かう。
敗走し、ハルドリア王国の屋敷に帰りついていた騎士ロベルト。
家族に温かく迎え入れられ療養した彼は、不意に自分が部下たちと帝国に投降した記憶が蘇る。
なぜ自分はここにいるのか。
何か恐ろしいことを忘れているのではないか……。
頭の中に響く声に命じられるまま、ロベルトは手にした剣を振り下ろす。
「民の血を以て、赤き雨を降らせよ――」
<レビュー>
第6〜8話と、エリーの闇の部分が描かれ始めたので、中間レビューを掲載します。
第1〜5話までのエリーは、民のため、味方を守るために動いていました。
しかし、第6話あたりから、その印象が少しずつ反転し始めます。
エリーを追放した王太子の思いつきによって、属国サージャス小王国が帝国へ宣戦布告。
エリーは商会の新商品の生産拠点計画地を守るため、戦場へ向かいます。
流れそのものは、これまでと同じ「味方のために」です。
しかし、描写はかなり残酷になりました。
首をはねる。
人体を切り裂く。
深夜枠だからこそできるような表現が増えていきます。
そして、大きな転換点となったのがロベルトへの報復です。
これまでエリーは、「王国には報復します」と口では言っていました。
しかし、具体的な報復行動はそれほど多くありませんでした。
それが第7〜8話で一変します。
かつてエリーを断罪した近衛騎士ロベルト。
現在のロベルトは、王太子フリードの非道に耐えかねて王国から離反し、エリーとの直接対決を避けて投降しています。
一年前の行為についてもエリーに謝罪しています。
つまり、最後まで悪意を持ってエリーと敵対した人物ではありません。
命令と良心のはざまで、最後には良心を取った人物です。
それでもエリーは許しませんでした。
ロベルトの部下を殺し、ロベルト自身には呪いをかけます。
そして第8話。
呪われたロベルトの頭には、
「民の血を以て、赤き雨を降らせよ――」
という命令が響きます。
その結果、ロベルトは自らの妹を斬首し、さらには遊んでいた親子を含む民衆まで惨殺してしまいます。
ここで重要なのは、彼らが偶然巻き込まれたわけではないことです。
エリーが命じたのは、ロベルト本人や王太子の関係者への報復ではありません。
「民の血を流せ」
です。
つまりエリーは、王太子やその側近だけではなく、王国そのものを報復対象とし、そこに暮らす民衆まで殺害対象に含めているということです。
王国の民である。
それだけで、エリーにとっては処刑対象になり得る。
ここで作品の見え方が大きく変わりました。
これまでの本作は、
「不当に追放された有能な令嬢が、自分を陥れた悪人たちへ報復する」
という、かなり分かりやすい復讐ものとして見ることができました。
報復される側も、悪徳商人や野盗、身勝手な王太子など、視聴者が比較的罪悪感なく制裁を受け入れられる人物たちでした。
しかし今回、その線を明確に越えています。
ロベルトの家族や民衆は、エリーを投獄した人物ではありません。
それでも、王国に属する民として殺害対象に含まれた。
ここで、
「これは報復なのか。それとも国家そのものに対する無差別な復讐なのか?」
という疑問が生まれます。
意外だったのは、エリーは実力もありますが、これまでかなり頭脳派のキャラクターとして描かれていたことです。
そのため、祖国への復讐も、もう少し裏側から知性的に進めていくキャラクターだと感じていました。
しかし、実際にはかなり直接的で苛烈な制裁も辞さないようです。
そして、もう一つ怖いところがあります。
エリーは王太子の婚約者として、かつて王国の内政を取り仕切っていました。
つまり、王国内部の力関係や、それぞれの人物の立場を熟知しているはずです。
ロベルトが王太子へ忠誠を誓っていることも知っている。
無理な命令であっても、「王国のため」と言われれば従わざるを得なかった立場も理解していたはずです。
しかもロベルトは、最後にはエリーとの戦闘を避けて投降しています。
主君が無能なだけで、本人は有能であり、良心も残っていた人物です。
それでも情状酌量はしない。
エリー自身の言葉にもあったように、
「過ぎたこと、受けた屈辱は変えられない」
だからこそ、後から悔い改めても許さないのでしょう。
その思想を体現したのが、今回のロベルトへの報復でした。
ただ、ここまで来るとエリーは「悪人を裁く復讐者」ではありません。
祖国そのものを敵と定め、そこに暮らす民衆まで報復対象に含める人物です。
第1〜5話では、商会経営や人助けによって見えにくかったエリーの復讐心。
もしかすると、第7〜8話で急にダークヒロインへ変わったのではありません。
最初からタイトルにあった、
「祖国を叩き潰す」
という言葉の本当の意味が、ここで初めて見えたのかもしれません。
刺激の強い表現で、非常に印象的です。
一方で、王国の民衆まで明確に殺害対象にする報復は、主人公エリーへの共感を大きく損なう危険もあります。
個人的には、もう少し知性的な報復でもよかった気がします。
ですが、この一線を越えたことで、本作が単純な「爽快復讐もの」ではないことも分かってきました。
そうなると、次に気になるのはロゼリア・ファドガルです。
エリーの後を継ぎ、王国の内政を担っている重要人物です。
王太子側の「剣」がロベルトだったとすれば、「頭脳」はロゼリアでしょう。
しかもロゼリアは、エリーを直接陥れた人物ではありません。
それでも王国を支える重要人物である以上、現在のエリーにとっては十分に報復対象となり得ます。
しかし、残り話数は4〜5話ほどです。
王太子への復讐に2話使うとすれば、残りはわずか。
ロゼリアとの対決を丁寧に描くのか。
直接王太子へ向かうのか。
あるいは王太子との決着を第2期へ回すのか。
第8話で主人公の見え方そのものが大きく変わったため、この先の展開がかなり読みにくくなりました。
引き続き視聴していきたいと思います!
0 件のコメント:
コメントを投稿