<あらすじ>(公式より抜粋)
ウィンドドラゴンとの戦いの傷が悪化し、高熱に倒れてしまうディアス。懸命な看病が続く中、セナイとアイハンは不思議な薬草の力を使って彼を救おうとする。生死の境をさまようディアスは、夢の中で戦場にいる自分と向き合う。その瞬間、遠くからアルナーの優しい声が聞こえてくるのだった……。
<レビュー>
領地経営系のアニメではありますが、驚くほど内政を描かない。そんな作品でした。
正確には、内政そのものを描かないのではなく、内政の仕組みや工程をほとんど深掘りしません。
何度も外部から誰かがやってきて、ディアスが対応しているうちに住民が少しずつ増えていく。難しいことは説明せず、基本的には主人公ディアスの強さと人柄で万事解決してしまいます。
本作の良さは、その分かりやすさです。
主人公は、本当に何もない領地を与えられ、そこを開拓していきます。
この状態から真面目な領地経営ものとして描こうとすれば、開墾、治水といった土地の改良から始まり、建築、食料生産、道路整備、領民の確保、税制、交易など、細かく描ける題材はいくらでもあります。
領地開拓というジャンル自体、非常にエピソードを広げやすい題材です。
しかし、この方向を深掘りすればするほど、視聴者にも領地経営に関する知識や理解を求めることになります。
そうした内政部分を詳しく描き、解説する作品ももちろん面白い。
でも、本作はその方向には行きません。
徹底的にディアス本人へフォーカスを当て、彼が仲間たちと楽しい毎日を過ごしているうちに、気づけば周囲が変化し、領民が増え、村が大きくなっていきます。
細かな内政については、老人たちが集まって会議をする。畑を耕す。建物が増える。そうした場面を差し込むことで、「ちゃんと領地は発展している」という雰囲気を視聴者へ伝えます。
しかし、それ以上は踏み込みません。
その代わり、まるでタワーディフェンス型ゲームのウェーブのように、外から次々と人や問題がやってきます。
敵が来る。
困っている人が来る。
隣の領主が来る。
新しい領民が来る。
ディアスはそのたびに戦ったり、助けたり、交流したりする。
そして、その問題を一つ解決するたびに、また仲間や領民が増えていく。
こう考えると、本作は「領地を経営した結果、人が集まる物語」というより、「人と良い関係を築いていたら、結果として領地が育っていた物語」なのだと思います。
今回は最終回までを通したレビューですので、倒れたディアスの細かなくだりや個別エピソードについては、あらすじ程度に留めます。
ただ、最終話も非常に本作らしいです。
ウィンドドラゴンとの戦いで負った傷が悪化し、ディアスは高熱で倒れます。
こうした場面を重いファンタジーとして描くなら、高度な治療法や薬学、治癒魔法について細かな説明を入れることもできます。
しかし本作では、セナイとアイハンが持つ不思議な力と、不思議な薬草によってディアスを救います。
最後まで難しくしません。
世界の仕組みを詳しく理解させるのではなく、仲間たちが必死にディアスを助けようとする姿を描く。
この作品が12話かけてやってきたことを、最終回でもそのまま貫いています。
一つの作品として、ここはかなり一貫していたと思います。
畑が育たない問題や、セナイとアイハンが持つ不思議な力など、もう少し深掘りしてほしかった設定もありました。
特に二人の力は物語上かなり便利なので、その由来や、どこまでのことができるのかはもう少し知りたかったところです。
ただ、本作は1クール作品です。
細かな設定を全部掘り下げ、領地経営まで本格的に描いてしまえば、現在の「気楽に見られる作品」という良さまで失われてしまう可能性があります。
そう考えると、これは説明不足というより、作品としての取捨選択だったのかもしれません。
細かな設定、渦巻く陰謀、複雑な人間関係。
そういったものはほとんどありません。
「難しいことを描かない」という選択を最後まで貫いたからこそ、とても気楽に見られる作品になっていました。
そして最終回では、ディアスが新たな家名を得ます。
「領民0人」どころか、家も食料も何もない草原から始まった男が、最後には家族や仲間、領民に囲まれ、その土地を表す新しい名前まで手に入れる。
領地経営の数字や制度で成長を見せるのではなく、「一緒に暮らす人が増えたこと」で領地の成長を表現する。
最後まで本作らしい着地だったと思います。
領地経営ものではあります。
しかし、領地をどう効率よく経営するかを見る作品ではありません。
何もなかった場所が、ディアスの人柄によって少しずつ「みんなの居場所」になっていく。
そんな、やさしい開拓アニメでした。
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