2025年6月24日火曜日

【小説】人類アンチ種族神Ⅴ《対決④ 救出》

 神災《じんさい》から27日が経過した。


前日の閣議決定でこの日、私有シュエルター救出部隊が設立された。


隊長は足立《あだち》 昭介《しょうすけ》である。


簡易的な結成式典で大仲大臣が壇上に立つ。


「みなさん。今回は急な招集に応じていただきありがとうございます。今、私有シェルターに取り残された人々は飢えや、渇き、燃料問題に苦しんでいるかもしれません。

 みなさんの、お力でどうか彼らを救出していただきたい。」


「ですが、私は私有シェルターの皆様と同じくらいに、自衛隊の皆様にも損害を出さないようにしていただきたい。命さえあれば、何度でも救出に挑戦できます。

 どうかこの私の思いも忘れずに、今回の任務にあたってください」


大仲が壇を降りると、副隊長・仲原《なかばら》香《かおり》三佐が代わって前へ。


「本隊は救出部隊であって討伐部隊ではない。指示を誤解するな」


そう釘を刺すと、兵器の編成を発表した。


「偵察ドローン ×20 機 + ドローン母艦(ベース)×1

 二七式自走レールガン ×3 / 二七式戦車(特装)×2

 特殊耐熱装甲車 ×2 / 耐熱輸送車 ×3

 二七式迫撃砲 ×1

 人型パワーユニット(二足歩行)×2」


「以上 8 種類 の最新装備、要員五十名。質問は?」


「すべて陸路で、航空支援は……?」


「航空機はこのエリアで計器異常が頻発する。原因不明。よって陸路のみ」と仲原。


この発表に隊員がざわつく


「27式ってどれも最新鋭じゃないか」

「人型パワーユニットは秘匿兵器じゃないか」

「国内に3台しか存在しないドローンベース(ドローンの母艦)が配備されるのか!」

「自分レールガンを見るの初めてです」


「質問はないな。次にルートを説明する。我々は埼玉シェルターのDゲートから地上へ出る。国道17号で荒川を渡り、池袋付近のシェルターの救出。救護者は輸送車に乗せそのままDゲートへ帰還する。

 昨日の索敵では、このあたりは怪物も少なく、本隊の戦力で制圧は可能と判断している」


「その後、輸送車の後退を荒川まで援護し、再び進軍、新宿、渋谷と行軍する。なお、この辺りは地獄のど真ん中だ。避けたいところだがシェルターも多い。一日目の行軍は以上である。質問はあるか?」


「つまり航空支援のない代わりに戦車と自走砲で進路を切り開いて進めと。その為の最新鋭兵器ですか・・・」


「そうだ。これらは1台1台が各地方の切り札として配置されていたものだ。大仲大臣が職権を行使して無理やり集結させたものだ。我が国の陸戦兵器の最新鋭はここに集結している。 諸君の働きにも期待している」


そういうと、中原はひな壇を降りた。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


6時間後


荒川付近


「隊長。偵察ドローンが怪物を発見しました。数7です」

「誘導レーザー照射。レールガンとリンクしろ」

「ドローン1、飛行中の目標の1体に照射しました。」

「よし、撃て!」


キィィィィン。電圧の高まる独特の音がする。その直後、ドンと音速を突き破る衝撃がはしる。


「弾着確認。目標を粉砕しました」


一撃で怪物を破壊する威力に隊員たちから思わず声が上がる。


「すごい」

「これはいけるぞ!」


「ドローン1、飛行中の次の目標に照射完了」


キィィィィン。ドン!


「弾着確認。この目もを粉砕しました。しかし、のこり5体は高度が低く、射線がとれません」


「ふむ。リンクを迫撃砲に切り替えろ」


迫撃砲は放物線を描くため、遮蔽物があっても攻撃が可能なのだ。


「ドローン1、地上の目標の1体に誘導レーザー照射しました。」


「27式発射!」


ボゥン


レールガンとは違い、低く火薬特有の爆発音が響く。


「弾着確認。・・・土埃が酷いな・・・」


数秒の沈黙があたりを包む


「目標粉砕!こちらの威力も十分です!」


「おおおお!!!」


主力兵器の活躍に部隊は沸いた。その時


「隊長!8時の方向より怪物接近!数2。はやい!接触まで20秒」


物陰からガーゴイルの奇襲を受ける。


「人型展開!!時間を稼げ!!総員車両に退避!!」


人型のパワーユニットが8時の方向を向く。しかし、携行サーベルを構える前にガーゴイルはユニットを強襲。


そのまま空高く持ち上げて50mほど上昇し、ユニットを地面にたたき落とす。


「うあああああぁぁぁ・・・・」

「ザザッザザッ」


一瞬で途切れた悲鳴と無線で、状況は伝播した。


落下した破片が、車両に退避しようとしている兵士を襲う。


その混乱を狙ったように、ガーゴイルが急降下し、混乱を極める部隊を蹂躙する。


ーー全滅する。


誰もが思ったその時、戦車の機銃が味方の死体ごとガーゴイルをハチの巣にする。


撃ったのは中原副隊長だ。車中で待機していた彼女は、味方の状況を即座に判断すると、2体のガーゴイルが近づいた瞬間を狙い

まとめて機銃で薙ぎ払った。


それを見た足立隊長は声を荒げる


「まだ生きていた隊員もいたかもしれないのに、何故撃った!1発目2発目は威嚇、3発目から当てろと習わなかったのか!」


「隊長!これは実践です。威嚇なんてしていたら全滅していました。確かに生きていたかもしれません。ですが全滅とどちらを選ばれますか?」


「どちらも選ばん!仲間の犠牲を出さずに敵を無力化する方法を考えるのが士官だアホたれ!」


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


同時刻・地下、防衛省指揮所。


地下司令室。モニターには赤い “重要事項” の文字。


大仲は無線越しの報告に目を閉じた。「生存 35うち負傷 11、死亡15 以上」


近くにいた官僚が思わず声に出る。


「出撃から6時間で、最新鋭機の精鋭部隊が・・・」


隣席の幕僚が囁く。「いえ、正体不明の相手です。想定より被害が少ない、という見方も……」


官僚たちの動揺に大仲が声を上げる。


「撤退。即時撤退だ!」


これまで以上に険しい表情に、誰もが大仲の心情を察し冷静を取り戻した。


この日、50名の隊員のうち15名を失い、救出作戦は荒川を渡ることなく失敗に終わったのであった。

2025年6月22日日曜日

片田舎のおっさん、剣聖になる(終) レビュー

 <あらすじ>

片田舎で細々と道場を営む中年の剣術師範、ベリル・ガーデナント。

かつて剣の高みを目指していた日々は遠い過去となり、今では落ち着いた暮らしを送りながらも、その鍛錬の成果によって「片田舎の剣聖」と呼ばれるまでの腕前に至っていました。


<レビュー>

物語のクライマックスでは、ベリルが王権と宗教の対立に巻き込まれ、自らの弟子と戦うことになります。そして、王から「聖剣」として認められることで、ひとつの区切りを迎えました。


