火曜は本(ほん)の日 ~3話 バレンタインデー 後編~
こんばんは!管理人の緑茶です。
当サイトでは火曜は本の日ということで7回(当初予定では6回)に分けて
全3本の短編小説を掲載します。
本日は第7回目ということで、企画最終話の最終回になります。
なお、短編形式なので各話独立した別のお話なので、この話からでも是非!
では、よろしければご贔屓によろしくお願いします。
※前編・中編を読んでいない方向けに↓に全編バージョンも用意しました。
~バレンタインデー~ (ばれんたいんでー)(全編一気読み)
後編のみはこちらからー↓
~ バレンタインデー ~ (ばれんたいんでー) 後編
嫁のトーンが急に明るくなりまして
「義理チョコだってのに、そんなに男気を見せるなんて見直したわぁ。私が何か
あげたら凄い利子がつくかしら?」
急にそんな話を始めました。
平助は突然上機嫌になった嫁になにやら得体の知れない恐ろしさを感じずには
いられません。
そんな平助を横目に、嫁は自分のバッグを持ってくるとなにやらガサガサと
探し始めました。
平助は恐ろしいものでも出てくるんじゃないかと戦々恐々としておりますと
嫁が念を押すように平助に尋ねます。
「ねぇ。バレンタインのプレゼントには利子がつくのよね?4月なら5倍。5月なら
6倍!そんな感じにホワイトデーから一ヶ月遅れるごとに1倍づつ増えて
いくのよね??」
こんなに念を押すのであれば「何か」企んでいるに違いない。平助はそう察すると
大慌てで条件を上乗せします。
「もちろん増えていくよ!でもな、ちゃんとバレンタインの贈り物じゃなければ
無効だぜ!気持ちが入っていなければバレンタインとは呼べないね!」
「まず、現金は駄目。プレゼント感がないし小遣いみたい。金券的なものは駄目!」
とりあえず、1万円渡されて4月に5万にしろなんて言われたらたまったものじゃない
と平助は真っ先に「金」を禁止します。
それでも安心できない平助は続けざまに
「それから、義理チョコじゃあるまいし「今から用意するもの」は駄目。そんな
バレンタインの夜に用意もしていないモノなんて気持ちが足りないからな!」
続けて「今から高額なものを準備する」という行為自体を封じ込めにかかります。
嫁はキョトンとしながらも、笑顔で無言のままうなずきました。
まずは危険なプレゼントを今から用意されないように条件を増やして一安心する
平助。
ホッっと胸をなでおろしていると、嫁は相変わらず笑顔のまま
「なぁに?利子目的で何か用意するとでも思ったのぉ?」
と平助に笑いかけます。
しかし、平助はその嫁の瞳の奥に計り知れぬ一閃の輝きを感じ取り、再び不安を
感じ始めます。
嫁がバックから探し物を見つけたような表情を見せたので、平助はもう恐ろしくて
居ても立ってもいられなくなりさらに条件を追加します。
「あ、あれだ!俺に関係のない品物をプレゼントって渡すのもナシ!そんなん
事前に準備していたかわからないし!やっぱり、プレゼントってのは俺にちなんだ
モノでないと!」
これでもか!と平助が出した条件を聞いた嫁。しかし平然と
「何?大丈夫よ!ちゃんと事前に準備されたアナタに関係するモノだから~」
と笑い飛ばします。
平助は「これはもしや今年は本当にチョコか何かプレゼントがあるのかも」と
期待を持ち始めます。
ですが、その期待と同時に「利子の話」を大きくしすぎてしまったと後悔の念を
強く感じ始めます。
そこで先ほどまで「男気」を振り回していた人物とは思えないほど、か細い声で
「な、なぁ。あんまり高価なモノもらっても、お返しに見合あう大金持ってない
からなぁ・・・無い袖は振れないからなぁ・・・」
なんて予防線を張り始めます。
その様子を見た嫁は、少し考えるとさらに「意味深げな」笑みをこぼして
こう言います。
「なぁにー。義理チョコには利子まで付けて返そうなんて言いながら、もう降参?
大丈夫よ。お礼はお金じゃなくていいし、来年の3月ごろに返してくれれば
いいからね」
そう笑い飛ばす嫁の言葉に平助はやっと安心して、プレゼントを覗き込みます。
ですが平助、安堵のあまりに「なぜか来年までお返しは不要」という不自然な
答えを見逃してしまいます。
嫁は平助から疑いが消えたことを確認すると
「でーも、ちゃーんと利子は頂くからね!」
と、軽く。あくまで軽く、そして冗談のような口調で釘を刺しました。
平助は「金銭ではない」ということに安心を感じ
「ははは!わかってるよっ。俺に出来ることなら何でも利子をバッチリつけて
返してやるよっ!」
などと軽口を叩いてしまいます。
すると嫁、スッと笑顔が小悪魔的に変わりまして
「言ったね。聞いたよ。」
と、言質をしっかり確認し一枚の写真をバックから出しました。
「これがバレンタインのプレゼントだよっ」
平助が覗き込むと、黒い背景に丸みを帯びた白い線。写真にしても奇妙なモノ。
「なんだい?写真?なんの写真?」
狐につつまれたような顔で嫁に尋ねると
「これはね、赤ん坊さ。昨日産婦人科に行ってみてもらったんだ。アナタの子だよ!
まだ1ヶ月だって!アナタもパパだよーっ!」
「うおおおおーーーーーーー」
平助が生涯最高の歓喜の声を上げます。
そこへすかさず
「アナタ!さて、ちゃーんとプレゼントを渡したよ。」
嫁は指をスゥと平助の鼻先にあてると
「金券ではないわよね」
と確認し、平助のあご先にツツッと指を這わせると
「ちゃんと事前に用意してあったもので~」
とさらに念を押し、平助の胸に指を這わせて
「アナタに関係する、気持ちのこもったモノ。お返し頂けるのよねーっ」
と上機嫌です。
平助は何を要求されるのか一気に恐ろしくなりますが嫁は間を置かずに続けます
「言ったでしょ、お返しはお金じゃなくていいって」
そして指先をスイッと平助の股間に合わせると
「お返しは子供を生んでから、新しい「子種」でお願いね~っ。12か月分の
利子は、えっと15倍かしらね・・・フフッ15人分。楽しみねぇ」
嫁はそう言うと上目で平助を見つめながら、指先を平助の唇に当てました。
平助はイチモツが「キューッ」っと小さくなりまして、余計な小細工を仕掛けた
自分に後悔するのでした。
1年後、15倍のお返しは無事に果たされるのですが、それはまた別のお話。
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これで企画「火曜は本(ほん)の日」は全作品公開終了となります。
お付き合い頂きありがとうございました。
このような作風の作品もかけますので、お仕事のご依頼、切に願い申し上げます。
とはいえ、お仕事の話は別にしても、私の小説に興味を持っていただけたら
それだけで管理人は十分嬉しく思います。
今後とも何卒よろしくお願いします!
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