2025年10月30日木曜日

とんでもスキルで異世界放浪メシ2(新)(一部レビュー)

 <あらすじ>

ある日突然、異世界へと召喚された普通のサラリーマン・向田剛志。

彼は固有スキル『ネットスーパー』で取り寄せた現代の調味料を使い、料理を作って食べながら、伝説の魔獣フェル、スライムのスイとともに異世界生活を堪能していた。


<レビュー>

本作は、異世界転移系の“通販メシテロ系アニメ”です。

最大の特徴はやはり『ネットスーパー』の存在で、どう見ても現実世界にある某ネットスーパーそのままの見た目になっており、登場する食材や調味料も S&Bテーブルコショー や キッコウマン『いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ』 など、実在の商品が多数登場します。そのため非常に親近感のある作画となっています。


もちろん、これらの商品を無断で映像化しているわけではなく、公式サイトでは実物を紹介し、コラボ的な扱いで作中に登場しているようです。

そのため、コラボ商品の登場シーンをしっかりと確保する必要があり、通販+メシテロ系アニメの中でも圧倒的に食事シーンが多い作品になっています。


料理シーンの尺が長く、作り方も非常にリアルなのは、レシピ公開で知られる Cookpad(クックパッド) とタイアップしているからのようです。


当然ながら、これらは地上波アニメで放送されているため、無償ではないでしょう。

宣伝効果も高いため、作品の制作資金の一部として収益化されていると考えられます(確証はありませんが)。


もともとドラマなどで特定企業が商品を登場させる手法はありましたが、ここまで多くの商品を明確に登場させるアニメは珍しく、新しい試みといえます。


料理シーンが長いためメインシナリオの進行はゆるやかですが、日常系アニメのような安心感があり、食事描写の完成度の高さも相まって楽しく視聴できる作品です。

また、旅の仲間が定番の美少女ではなく、多彩なモンスターたちという点も個人的には好印象でした。




2025年10月28日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才②》

内閣シェルターで連日のように行われているタラメア合衆国への対応。

論調は分かれていた。

「先送り論」「虚偽報告論」「断片開示論」である。


勢力の割合は、先送りが50%、虚偽報告が10%、断片開示が35%、静観が5%という形になっていた。


メディアを完全排除し、また情報漏洩嫌疑のある「帝都復権党」は自主的に参加を見送ったこともあり、全体的に保守的な議論となっていた。


先送り論は大勢を占めているものの、日々強まるタラメア合衆国からの情報開示要請にどう対処するのか具体案もなく、会議を空転させる。そこへ虚偽報告派が時間稼ぎとしての虚偽報告を推すものの、タラメア合衆国を納得させられるだけの整合性ある報告の作成には時間がかかるという矛盾を抱えていた。


このような状況下で、防衛大臣の大仲は断片開示を支持していた。


理由は複数あった。


R連隊の損耗によって自衛隊全体の戦力が大きく低下していること。再度反転攻勢をかけるためにはタラメア合衆国の戦力が不可欠。


タラメア合衆国に都合の良い情報を渡すことで、ある程度のコントロールが可能になるという点。日々の開示圧力や虚偽報告作りより建設的。


タラメア合衆国を通じて世界の関心を維持すること。物資やエネルギーを国外に頼るこの国にとって、他国の援助は不可欠。


そしてもう一つ。


タラメア合衆国が情報を分析している時間に、都内に残る国有シェルターの避難民を地方へ移動し安全を確保するための時間稼ぎが欲しい。


大仲としては1〜3は本心であり方便でもあった。彼の中にはずっと4が最重要事項としてくすぶっていた。


空転する会議の途中、短い応酬が挟まる。


「二週間、虚偽報告で稼げます。数で押せば合衆国は一時は黙るはずだ」

「露見した後の二週間を、誰が防衛する? 我々か、あなたか」

「……断片開示で主導権を握る。出すのは、こちらが選んだ断片だけだ」


会議を終え、シェルター内の狭い防衛大臣室。大仲がソファーに横になり、議会答弁をシミュレーションしていると、野党の津田議員が護衛も伴わずにやってきた。


「大仲さん、タラメアの件ですが実際どう思いますか?」


探り合いのない率直な問いだった。


「先送りは不可能。虚偽は論外。静観も無責任。となれば私は情報開示一択です。津田さんもそうでしょう?」


体を起こしながら問うと、津田は肩をすくめた。


「常識的に考えて開示一択でしょうな。与党の半分が先送りとは、決めないことで身を守る流儀か」


「だとしても、野党の虚偽報告案には賛成できません。時間も信頼も失う。悪手です」


津田は大きくため息をつき、無言でうなずいた。


「それで津田さん。意見交換だけではないでしょう。何か用件が」


「そうそう、私はタラメアともパイプがあってね。ちょっと“独り言”を言いに来た」


永田町では、わざとらしい独白が情報の通路になることがある。津田は天井を見ながら独白を始めた。


「タラメアの一部には、この国のUFB問題が本国へ波及することを恐れる声がある。情報は出しても出さなくても、不安は“排除”へ流れる」


そして、ため息交じりに続ける。


「強硬派の中には、UFBがこの国にとどまっている間に、核で根絶やしに——というような議論が、委員会の“私案”で真剣に回っている。困ったものだ」


津田は首をさすりながら、そのまま大臣室を出ていった。


ーーこの国に核を。大仲は早急に国民の退避計画を考え始めた。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


