2026年4月21日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑬_3/3_大仲晴彦》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
-----
3分後、大仲が戻ってみると。

11名のR連隊隊員が、輸送機に乗り深々と敬礼していた。
大仲は彼らの元へ駆け寄ると、事前に準備していた指示書を渡す。

「本R連隊分隊は、防衛大臣の任において避難民の安全確保任務を命ずる。後方にて任務にあたり、以後の指示は津田防衛大臣臨時代行に従うこと」

これを読み上げると、一人一人と目をしっかりと見て握手し輸送機を見送った。


残った290名の表情は総じて厳しいものだった。


最初の作戦は、埼玉の内陸に進みつつある赤い竜を、埼玉の第2駐屯基地へ誘導する事だった。この基地は、荒川が近く、あとは荒川を下ることで、自然と舞浜方面へ誘引できる。

作戦は思いのほか順調に進んだ、赤い竜が光るもの、反撃するものに惹かれやすい性質が簡単に看破でき、この習性を利用したのだ。

大仲は違和感を覚える。

ーーこの竜はなんだ?確実に人口密集地を狙う知性はある。だが、なぜか挑発には簡単に乗ってくる。
ーーその割に、監視ドローンなど一見無害な兵器にも対応を怠らない。ドローンを知っているのか?

R連隊は後退しつつ、ドローン、迫撃砲、機動軽戦車これらを巧みに使い竜を舞浜へと引き寄せる。当然、多数の犠牲者を伴う過酷な作戦である。

ドローンで注意を引きつつ、部隊は後退し高火力兵器で注意を反らす。その隙にドローンは退避し次の地点へ誘導する。
マニュアル通りの熟練した連携だが、地上部隊もドローンも視線にとらえてしまいえば、ブレスで焼き払われる。

空中で被弾したドローンが焼かれ火球となって連隊を襲う。仲間をかばうために瓦礫を飛び出して対戦車ロケットランチャーを放った兵は、赤い竜の尾に一蹴されると、まるでブリキの人形のように二つに割れた。

血と硝煙の匂い、ブレスで融けた瓦礫の数々がR連隊のたどった後退の軌跡を、一筋の線のように見せていた。

橋一つ、区画1つを進むたびに、多くの兵器と犠牲が払われた。

それでも、大仲はあきらめない。一人の命を必ず何かの結果と結び付ける。

やがて部隊は大仲の搭乗する指揮装甲車と、機動装甲車1台まで損耗しながら、舞浜付近に後退することができた。かつてリゾート地として有名な場所だ。

しかし、既に飛び去った黒い竜がこの地を瓦礫と炎に包まれた地獄に変えていた。

あまりの惨状に一人の隊員がボソリとつぶやく
「陸地側から海側に向けて焼かれている。誰一人逃げることはできなかっただろうな・・・」
だが、無人だからこそ、赤い竜を引き付けるのにはちょうど良い。

大仲は衛星無線を取ると津田へ繋ぐ。

「津田さん。舞浜への誘導は成功です。部隊は90%を失いましたが……」

津田が何かを言おうとするが大仲は構わず続ける。

「国民を、避難した人々を、そしてこの作戦で失われた多くの自衛隊の家族をよろしくお願いします」

ーーこれでいい、あとは全力を尽くすのみだ。

無線を切って一呼吸すると大仲は残ったR連隊に最後の指示を出す。

「これより、指揮装甲車に積んだTNTを使い、赤い竜の機動力を奪う」

傷だらけの兵士が問う

「どうやって接近するおつもりですか?ブレスで焼き払われればTNTが引火してしまいます!」

大仲は案を持っていた。

「目だ!目を狙って全火器で挑発する。これまでの戦闘でヤツは必ず目で捕捉してからブレスを放っている」
「煙や障害物で捕捉できない相手には物理攻撃を優先している。その習性を利用する!」

傷だらけの兵士は軽く笑うと

「もう、避難も進んでいるでしょう。機動力は冥途の土産みたいなもんですかね!」

とうなずいた。

装甲車が舞浜の海岸沿いに停車すると、すぐに上空から赤い竜が追ってきた。

2台は持てる火器を全て投入し、竜の目を狙う。左右にかわし勢いが落ちる竜。

激しい攻撃でついに地面に足を付けると、翼を盾にして体当たりの姿勢に入る。

「よし!来るぞ!!」

大仲は手に持ったTNTの起爆ボタンを握りしめる。背後にはTNT爆薬の入った箱。TNT特有の甘い匂いが大仲に”死”を直感させる。

だが、次の瞬間、信じられないことが起きる。

「大臣!竜が停止。いえ!大きく後退しました!」

ーーあり得ない。TNTを察知した?こいつはTNTの威力を知っている??

