<あらすじ>
片田舎で道場を営むしがない剣術師範の中年男、ベリル・ガーデナント。
剣士としての頂点を目指した日々は遠い昔のこととなり、長年の鍛錬によって極めたその剣の腕は、今や“片田舎の剣聖”と称されるほどの領域に達していた――。
<レビュー>
“おじさん無双系”として分類される本作ですが、単なるテンプレ展開にとどまらず、設定と演出の一貫性において非常に完成度の高い作品となっています。
まず特筆すべきは、タイトルにもある「片田舎のおっさん」と「剣聖」という両極端なイメージが、作中で一切ブレることなく丁寧に描かれているという点です。
このジャンルでは、どうしても無双系の宿命としてバトルシーンでキャラクターの精神年齢が若返りがちになる傾向があります。熱い戦闘や中二病的なセリフを「かっこよさ」として演出した結果、見た目は中年、言動は少年というギャップが生まれてしまう例も少なくありません。
しかし本作では、そのようなバランスの崩壊を避け、あくまで“大人としての視点”から描かれる戦闘スタイルを維持しています。無駄に派手なバトルではなく、熟練された技と読み合いによる静かな熱量こそが本作の醍醐味です。
例えば、ネズミを捕まえるのにも苦労していたりと、“剣聖”でありながらもすべてが完璧ではないという描写もあり、人間味のある「おっさん像」がとても好印象です。
また、剣術だけではなく“子育て”的な側面のエピソードも差し込まれ、キャラクターの厚みを増しています。
せっかくのハーレムフラグを自らへし折ってしまうような主人公の振る舞いも、本作ならではの魅力と言えるでしょう。
全体としては、派手さこそ控えめですが、「大人のための無双ファンタジー」として非常に高品質な作品です。
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