この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。
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池袋付近、戦闘区域。
ベルガンの編成した部隊が自衛隊(R連隊)への波状攻撃を開始した。
5000体規模の部隊による波状攻撃は、戦術というよりも力と数で強引に自衛隊の陣形を崩す強襲に近いものだった。
先頭の部隊が一斉に自衛隊に急速接近を始めた。
無数のガーゴイルが自衛隊のレーダーに捕捉される。その瞬間、自動照準システムが動作し対空対地迎撃車両が猛烈な火力を発揮する。
もともと航空機や速度の速い軽戦車を破壊する対空対地迎撃車両である。その弾薬の破壊力は高く、1~2発を被弾しただけでガーゴイルは次々と霧散、もしくは姿勢制御を失い地面へと崩れ落ちた。
だが、単純に計算しても5000体のガーゴイルを倒すためには5000~10000発の発砲が必要。投入され、射程内に配置されているたった5両の対空対地迎撃車両では、最低でも2分、命中精度や連射による放熱を加味すれば5分は要することになる。
最初の5000体が全滅し、即座に次の5000体が再度攻撃を仕掛ける。この5分でガーゴイル達は自衛隊の部隊へと着実に近づいていく。
幾多の同胞が盾となり、道を切り開き、後方のガーゴイルが遺志を引き継ぐかのように真っすぐに迫る。
1kmもあった自衛隊との距離は、5000体の損失で300m程度前進。次の5000体になると対空対地迎撃車両の性能限界によって、連射速度が落ち、400mの距離を詰めた。
自衛隊は対空対地迎撃車両の援護のため、戦車や装甲車からの機銃攻撃を始め、ついに最後の5000体との対峙となる。
距離は残り300m。対空対地迎撃車両は半数が弾切れ。ベルガンが「やつらのクビに同胞は届く」そう確信した瞬間、自衛隊後方のロングレンジレールガンが放った特殊弾が炸裂する。
空中で炸裂し高熱の雨をもたらす特殊弾だ。
ファイアバレットの準備動作で身動きが取れないベルガンには、信じられない光景だった。
なぜなら、今回の攻撃はスピードを重視した波状攻撃である。しかもロングレンジレールガンに座標を送る時間も、自軍に影響のな地域を計算する時間もなかったはず。
だが彼らは自軍の座標に向けてロングレンジレールガンを使った。放たれた高温の雨は自衛隊の先頭車両の上空で炸裂。灼熱の雨が最後の5000体にも降り注ぐ。
ーー味方ごと焼き払うつもりか!人間は仲間意識が強いはずではなかったのか!
灼熱の雨は、5000体のガーゴイルを、1分程度ですべて飲み込んだ。
ーー全滅?届かなかった?
本来なら1000体程度が生き残り自衛隊の車列に突入。車列をかく乱しつつ相手の注意を引き付けて、手元に残していた手勢4000体が再度強襲。自衛隊の陣形に入ってしまえば近接戦ではガーゴイルが圧倒的に有利となる。
しかし、ベルガンは近代兵器。特に戦車のような火力の高い兵器は高く評価していた。
4000体は奮戦するも恐らく全滅。そこへ1時間かけて練り上げたベルガンの全力ファイアバレットを発動し、自衛隊の8割を薙ぎ払う想定だった。
だが、自衛隊は自軍上空に灼熱の雨を降らせることで最後の5000体を瞬殺するだけでなく、手元の手勢4000が近づくことも困難な状況を作り上げた。さらに驚くべきことに、自衛隊の先頭車両は生き残っていた。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
同時刻 神の居城デスランド。玉座。
神は上機嫌だった。
「ヴァロン。見ろ、自軍の上に特殊弾を撃って、簡易バリアに仕立て上げた。面白い!人間らしい、こざかしい作戦じゃないか!」
神は手を叩き驚きを隠せないヴァロンに語り掛ける。
「しかも、ほら、特殊弾の炸裂する高度を高くすることで広範囲に時間をかけて高温の液体が飛散するように工夫してきた。あれなら耐熱仕様の地上部隊は耐えられる。もともとガーゴイルの火炎対策で数百度まで耐えるような武装になっているからな!」
「そこまで耐熱性の高くないガーゴイルだけを殲滅できる。いい作戦じゃないか!こりゃーベルガンの敗北かなー」
ふと我に返るヴァロン
「創造主様、戦況は極めて悪い状況です。増援をー!」
「駄目だ。興ざめするようなことを言うな」
上機嫌から一気に不機嫌になった神の声に、ヴァロンは思わず頭を下げ目線をそらす。それでもヴァロンは声を絞り出す。
「人間の勝ち、それもいいでしょう。ならば、ならばせめて、ベルガンに撤退命令を!!」
「撤退?すればいいじゃないか。撤退の判断ができるかどうか。それを見るのも面白い。いいかヴァロン。俺は今、このイベントのクライマックスを楽しんでいるんだ。索敵と射程で有利をとっている自衛隊。数と個々の力で自衛隊を大きく上回るベルガンの部隊」