本作の特徴は、いわゆる“無双系”作品でありながら、主人公ベリルが「偽りの謙遜」ではなく、「本心からの謙遜」を貫く点にあります。

彼は常に控えめでありながらも、「おっさん」としての決断力や人生経験に裏打ちされた落ち着きを随所で見せ、戦いを避けながらも必要な場面ではしっかりと行動に出ます。その姿勢が、作品全体に安心感と説得力を与えていました。


戦闘シーンは非常に緊張感があり、ただの力任せではない「技」と「知恵」による戦いが魅力的です。

相手の戦闘スタイルや癖、間合いを読み、状況に応じてスピードや体術を柔軟に使い分けるなど、ベリルならではの老練な戦い方が描かれており、「異常な身体能力」や「派手なスキル演出」で押し切るタイプの無双作品とは一線を画しています。まさに“静かな凄み”といった印象です。


また、恋愛要素や子育て要素といったサブストーリーもよく練られており、作品全体の味わいを深めていました。

特に、ミュイとの同居生活では、食事のシーンが幾度となく描かれ、それが二人の関係の変化を自然に伝えてくれました。

戦い以外のベリルの人間としての成長が表現されていたのも、本作の魅力の一つです。


恋愛的な描写としては、アリューシアがベリルに想いを寄せている様子が描かれましたが、ベリル本人は気づくことなく、アリューシア自身も「彼が幸せになるのであれば自分でなくてもいい」と語る場面がありました。彼女の本心がどこにあるのかは視聴者の想像に委ねられていますが、恋愛が大きく進展することはなく、余韻を残す形になっています。


なお、本作は2期の制作がすでに決定しているため、こうしたヒロインたちとの関係性については、今後さらに掘り下げられることが期待されます。


とはいえ、タイトルにもある「片田舎のおっさん、剣聖になる」というテーマは、1クールの中でしっかりと描き切られており、非常に満足度の高い締めくくりとなっていました。

ラストの静かな余韻も含め、心に残る作品だったと思います。


「派手さ」よりも「深み」で魅せる、静かな熱量に満ちた異色の無双作品でした。

ベリルという主人公の在り方が物語全体に芯を通し、見ごたえのある戦闘と人間味に満ちた日常描写が高い完成度で融合していました。

続編となる2期が、今から楽しみです。




2025年6月19日木曜日

機動戦士ガンダム Gundamジークアクス(一部レビュー)

<あらすじ>

宙に浮かぶスペース・コロニーで平穏に暮らしていた女子高生・アマテ・ユズリハ。彼女は、ある日現れた謎の少女・ニャアンと出会ったことで、非合法なモビルスーツ決闘競技《クランバトル》の世界へと巻き込まれていきます。

「マチュ」というエントリーネームを名乗ったアマテは、専用機「GQuuuuuuX ジークアクス」を駆り、熾烈なバトルの日々に身を投じることになります。


<レビュー>

本作は、1stガンダムの世界とは異なる“別世界線”を描いた新しいガンダム作品です。ファーストガンダムの象徴的な要素を一部受け継ぎつつ、まったく新しいオリジナル要素を大胆に組み込むことで、独自の世界観を築いています。


第1話はオリジナルの時間軸で物語がスタートします。戦争終結後の静かな始まりから、非合法のモビルスーツバトル《クランバトル》に至るまで、段階的に世界観を紹介していく構成です。しかし、この作品の真価が発揮されるのは第2話からだと感じます。


2話では、ファーストガンダム第1話の展開を大きく改変し、アムロがまったく活躍せず、ガンダムとホワイトベースがまさかのシャアによって鹵獲(ろかく)されてしまいます。さらに、ガンダムは赤く再塗装され、赤い機体として新たに登場しますが、直後に謎の現象により焼失。以降は、緑色に再塗装された旧ホワイトベースのみが“1stの名残”として残る形になります。


このような予想外の展開は、新規ファンにとっては斬新に映り、旧作ファンにとってもインパクトのある構成だと感じました。1話で大胆なオリジナル要素を示し、2話で懐かしいキャラクターと設定を登場させるという二段構えの構成が、非常に巧みに機能している印象です。


また、1stガンダムの名物キャラたちが、令和の高精細なアニメーションで当時と変わらないキャラクターデザインのまま登場している点も魅力的です。キャラデザインに関しては、本作オリジナルのキャラクターと、1stから継承されたキャラクターが明確に描き分けられており、まるで異なるアニメ作品のキャラが1つの世界に共存しているような、不思議な視覚効果もあります。


作画や演出も非常に力が入っており、展開スピードも目を見張るものがあります。次々に新しい要素が投入されるため、「これは本当に1クールで収まるのか?」と不安になるほどの情報量と広がりを感じさせる構成です。


設定の奥深さや勢力構図の緻密さから考えると、むしろ4クール(1年放送)でも問題なく構成できるだけの下地がありそうです。それほどまでに本作の世界観は広く、しかも物語の進行が早いため、視聴者は常に集中して物語を追わなければ置いていかれてしまうほどです。


今回のレビューでは、1話・2話を中心とした「さわり」の紹介に留めておりますが、間もなく迎える最終回を経て、改めて全体を通した総合的なレビューをお届けしたいと考えています。


『Gundamジークアクス』は、ファーストガンダムの伝統を引き継ぎながらも、大胆かつスピーディーにオリジナリティを展開していく、熱量の高いガンダム作品です。

ガンダムシリーズファンはもちろん、新規のアニメファンにも強くおすすめしたい、今期注目の1作です。



2025年6月18日水曜日

【小説】人類アンチ種族神Ⅴ《対決③ 野党vs野党》

神災《じんさい》から25日が経過した。


防衛省の大臣である、大仲《おおなか》 晴彦《はるひこ》は野党の攻勢に苦しんでいた。


ーー早く国民を安全な場所へ避難させないと。

ーーしかし、今や避難民は10万人になっている。


人口140万人の大都市東京。あの大災害で10万人もの人々が国有シェルターに避難できたのは、大仲大臣のスピードのある政策と的確な意思決定の成果である。

だが皮肉にも、この人数が避難先の選定に大きな影を落としていた。


ーー1万でも、2万でもいい。受け入れ先はないのか。


大仲は、あらゆる分野の受け入れ先と調整をしていたが、数万人の単位の避難先となると簡単にはみつからない。

そこへ追い打ちをかけるのが野党「帝都復権党」の掲げる「地上奪還論」だ。


SNSの巧みに使い、大仲を弱腰と揶揄《やゆ》し、世論の大きな流れとして「避難よりも奪還」という風潮が時間とともに増していた。


国会答弁では野党第一党である「立国平和党」が地上奪還案を野党内で提案を取りまとめ中という形で、帝都復権党の攻勢を抑えてくれているが、世論も地上奪還に流れていく中で苦しい国会が続いた。