大仲の思考はすぐに切り替わる。

「駄目だ!距離を取られると目を狙えない!作戦中止!!散開!!」

車両は二手に分かれ距離を取る、瓦礫の陰には歩兵が潜み、竜を呼び込もうと挑発する。

先ほどの兵士が大仲に呼びかけた

「あの竜、思ったよりも賢いですなぁ。本能的なものかも知れませんが…」

ーーそうだ、知性があるようには見えない。だが、なんだ、この竜は妙に我々人類と戦い慣れている。

そのとき、想定外の事態が起こる。対UFB用の耐熱装甲の装甲車に円状の穴が開き、直後に爆音と共に爆発する。

距離を取った竜から放たれたのは、面制圧のブレスではない。まるで高熱のレーザーのような一閃。障害物などを全て溶かし
貫通する熱線だった。

「こんな攻撃が、大臣!これはもう時間稼ぎも限界かもしれませんね。」

そういうと、兵士は指揮装甲車を飛び降りて少し離れた瓦礫に身を隠した。

ついに指揮装甲車には運転手、射撃手、大仲の3人となった。

大仲は、何かないかと車中を見渡す。すると、固定式の簡易マシンガンが目に入る。

ーーこれなら・・・

「私は簡易マシンガンを使って応戦する。瓦礫の陰で止めてくれ。設置は私が行う。すまないが準備をする間に、君らはマシンガンの荷下ろししてもらえるか?」

車体が隠れるくらいの瓦礫に隠れ停車すると、運転手と射撃手が二人がかりで固定式の簡易マシンガンを急いで下ろす。大仲は車中で何やら体に大量の物体を巻き付けて、急いで降車する。

射撃手が思わず、その防護服の下に忍ばせた物体に興味を持つ。しかし、大仲は二言。

「マシンガンの予備弾薬をできるだけ体に巻き付けた。多少重たいが、存分に撃ってやるさ」

「さぁ、あとは私が。できるだけ離れて、設置時間を稼いでくれ」

指揮装甲車は、指揮官大仲を残し速度を上げる。指揮装甲車は備え付けの機銃と、弾数の少ない対戦車ランチャーを併用し竜の注意を引き付ける。

竜は特にこの指揮装甲車を警戒しているようで、一定の距離を保ちつつ、貫通熱線を幾度も放つ。

悪路にもかかわらず、対戦車ランチャーの土煙で死角を作り出し、2度、3度と貫通熱線を紙一重でかわし竜を挑発する。

遮蔽物に隠れた兵士が、移動しながら時折攻撃することで的を絞らせない連携はR連隊がいかに訓練を積んだ部隊であるかを物語っていた。

だがそれも、長くは続かない、一人、また一人と熱線に撃たれていく。

そしてついに指揮装甲車も熱線の直撃を受けて一際大きく戦場に散っていった。

最後に残ったのは、大仲一人。SPも歩兵も装甲車も残っていない。

大仲は簡易マシンガンの横に堂々と立ち、竜へ向かって叫ぶ。

「おい。そこの赤いの!私が最後の一人だ。かかってこい!」

すぐに竜が熱線の発射態勢に入る。大仲は急いでくぼんだ地形に身を隠す。

光の一閃は頭上を照らす。激しい熱風、飛び散る溶けたコンクリートが大仲の皮膚を焼く、コンクリートの溶けた臭いが鼻を突く。
だが、大仲はその痛みを意識することすらなかった。

すぐさま、くぼみを飛び出るともう一度声をかける

「人間一人に、チマチマ遠距離攻撃なんて、随分臆病な竜だな!私の兵士の方が勇敢だった!」

この言葉に赤い竜は意外にも反応する。1mほどふわりと上昇すると、超低空飛行で大仲の眼前までやってきた。大仲は竜の腹に向けて
マシンガンを撃つが、簡易的なこの武器では硬い皮膚に弾かれて大きなダメージは与えられない。

赤い竜はその様子を一瞬眺めていたが、すぐに体をひねると尾でマシンガンごと大仲を薙ぎ払う。

だがこの行動は大仲に読まれていた。

大仲は、サブマシンガンを踏み台にすると竜の首元へ飛び込んだ。
そして一言。

「お前、やっぱり日本語を理解してたんだな・・・」

竜が顔を向けた瞬間、大仲は内ポケットにしまっていたTNT爆薬の起爆装置を押す。マシンガンを指揮装甲車から下ろしている間に、彼は
自分の体にマシンガンの弾薬ではなくTNT爆薬を巻き付けていた。

白い光と激しい爆風が竜を包む。そしてすぐに大きな爆発音が、R連隊の隊員の遺体を包み込む。
完全な至近距離でのTNT爆破は、赤い竜の右の翼を大きく損傷させた。大仲の決死の反撃も、寸前で竜に察知され、翼で防御されてしまったのだ。
だが、これで赤い竜は飛ぶことができなくなった。

宙に舞った大仲のドッグタグが反射し、キラリと輝いた。

0 件のコメント:

コメントを投稿