数日前、神の居城デスランド。


傷ついたベルガンがサーチと共に帰還した。ヴァロンは面倒くさそうに出迎えると早速嫌味を言う。


「まったく。兵の扱いが雑すぎる。自分の兵だけではなく、相手の兵、布陣、将の思考、考えろ、馬鹿者!」


そう言ってヴァロンはベルガンに肩を貸し、神のもとへ連れていく。


玉座にて神は笑みを浮かべてベルガンを待っていた。


「ずいぶん傷ついたな、ベルガン。勝ち戦に負けた気分を聞かせてみろ」


ベルガンはひれ伏したまま搾り出す。


「申し訳ございません」


神は立ち上がり、肩を叩く。


「違うよ。謝罪はいらない。面白かった。俺が聞きたいのは“今の気分”だ」


ベルガンは顔を上げ、溜めていた言葉を吐き出す。


「悔しい。そして自分が許せない。圧倒的に有利な状況に慢心し、何度も相手の手のひらで踊らされた。そのたびに兵を失い、無力を痛感した。神の兵として失格。この身は分解し、新たな手下をお創りください」


神は笑みを深める。


「サーチも戻ったときに似たことを言った。だが君らの本心は分裂している。『分解してほしい』も本心、『人間への怒り』も本心。時間をかけた個体は思考が複雑でいい」


神はヴァロンに向く。


「今回の戦いをどう見た。ベルガンに足りないものは?」


ヴァロンは即答した。


「情報と射程です。人間の将は情報を細かく分析し、行動パターンを予測して複数の策から最良を選んだ。どんな計略も圧倒的暴力の前では脆いはずでしたが、彼らの兵器は射程が長すぎた。近接主体のベルガンは一方的に削られた。結論は明白。運用の小回りが利く長射程兵器が要る」


神は満足げにうなずいた。


「そう、届かぬ拳は意味がない。ベルガン、新しい肉体を用意した。来い」


サーチが待つ玉座の前に、一時間後、ベルガンが現れた。ひと回りスリムな体型、わずかに知的な顔つき。


「世話になったな、サーチ。借りは返す。……この体はすごい。パンパンに膨れた筋肉じゃない。しなやかで鞭のようだ。反射も移動も飛躍的に向上した」


ここでベルガンは、指先に極細の光を一瞬だけ走らせた。ピンホールの熱線が壁の同一点を連続で貫き、点が線へ“縫い合わさる”。


「さあ、人間ども。絶望の時間の始まりだ」


2025年10月23日木曜日

【第6回 隠れスライムフェスティバル】(レビュー)

・このイベントは、参加者とスライムたちとのかくれんぼです。

会場内に隠れているスライムを見つけて、しぐさ「見つけた!」でポイントゲット!

ハイスコアを狙って、ガンガン探し出そう!

※一緒に参加したパーティメンバー全員のスコア合計が自分のポイントになるので、みんなで協力しよう。


・今回の舞台はアグラニの町!

教会や宿屋が高台にある、高低差が特徴のフィールドです。

スライムたちは、回り込まないと「見つけた!」ができない場所にいることも……。

2025年10月21日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才①》

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

-----

◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆

自衛隊のR連隊が私有シェルターの救出作戦を行い、救出には至らず新種のUFB「王」と「女王」を発見、撃退したあの日から3日が経過した。


国会では大仲防衛大臣に質疑が集中した。


内容は主に3つ


1.R連隊の帰還率約30%(損耗約70%)に対する責任論

2.私有シェルターへの次なる施策、計画案

3.同盟国から再三要求されているUFBの情報開示対応


まず、1.責任論については大半の議員はポーズに過ぎず、議員として追及すべき姿勢は見せておきながら内心では想定外の新種との遭遇や後任問題を考慮すると大仲続投を期待していた。

そのため、追及も薄氷を踏むような踏み込んだものはなく、継続議論という名前の「先送り」「実質不問」となった。

 

つぎに、2.私有シェルターの件。多くの議員は人命救助を訴えてはいるものの、内心は「切り捨て」の方針だった。重要視していた日本有数の実力者、大荻山《おおぎやま》 剛三郎《ごうざぶろう》氏の生死が不明であること

そして、連絡が継続していた私有シェルターの数も減りつつあり、いくつかの私有シェルター内では内部的な暴動が発生し暴力的な人物のみが生き残っているシェルターもあった。

もはや貴重な自衛隊を再度投入し国民全体を危機に晒すべきではないという感情だった。


また、この件にこだわりを持っていた帝都復権党の舞岡氏は、前回の作戦情報のリーク犯として疑いをかけられており、後ろ盾の大荻山氏の生死不明も相まって強くは主張を出せずにいた。



問題は3である。


同盟国のタラメア合衆国がUFBおよび、王、女王の情報開示を迫っていた。表向きは軍事支援となっているが、UFBが出現したあの日、真っ先に東京から脱出したのがタラメア合衆国の軍隊である。

R連隊への参加打診もあったが、彼らの目的は自衛隊の最新兵器の性能にあることは明白だった。彼らはUFBというモルモットを使って、自衛隊の戦闘能力を知りたいのである。


それには理由があり、ロングレンジ・レールガンも含め、この国が所有する最新鋭機の機密情報は強固に守られていた。平和主義という理念を前面に出すことで兵器を開発・製造・量産していることすら公にはしておらず

配備状況も噂程度にとどめられていた。ところがこの有事にあたって、実践に投入されてきた。これは同盟国からみても予想外の脅威で、UFBは対岸の火事で済むが自衛隊の最新兵器は同盟国としての軍事バランスを揺るがしかねない身に迫る危機なのである。