この日、ついに帝都復権党の舞岡議員が立国平和党の制止を無視して切り込んだ。


「大仲大臣。もうすぐ災害からひと月が立ちますよ。いつまで国民を地下に閉じ込めておくつもりですか?」


大仲も切り返す。


「シェルター内の状況は安定しています。自警団方々の協力もあって治安もいい。食料も燃料も十分にあります。

 そのうえで、やはり県外への脱出も必要ですから、受け入れ先と調整をしています。

 まずは、医療が必要な方を率先して2日後に脱出できるように、受け入れ先の病院が必死にベットを準備してくれています」


先ほど調整がついた内容をカードして切りかえす。病院の確保について、この数日で調整できたことは、昼夜を問わない大仲と官僚たちの成しえた奇跡にも近い。


だが、舞岡は止まらない


「医療が必要な人を逃がす。そんなの当然ですよ。では大臣、その他の多くの避難民について、いつ、どのように脱出できるのでしょうか?」


「舞岡さん、まさに今、その調整をしています。シェルターには10万人もの人々がいるんです。安全にかつ、継続的に避難できる場所、避難ルートには慎重になるべきです。

 先ほど申し上げたように、シェルターは安定しています。国民の安全を考えるのも私の仕事だと認識しています」


「そうでしょう。10万人の避難なんて難しいのです。ですから大臣、私たち帝都復権党が最初から申し上げたように、地上奪還が最も現実的で優先すべき課題ではありませんか?」


すかさず立国平和党の津田が割り込む


「舞岡さん、その計画は立国平和党と帝都復権党で提案書を作成している最中です。ここで大臣に提案しても大臣も判断に困ると思いますよ。提案書をもって、別途議論しませんか?」


野党第一党の党首である津田の心証を悪くして提案書が遅れることを危惧した舞岡はトーンを落とした。


「わかりました。では、最後に一言だけ大臣に進言をして答弁を終えます。」


「大仲防衛大臣、自衛隊のレールガンは何のために開発したんですか?地下鉄の防衛に100両近い戦車は必要ですか?東京にある歴史的な建造物、私有のシェルターに取り残された人々は放置ですか?

 防衛大臣というのは避難誘導係でしょうか。国土を防衛しないんですか?以上です」


この発言は中継を聞いていた神災を受けていない地域を中心に、大きな共感を生んだ。


「弱腰大臣」「地上奪還」「自衛隊は国土を守れ」と地方の国民が声を上げ始め、大仲の活動に支障をきたすほどであった。


当初は形だけの「地上奪還計画案」を作成する予定であった立国平和党も、ある程度まじめに取り組まざるをおえない状況に追い込まれた。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


翌日の国会。



まずは、大仲が現状を説明。


続いて津田が地上奪還計画に切り込んだ。


「帝都復権党の皆様と協議している地上奪還計画についてお話します。大仲大臣はずっと県外脱出をお考えでしたが、私はこれが実際の避難民の皆様のご希望なのか、この点についてずっと疑問でした。

 普通に考えて、住み慣れた土地を捨てて知らない土地に避難をするのは誰だって心配があるのではないでしょうか?」


この切り出しに、帝都復権党が前の面りに声を上げる。


「そうだ!」

「シェルターの人々の気持ちも考えろ!」

「地上を奪還するしかないだろう!」


だが津田の奇策に絶句することになる。


「この3日間、3つのシェルターの避難民の方々に私を含め、立国平和党の議員が現地の声を聴いてきました」


「私は驚きました。どのシェルターの幅広い年齢層、しかも性別を問わない皆様が、大仲大臣をとても高く評価されているんです。皆さん避難生活に不満はあるそうです。ですが、それ以上に

 大仲大臣への感謝の気持ちが大きいと。我々の調査では他県への脱出に対して賛成75%反対20%無回答5%という結果です」


「また脱出するとしたらどれくらい待てるか?という質問には3ヵ月が一番多く、中には無期限でもよいという意見もありました。明日ですか。医療が必要な人が避難できれば、健康な大多数の方の避難には

 少し時間がもらえるということが分かりました」


思わぬ援護に大仲は内心驚いていた。野党第一党の津田はいわば与党で大仲の最大のライバルであった。

だが、津田も単なる擁護ではおわらない。


「ただ、地上の奪還に関しては、期限を定めずにしてほしいという声が80%以上ありました。ですから、私は大仲大臣の進める脱出計画と、平行して地上奪還案も時間をかけて精査していくことで

 確実性があがると思います。どうですか大臣?」


事実上の地上奪還計画の「延期」である。


この発言に舞岡は声を上げずにはいられない。


「津田さん。何を言ってるんですか?早々に地上を奪還しないと、私有シェルターの人々が死んでしまいますよ!津田さんまで弱腰でどうするんですか!!」


無断発言に議長から注意を受ける舞岡を横目に津田が手を挙げてマイクに立つ。


「私有のシェルターについては、確かにそうですね。私も少し配慮が足りておらず、捕捉します。地上の奪還と私有のシェルターの救出は別軸で進める方向で大臣には考えていただきたい。

 私有ですので、何日分の備蓄があるのか。耐久性の詳細も分かりません。国民の救出は自衛隊の任務であり、これは流石に大臣にも早急にご対応いただきたいと思います」


こうして、地上奪還計画は「延期」、救出計画のみ早急に実行というシナリオが成立した。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


帝都復権党 控室──本会議終了直後


「舞岡さん!なんで延期に同意したんですか!!」


帝都復権党のNo2の議員が早々に詰め寄った。


「せざるを得ない!反対したら津田は必ずいうぞ ”帝都復権党の支持基盤である富裕層を助けたいだろ”ってな」


「そんなこと全国中継で言われたらウチも、支持者も大損害だ。うちらの都合で自衛隊を動かすように受け止められたら選挙も大敗決定だ!」


その言葉に帝都復権党の議員も、苦々しい顔で見つめあった。


ーーこの代償は必ず払わせるぞ。津田ぁぁ


舞岡の怨念が控室にこだまするようだった。


2025年6月17日火曜日

【小説】人類アンチ種族神Ⅴ《対決② 野党の追及》

神災《じんさい》から20日が経過した。


防衛省の大臣「大仲 晴彦《おおなか はるひこ》」の大胆でスピード感のある政策の効果もあり、東京の生存者は私有のシェルターに避難している富裕層と、国有シェルターに避難している一般人。そして政府の閣僚や事務次官があつまる内閣シェルターに分かれて生き延びていた。

 

ガーゴイルは東京23区を中心に無数に地上と上空にはいかいしている。そんな状況でも、地下鉄に関しては自衛隊によって治安は守られ、申請すればシェルター間の往来も許されていた。


目先の脅威が去ると、大仲大臣への野党議員の追及が本格化してきた。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


内閣シェルターにて答弁が行われていた。


質問しているのは、野党第一党「立国平和党」の党首「津田 一郎《つだ いちろう》」だ。


「まずは大仲大臣。スピード感のある避難対応について、私個人として非常に評価すべきだと感じております」


「その前提でお話ししますが、大切なことは持続可能であることであります。各シェルターにあと何日くらいの食料、燃料が残されているのかご回答ください」


大仲はまっすぐに手を挙げると、マイクに立つ。


「その件について、何日という期限はお伝え出来ません。なぜなら、食糧も燃料も日々、自衛隊の皆様、そして民間の方々が補充していただいており、変動しているからです。一つ言えるのは、その補充がすべて止まったとしても最低10日間の備蓄は各シェルターにあります。食料が必要としている人に食事を届ける。これについてはどのシェルターについても十分に対応可能であります」


