2016年4月4日月曜日

【オリジナル小説】 子供使い。(こどもつかい) -前編-

こんばんは!

 管理人の緑茶です。今日はオリジナルの小説(シリアス)の前編です。

 某預言者育成ゲームを参考に、引きの強い(つづく)を狙ってみましたが
 はたしてどうでしょう。

-- では早速 --

タイトル:子供使い。(こどもつかい) -前編-
 
 東京から電車で40分。ベッドタウンで有名なA市1組の家族がおりました。
 
 父親は普通の会社員で今年30歳。母親は専業主婦で今年28歳。子供は一人だけ
 7歳の長男。
 
 ごくごく、ありふれた家庭のようですが、実は母親が非常に自己中心的な性格で
 何事も自分の思い通りならないと気がふれたように怒るのです。
 
 父親がたしなめると、離婚届を持ち出して「私の欄は埋めて印もしてあるから!」と
 さらに激昂する始末の悪さであります。
 
 
 ある日、母親は家族で某有名テーマパークへ行きたいと言い出しました。
 
 逆上されても嫌なので、父親は休暇をとって付き合ったのですが、そこで母親の
 身勝手な行動を改めて見る事になりました。
 
 まず、テーマパークについてチケット買う行列に並ぼうとすると、母親が子供に
 「一番前に行って、おしっこしたいから一緒にチケット買わせて」と言いにいけと
 はるか前方に並んでいる老夫婦を指差すのです。
 
 子供は言われたとおり、老夫婦の元へ行き交渉を始めました。しかし、難航しているのを
 見かねた母親は子供の下へ走って行き「平手でパーン」と叩くのです。
 
 「トイレも我慢できないなら、帰りなさい」と。
 
 あまりに理不尽な話に子供は号泣です。それを見かねた老夫婦は、「大丈夫、一緒に買おう」
 と折れてくれたのですが、母親はそこまでがシナリオ通りとばかりに、「すみませーん」と
 悪びれる様子もなく、並ばずにチケットを買ってきました。
 
 テーマパークに入ると、シンボルマークの前で記念撮影の列が出来ていました。
 
 ここでも、母親はスタッフに「子供が体が弱くて長時間並べない」と嘘をつき、特別に
 並ばずに記念撮影。笑顔なのは母親だけの皮肉な記念写真を取ってご満悦になります。
 
 その後も、テーマーパークのキャラクターのきぐるみを発見しては、子供に「写真入って
 と頼んで来い」と差し向けて割り込み撮影。
 
 フランクフルトを買って食べていたら、半分食べたところで「落としちゃったと泣いて来い」
 と屋台に行かせ、新しいものを丸々一本貰ってこさせ、しかも自分で食べる母親。
 
 パレードの時間になれば、何時間も前から場所取りしていたであろうカップルのところに
 行かせて、「両親が結婚記念日だから」と嘘をつかせて、場所を横取りさせるのです。
  
 乗り物も、食事も、パレードも全てが母親の気分次第。しかも、まったくルールを守らない。
 
 極めつけは、テーマパークの帰り道。電車に乗ろうと並んでいたら、なぜか子供だけ
 最前列の横に立っています。父親が呼ぼうとすると、母親が肘で父親の腹を叩き、オニの
 形相で父親をにらめ付けています。
 
 やがて電車がやってきて、乗客が乗り込もうとすると、子供が前列にいた若い女性を押しの
 けてシルバーシートにダイブ。席を占領し母親を呼び入れたのです。
  
 若い女性が母親に「子供のしつけが悪い」と注意をしますと、床に土下座をして「すいません。
 私は今妊娠中なので、子供が余計な気を使ってしまって」とスラリスラリと嘘を並べて
 若い女性を追い払い、堂々とシルバーシートに座るのです。
 
 しかも、子供は2人分席を確保したのに座るのは自分と荷物です。父親と子供は周囲の冷たい
 目線に耐えながら帰宅の途につくのでした。
  

 その晩、父親は母親に「あまりにも子供が可愛そうだ」と少しだけ意見を言いました。
 母親はまるで当然のような顔で、こう答えました。
 
 「アナタ、親って書いてなんて読むか知ってる?『子供使い』って読むんだよ。子供は私が
  腹を痛めて生んだ所有物。私のモノなんだから最大限に活用しないのは馬鹿のすること
  なんだよ。周りの目ばかり気にして・・・そんなお人好しだから出世しないんだよ!」
 
 父親はそれ以上言い返しませんでした。その心にある覚悟を決めて。

(後編に続く)

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