<あらすじ>
ジルトニア王国の聖女フィリア・アデナウアーは、類まれなる才能と力を持ちながら無表情すぎるがゆえに「可愛げがない」と婚約破棄され、隣国パルナコルタへ売られてしまいます。そこでも歓迎を受けず冷遇されると思いきや、国民や第二王子オスヴァルトに心から受け入れられ、彼女の知らなかった温かな日々が始まります。
<レビュー>
追放系のよくあるパターンとは異なり、本作はフィリアが聖女としての資質を失ったわけではなく、むしろ複数の聖女が存在する世界観を巧みに利用し、彼女自身の成長と新天地での役割に焦点を当てています。そのため、ジルトニア王国の危機が大袈裟に描かれることもなく、むしろパルナコルタでのフィリアが人々を救い、信頼を勝ち得ていく過程が丁寧に描かれているのが魅力です。
キャラクターたちにもそれぞれバックグラウンドがあり、悪役や脇役が単なる記号として扱われず、視聴者として感情移入しやすい仕立てになっています。フィリア自身も、初めはロボットのように無表情でしたが、次第に感情を取り戻し、笑顔を見せるようになる過程は美しく、最終話まで一本の軸がブレずに描かれていました。
聖女モノとしては珍しく、姉妹愛などにも着目しており聖女系のテンプレートを活かしながらも独自性の目立つ作品です。
また、演出面も抜かりありません。TVアニメは2025年4月~6月に放送され、オープニング「愛とか。」(歌:りりあ。)やエンディング「Sister」(歌:WON)など、楽曲にも作品の雰囲気がよくマッチしています。
重厚な設定と緻密なキャラ描写に裏打ちされた、聖女追放モノとしてのテンプレートを上回る上質な傑作です。恋愛展開や世界観、キャラクターの成長がバランスよく構成されており、安心しておすすめできる1クール作品でした。
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