<あらすじ>
剣と魔法の世界、アースクリア。
この世界で人々はレベルと、生まれながらの役割を持つ。
LV999の極致に至り、定められた生き方に抗う村人、鏡浩二。
魔族の頂点である魔王の娘、アリス。
二人は出会い、仲間たちとともに魔族と人間の共存を目指す。
「対立」することを運命づけられた世界で、彼らを待ち受けるこの世界の仕組みとは……!
<レビュー>
主人公無双系の異世界ファンタジーです。
HPが0になれば本当に死ぬ、ゲーム的な数値を持ちながらも死が現実として扱われる世界で、最弱の役割「村人」がLV999になったところから始まる物語です。
主人公の鏡浩二は、父親をモンスターに、母親を人間の賊に殺されています。
幼い頃の鏡は復讐心から必死に戦い、レベルを上げ続けました。
しかし、その先で得たものは復讐心だけではありません。
この世界の仕組みに対する疑問でした。
なぜモンスターは人を襲うのか。
そして、なぜ倒すとお金を落とすのか。
人間と魔族は、本当に生まれながらに対立しなければならないのか。
そんな疑問を持った主人公は、魔王の娘アリスと出会い、仲間たちとともに魔族と人間の共存を目指します。
本作は、キャラクターを立てるのが非常にうまい印象です。
それぞれの人物を作画だけではなく、性格や価値観、立場まで描き分けているため、登場人物が多いわりに分かりやすくなっています。
そして設定として面白いのが、「LV999の村人」というキャッチーな主人公の強さです。
村人はレベルが上がりやすい。
しかし、レベルを上げても戦士や勇者のように高いステータスや強力なスキルを得にくいという制約があります。
つまり、同じレベルなら基本的には他の戦闘系職業のほうが強いのです。
では、なぜ主人公だけが無双しているのか。
鏡は「村人だから実は最強だった」のではありません。
村人でありながら、幼い頃からモンスターの性質と経験値の得方を考え、安全に倒せる方法を探しながら、20年もの間ひたすらレベルを上げ続けた結果です。
一方、ほかの人々はレベルを上げるために命を懸ける必要があります。
さらに戦闘系の役割は村人ほど簡単にはレベルが上がらない。
そのため、役割そのものは強くても、鏡ほど極端なレベルには到達していません。
ここが本作の面白いところです。
理屈だけなら、戦士や勇者などの強力な役割を持つ人物が同じように極端な高レベルへ到達すれば、鏡より強くなる可能性があります。
つまり、本作の主人公無双は、
「主人公だけに与えられた絶対的なチート」
だけで成立しているわけではありません。
無双に至る原理そのものは、万人に開かれています。
無双系作品において、この部分は少し珍しいと思いました。
この設定なら、いずれ鏡と同等、あるいはそれ以上の強敵が現れても、
「今まで最強だったのに、なぜ急にもっと強い人物が出てきたのか?」
と世界観を壊すことなく、自然に登場させる余地があります。
最弱の「村人」という役割。
その村人でLV999まで到達した主人公。
そして、レベルだけでは超えられない役割そのものの性能差。
主人公を最強にしながら、その主人公を超える存在も成立できるようにしてある。
かなりよく考えられた設定だと思います。
アリスとともに目指す、人間と魔族の共存。
その前にどんな強敵が現れるのか。
そして「LV999の村人」という主人公の強さが、今後どこまで通用するのか。
そういった観点でも楽しめる作品です。
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