UFBは死亡すれば霧になって消えてしまう。王と女王は逃がした。となると、UFBの情報開示は最新兵器の戦闘データ開示ということになる。同盟国は軍事的解析能力に優れた大国である。その国に戦闘データを送ることなど出来ようもない。

国会はメディアを追い出して、このテーマについて議論を交わしていたが、紛糾を極めた。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


政治家が議論に時間を溶かしているあいだに、自衛隊では戦闘データの解析作業が進んでいた。


解析には変人研究者の篠原《しのはら》涼音《すずね》が指揮を執り、スーパーコンピューターを超えるという天才的頭脳を存分に発揮していた。


研究室にR連隊の隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》と仲原《なかばら》香《かおり》三佐が進捗を確認するために入ってきた。


涼音は足立を見つけると足早に駆け寄った。


「足立隊長!涼音ですー!」


研究室では鉄の仮面とよばれる無表情の篠原だが、足立には表情豊かに笑顔で声をかける。


「篠原さん、解析はどうですか?」


すると待ってましたとばかりに、研究室の卓上モニター3体のUFBを映し出した。


そして嬉しそうに解説を始める。


「まずはこれ、これはぁ今まで私たちがぁ戦ってきた。ふつうの子」


次に中央の筋肉質の個体を差す


「これがぁ、王?でもぉたぶん王じゃないですねぇ。特攻隊長の子ですぅ」


そして女性の個体を差す


「この子はぁ、たぶんサーチって名前ですぅ。周囲の物質を集約硬化させて白い盾をつくれますぅ。みんなは女王って呼びますが、これはたぶん門番?みたいな守備型の子ですぅ」


足立は驚きが隠せなかった。解析と言えば速度や筋力といったスペックを差す。だが篠原はスペックではなく組織のポジション、特徴、名前などを説明したからだ。


「あの、篠原さん?」


「涼音でいいですぅ」


「じゃあ涼音さん」


黙っていた仲原三佐が割って入る。


「隊長!男性が女性の呼称に名前を使うのは規律が乱れます。篠原とお呼びください」


この言葉を聞いて睨みつける篠原を完全に無視する仲原。


険悪な空気を読んだ足立が話を戻す。


「それで、なぜ王ではないと?あと名前、サーチとは?いや、それ以前に頼んでいたUFBの性能解析はどうなってる?」


「はぁい!これはですね、想定される筋力などはこちらのボタンを押すと表示されまぁす」


そういうと、卓上スクリーンをタッチする。


「こーんな感じでぇ、脚力とかもぉ瞬発力とかぁ持久力とかぁ、稼働性能とかぁ、耐久力とかぁ跳躍力とかぁ、多面的に分析しましたぁー」


これがこの篠原涼音が変人研究者と呼ばれる所以である。普通の人間が想像する数倍斜め上まで詳細に研究してしまう執着力。そして僅かなデータから細かい情報を分析してしまう思考力、20代でUFB研究室の室長に抜擢されただけはある。

余りに細かい数値の羅列に仲原が少し後ずさりする。一方足立は前のめりになっていく。


「すごいじゃないか!UFBの能力が丸裸だ!!想定飛行限界高度4000mか・・・意外と低いな。ふむふむ。」


その様子を見た仲原がすぐに自身も前のめりになると問う


「これらの情報は後でゆっくりみますが、名前とか王ではないといった情報の根拠は?」


仲原の質問に篠原は無表情に答える。


「映像を見れば分かりますよね普通。まず、状況。我々が殲滅したのは池袋付近のUFBのみですよ?それで王様が激怒して城から出てくるのは不自然です。だって池袋の周囲にはまだ何万も兵がいるんですよ」


「それに、この子、王という割には戦闘力も半端。統率力も半端。カリスマ性もないですよ。群れの長は圧倒的な力とかまとめる能力が必要なんですよ。この子はその器ではないです」


「最後は味方のサーチちゃんに助けられてますし、総合的に見れば精々戦闘隊長級。もしくは特攻隊長みたいなポジですね」


足立が反応する


「そうだ。サーチ。なぜ、この女がサーチという名前だと分かった?」


篠原は、得意げに答え始める


「はぁい。それはぁ、この映像ですぅ。ここ、ボロボロになった特攻隊長君が、この女の子の名を呼んでいます。きっと予想外だったのだと思います。例えるならぁ、駅前で終電逃して絶望してたら、同期の異性にばったり出会ったみたいなぁ様子ですねー」


「で、口元を拡大してぇ。コマ送りにするとぉ、ここが「さ」ですね。で、このまま口の形がしばらく変わらないので、「さー」と伸ばしていると推測できますぅ。次のコマが「ち」と言って口を閉じてます。つなげると、この女の子はサーチですね!」


「ついでにぃ、この口の使い方からしてぇ、この子達は日本語を使ってますねぇー」


足立は驚きに声も出なかった。

2025年10月19日日曜日

最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか(新)

<あらすじ>

舞踏会の最中、公爵令嬢スカーレットは、婚約者である第二王子カイルから突如婚約破棄を告げられます。しかも、理由はまったくの言いがかりであり、すでに新しい婚約者がいるとまで宣言されてしまいます。耐えがたい屈辱と怒りにスカーレットは「最後のお願い」として、自らに濡れ衣を着せた令嬢を殴らせてほしいと申し出るのでした。それは、彼女の“断罪”が始まる合図に過ぎなかったのです。