再び津田が質問する


「では大臣、埼玉のシェルターも十分に備蓄があると。あのシェルターは一度破棄されたものを修繕して使用しています。食料も燃料も全く備蓄されていなかったと思いますが、改善されたと認識してよいですか?」


「はい。埼玉については当初こそ食糧が不足気味ではありました。しかし埼玉の商社の方、農家の方、一般の方から本当に多くのご支援をいただき、今では他のシェルターと同等の備蓄を行っています。これには大臣として、協力していただいた全ての方に感謝を申し上げたいと思います」


質問者の津田は、わずかに笑みを浮かべ少しうなずくと質問を終えた。備蓄状況については津田も事前に知っていた。これは"あえて"追及という形で大臣に答弁を迫り、国民にシェルターの状況を知らせ、安心させる津田流のパフォーマンスであった。


次に野党「帝都復権党」の「舞岡 幸三《まいおか こうぞう》」の質問だ


「大仲大臣はスピード感を重視したといいますが、その結果として地下鉄の駅に向かう途中に多くの国民が命を落としています。自衛隊を地上に派遣して、地上にも避難経路を作らなかった責任をお聞かせください」


再び大仲が回答する


「大臣である私が、決断し権限の下でおこないました。当然責任は私にあり、その一つとして今、説明責任を果たしています」


舞岡は声を大きくして追及する。


「では説明してください。見殺しになった国民への責任はどう取られるおつもりか?」


この攻撃的な質問にも大仲は屈しない。


「見殺しといいますが、どこから避難してくるのか予測もできない状況でした。その状態でむやみに自衛隊を地上に出せば、地上は危険な状態ですので、自衛隊にも被害がでる恐れがありました。それに、これは後から自衛隊員から聞いて驚いたのですが、自衛隊の皆さんは地下鉄の入り口で待機して、避難民を見つけた場合は、危険を顧みず地上へ出て地下鉄へと誘導したそうです。私は、防衛省の担当大臣として、彼らを代表しているわけですから、彼らの勇気ある行動を称賛《しょうさん》することはあっても、見殺しにしたという認識には断固否定します。」


舞岡はそれでも勢いを止めない


「あなたが地下鉄へ避難を促したばかりに、隠れていた場所から移動して死亡した人も沢山いる。それを称賛するなんて理解できません。では質問を変えます。リスクを負ってシェルターに避難した人々ですが、ずっとこのままとはいきません。地上の奪還はどうされるお考えですか?」



「舞岡さん、奪還というのはつまり自衛隊を地上へ出す計画があるかということでしたら、計画はありません。シェルターの方々は時期を見て県外に脱出していただくつもりです。今、一番大切なのは地上の奪還ではありません。生き残った人々の命であります」


「それはご冗談ですよね?大臣の発言は未曽有の災害に直面したら、東京を捨てるということですよ?東京に資産を持つ人、思い出のある人、なによりもこの国の首都をテロリストに明け渡せというのでしょうか?」


この言葉に呼応するように「帝都復権党」の議員たちが声を上げる


「そうだー」

「首都だぞ、首都!」

「皇居を放棄するんですか!」

「無責任すぎるぞ!」


一気に過熱する議場。


「静粛に!」


議長が静止をかけるが「帝都復権党」のヤジは止まらない。


すると先ほどの津田が手を挙げてマイクに立った。


「野党を代表して申し上げます。地上の件ですが。これについては私も思うところはあります。今、「立国平和党」の党内で提案をまとめています。よろしければ「帝都復権党」の皆様もご参加いただき、作成しませんか?」


野党第一党と協力を組める。この美味しい話に「帝都復権党」は直ぐに乗った。


「では、大仲大臣、地上については我々「立国平和党」と「帝都復権党」で提案を少し協議のお時間をいただきますが、お出ししますので、大仲大臣だけではなく、与党の皆様でこれを吟味していただければと思います」


こうして、議会は何とか終了したが、「帝都復権党」を中心とする地上奪還派が勢いを持つ結果となってしまった。



◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


立国平和党 控室──本会議終了直後



「……代表、いまの発言、党の了承は得ていませんよね?」


控室の空気が一瞬凍る。

言ったのは、一期目の若手議員・矢部(やべ)だった。

不安と苛立ちがまざりあった声。周囲の同僚も、どこか同調するように目を向けている。


津田は、テーブルの上の書類を手に取ると一瞬矢部を見て、すぐに視線を落とし椅子に腰を下ろす。

そして、ゆっくりと水をひとくち飲み、テーブルに戻した。


「……まぁ。これも政治だよ。」


それだけを言って、視線を矢部に返さない。

控室の空気がまた、ざわつく。

その沈黙を断ち切るように、ひとりの年配議員がゆっくりと立ち上がった。


「矢部君、そして君たちも。あの発言を“地上奪還の開始宣言”と受け取ってはいけないよ」


「……でも、あれじゃまるで、我々も計画を持っているように──」


「“持っているように見せる”必要があった、ということだ」


矢部が困惑を露わにすると、年配議員は歩を進めてそっと手を肩に置いた。


「舞岡議員は、党派を越えた復興協議の場を“自分の理想を語る場”にしていた。

 津田代表は、ああいう場で感情を煽られて政治が停滞するのを、何よりも恐れている。

 現場ではまだ自衛隊が必死に活動を続けている。時間が、命を左右することもある。そういうことだよ」


「でも……じゃあ、地上奪還は、やるんですか? 代表の言葉を信じた国民が──」


「“計画書”は作るさ。だが、中身のページは白紙でいい。

 ページ数と予算目録だけ、派手にしておけばそれで良い。

 あれは“見せる計画”だ。“やる計画”じゃない」



若手たちは黙り込んだ。

その言葉の重みを、それぞれの心で咀嚼《そしゃく》していた。


年配議員は落ち着いたトーンで咀嚼《そしゃく》を助ける。

「理想を語る時間が、現実を壊してしまうこともあるということだよ」



机の端で、津田は依然として書類に視線を落とし、何も言わなかった。

ただ静かに、一行ずつ赤ペンを走らせていた。

まるで、騒がしさなど聞こえていないかのように。


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編集後記:明日、定例外更新で対決③を掲載します。

2025年6月15日日曜日

片田舎のおっさん、剣聖になる 7〜11話(一部レビュー)

<あらすじ>

片田舎で道場を営むしがない剣術師範の中年男、ベリル・ガーデナント。

剣士としての頂点を目指した日々は遠い昔のこととなり、長年の鍛錬によって極めたその剣の腕は、今や“片田舎の剣聖”と称されるほどの領域に達していた――。


<レビュー>

今期の注目ファンタジー作品のひとつです。

前半では、年配の剣士である主人公が名だたる剣豪や魔法使いたちと戦い、圧倒的な強さを見せつける「無双展開」が続きました。しかし後半では、娘のような存在との同居生活が始まり、要人の護衛や国策への協力など、剣の実力だけでなく「剣聖」としての社会的な責務も担うようになってきました。


この手の無双系作品は、最初から最後まで力押しで進むパターンが多いのですが、本作では世界観を丁寧に広げながらも、主人公の「剣士としての強さ」という軸をぶらさずに物語を進めており、構成の巧みさを感じます。読者を引き込む力も十分にある作品だと思います。