「そのベルガンの部隊が、間もなく全滅するだろう。その時、部隊の将たるベルガンの行動に期待しようじゃないか。ファイアバレットはまだチャージ30%程度か、想像以上に早く兵を損耗ている。さぁファイナルイベントだ!」
神の不敵な笑いが玉座に響き、ヴァロンはベルガンに祈ることしかできなかった。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
同時刻 自衛隊司令部。
R連隊の隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》と副長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐は、やや後方の耐熱装甲車に乗車し、ここを司令部としていた。
「前方の部隊に損害ナシ、ロングレンジレールガンの影響を受けていません」
その報告に、息を吐く足立。しかしすぐに仲原が声をかける。
「UFB残存部隊確認。散会しつつ接近中。数4000」
ベルガンの手勢を補足していた。
「隊長。プランA2を発動します」
先ほどの、自軍の上空に特殊弾を撃ち、高温バリアを作り出す作戦がC1。この際に、高温の影響を受けないように下がらせていた前線より少し後ろの部隊を前方の支援に合流させる案がA2である。
足立は無線をとる。
「プランA2へ移行。先頭の部隊は消耗と高温の影響で発砲が出来ない。これを全力で守れ!」
新たに投入される3台の対空対地迎撃車両、および6台の装甲車と2台の戦車。
散会して広範囲に散ったガーゴイルだったが、運悪く高温を避けるために退避していた索敵ドローンの視界に入ることになり、その座標は即座に対空対地迎撃車両連係される。
3台は先頭部隊の前、左右に1台ずつ展開し死角なく撃ち落としていく。
10分後
「UFB残存数50。距離も離れています。やれます」
仲原がそう足立に報告すると、やっと彼女にも笑みがもれる。
「これは勝ちましたね。UFBのさらなる増援に備え、プランA3も発動しますか?」
足立は仲原を横目で見ると問う
「周囲に増援の気配は?」
仲原は当然のように答える
「半径2km以内に敵影なし」
「池袋まで1㎞弱。なら残存UFBに警戒しつつ、さっさと私有シェルターの救出に向かおう。最後まで気を抜くなよ!」
そういうと無線を取る。
「大仲大臣。UFBをほぼ退けました。救出作戦に移行しますがよろしいですか?」
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
同時刻 内閣シェルター作戦司令部。
防衛省の大臣、大仲《おおなか》晴彦《はるひこ》と、野党第一党「立国平和党」の党首「津田《つだ》一郎《いちろう》」は救出作戦の可否について悩んでいた。
足立からの確認に、一旦「待て」と回答し議論をしていた。
「津田さん、客観的に見て戦況は良いといえるでしょう。ですが、救出作戦となると自衛隊員が装甲車を降りることになります。UFBの増援が来た場合、生身の人間では危険があります。しかし、この局面はスピードが大切だと私は思います。少なくとも2㎞以内に増援は居ないようですし、私は行くべきだと思います。どうでしょう?」
津田議員は、少し机を眺め思考をまとめると答える。
「賛成したいのですが、この優勢は本物でしょうか?UFBの兵は確かに討ちました。ですが、あのお台場に浮いている城の主、つまりUFBの将は討っていません。これを政治に置き換えれば、敵対する勢力の事務次官は排除しても議員は排除できていない。そういう政局です。ここでさらに前に進むのはリスクが高いと思います。先頭の部隊は消耗もしていますし、一旦下がらせて後方の部隊を前に出して、今いる場所の防衛拠点化をするのはどうでしょうか?」
その声に大仲も同調する。
「確かに、UFBが近くにいないこの状況は、補給と拠点確保の好機。そうとも取れますね」
その言葉に敏感に反応した議員がいた。野党「帝都復権党」の舞岡《まいおか》幸三《こうぞう》だ。
「なにを寝ぼけてるんですか!!!要救護者がすぐそこにいる!私有シェルターまで1㎞じゃないですか!!自衛隊は何の組織ですか?飾りですか?拠点を作る大工ですか?違うでしょ!国民を助ける組織でしょ!その為の装備でしょ!!今勝ってんだから、ホラ、どう見ても勝ってる!地盤固めとか政治的な発想ではなく、人命を優先してください!ほら!はやく!」
「要救護者」・「人命救助」 このキーワードは政治家にとって覆しがたい言葉である。
大仲は決断し、無線を取る。
「救助開始!だが、細心の注意を払え」
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