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2017年1月10日火曜日
火曜は本(ほん)の日 ~1話 『名前百景』 前編~
こんばんは!管理人の緑茶です。
当サイトでは「火曜は本(ほん)の日」ということで
本日から6回に分けて全3本の短編小説を掲載します。
本日は第1回目ということで、よろしければご贔屓によろしくお願いします。
~名前百景~ (なまえひゃっけい) 前編
秋も終わり肌寒い季節のお話で御座います。
夜も更けた頃、ガード下の小汚い中華屋で40代後半の男性教師が一人
酒を飲んでおりました。
酔いも回って良い頃合になっていると、一回り若い男が何やら難しい面持ちで
店に入って参りました。
この男、実は教師の昔の教え子なのですが、同じ街に住んでいるからか年に
数回程、このように鉢合わせになるのでございます。
教え子を見つけた教師が箸を片手に声をかけます。
「おや、久しぶりじゃないか。なんだい難しい顔をして。」
そう言うと手招きをして、自分の席へと招きました。
「あ、これは先生。お久しぶりです。いやぁ実はこの度、子供が出来まして
名前なんぞ考えていたのですが、これが難しくて気分転換にきたんでやす」
どうやら、男は子供の名前をウンウンと考えている様子。
「そうかい。それはおめでたいねえ。名前ねぇ。昔は生まれた順に一郎、次郎
三郎なんて付けたものだけれど今は色々考えるからねぇ」
「そうなんです。煌人(きらと)とか湊(みなと)とか難しい名前が増えちまって
全然決まらねえんです。どうしたもんですか。」
そういうと若い男はタオルで顔と首筋をふき、一気にビールを飲み干しました。
「そうだねぇ。名前の中に生まれた季節の季語を入れるなんて、どうだい。」
若い男は季語という言葉にピンと来ないのか、天井をふわっと眺めております。
暫くすると教師に視線を戻し
「なるほどいいですね。予定日は2月なんですが、どんな言葉がありますか。」
「2月かい!もうすぐじゃないか。そうだねぇ2月と言えば「雪」とか「花」なん
てどうだい。」
「花ですか?花は春ではないんですか?」
「相変わらずだねぇ。花は梅の事だよ。でも梅は「松竹梅」で一番粗末って意味
だろう。だから梅って言わずに花って言うんだよ。」
やれやれと教師はため息をつきまして、箸の先を男に向けてこう言います。
「お前さんは、冬と言えば何が思い浮かぶんだい?」
若い男は再び天井をふわっと眺めると、何かを思いついたようで、自信満々に
こう答えます。
「そりゃぁ先生、ナベですよ。仕事で冷え切った体に染みる暖かい汁が最高ですわ」
教師の箸がポロリと落ちる。
----- 後編へ(1/17) 続く ---
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