今期のラストは、隣国における「宗教団体」と「国王軍」の政権争いに巻き込まれ、なんと宗教側の指導者が主人公の元弟子だった――という衝撃の展開で終わりそうです。


また、伏線として騎士団の女団長との恋愛の可能性や、娘の成長、魔法系勢力との戦いなどが残されたままなので、ぜひ第2期でこれらのエピソードを描いてほしいと期待しています。


なお、本作ではまだ主人公が正式に「剣聖」と名乗る場面は登場していません。ラノベアニメでは「とりあえず1クールやって終わる」作品も多く見られますが、できることなら最後まできちんと描き切ってほしいと思わせる完成度の高い物語です。


CGを上手に活用してはいるものの、アクションシーンが多く作画の負担も大きそうなので、仮に2期が決まったとしても、制作にはある程度の時間がかかりそうな印象を受けます。


とはいえ、時間がかかってもぜひ続きを観たいと思わせるだけの魅力があります。


単なるバトルものではなく、恋愛や日常も丁寧に描かれているため、ファンタジー作品がお好きな方には幅広くおすすめできるアニメです。




2025年6月12日木曜日

活動レポート 2025年5月

管理人の緑茶です。こんばんは!

 

今回は先月の活動レポートとなります。


【実績】

 

 作家関連のお仕事は・・・・0(ZERO!)

 今月も安定の0!(ZERO!)でした。


【雑感】

『レビューの話題』------------------

アニメ、ドラマ、ゲームと幅広いジャンルを掲載しました。特にドラマのレビューは難しさを痛感しています。アニメは絵や演出から制作者の苦労が想像できますが、一方不慣れなドラマについては役者のセリフや演技が台本通りなのかアドリブなのか判断しにくく、カメラワークもアニメとは異なる技術が評価されるのでレビューに苦戦しています。それらの点で、ドラマをレビューするにはもっと勉強が必要だと感じました。


『DQXの話題』-------------------

竜術士4人+海賊(応援要員)構成でVer.3フィールドにいるイーギュアなどの強敵に挑みました。すべてがドラゴラム一択のため、引ければ勝ち、引けなければ負けのシンプルな構成です。海賊の応援で必殺チャージ率が25%ほど上がり、3人以上がドラゴラムを放てる場面がありました。ただし全滅すると復帰に手間がかかるため、ネタとしては面白いのですが繰り返しにはあまり向いていない点もあります。


『Youtubeの話題』-----------  

小説連載が始まり視聴時間が減りました。主にUnreal Engine 5の技術系動画をチェックしています。ただし、中級以上の内容になると前提知識がある方向けになりすぎて、初心者にはついていきにくくなる印象です。一方で「みなみよつば」さんのRPGツクールMZ解説は初心者を常に意識していて非常に参考になっています。


『小説の話題』-------------------

「人類アンチ種族神」の連載を開始しました。数年かけた構想で、導入部は残虐描写を多めにしています。プロットでは性的描写も検討しましたが、今回は残虐描写に絞りました。2話完結型の予定でしたが、V話以降は少し長めの展開になります。人類側の描写も増え、読みやすくなると思います。


『その他の話題』-------------------

6月に入り、夏野菜の植え付け後半戦です。プランターは大きめにして、水分が飛びやすい季節に備えましょう。虫被害なら葉裏のチェックを忘れずに。手袋を使えば刺される心配も軽減できます。家庭菜園は物価上昇の対策にもなりますので、このタイミングで始めてみてはいかがでしょうか。


以上、5月の活動レポートでした。

今月もお付き合いいただき、ありがとうございました!


これからもズズズイッとよろしくお願いいたします!!

2025年6月10日火曜日

【小説】人類アンチ種族神Ⅴ《対決① 防衛大臣》

神災から10日目、都心の地下シェルターで政府の対策会議が行われていた。


このシェルターは都内5か所にある、他のシェルターや他県のシェルターと光ケーブルで接続されていた。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


その日、防衛省の大臣である真田 権蔵《さなだ ごんぞう》が国民に向けてメッセージを発信していた。



既にスカイツリーが機能していないため、放送は神奈川や大阪といった電波塔を持つ地域を中継して

全国民へ発信している。



真田は淡々と呼びかける。


「みなさん、落ち着いて行動してください。現在東京は謎の怪物。えー。我々はこれを“未確認飛来生物(UFB)”と呼んでおりますが、えー。現在情報を収集しており、対策を検討する準備の話し合いを始めようとしております。えー。東京都全域にUFBが確認されており、えー。都民の皆様におきましては、えー。お住いの地方自治体からの指示に従い、えー。最善の行動をとっていただきますよう、お願いいたします」


この放送はインターネットにもアップされ、SNSを中心に実質ゼロ回答と非難を浴びた。半日後に再度放送が行われ真田大臣から釈明はあったものの、その内容が「未曽有の状況であり、各人の判断が最良と言わざるを得ない」というもので、その発言が無責任すぎるとの批判をあおり、翌日には辞任に追い込まれた。


この有事に、担当大臣の辞任は政府にとって大きな打撃となり、総理は元自衛官という異色の経歴をもつ大仲 晴彦《おおなか はるひこ》を急遽後任に抜擢した。


議員としては、まだ若い48歳の大臣の誕生である。


大仲大臣は翌日には就任会見を開いた。


「昨日より防衛省の大臣に任命されました、大仲 晴彦《おおなか はるひこ》です。現在、我が国は危機的な状況にあります。昨日の就任から、つい先ほどまで夜を徹して事務方と優先すべき事項を話してきました」


「結論を申し上げますと、まずは国民。とくに被害の大きい首都圏で、今、この瞬間も救助を必要としている人を迅速に助けることが必要です!」


「経験のない国難に対し、軽率に動くべきではないという意見もあると思います。しかし私は大臣としてスピード感をもって対応することが大切だと思います」


「そこで、国の所有するシェルターを解放します。シェルターは2か所、神奈川県側と千葉県側にあります。詳しい場所は防衛省のホームページに、このあと、1時間後には掲載できる見込みです」


「シェルターの解放時期ですが、これも自衛隊のみなさんと、一部民間の皆様のお力でなんとか12時間後には、第一陣としてケガ人や高齢者、妊婦など緊急性がある方を各シェルターで10,000名ずつ受け入れられる見込みです」


「また、第一陣受け入れ後、6時間程度の準備を経て第二陣として、女性と子供を各シェルターで10,000名ずつ受け入れます」


「男性の皆様には大変申し訳ないのですが、まずは体力の少ない人々を優先することにしました。この件については私が大臣としての権限と責任をもって決断いたしました」


「男性の皆様には、少し遠いのですが埼玉県側に現在急ピッチで使用されていなかったシェルターの再整備を進めております。こちらは、地元の建設業者さまのご協力で、すでに作業が始まっており24時間後には解放できる見込みです」


「埼玉県側のシェルターの広さは十分にありますので性別、年齢問わず無制限に受け入れる準備を進めております。家族が離れ離れになるのがどうしてもつらい方は、ご家族でこちらのシェルターに避難してください」


