2017年2月21日火曜日

火曜は本(ほん)の日 ~3話 バレンタインデー 中編~

こんばんは!管理人の緑茶です。

当サイトでは火曜は本の日ということで7回(当初予定では6回)に分けて
全3本の短編小説を掲載します。

 
本日は第6回目ということで、3話目の中編になります。

本来なら最終回となる予定でしたが、この「バレンタインデー」が
思った以上に長いので、後1回お付き合いいただけると幸いです。

なお、短編形式なので各話独立した別のお話なので、この話からでも是非!


では、よろしければご贔屓によろしくお願いします。


~ バレンタインデー ~ (ばれんたいんでー) 中編


  
平助は自分もそんなにうまく話が出来るものか?
 
  
そんな事など考えながら帰宅いたしました。
  
「(ピンポーン)ただいまー」
 
平助が家に帰ると、台所から嫁がやってきました。
 
「おかえり~」
 
実は平助は今年は用意されているんじゃないか。
「去年はたまたま忘れていたのかも」なんて思いながら少しだけ期待を
膨らませて帰宅してきたのです。
 
 
ところが、台所から出てきた嫁の格好は「右手に包丁」左手に「軍手」という
いでたち。
 
平助は「はぁ」とため息などをつきまして

「これじゃぁバレンタインじゃなくて節分の鬼だね・・へヘッ」と期待を裏切られ
た寂しさを笑い飛ばして家の中に入ります。
 
 
それでも平助は淡い期待を抱いておりました。
 
 
例えば豪華な晩飯が用意されていて「これがバレンタインよ!」とか
食後に艶っぽく隣に座って「今日はデザート買ってあるの」なんて感じで
チョコじゃなくても何かあるんじゃないかと少しソワソワして過ごします。
 
  
しかし晩飯は普通に鮭の塩焼き。なんでも実家から鮭が1匹まるごと送られて
きたとか。
 

ああ、なるほど、あの包丁と軍手は鮭を下ろしていたのか・・・なんて変なところに
納得してしまう始末。
 
  
もちろん食後にデザートなんて洒落た物なんてなく、晩酌すら「駄目」とバッサリ
切り落とされてしまいました。
 
 
風呂に入って湯船で鼻歌なんぞを歌ったら「近所迷惑だからやめなさい」と小言まで
言われたものですから、平助もいささかカチンと来てしまいます。
 
 
 

平助は会社帰りに聞いた浜の話を思い出して一芝居打ってやろうと思い立ちました。
 
 
「おう。そんなに邪険にしていいのかい!」
 
 
 
平助は語気を強めて芝居を始めました。
 
 
「俺だってまだまだ捨てた者じゃないんだぜ、昨日なんてな義理ではあったけど
 ちゃーんとチョコとかもらってさ」
 
 
ひねりも何もない。先輩の浜から聞いた内容をそのまま即興芝居にしたものですから
話がおかしくなりまして
 
 

「おや。アナタ昨日は残業で終電がなくなったって言っていなかった?いつチョコ
 なんて貰ったの?」
  

平助はこりゃぁしまったとあわて始めます。

本当に仕事で終電がなくなったのに、このままでは他の女と遊んでいて
終電がなくなったようになってしまうと口から出任せで取り繕います。
 
 
「そ、そりゃぁ、会社だよ!仕事が終わって寝てたら、近くに住んでる女性社員が
 明日・・・つまり今日な、自分はお休みだからってくれたんだよ!」
 

なんとも無理がある話、当然のことながら嫁も不思議に思ったようで
 
 
「へぇ。義理チョコをわざわざ準備して、アンタが仕事が終わる待ってバレンタイン
 の前日なのに”義理チョコです”なんて渡すなんてなんだか意味深いねぇ」
 

嫁の声のトーンが僅かに低くなってまいりました。
 
 
平助は「この流れはマズイ」と察知して話題をそらそうと「お返し」の話をはじめ
ます。
 
 
「そんなたいしたモンじゃないよ!ほら、バレンタインに貰ったらお返しってのが
 面倒だろ。なんでも3倍にしてお返しなんて話だからショボイ物しか受け取れ
 ないしな!ハッハハハ!」
 
  
その言葉に嫁は予想外の反応を致します。
 
 
「へーえ。ちゃんとお返しまで考えているのかい?!本当にそのチョコ義理なの
 かーい?」
 
 
いっそうトーンが低くなる嫁の声に平助はすかさず
 
 
「いやいや、チョコのお礼なんてかしこまった話じゃなくてな、まぁ4月くらいに
 ちょちょいと何か渡して義理を返そうかって話だ」
 
  
必死に存在もしない女性社員との関係を取り繕う平助。
 
嫁の声はどんどん低くなります。
 
「4月?なんでもない義理チョコなら普通にホワイトデーに返せばイイじゃないの」
 
などと予想外の方向からツッコミを入れてきます。
 
 
「いやいや、違うんだよ。ホワイトデーに意味ありげにお返しなんかしないで
 利子を4倍ににして、ドーンと4月に返して綺麗さっぱりって男気だよ!」
 

平助は取り繕うのに必死になって、浜から聞いたら「利子の話」が混ざってしまい
ます。
 
「4倍?お礼を増やすのかい?」
 
 
「え?!お、おうよ、男気よ!4月なら4倍!5月なら5倍ってな!でも、まぁ
 本当に義理も義理、ぶっち義理なんてな!そんなチョコだから4月にパパッと
 終わらしてくらぁ!」
 
 
もう駄洒落交じりの意味不明な言葉をペラペラとしゃべる平助。
 
  
その様子を察知した嫁のトーンが急に明るくなりまして
 

「義理チョコだってのに、そんなに男気を見せるなんて見直したわぁ。私が何か
 あげたら凄い利子がつくかしら?」

急にそんな話を始めました。
 

 
--- 2/28 後編に続く ---
 
 
このお話は少々長いので3回に分割いたします。次回が最終回(後編)となります。
ついにこの「火曜日は本(ほん)の日」も次回最終回です。
 
 
是非最後までお付き合い頂けたら嬉しい限りです。

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