<あらすじ>
35歳独身彼女なしのサラリーマン・山田健一。
ヌルゲーを嫌い、10年以上やりこめるゲームを探していた彼は、最高難易度「ヘルモード」で異世界の農奴の少年・アレンに転生してしまう。
<レビュー>
転生系の無双作品ですが、いきなり最強になるタイプではなく、成長過程を丁寧に積み上げていく作風です。ヘルモードという設定のためレベルアップは極端に遅いものの、主人公が召喚士として多彩な召喚獣を扱えるようになることで、努力と工夫で強くなっていく流れが描かれます。
特に良かったのは幼少期の農奴編です。両親は農業だけでなく魔物退治にも駆り出され、生活水準も低く、蔑まれながら暮らしています。それでも家族として幸せに過ごす様子が、多彩な場面で具体的に描かれており、解像度が高く没入感がありました。魔物退治も単なる戦闘ではなく、作戦を立て、人々が役割を持ち、連携していく過程が丁寧に描かれるため、納得感があります。
また、そんな環境でレベルアップやスキルアップに没頭していく主人公が、転生前の「廃ゲーマー」としての視点から、徐々に両親へ情を持つ「アレン」へ変わっていく描写も良かったです。主人公のモノローグで分かりやすく示されているため、視聴者が置いていかれにくく、作品の間口の広さにつながっていると感じました。
無双系でありながら、農奴編の主人公はまだ強くありません。「剣聖」の才能を持つ幼馴染に剣術で負けてしまう場面などもあり、世界の平和な日常を丁寧に見せることで、作品世界を堪能できました。
そして一転、グランヴェル家の令嬢・セシルの従僕となり、貴族の屋敷で生活する従僕編に入ると、登場人物も総入れ替えになります。ある程度強くなった主人公は、従僕として務めつつ魔物狩りを重ね、レベルアップの速度を上げていきます。やがて自分が前に出て戦うのではなく、召喚獣で編成したパーティーを回して稼ぐようになり、自動周回のような感覚に近づいていくのが面白いところでした。
ここまで成長と努力を積み上げてきた本作ですが、マンネリ化を避けるためか、次第に貴族同士の争いへ巻き込まれていきます。物語の軸を大きく動かす構成は離脱リスクもありますが、本作は無双の気持ちよさを土台にしつつ、少しずつ貴族色を強めていくため、切り替えが比較的自然に感じられました。
そして最終的には、騎士団でも討伐できないモンスターを倒すことで、無双要素と貴族シナリオを融合させることに成功しています。
前半で強く描かれた家族愛が、後半ではやや薄くなりがちな印象もあります。ただ、視聴者が気になるタイミングで実家の村の様子を挟み、記憶をつなぎとめるように描いているため、違和感はうまく緩和されていると思いました。
大きな一本筋の事件で押し切るというより、中規模のシナリオをつなぎ合わせて進む作風なので、途中からでも比較的入りやすい作品です。ご興味があれば配信でも見られますので、視聴してみてはいかがでしょうか。
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