こんばんわ!管理人の緑茶です。
長くなってしまったメイキング兄妹編も、これで完結です。アニメとニコニコのレビューが
かなり溜まってきました。
作品に登場する鮎川姉妹ですが、旧サイト(掲載当初)は姉妹でのキャラメイク小説を載せた
上で、この兄妹編を掲載しました。
今回は、鮎川姉妹のキャラメイクは掲載予定がありませんので、少しエピソードを修正して
鮎川姉妹を知らない読者様にも何となく性格が伝わるようにしたつもりです。
--- 本編 ---
そして、作戦当日。
「こんばんわー。」
鮎川よりも少しトーンの高い、かわいらしい声の挨拶が玄関から聞こえてきた。
ハルと二人で玄関に行ってみると、鮎川とミニ鮎川が並んで立っていた。どうやらこの
小さいほうが妹の小夏ちゃんらしい。
ハルと小夏ちゃんは本当に仲が良いらしく、まるで数年ぶりに再開した外国人のように
ハグをしてはしゃいでいる。
鮎川(姉)は、しばらく目線を伏せていたが、俺に目線を合わせると
「こんばんわ。今日は夕食に誘って下さってありがとう。ハルちゃん」
俺のほうを向いて、にこやかに笑ってはいるが、完璧に俺ではなくてハルに御礼を
言っている。
「鮎川姉ちゃん、小夏ちゃん、さぁあがって!お鍋できてるよ!」
「おじゃましまーす!」「お邪魔します。」
「お、おう。どうぞ」
テンションが高いハルと小夏ちゃんとは対照的に、事務的な挨拶しかしていない俺と
鮎川(姉)。はぁ。本当に幼馴染としてやっていけるのだろうか。
やがて俺達は鍋を囲んで、ハル手料理を楽しんだ。ハルの画策でウチの両親は出かけて
おり鮎川姉妹も少し緊張がほぐれた様子だった。
「あら、このつみれ団子おいしいわね。今度ウチでも作ってみようかしら。」
おお、鮎川(姉)が珍しく自然な発言をしている!でかしたぞハル!っと、その時に
小夏ちゃんの表情が少し強張っている事に気が付く。
「お、お姉ちゃんは、部活で忙しいでしょ!私が作ってみるからお姉ちゃんは味見してよ!」
「え?ええ、味見はいいけれど、別にそこまで忙しくないわよ?」
こんな他愛もない会話をしている内に、鍋も食べ終わり本題のゲームに話題を移す。
「ごちそうさま」
「おそまつさまでした!ではハルが後片付けをしておきますので、少しくつろいで
いて下さいですっ、後でお茶を出しますのでっ」
「片づけなら私が・・・」
立ち上がろうとした鮎川(姉)を制止するように小夏ちゃんが立ち上がる。
「あ!ハルちゃん、後片付けなら私も手伝うよ!」
「ありがとう小夏ちゃん!それでは、台所には3人も立てないので、鮎川姉ちゃんは
お兄ちゃんとその最新型WIL-YOUでもやってて下さい!」
鮎川(姉)の目線が、新品のWIL-YOUに移る。
「こ、これは、ポリティテニス同梱版じゃない?」
すごい。本体を見ただけで同梱版とか判るなんて、ハルのリサーチ通り、このポリティって
キャラクターが相当に好きらしい。しかも、テニスゲームだったのか。鮎川がやりたがるのも
うなづける。
「そ、そんならやってみようか、俺も初めてだけど」
「そう、別に構わないわ。幼馴染らしくやりましょうか。」
やった。俺は心の中で大きくガッツポーズした。いや、もしかしたら現実でも小さく
ガッツポーズをしていたかも知れない。
だが、テニスのルールすら知らない俺は、このゲームに中々苦戦した。このテニスゲームは
基本的にコンピュータの相手を2人でタッグを組んで倒す形式になっている。(これをダブルス
というらしい)
序盤こそ、コンピュータが自爆して勝てたものの、4,5戦目になると中々勝てなくなってくる。
「ちょっと、私が前衛なんだから、下がってちょうだい」
「ストロークは、ボールがワンバウンドしたら頂点になる前に打ち返して」
こんな感じで、テニス部の鮎川(姉)から厳しいご指導が増えてきた。それでも、7,8戦目に
なるとまったく勝てなくなってくる。
