2026年11月3日火曜日

【自作ゲームレビュー】呪縛勇者 ― 31の呪いがプレイヤーまで縛るRPG

<概要>

魔王に敗北した勇者パーティーが、31種類の呪いを受けた状態から再び魔王討伐を目指すRPGです。

今回はリリース直後ということで、ネタバレは攻略のヒント程度にして、制作側の視点からゲーム構造を中心に簡易レビューします。

管理人が所属するNサークルの作品です。



<レビュー>

通常のRPGが、物語の進行とともに主人公たちを強くしていく設計だとすれば、『呪縛勇者』は逆です。


主人公たちは最初から強い。

しかし、その性能の大部分を31種類の呪いによってロックされています。

ゲームを進めながら新しい力を獲得するというより、呪いを解除し、本来持っていた性能を少しずつ取り戻していく。

この「性能ロック」が、本作の中心となるシステムです。


ただし、本作の呪いは単純なステータス異常だけではありません。


たとえばNPC石化。

本作では「人間へ話しかけると石化する」という制約に対して、まず「人間以外なら石化しない」というルールの裏側を利用しています。

そこでエルフなど、人間以外の種族を世界へ取り入れ、序盤では彼らが重要な役割を担います。


しかし、すべての重要NPCをエルフにして解決するわけでもありません。

石化した人間は、押して移動させることができます。

その仕様を利用すれば、宿屋の主人を石化させたうえで無断宿泊する、なんて選択までできます。


さらに、この呪いは戦闘でも利用できます。

人間族に分類される敵、たとえば野盗などへ戦闘中に「話しかける」。すると相手を石化させ、一方的に攻撃することができます。


つまりNPC石化は、本来ならプレイヤーを困らせる「性能ロック」です。

しかし、そのルールを理解すれば、「呪いそのものを攻略手段として利用できる」。


呪いは単純に解除すれば正解、というシステムではありません。

残っている呪いをどう利用するか。

どの呪いを解除し、どの呪いなら我慢するか。


場合によっては、呪われているからこそ使える攻略方法まであります。


制約が、そのまま遊びへ反転しているのです。

ここが本作の面白いところです。


今回は、便宜上、呪いによる制約を三つの層に分けて考えてみます。


まずは「表層ロック」。

普通のRPGで「呪い」と聞いて想像しやすいものです。


HPが減る。  

特定の武器を装備できない。  

攻撃が当たらない。


こうしたゲーム内キャラクターの能力そのものへ制約をかけます。


比較的実装しやすく、一定時間ごとにHPを減少させる、特定カテゴリーの武器を装備不能にするといった形で表現できます。


もう一段深くなると、「中層ロック」です。

今度はキャラクター自身ではなく、周囲の世界へ影響します。


特定のNPCに会えなくなる。  

ダンジョンの構造が変わる。  

これまで見えていた世界が偽物だったと分かり、別の世界が現れる。


こうなると、制約の有無によってNPCの行動やイベント、シナリオ分岐まで変化するため、設計は一気に複雑になります。


そして『呪縛勇者』は、さらにその先まで制約を伸ばしています。

私はこれを「体験層ロック」と呼びたいです。


たとえば、


「移動速度が極端に遅くなる」  

「NPCへ話しかけると、そのNPCが石化する」  

「宝箱がミミックになる」


といった呪いです。

ここまで来ると、ゲーム内の勇者だけが呪われているわけではありません。


画面の外にいるプレイヤー自身が、

「遅いなぁ」  

「NPCに話しかけられない」  

「宝箱を開けるのが怖い」

と感じ始めます。


キャラクター性能ではなく、プレイヤーの操作、判断、そして心理そのものへ制約が届いているわけです。


こうした仕様は、見た目以上に実装コストが重くなります。

先ほどの「NPCへ話しかけると石化する」という呪い。

これだけ聞けば、単純なネタに見えるかもしれません。


しかしRPGで人間NPCへ話しかけられなくなると、宿屋はどうするのか。クエストの受注や報告はどうするのか。重要人物が石化したらどうするのか。死亡した仲間の復活にNPCが必要ならどうするのか。


ゲームの根幹へ、強く深く刺さります。


さらに問題なのは、この呪いが一つだけではないことです。


移動速度低下。  

NPC石化。  

宝箱のミミック化。  

攻撃制限。


31種類の制約が同時に存在する可能性があります。


「移動が遅いならマップを狭くすればいい」

という単純な改善では済みません。

マップを狭くしても、そこにいるNPCが石化するなら別の問題が残ります。


一つの呪いだけを解決するのではなく、複数の呪いが同時に存在してもゲームが成立するように、世界全体を設計する必要があります。


それを無理やり成立させているのが、本作です。


ただし、とても大きな弱点もあります。

ゲーム開始から最初の10分ほどは、「移動速度が遅くなる呪い」の影響で、本当に不具合を疑うレベルで移動が遅いです。


ここで離脱する人は、かなり多いと思います。

一方、この移動速度低下は、本作における一種の体験型チュートリアルでもあります。


「あなたは呪われています」


と文章で説明するのではなく、


実際に歩く。  

遅い。  

イライラする。  

呪いを解除する。  

一気に快適になる。


この体験によって、

「呪いとは、これだけプレイに影響するものなのか」

「解除すると、これだけ世界が広がるのか」

という本作の基本構造を、プレイヤー自身に体験してもらっています。


学習効果は文章で説明するより、体感として伝わりやすいはずです。


しかし、その意図を理解する前にゲームを終了される危険も高い。


リスクを承知で攻めたチュートリアルです。

この移動速度の呪いは序盤で必ず解除できます。

そこを越えると移動が一気に快適になり、行動範囲も広がりますので、「遅すぎる!」と思っても、ぜひそこまでは遊んでみてほしいです。


『呪縛勇者』をテストプレイして感じたのは、31種類の呪いを作ったこと自体よりも、その31種類が同時に存在しても成立する世界を作ったことの異常さでした。

一つのネタを成立させるために、NPC、種族、宿屋、クエスト、戦闘、マップ、宝箱と、ゲーム全体の仕様まで巻き込んでいく。

効率だけを考えれば、まったく割に合わない設計です。


それでも「この呪いが本当にプレイヤーまで困らせたら面白い」という発想を、そのままゲーム全体へ押し通している。


制作:Nサークル。


仕様効率より「面白そうだからやる」を優先できた、サークル制作らしい一本だと思います。

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