「次に避難方法です。都内の地上部はUFB・・・みなさんの間ではガーゴイルと呼ばれる怪物が、数多く目撃されております。そのため、比較的安全な地下鉄に自衛隊を展開し、地下鉄網を避難ルートにできるよう昨晩から、地下鉄内のガーゴイルの排除を行いました。すでに幾つかのルートで安全が確保されましたので、まずは最寄りの地下鉄へ行き、自衛隊の指示に従っていただければ地上よりも数倍安全にシェルターまで移動できるように調整いたしました」


「医療体制や、食糧問題、抜本的なUFBへの対応などの課題はありますが、まずは緊急を要する方へスピード感を持った避難を優先したいと思います」


「以上を持ちまして就任会見といたします。今、私がお伝えした内容はこの後すぐに文字に起こして、防衛省のホームページおよび、私のSNSでも発信いたしますので、聞き取れない部分などございましたらご確認ください。」


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


一礼して、大臣が壇上を下りようとすると、リモート参加の記者の一人が声を上げた。


「ヨウツベ新聞の田中と申します。大臣、避難優先順位についてですが、“女性と子供”を第二陣に含め、“健康な男性”を後回しにするとの方針は、性別による明確な線引きと受け取れます。これは現代の価値観において不適切ではないですか?」


会場が一瞬ざわつく。


だが、大仲は間髪入れずに返答した。


「不適切かもしれません。けれど、私は“助けられる命”を先に助ける決断をしました。議論している時間で、誰かが死亡するかもしれない。それが今の東京です」


「しかし、その線引きに納得できない男性もいます。命の価値に差をつけたと批判される可能性もありますが?」


「批判は承知の上です。命の価値に差をつけたわけではありません。体力、移動力、環境耐性を総合して、現時点で危険度が最も高い層を優先した。それだけです。全員を守れるよう尽力します。が、段階的対応が必要です」


別の記者がマイクをONにする。


「エックス新聞の今村です。地下鉄網の避難ルートは画期的ですが、すでに停電している路線もあります。通気や照明などインフラの確保はできているのでしょうか?」


「限界はあります。ただ、自衛隊が先行してポータブル電源と投光器、空調ファンを展開しています。完璧ではありませんが、屋外よりは遥かに安全です」


その直後、会見場の隅に控えていた防衛省事務次官が静かに近寄り、声を低くして耳打ちした。


「大臣、よろしいでしょうか」


「……ああ、何か?」


「このまま細かいシェルターの話に及ぶと、まだ調整中で実現性の乏しい部分に関しても言質を取られてしまいます」


「……わかってる。けれど、もう言った。やるしかない」


「大臣、それは政治的には無謀かと」


大仲は、しばし無言で次官の目を見つめて、少しだけ語気を強めた。


「“政治的に正しい”だけじゃ、子供は守れない。君も、それくらいはわかってるだろ?」


事務次官は目を伏せ、何も言わなかった。


この会見は国内に賛否を巻き起こした。


「政府は都民しかみていない」「地下鉄の駅に行けたら苦労はしない」といった否定的なものから「国有シェルターの稼働には前大臣が6か月かかると言っていたのにすごい」「地下鉄に戦車がいた。心強い」など肯定的なものまでさまざまな意見が飛び交ったが、この発言の時間よりも早く、実際には各シェルターに多くの人々が本当に避難ができる状態になり、大仲大臣は一定の評価を得るに至った。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


一方、シェルターの会議室では、野党関係者や他省庁から派遣された幹部たちがざわついていた。


「……勝手に決めすぎじゃないか?」


「確かに早いが、我々の確認もなく隠し玉の埼玉シェルターを公表するとは」


「そもそも“無制限に受け入れる”など、政治的なアピールにしても言い過ぎだ」


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


だがその夜──


大仲のSNSには、地下鉄から避難した家族の感謝が次々に投稿された。


「赤ちゃんと一緒に地下鉄へ向かったら、自衛隊の人が助けてくれました」

「息子がケガをしていたのですが、担架でシェルターまで連れて行ってくれました」


その一つひとつの投稿が、大仲の表情を引き締める。


「──責任は取る。全部、俺が引き受ける」


誰にも聞かれないように、彼はもう一度自分にそう言い聞かせた。

2025年6月8日日曜日

【スイッチ2】マリオカート ワールド(レビュー)

奇跡的に抽選に当選し、初日からマリオカート ワールドをプレイできたので

自慢・・・もといレビューします。 

<概要>

2025年6月5日にNintendo Switch 2と同時発売された『マリオカート ワールド』は、シリーズ初のオープンワールド形式を採用した最新作です。最大24人でのレースや新モード「サバイバル」など、多彩な要素が追加され、従来のマリオカートとは一線を画す進化を遂げています。


<レビュー>

本作は、任天堂のフラッグシップタイトルとして、期待を裏切らないクオリティを誇っています。どの場面を切り取っても楽しさが溢れており、キャラクター選択やオンラインマッチング中、さらにはプレイ中も常にワクワク感が持続します。


特筆すべきは、周回プレイの中でも新たな発見がある点です。多彩なギミックやルートが配置されており、周回するたびに新しいルートを見つけたり、見た目が変わるアイテムを入手して使用可能なキャラクターが増えたりと、ユーザーを飽きさせない工夫が随所に見られます。


また、サバイバルモードでは、24台でのレースが可能となり、チェックポイントごとに下位の数名が脱落していく形式が採用されています。この新しいモードは、プレイヤーに緊張感と興奮を提供し、何度も挑戦したくなる魅力があります。


グラフィック面でも、Nintendo Switch 2の性能を活かし、美麗な映像と滑らかな動作を実現しています。特に、天候や時間帯の変化がリアルに表現され、臨場感あふれるレース体験を提供しています。


マリオカートというタイトルを消費するのではなく、さらに魅力を追加して付加価値をつけ、タイトルのもつ総合力を上げていく戦略は、ほとんどのソフトメーカーがビックタイトルの作品名を消費して売り上げを上げていく中で真逆の制作方式を取れるのは任天堂という組織の強みだろうと思います。


『マリオカート ワールド』は、シリーズの伝統を守りつつ、新たな要素を大胆に取り入れた意欲作です。オープンワールド形式や新モードの追加により、これまでのマリオカートとは一味違った楽しみ方が可能となっています。シリーズファンはもちろん、新規プレイヤーにもおすすめできる一作です。




2025年6月5日木曜日

【ドラマ】ジョフウ~女性に××××って必要ですか?~(終)(レビュー)

<あらすじ>

ひょんなことから“パラディーソ”という女性用風俗店の内勤として働くことになったアカリ(山崎紘菜さん)。最初は男性セラピストと女性客のマッチングに悪戦苦闘しながらも、「セックスレスを解消したい」「彼氏を含めて身の回りの男性に疲れてしまった」など、多様なお悩みを持つお客様に寄り添っていきます。個性豊かなセラピストたちと協力しながら、アカリ自身も少しずつ成長していくお仕事ドラマです。


