<ミルドラースとは>
『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』に初登場した魔王で、自らを「魔界の王にして 王の中の王」と称する存在です。
魔界の最奥に居を構え、配下を使って人間界を侵略しようと暗躍します。
<レビュー>
バージョン6で実装されたエンドコンテンツのひとつ、「伝説の宿敵たち」にて開催中の「ミルドラース討伐」。
今回は期間限定イベントとして登場しており、4人用と8人用のオートマッチングが用意されています。
オートマッチングでは難易度が大きく変動することがありますが、これはDQXに限らず多くのオンラインコンテンツの共通課題ですので、今回はミルドラース戦に絞ってレビューを行います。
まず、ミルドラースは光る床を避けたり、ボスの行動を見て後出しで対応する「後出しジャンケン」型のバトルが要求されます。
フィールドが狭く、味方を巻き込んでしまうタイプの回避困難な攻撃も多いため、エンドコンテンツとしての手応えは十分です。
ボスの行動はある程度パターン化されており、慣れてくると感覚的に回避や対処ができるようになり、徐々に楽しさが増してくる設計になっています。
初日にはSNS上で「強すぎる」といった声が多く見られましたが、それらの投稿を確認してみると、もともとエンドコンテンツには縁がなかったプレイヤー層の方々も多く含まれていました。
このため、エンド未経験のカジュアル勢にとっては、かなり敷居の高い内容だったのだと思われます。
実際に参加してみた印象としても、オートマッチングで出会ったメンバーの中には職業の役割を把握していなかったり、ボス技の名称から行動を予測できない方が多く見受けられました。
こうした層にとって、今回のイベントは正直「不評」だったのではないでしょうか。
せっかく作られた良質なボスにも関わらず、ユーザーから不満の声が多く出てしまったのは、やはり「報酬」の設定に問題があったように思います。
今回の討伐報酬は、ドラクエシリーズでも屈指のおしゃれ装備。課金してでも欲しいと考えるプレイヤーが多いであろう人気アイテムです。
それをエンドコンテンツの報酬にしてしまったため、普段はエンドを遊ばない層も「仕方なく」参加することになり、不満が噴出したのだと考えられます。
おそらく運営側としては、「報酬を魅力的にすることでエンド人口を増やしたい」という狙いがあったのでしょう。しかし、この方針はMMORPGというジャンルにおいては「悪手」と言わざるを得ません。
というのも、エンドコンテンツの人口割合は低く保たれるべきだからです。
例えば、サービス中のゲームに新規プレイヤーが入ったとき、全体のプレイヤー1000人中900人がエンドプレイヤーだったらどうでしょうか?
どのコンテンツも「最強装備・完璧な予習・カンスト育成」が求められ、参加のハードルが非常に高くなってしまいます。結果、新規は定着せずに離れていってしまうのです。
ドラクエ10の良さは、「ただおしゃべりしているだけ」「コスプレを楽しんでいるだけ」といった、プレイ時間は長くてもプレイスキル的には中間層であるミドルプレイヤーの存在です。
このミドル層が、新規プレイヤーと自然に交流することで、やがて彼らがミドル層になり、さらにその一部がエンド層に到達するという、良い循環ができていました。
今回の施策は、そのミドル層を無理やり上に引き上げるような構造になっており、長年培われてきたDQXの基盤に逆行しているようにも感じます。
エンドコンテンツの人口は、全体の5%前後で十分です。
重要なのは、新規が入ってきて、中間層として定着しやすい環境が保たれていること。そのため、エンドの報酬には魅力を持たせすぎるべきではありません。
ミルドラース自体は、動きや演出も面白く、バトルとしての完成度は非常に高い良ボスだったと思います。
しかし、イベントとしての設計――特に報酬の設定とターゲット層の誤り――によって、結果的に「悪手」になってしまったのは非常に残念でした。
【総評・感想】
ミルドラースはボスとしては非常に優秀で、やりがいのあるエンドコンテンツだったと思います。しかし「誰に向けて提供するのか」「その報酬は誰が欲しがるのか」といった設計のバランスを誤ってしまった印象です。
イベントとコンテンツは切り分けて考えるべきで、今回のように「エンドコンテンツに参加しないと入手できない大人気アイテム」を報酬にしてしまったことで、多くのプレイヤーが戸惑ったのではないでしょうか。
エンド層のモチベーション維持と、新規・中間層の居場所の両立は、今後のDQXの運営における大きな課題となるでしょう。今後のイベント運営には、そうした視点のバランスを期待したいところです。
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