<レビュー>

本作は、悪役令嬢もののテンプレートを一度踏襲しつつも、序盤からその枠を破壊するような展開で始まります。主人公スカーレットが「令嬢らしからぬ」暴力で不正を正していくスタイルは非常にインパクトがあり、視聴者を強く引き込みます。


この作品の最大の特徴は、見た目が少女漫画風でありながら、アクション描写が非常にハードでリアルであるという点です。殴打のシーンでは血の描写や顔面の歪み、返り血までもが丁寧に描かれ、ただのギャグや演出ではなく、キャラクターの意思や背景を支える強さとして描かれています。


スカーレットは全員に暴力を振るっているわけではなく、相手の背景や状況に応じて、眠らせるなどの対応もしています。このバランスが、彼女をただの暴力令嬢にせず、正義感と判断力を併せ持つ主人公として成立させている点が非常に巧みです。


さらに、第二王子との婚約破棄によって、第一王子のお気に入りとして迎えられる展開も含まれており、いわゆる“追放”の末により高い地位に昇るという点では、近年の流行である「ざまぁ系」や「逆転劇」の要素も感じさせます。ストーリー構造においても、権力構造が変化することでスカーレットの行動の自由度が増し、それが彼女の持つ正義と行動力をより活かす形になっています。


現在3話時点で物語は最初のボス戦へと進もうとしており、今後どのような悪役が登場し、それをどう成敗していくのかという期待が高まります。作画、演出、キャラ描写、いずれも丁寧で完成度の高い導入でした。


悪役令嬢ジャンルに新風を吹き込む作品として、強烈な第一印象を残すシリーズの始まりでした。暴力系令嬢という異色の切り口に興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。



2025年10月16日木曜日

グノーシア(新)

 <あらすじ>

物語の舞台は漂流する宇宙船。

“人間に化けて人間を襲う未知の敵”――『グノーシア』が船内に紛れこんだことを受けて、

乗員たちは疑心暗鬼の中、毎日1人ずつ疑わしい者を投票で選び、コールドスリープさせることを決める。

グノーシアを全てコールドスリープさせることができれば人間の勝利。

なんと主人公・ユーリは、どのような選択をしても、最初の1日目にループする事態に。

わずかな時間を繰りかえす、一瞬にして永遠のような物語が、いま、幕を開ける。

<レビュー>

『グノーシア』は、ゲーム原作ならではの人狼ゲーム要素と、タイムリープの構造を組み合わせたSFミステリー作品です。視点人物であるユーリは、記憶を引き継ぎながら何度も同じ一日をやり直す立場にあり、ループの中で真実に近づこうと試みます。

冒頭では、ユーリが記憶も状況もわからないまま人狼ゲームに巻き込まれ、あっという間に敗北してしまう展開が描かれます。そこから再びループが始まるという、プレイヤー=視聴者と同じ無知な立場からスタートする導入は非常に没入感がありました。

作中の「グノーシア」は人狼と似た存在ですが、その正体や能力、増殖や移動の可否など、詳細が明かされていません。そのため、単純に「一人ずつコールドスリープさせれば勝てる」といった論理が通用しない点が作品に不気味さと深みを加えています。

とくに印象的だったのは、ユーリが前回の記憶を保ったまま再び同じ一日を迎える描写です。それにもかかわらず、状況が必ずしも前回と同じとは限らず、毎回異なる可能性が提示されることにより、視聴者もまた「何を信じればよいのか」と不安を掻き立てられます。

このあたりから、「実はタイムリープではなく、並行世界を渡っているのではないか」という疑念や、「ユーリ自身も無意識のうちにグノーシアなのではないか」というメタ的な推理を楽しめるようになっており、SF好きにとってはたまらない仕掛けが随所に仕込まれているように感じました。

演出も凝っており、閉鎖空間で進行する心理戦に加えて、キャラクターたちの個性がしっかり描かれているため、今後の人間関係の変化も楽しみです。

ゲーム的な仕掛けと重厚なSFミステリーを融合させた本作は、ループものや人狼系の作品が好きな方には強くおすすめしたい一作です。今後の展開次第では、大きな話題になる可能性も感じさせる作品だと思います。




2025年10月14日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑱ 大規模攻勢_10_終結》

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

-----

◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


内閣シェルター作戦司令部


防衛大臣の大仲《おおなか》晴彦《はるひこ》は、私有シェルターに取り残された民間人を救出すべく、最新鋭の装備を備えた救出連隊「通称:R連隊」の報告を聞いていた。


報告はR連隊の隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》からの無線で行われている。


「大仲大臣。足立です。不測の事態が発生し、王を取り逃がしました。しかし、周辺のUFBは全滅。再度私有シェルターの救出を再開可能な状況です。ご判断を」


突如出現した、UFBの王。足立と仲原三佐のプランにもない存在だった。ところが彼らは準備していたプランを流用し、これを見事に追い詰めた。


彼らは「取り逃がした」というが、正体不明の敵対生物と交戦し、敵の王を退けたことは大きな功績といってよい。


だが、犠牲が多すぎた。王の熱線による奇襲で前衛の半数を失い、作戦全体としての無事帰還は約30%にとどまっている。この状況での判断は1つしかない。


「撤退してください」


大仲は冷静に告げる。


足立の隣にいた仲原《なかばら》香《かおり》三佐が無線に割って入る。


「大臣! 人命救助のチャンスです。最低でもこの地域に拠点を作ることを進言します!」


すぐに足立が無線を取り返す。


「大仲大臣。足立です。私も仲原三佐を支持します。この好機を活かさなければ死んだ仲間が浮かばれません」


大仲は一瞬だけ、隣に座る津田議員に視線を向ける。


津田は黙って首を横に振っていた。


「駄目です。敗走した王は自尊心が傷ついているはずです。もしUFBに感情があるとすれば、王を傷つけた自衛隊に怒りの反撃を試みるでしょう。そういった意味では、今の安全は一時の静けさ――台風の目のようなものです。すぐに撤退を始めてください。これ以上自衛隊を失えば国有シェルターの防衛や、東京以外の地域の国防に影響が出ます。わかりますよね?」