鮎川的には歯がゆいようで、指導にも熱が入ってくる。
「打ち終わったら、元の位置に戻りなさい!」
「何度も言わせないで頂戴!不器用ね!そんなに高いボールを打ったらスマッシュを
打たれるでしょう!」
「何でこの場面でロブなの?あなたはネット際にいるんでしょ?」
さすが体育会系・・・。偏見かも知れないが勝負事に並々ならぬこだわりがあるの
だろうか・・・。
いや、楽しんでくれているようで何よりなんだが。
「いい加減に覚えて頂戴、サーブはラインを狙ってとお願いしているでしょう!」
「どうして、そこに立っているの?相手のコースを読んで頂戴!」
「あなたは何も考えていないの?相手の正面にボールを返してどうするの!」
語気が段々強くなってくる、というか、相手のコースを読めとか、対角線を狙って打てとか
初心者にはハードル高いだろ。
「遅い!ドンくさい!」
「またそこにいるの?学習できないの?」
やばい段々、指導が怒りになっているような…。その時、突然ゲーム画面に
「挑戦者 登場!」の文字が現われた。
「鮎川姉ちゃん!コンピュータ相手もいいけど、ハルと小夏ちゃんも入れて4人でやろうよ!」
どうやら、後片付けを終えたハルと小夏ちゃんが来てくれたようだ。ナイスだハル。
いいアシスト。
少し興奮気味だった鮎川(姉)も気を取り直したようで
「そうね。コントローラが4つあるのならダブルスで勝負しましょう。」
そう同意してくれた。ハルが相手なら、手加減してくれるだろうし、雰囲気も良くなるなるだ
ろう。
俺はかなりホッとしたが、ハルが予想外の提案を持ちかけた。
「そしたら、ハルはお兄ちゃんとペアになるね!家族対抗戦にしたいです!」
なんで、俺が鮎川(姉妹)の敵側にならなきゃならんのだ。だが、この提案も鮎川(姉)に
アッサリ了承されてしまった。結局、そのあと1時間ほどテニスゲームで盛り上がり、お茶を
飲んで鮎川姉妹は帰宅する時間になった。
玄関先で、鮎川(姉)は少し肩を落として、ハルに言う。
「ハルちゃん、今日は完敗だったけれど、今度は本物のテニスで勝負しましょう。」
「ハルは体動かすのが苦手なので…ゲームでリベンジお待ちしております!」
おいおい、玄関先で軽い挑発はやめてくれ…。
「じゃ、帰るね!ハルちゃん!お兄さん!またね!」
こうして、鮎川姉妹は帰っていった。作戦は成功か失敗か。ま、少しは距離も縮んだみたい
だしほぼ成功と言ったところか。
二人を見送った俺はハルに問う。
「ところでハル。お前、何でさっきのゲームで鮎川(姉)にばっかり、消える魔球とか、
バウンドしない秘球みたいな、ゲーマーじゃないと返せないような技を使ったの?
大人げなさすぎだろ。」
そう、さっきのゲームで俺とペアを組んだハルは、徹底して鮎川(姉)封じ込め作戦を
展開した。
小夏ちゃんには手加減したショットをしているのに、姉に対するときだけ深く速いボールを
打って、しかもゲームにしか存在しないような必殺技まで多様してボロクソにしていたのだ。
「さて、記憶にないですー」
そう無邪気に笑うハルだったかが、ハルは俺の邪魔をしたいのか味方なのか
よく判らなくなってきた。
・・・俺は、この妹とちゃんと小説に出れるのだろうか。
--- おわり ----
--- おまけ ----
帰路につく鮎川姉妹。
「小夏ー。お姉ちゃんまたやらかしてしまったわ・・・」
フラフラと足取りの悪い鮎川(姉)
「大丈夫だよ。お兄さん笑ってたし、少しずつ慣れていけば平気だよ。」
姉の顔を覗き込むように声をかける小夏。それでも鮎川姉はがっくりと肩を落として呟いた。
「折角、創造主から頂いたお金で、洋服まで新調して来たのに、私はまた真っ白に
なってしまって・・・はぁ」
--- 本当におしまい ----
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