<レビュー>

原作が未完のため、ドラマも完全な結末には至らず、「俺たちの戦いはこれからだ」風のエンディングとなっていました。


テーマが「女性向け風俗」ということで、地上波ドラマとしてはかなり攻めた内容ですが、アダルトビデオのような露骨な描写ではなく、ムードや言葉、心のつながりに重きを置いたシーンが多く、感情の流れに沿った丁寧な描写が印象的でした。演出は繊細で、女性視点から描かれていることもあり、官能的でありながらも安心して観ることができる作りになっています。


主演の山崎紘菜さんは、どこか新垣結衣さんを思わせる柔らかく自然な演技で、重くなりがちなテーマを明るくコミカルに包んでくれました。男性キャスト陣がイケメン揃いという中で、彼女がヒロインとしての存在感をしっかり放っていたのも見どころの一つです。


この作品は「女性向け風俗」を描いたものでありながら、むしろ男性にもおすすめしたい内容でした。というのも、基本的に女性視点で描かれているため、恋愛や接し方に不安を抱える男性にとって、異性との関係を考える一つの参考になるかもしれないからです。


特に最終話では、アカリが恋人との別れに心を病み、自らサービスを利用することで「風俗=性サービス」だけではない、心のケアとしての役割を強く印象づけました。この描写によって、女性風俗に対する偏見を和らげるきっかけにもなると思います。


また、全体を通して、「風俗に甘えすぎない」「距離感を大切にする」「ハマりすぎない」といったメッセージも込められており、利用を肯定するだけでなく啓蒙的な一面もきちんと描かれていました。


脚本は原作者のヤチナツさんの意見も反映されており、コミカルな作風です。しかし実際に女性風俗利用者への取材を重ねて制作されたこともあって、現実的かつリアルな人間ドラマとして描かれています。


タイトルから敬遠されがちな作品ですが、性に対する先入観を一度外して観てみると、「人との距離感」「心の癒やし」「働くことの意味」など、深いテーマが込められた良質なヒューマンドラマだと感じました。性別を問わず、18歳以上の方には一度観ていただきたい作品です。

※一定の性描写はありますので、18歳未満にはお勧めしません。



2025年6月3日火曜日

【小説】人類アンチ種族神Ⅳ《復讐ⅱ 前編・後編》(6/10:後編を追加)

弁護士である私は、あの日の記憶を繰り返していた。



——神災。

空が裂け、黒いモヤが都市を包み、人々が焼かれ、逃げ惑い、倒れた。


あの日、私は二人の国会議員とともに、訴訟に関する打ち合わせをしていた。

騒動が始まるとすぐにSPが議員を近くの国有シェルターへ誘導を始めた。

同席していた私もこのシェルターへ同行を許され、命を拾った。


シェルターは外見は大きめの雑居ビル。地上部が3階あり屋上にはヘリポートもあった。

3階は「通信室」と「ヘリの備品の格納庫」、2階は「いくつかの会議室」と「大ホール」、1階は「侵入者に備えた検疫施設」

地下は5階もあり、こちらが本命らしい


このシェルターですべての生活が完結する、国有シェルターの1つだった。


本来なら、この施設は国会議員とその親族のみが入れる。彼らの指紋が登録されておりパスワードを入力すると

その指紋を読み取り、指紋とパスワードが一致するとシェルターの扉が開く仕組みだ。


私が到着したときには、議員の親族が数名程、先に避難していた。


その中に「婆様」と呼ばれる老婆がおり、どうやら議員の母親で議員を含む親族の仕切り役として

議員以上に厚遇されていた。


やがて、続々と議員の他の家族もやってきた。その頃はまだ秩序があって、議員とその家族以外の人間

つまり私のような部外者も、同行していればシェルターに入ることができた。


だが、生存者の救助で扉を開けるたびに怪物に襲われる危険があり、二日目からは完全に閉鎖された。


そして議員の「婆様」を頂点とする一族は当然のように、私やSPたち、そして初日に逃げ込んできた数十人の一般人を下僕のように使い始めた。


私は不安になって懇意にしていた議員に尋ねた。

「もし私の家族がこの近くにいたら、シェルターに入れてもらえるだろうか?」


シェルターの収容定員は250名。200人以上の余裕があった。

だが返答は、冷たく「No」だった。


扉を開ければ怪物が入り込む可能性がある。一般人のために銃弾の浪費は許されない——それが、彼らの線引きだった。

この議員の汚職を法廷で無関係の人物に擦り付け、助けてやった恩は感じていないらしい。


次に、一族を束ねる「婆様」に同じことを訊いた。

彼女は考える素振りもなく「開ける利点はない」と言い捨てた。


私は「婆様」にも過去に恩を売っていた。彼女の孫が半グレを殺したとき、「事故死」として無罪を勝ち取った。だがその記憶もないらしい。


——恩など、もはや価値を持たない。私は確信した。


三日目、老婆の指示でシェルター内の区画整理が行われた。

危険な地上部を一族以外の避難区域とし、私たちはそこで寝起きすることになった。


地上階には空調もなく、建物の外では怪物の咆哮と人々の断末魔だけがこだましていた。 SPすらも動揺を隠せず、恐怖と憔悴《しょうすい》で暴動が起きるのは時間の問題だった。


そのとき、衛星通信が奇跡的に信号を拾い、携帯電話が使用可能になった。監視当番だった私は、真っ先に妻や愛人にショートメールを送った。

「麻布の金物センターへ来い。シェルターがある」

それだけだ。


すると、妻と、数人の愛人から返信があった。

それぞれ、自分の位置とシェルターまでの所要時間が書いてあった。概ね数時間後に到着するようだ。


だがこのままでは、到着してもシェルターの扉は開かれない。

そこで私はあるSPに話を持ちかけた。

「このままでは恐怖で暴動が起きる。SPであるお前たちは議員やその一族を守らねばならない。だが相手は数十人の一般人だ。混乱すれば、SP側にも死傷者が出る。お前たちはそれでも命令に従って死ぬのか?それを避けるためには、一族から主導権を奪うしかない」


SPは少し相談すると。

「報酬次第では、協力してもいい。先生のような“交渉のプロ”が指揮を執るなら、むしろ安心できますよ」

と快諾した。どうやら、弁護士として鍛えた交渉術が功を奏した。


——こうして私は、SPを掌握した。


議員たちは、SPに騙されて地下へ誘導され、監禁された。 彼らは知恵も話術もあり、万が一この場を切り抜ければ、SPたちを再度掌握し、私の支配を覆しかねない——その危険性があった。