それでも仲原三佐は引かなかった。


「敵の弱点は把握しました。再度攻撃を受けても撃退してお見せします。ですから拠点だけでも作らせてください!」


大仲は少し沈黙すると、声のトーンを落として小さく告げた。


「実は、先ほどの王の熱波攻撃以降、私有シェルターとの通信が切れたのだ。光回線・銅線・非常波長の順で再試行し、近傍ビーコンも確認したが応答なし。熱波によるケーブル焼損か、施設損壊の可能性が高い」


それを聞くと仲原三佐はさらに語気を強める。


「ならばなおさら――」


その言葉を遮ったのは足立だった。


「了解しました。残存部隊を集め撤退します」


「隊長! 何でですか!」


「確実な人命救助なら俺も前に出る。だが、この状態は違う。もし手遅れだった場合、残存兵力では撃退できたとしても確実に犠牲が出る。大仲大臣の集めたこのR連隊は各地方の防衛ラインに配属されている最新鋭部隊だ。これ以上失うことは国防にかかわる。確実ではない人命救助に対してリスクが高すぎる」


足立の握る拳に仲原は心情を察した。そして自身もまた、国防と不確実な人命救助を天秤にかけ、足立の発言に反論することはできなかった。


自衛隊は即座に再集結すると、埼玉の防衛ラインまで後退した。あれほど多くの最新鋭の兵器が出立したその場所に、無事に帰還できたのはおおよそ30%。また損傷している車両、隊員も多く、この国は忘れかけていた戦の凄惨さを思い出すこととなった。


それでも埼玉シェルターでは凱旋パレードが行われた。


メディアは自衛隊を英雄と称えた。


レポーターのマイクにも感情が乗っている。


「私有シェルターには至りませんでしたが、我が国の自衛隊はUFBの王をあと一歩まで追い詰め、撃退しました。今まで一方的に侵略されていた我が国が、侵略者に対して大規模攻勢を成功させたのです! 勇者の凱旋です!」


内閣広報室は、治安安定化のため戦果の要約のみを公表する方針を決定。強い情報統制の下で、自衛隊側の損失は一切報道されていない。事実として多くのUFBを倒したこと、そして王と対峙し、撤退させたこと――その部分だけが国民に伝えられた。


また凱旋パレードに参加した兵器も、最新鋭装備は出さず、国民が知る型のみが形式的に並べられた。


そのパレードの車列に仲原三佐と足立の姿もあった。


「隊長。これはプロパガンダですよね。実際はほとんど敗走に近いのに」


そういうと、虚しそうに喜ぶ国民を見つめる。


「そうだな。だがこれも仕事だ。世論次第では大仲大臣の議員生命も危うい。世論を徹底的に味方に付けるんだ。ほら、笑顔笑顔!」


足立は乗っていた装甲車のハッチから顔を出し、敬礼して国民に勝利をアピールした。


この光景にSNSは懐疑的だった。


<< ドローン部隊が全然いなくね? >>

<< 勝利? シェルターには行けなかったのに? >>

<< なんで王を追い払ったのに、手ぶらで帰ってきたの? 馬鹿なの? >>


辛辣なコメントが並ぶ。

だが、そのコメントも政府が準備した「賞賛チーム」のポジティブコメントで上書きされていく。


<< 大勝利!! >>

<< あの総理を説得し、勝利をもぎ取った大仲大臣すごい! >>

<< なんか自衛隊が頼もしくなった >>

<< 賛否はあるかもだけど、スピード感はあった >>


それを見る大仲大臣と津田議員は複雑な表情であった。本当は戦死した隊員に最大の感謝と賛辞を送りたい。だが、そこに注目してしまうと国民感情が不安定になり、治安の悪化になりかねない。


大仲は戦死者・行方不明者リストを見ながら、ひとりひとりの家族に宛てて感謝の意と追悼の気持ちを記した手紙を書こうと心に決めていた。


数日後、王との戦いを分析していたチームから報告が入り、大仲は自身の決断が正しかったと確信した。


超高性能偵察ドローンのカメラが恐ろしいモノを捉えていた。


女性のような姿をした未知のUFBが映っていたのだ。この個体は高速で上空から白いシールドを展開しつつ王に接近し、熱源の尾を残してそのまま王を連れ去った。


王のような特殊な個体は、王ひとりではなかった。その真実は自衛隊に大きな衝撃を与えた。


誰かがこの個体をこう呼んだ――「女王」。

2025年10月12日日曜日

味方が弱すぎて補助魔法に徹していた宮廷魔法師、追放されて最強を目指す(新)

 <あらすじ>

突然の“追放宣告”をきっかけに、再び運命の歯車が回り出す――。

王太子レグルス・ガルダナを陰で支えてきた宮廷魔法師アレク・ユグレット。

かつての仲間と再び出会い、伝説のパーティーが再集結する。

新たな物語が幕を開ける――。始めよう、新しい伝説を。あの日の続きを。


<レビュー>

今のところ、王道の「追放系ファンタジー作品」という印象です。補助魔法に徹するように命じられ、その通りに戦っていた主人公が、王太子から無能とみなされて追放される、という導入は、ある意味このジャンルのお約束とも言えるでしょう。


