<あらすじ>
片田舎の剣術師範ベリル・ガーデナント。
魔術の学究に勤しむ教育機関で。
乗り越えるべき壁がそびえる故郷で。
国境を臨む辺境伯領で。
策謀渦巻く異国の地で。
ベリルは剣士として、ひとりの人間として、避けることのできない新たな戦いに立ち向かう――。
<レビュー>
中年男性主人公の立身出世ものです。
本作は第2期ですが、テーマが第1期の「さえない中年男性の立身出世」から、「さえない中年男性の心情の変化」へと少し移っているように感じます。
第1期では、とうに全盛期は過ぎたと、自分自身を諦めていた主人公。
そんなベリルを周囲が、
「先生はもっとすごい人なんだ」
と持ち上げ、本来の実力に見合った場所へ連れ出していく楽しさのある作品でした。
第2期では、その軸は残したまま、今度は主人公自身の心が変わり始めています。
一度は諦めたはずの、自分への期待。
そして、剣士としてもっと上を目指したいという気持ち。
そんな「剣士の心」を取り戻していく内面の変化も楽しめるようになっています。
この第2期の良いところは、主人公が自分の中に何かを感じ始め、第1期でお膳立てされて手に入れた地位もあるのに、高圧的にならないところです。
優しい性格は変わりません。
地位が上がっているので、いわゆる「指導」として練習生を注意することも必要になります。
しかし、そのような場面では、
「職務上、注意しなければならない」
というベリル側の心情もモノローグで添えています。
環境が変わり、周囲にも認められ、傲慢になってもおかしくない状況です。
それでも主人公の性格がブレない。
ここは、本作の大きな強みだと思います。
ベリルの人柄に感情移入して視聴している人にとって、地位を得た途端に主人公が傲慢になってしまえば、その魅力を大きく損なう可能性があります。
また、併せて描かれているのが、一緒に暮らしているミュイの成長です。
若いミュイが少しずつ成長していく姿を見ることで、ベリルも自分自身を振り返る。
これは、成長を諦めていた主人公自身の変化を映す、良い物差しになっていると思います。
中年男性と少女の二人暮らしという関係性も、描き方によっては別のニュアンスを帯びかねません。
しかし本作では、そういった要素をほとんど出さず、保護者と子供という関係に徹しています。
そのうえで、成長していくミュイと、成長を諦めていたベリルを対比させている。
この使い方も良いと思います。
物語も折り返しに近づき、主人公の気持ちにも変化が出始めました。
ここからどのように展開していくのか、とても楽しみな作品です。
あと、この作品の剣術描写はとても具体的で、見ていて勉強になります。
たとえば、大きく振る剣撃には、あえて懐へ入り、剣に十分な勢いが乗る間合いを潰す。
そういった、ただ剣をぶつけ合っているだけではない「なぜその動きをするのか」が描かれています。
一つ一つの所作に理由がある。
そういう視点で視聴してみても、楽しい作品です。
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