物語は、かつての仲間と再会し、冒険者として再スタートを切る形で始まります。作画も安定しており、特にキャラクターの表情描写が豊かで、喜怒哀楽の表現に力が入っているのが印象的でした。声優陣の演技とも相まって、キャラクターの感情や個性がよく伝わってきます。補助魔法専門と思われた主人公が、実は攻撃にも長けた万能タイプだったという設定も、王道でありながら安心感のある構成でした。


追放系の作品はすでに飽和気味のジャンルですが、その中で生き残るには「強烈な個性」か「安心の王道」が求められます。本作は後者の道を選んでおり、視聴者が期待する展開をきちんと抑えてくれている点が魅力です。


また、1話時点でヒロインがすでに主人公に強い好意を持っている様子も描かれており、今後のラブコメ展開や王太子パーティー側の混乱・焦燥も含め、物語としての広がりが感じられました。


まだ1話のみの評価ではありますが、王道の追放ファンタジーが好きな方には安心しておすすめできる作品です。まずは2話目以降の展開を楽しみに視聴を続けてみたいと思います。



2025年10月9日木曜日

素材採取家の異世界旅行記 (新)

<あらすじ>

異世界へと転生したごく普通のサラリーマン・神城タケル。

彼が新たな人生をスタートさせたのは、剣と魔法の世界『マデウス』。

そこでは、身体能力の強化や莫大な魔力、さらに価値あるものを見つけ出せる「探査能力」など、

数々のチート級能力が与えられていた――。

タケルの“異世界・素材採取の大冒険”が今、始まる!


<レビュー>

本作は、いわゆる異世界転生ものの中でも、「採取能力」と「魔力」に焦点を当てたタイプの作品です。


戦闘が主軸ではなく、素材集めや冒険を軸に据えた物語構成のため、「戦闘で無双!」系とは異なり、異世界を旅する雰囲気をじっくり楽しめるのが特徴です。


とはいえ、主人公には明らかなチートスキルが備わっており、「探査能力」や「魔法」によってイージーモードな展開が多いのも事実です。ただし、呪文の使用には発動条件があり、「呪文の言語(基本的に英語)」を知らないと発動できないなど、適度な制約も盛り込まれています。この「少しだけ不便さが残る仕様」が、物語のバランスを上手く保っているように感じました。


ちなみに、呪文の言語は英語ベースになっており、「飛ぶ」は「フライ」、「鑑定」は「サーチ」など、視聴者にも意味が推測しやすい構成になっています。一部では「identificationの方が正確では?」と感じる場面もありましたが、アニメ的演出として受け入れられる範囲でしょう。


さらに本作では、ヒロインよりも先に「マスコットキャラ」が登場します。近年の異世界転生作品では珍しくないパターンですが、マスコットを最初に据えることで、作品全体に落ち着きと継続性を与える狙いがあるように思えます。


マスコットは序盤のインパクトを狙う要素ではなく、物語全体の「可愛げ」や「読後感の良さ」を支える存在です。この点に着目することで、制作陣が安易にヒロインやバトル、セクシャルな要素に頼らずとも「視聴者をつかめる」という自信を感じました。


まだ1話目の段階ではありますが、演出・キャラクター・設定すべてに誠実さと意図が感じられ、今後に期待できる“雰囲気重視の異世界作品”として注目したい一作です。




2025年10月7日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑰ 大規模攻勢_9》

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

-----

ベルガンは窮地《きゅうち》に立たされていた。


自衛隊の考え抜かれた作戦行動にベルガンの長所を潰され、自衛隊車両の攻撃や自爆ドローン。

設置されたTNT爆弾を使ったトラップにダメージを受け、翼は機能を失い、片足も失っていた。


そしてまさに今、眼前には20~30の自爆ドローンがベルガンに向かって直進していた。


特殊弾を装備した自爆ドローンの破壊力は、直撃すれば翼を壊すほどの威力である。その自爆ドローンが大量に迫る状況はベルガンに敗北を告げていた。


「くそがあああ!」


最後の力を振り絞り吠えるベルガン。


だが、もはや反撃する体力も、回避する機動力もベルガンに残されていなかった。


迫る自爆ドローン。ベルガンには、その数秒が数分にも感じられ、悔しさ、不甲斐なさ、怒り、様々な感情が渦巻いた。


自爆ドローンは2mまで接近。


ーー駄目だ。


ベルガンがあきらめ、空を見上げると。白い一筋の光が見える。


「チャージ完了!シールド展開!」


円形のエーテルで作られた美しい白い障壁が瞬時にベルガンと、そのシールドを発生させた本人。サーチを包み込んだ。


「サーチ!」


「話はあとにしましょう。この障壁も長くは持たない。私の尻尾をつかみなさい」


その僅かな会話の最中も、幾重もの自爆ドローンが障壁に当たり轟音《ごうおん》をあげる。


サーチはベルガンが差し出された尻尾をつかんだことを確認すると、障壁を展開したまま一気に上昇し、居城デスランドへと撤退を始めた。


ベルガンは助けられたことに驚きながらも、尋ねずにはいられない。


「サーチ、この障壁は一体?、それに何か体型も変わってないか?」


サーチは一瞬振り向くと、すぐに前を向いて答える


「私は自衛隊の最初の攻撃で機能を失って、デスランドに撤退したのよ。そこで、創造主さまからこの体をいただいた」


「以前よりも速く、そして味方を守る力を持ったこの体でもギリギリだったわね。ごめんなさい」


そういうと、さらに加速し、居城へと向かった。



◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


10分ほど前 自衛隊の視点


足立《あだち》昭介《しょうすけ》と副長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐は、モニターと無線、計器類を凝視しベルガンの動きを分析していた。


仲原三佐が声をかける


「隊長。やはり、UFBの王であっても目視による索敵ですね。こちらの部隊を見つけると直進してくる行動パターンはUFBと変わりません。ただ、速度が異常に早いですね。あとは被弾してもダメージが見受けられません」


足立は仲原に視線を向けることなく首を振る。


「いや、ダメージはある。先ほど自爆ドローンが左翼に命中した。そこから左側への旋回能力が落ちている。おそらく翼に異常があり、空気抵抗をコントロールしにくいのだろう。右旋回に比べ1.5倍は左旋回の方が大きい」


「え!では特殊弾は効果がありますね」


仲原はすぐに無線を取る。


「UFBは左旋回に異常アリ。各攻撃部隊はUFBの左側面から攻撃。右側面の部隊は攻撃を中断」


ー右側からの中断


この言葉に各部隊の隊員たちは違和感を覚えた。

左側面からの攻撃を優先は理解できる。しかし右側攻撃すれば相手は左右への注意が必要となり、より多くの着弾を狙える。


その疑問は次の命令で納得に変わる。


「いい?徹底的に左から狙い続ければ絶対に、距離を取るか上昇するはず。ダメージが少なくても弱点から攻撃されるのは心理的なプレッシャーになるわ。だから必ず一度冷静になるために距離をとるはずよ。その時に自爆ドローンで右の翼ももらうわよ!」



足立が作戦を聞くと少しだけ表情が緩む


「ほんと、三佐の作戦はおっかないねー。例えるなら敵を水中にたたき落として息継ぎに顔を出したら”顔面いただきます”みたいだもんなぁ」



「隊長。無駄話は後にしてください。作戦中です」


仲原には答えるだけの余裕はなさそうだった。


ーーちょっと緊張をほぐしてやろうと思ったのに……


少々切ない気持ちになる足立であった。


しかし、その間も戦況は仲原三佐の予想通りの展開になっていく。


無線が入る。


「UFBの王。TNTのトラップにかかりました!誘導成功です!」


仲原はすぐに返す


「右側の分かりやすい地点に配置したのだから当然でしょ!そのまま、3時の方向へ追い込んで!ソロソロ距離を取るはずよ!自爆ドローンは近づいて!きづかれないでね!」


まるで予言のようにベルガンの動きは仲原の射撃統制によって誘導されていく


「左の翼の動きがさらに落ちたようね!距離を取りに来るわよ!左側からの弾幕集中!後ろか上に逃げたくなるくらい撃ち込んで」


その予言は直ぐに的中する。ベルガンは大量の発砲音に反応し、本能的に大きく上昇した。


「きた!今よ!自爆ドローン、右側の翼へ全速突撃!」


モノの数秒で接近していた自爆ドローンがベルガンの右羽根の根本で爆発する。



「ぐあああああ」


ベルガンが声を上げ、旋回するように落下していく。


仲原は手を緩めない。


「隊長!レールガンの使用許可を!」


すぐさま足立が許可を出す。


旋回しなが落下するベルガンの頭上で、ロングレンジレールガンの特殊弾が炸裂する。


「埼玉シェルターで待機中の自爆ドローン部隊。全機離陸して!ポイント126にある装甲車に追い込んで!大丈夫!もう飛べない。敵は足の速いチーターよ!」


特殊弾の影響で、移動範囲を大きく制限されたベルガンに対し、逃げ道をふさぐように自爆ドローンが囲いこんでいく。


2分ほどで、ポイント126へ追い込んだ。


そして、そこにある装甲車はTNTを満載しているトラップである。


装甲車に起爆装置はないが、自爆ドローンが衝突することで容易に誘爆した。


「装甲車トラップ成功!」


現場の士気も上がっている。


「これで終わりよ!自爆ドローン全方位から突撃!!TNTのダメージでもう速くは動けないはずよ!」


一斉にベルガンに向かって急降下するドローン群。


ーー勝った。


そう思った、その時。


「自爆ドローン命中!!いや、何だあれは?」


仲原が想定外の出来事にすぐに気づく。


「白い球体が、UFBの王を覆っています。まるで卵の殻のようです。自爆ドローンの爆風でも破壊不能。こちらの残機も減ってきました!」


仲原は指示を出す


「大丈夫!奥の手ってことでしょ!ここまで使わなかったということは、何か弱点があるのよ!ありったけの自爆ドローンで押し切って!」



次々とサーチのシールドに自爆ドローンが衝突する。


「駄目です!残機10%!ダメージ確認できず!」


「隊長!ロングレンジレールガンを再度使います!」


「座標を送れ!レールガンで焼き払う!」


通信兵が急いでドローン部隊から回収した座標情報をロングレンジレールガンに送る。


ーー先頭車両が残っていれば、自動でロックオンできたのに!


焦る仲原に無線が入る。


「UFBが上昇しています。現在は高度150」


「そんな!翼は確実に痛めたはず。回復した?」


「逃がさないで!残りのドローン全機攻撃!」


「UFBは離れていきます!どんどん加速中。近距離用の自爆ドローンでは爆薬が重すぎて追いつけません!」


仲原はそれでも引かない!


「戦車部隊、対地対空車両前進!移動射撃!撃ち落とせ!」


そこへ足立が割って入る


「足立だ!全軍追撃中止!」


「なぜですか!あと少しですよ!」


「あの状態から上昇した上に、あの速度で飛行している。想定を超えた状態だ。深追いは厳禁だぞ!落ち着け!」


そういうと、すぐに内閣の防衛省司令部に無線を取る


「大仲大臣。足立です。不測の事態が発生し、王を取り逃がしました。しかし、周辺のUFBは全滅。再度私有シェルターの救出を再開可能な状況です。ご判断を」


大仲からの返答は早かった。

2025年10月5日日曜日

友達の妹が俺にだけウザい(新)

 <あらすじ>

馴れ合い不要、彼女不要、青春のすべてを“非効率”として切り捨てる高校生・大星明照。

そんな彼の家には、なぜか親友の妹・小日向彩羽が入り浸っている。

ハイテンションな“ウザかわ女子”彩羽に日々振り回される中、塩対応の美少女・真白も現れ――?

思春期のど真ん中、ウザくて可愛い青春ラブコメディが幕を開ける!


<レビュー>

本作は、鈍感系の主人公・明照と、奔放なヒロインたちによる王道ラブコメ作品です。

1話を視聴した限りでは、作画の安定感が高く、ヒロインの描写には特に力が入っている印象を受けました。表情の変化や構図に工夫が見られ、視覚的にも楽しめるアニメに仕上がっています。


構成としては、主人公とヒロインの軽快な掛け合い(いちゃいちゃパート)と、物語を進行させる若干シリアスなパートが交互に展開される構成で、視聴者を飽きさせない工夫がされています。


また、メインヒロイン2人に加え、今後登場すると思われる複数のサブヒロインを含むハーレム構成となっており、ラブコメファンには刺さりやすい内容です。


このジャンルにありがちな「ご都合主義」や「唐突なイベント」もなく、全体的に設定が丁寧に構築されており、シナリオに説得力があるのも魅力だと感じました。


キャラクターの描き分けも的確で、髪型や髪色、話し方などの記号的要素をうまく活かし、登場人物の個性が一目で把握できる構成になっています。作画自体は比較的シンプルなスタイルですが、演出の工夫によって視認性と没入感を両立させているのは好印象です。


まだ第1話のみの視聴ですが、主人公の内面には「ただのハーレム系主人公」では終わらない要素もありそうで、今後の成長やシリアスな側面の掘り下げにも期待が持てそうです。


2025年10月2日木曜日

青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない(終)

 <あらすじ>

「驚いた。わたしのこと見えてるんだ」

どこかで聞いたような台詞。思春期症候群を“プレゼントしている”と語るミニスカサンタは、咲太に告げる。

「……わたしはね、霧島透子って言うの」

SNSで流行する予知夢、正体不明のネットシンガー、ポルターガイスト……

謎めいた現象とともに、心揺れる少女たちとの不可思議な物語が再び始まる。

思春期は、まだ終わらない――


<レビュー>

『青春ブタ野郎』シリーズ第2期がついに完結しました。

全体としては楽しめましたが、個人的には第1期ほどの完成度や感動には届かなかったというのが正直な感想です。


とくに、本作のもう一人のヒロイン「霧島透子」の正体が映画に持ち越しとなった点は賛否分かれると思います。

こうした構成は「続きが気になる」余韻を生む反面、視聴者に対する不親切さや商業的な引き延ばしと受け取られる可能性もあります。


■ それぞれの編の感想と違和感

今期は4人のヒロイン編で構成されていましたが、どれも設定や結末にややモヤっと感が残りました。


卯月編:思春期症候群が「空気を読めるようになる」という成長の一環のようなもので、解決しなくても良いのでは?と感じました。


赤城編:パラレルワールドの自分と入れ替わる設定は面白いですが、「体に落書きできる」仕組みの説明が不十分。


姫路編:恋愛感情が引き金で「相手のことを覗き見られる」設定はロジックの接点が薄く、ややこじつけ感あり。


寧々編:人格が変化したはずなのに、福山拓海と少し話しただけで一気に解決してしまい、描写の省略が気になりました。


■ 映画館への誘導構成と個人的考察


最終的に「霧島透子の正体は映画で」という構成になりました。

私自身はこのように視聴者の時間や興味を引き延ばすようなマネタイズ手法には疑問を感じます。


とはいえ、ここで少し考察を――

私の推測では、霧島透子の正体は「美東美織」ではないかと思います。理由は以下のとおりです:


作中で思春期症候群にかかっていない唯一の登場キャラ


寧々が「誰からも認識されない状態」だったにもかかわらず、美東だけは彼女を認識できていた


PVに登場する透子の髪色・前髪の形状が美東と酷似


不必要なキャラを何度も登場させないという作劇の原則から、彼女の存在は何らかの意味を持っているはず


思春期症候群がSNSや人間関係にまつわるものであることを踏まえると、彼女にも何か心の傷や願望がありそうです。


■ 総評


2期全体としては作画・演出・キャラクターの描き方において高い水準を保ち、「日常に潜む不思議」と「思春期の心の葛藤」を描くシリーズとしての魅力は健在でした。


ただ、終盤で重要な謎を映画へと持ち越すことで、作品単体としての「完結感」にやや欠ける部分があったのも事実です。


私としては映画には行かない予定ですが、本作の良さは確かにあり、シリーズ全体として見れば心に残る作品でした。