老婆も同様に排除すべき対象だった。

一族の象徴としての立場をもち、彼女の言葉は民衆の心を一つにまとめる力を持っていた。

私がこの場所を制圧し、王として君臨するためには、彼女の存在はあまりに大きすぎた。



しかし、老婆は疑り深く応じなかった。

時間が過ぎる中で、先に監禁した議員の姿がみえないと、異変を察知しはじめた。

徐々に「婆様」とその一族がざわつき始める。


ーー駄目だ。話術では「婆様」に勝てない。それならーー


私は武力制圧を決断した。 「老婆の足を撃ち抜け。護衛の男も関節を外して無力化しろ」


乾いた銃声。悲鳴。混乱。


空気は一瞬にして塗り替えられた。

それは、支配者の交代を告げるようだった。


だが老婆は、まだ声をあげた。

「冷静に!我らは名門の血族。選ばれし者だ。恐怖に屈するな——誇りを持て!」


その言葉に、一族の目が輝きを取り戻しかけた。


私は強い焦りを感じた。ここで老婆に場を支配されれば、再び一族が団結してしまう。


「ババアを殺せ。婆様の一族の男は全員射殺しろ」


SPは淡々と動いた。

あのうるさい「婆様」の額に丸い穴が開くと、目から赤い液体が噴き出した。

同じように、一族の男たちも、あっという間に崩れ落ちた。


「死体は外に捨てろ。議員の目に触れさせるな。ババアの一族の女や子供も全員目撃者だ。シェルターの外へ追い出せ」


反論の声はなかった。


扉の前で、一人の少年が振り返った。

鋭い眼差し。殺意に満ちた目。


その母親が同じ目をして吐き捨てた。 「婆様の無念は忘れない。生き延びて、お前の家族、友達、すべてを皆殺しにしてやる」



この目を法廷で何度か見た。狂人の目だ。失うことを恐れず、冷静に計画的を練って目的達成のために手段を択ばない狂人の目。


——直感が危険信号を送る


私は直ぐにSPにインカムを通じて指示を出した。


「外に出たらすぐ殺せ。見逃すな」


数時間後、私の家族が次々とシェルターに到着した。もちろん外の死体は怪物に殺されたと説明した。


家族を救出し、排除すべき一族がいなくなったあと、私が最も警戒すべきは監禁している議員たちの反撃だと考えていた。

彼らは言葉で人を操る力を持っている。もしSPたちが議員側につけば、この王国の支配は崩れる。そうなれば私の家族が危険だ。

その危険を未然に防ぐため、SPたちには遠隔操作式の小型爆弾を首に装着させた。


首に爆弾を装着されたSPたちは、ただ黙って頷いた。


連絡が付いたすべての家族が到着した頃、私はようやく地下1階にあった応接室の高級なソファーに腰を下ろす。


——俺の王国が、完成した。


そして、第四日目が明けた。

(後編へ続く)

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6/10 : 後編をアップするタイミングがないので、前編の後ろに後編を追記しました
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人類アンチ種族神Ⅳ《復讐ⅱ 後編》

その衝撃は、突如「ドン」という爆音とともに始まった。

建物全体が横に揺れ、弁護士は即座にSPを連れて警備室へ向かった。

「どうした、何があった?」

警備当番が答える。
「突然、外部扉の温度が急上昇し、破損しました!」

——外部扉が? 厚さ30センチ、核攻撃にも耐えるはずだ。

「内部扉は?」「すでに破壊されています。怪物が侵入中、保護扉はまだ健在です」

「よし、保護扉の内側の隔壁を閉じろ。時間の問題だ」

警備当番が不安を漏らす。「隔壁の強度では時間稼ぎにも……」

「だからこそSPを配置する。隔壁を背にして357マグナムで迎撃すれば、奴らに避ける場所はない」

SPの一人が口を挟む。「弾が心もとないですよ。全弾使い切るかも」

「構わん。3人は隔壁へ。残りは私に同行しろ」

弁護士は全館放送で告げる。
「怪物が侵入。隔壁を閉鎖し、SPが排除に当たる。一般人は隔壁の外に退避せよ」

警備当番にも避難を命じ、自らは地下3階へと向かった。

◆ ◆ ◆

その頃、ガーゴイルたちは攻撃準備を整えていた。

「こちらヴァロン。ファイアバレット再発射まであと120秒。サーチ、警戒を続けろ」

上空から索敵するサーチは、ベルガンの攻撃力に興味を抱いていた。
自分にはない能力。直撃を避けられるか、無力化できるか。計算が止まらなかった。

そして120秒後、2発目のファイアバレットが発射された。
轟音が空を震わせる。

◆ ◆ ◆

一方、地上のベルガンは満足していた。今度の任務は“手応え”がある。

1枚目の扉を破壊し、2枚目の耐熱扉は鉄骨を剣代わりにして突破。

次の保護扉も、再びファイアバレットの出番だ。

2発目を撃った直後、内部から357マグナムの銃弾が降り注いだ。
高熱で立ちこめた蒸気が視界を奪う。
ベルガンは崩れた扉の陰に潜み、息を殺した。

——通常のガーゴイルには真似できない行動だ。

やがて蒸気が晴れた。
3人のSPが、静寂に気を緩めた瞬間だった。

ベルガンは中央のSPに飛びかかり、心臓を貫く。
その身体を盾に突進し、右のSPの頭を尻尾で砕き、左のSPの喉を切り裂いた。

ー最高だ。
たった、4秒の戦闘時間にベルガンは手ごたえを楽しんでした。


◆ ◆ ◆

だが、余韻を楽しむ時間もなくヴァロンから次の指示が入る。

「周囲に隠れている一般人は無視していい、地下3階にいる弁護士を確保しろ」

地下3階のホールの扉を破ると、待ち構えていたSPがサブマシンガンを撃ち込んできた。

だが、広い空間ではベルガンの機動力が勝る。一瞬でSPは無力化されてしまった。

弁護士が逃げようとしたので、ベルガンは順次に首根っこを掴んだ。

直後にサーチが現れ、拘束を引き継ぐ。

場の掌握が完了したとき、ヴァロンから連絡が入った。

「ベルガン、サーチに次ぐ。神がそちらへ転移される」

その言葉にベルガンの背筋に瞬間的に緊張が走る。サーチも同様に顔から余裕がなくなった。

その時、神がその場に現れた。何もない空間からまるで煙のようにふわりと姿を出した神は弁護士に話しかけた

「久しぶりですね。覚えていますか?……まあ、昔の面影はありませんか」

神は弁護士にフレンドリーな口調に、冷たい笑みで語り掛けた。

「誰だ、お前……ストーカーを憎んでた女の知人か? 政治家の遺族か?」

「違いますよ。まあ、誰でもいい。今から法廷を開きます。被告はお前の家族と愛人。裁判官は私、弁護人はあなたです」

ベルガンが扉を開け、一人の老婆を連れてきた。

「一人目の被告。あなたの母。罪状は、息子の教育に失敗したことです。異議は?」

弁護士が口を開こうとした瞬間、サーチが指を折る。

「ぎゃあああっ!」

それを見た髪は、少々高揚した声で宣言する。

「異議なしとみなします。死刑」

母の首が切り落とされた。

次に、不貞行為の罪で愛人が処刑された。

さらに妻と娘が連行されると、弁護士は絶叫した。

「やめろ! 二人だけは!!」

神は一段と高揚した声で告げる。

「異議がありますか? 10秒以内にどうぞ」

弁護士は、さらに指を折られてもここだけは譲れないという、つよい感情で異議を叫ぼうとした
しかしその瞬間、サーチが弁護士の右目を潰す。

「目、目が、ああああああ!」

神はふざけてたように時間を告げる

「10秒経過ー」

だが余りの痛みに弁護士には届かない。
神はその様子を満足げに見下しながら告げた。

「15秒待ちました。これは確実に異議なしでいいですねー。死刑!」

ベルガンは二人の即座に頸椎を砕く。おそらく二人苦痛を感じる間もなく、その命が散った。

「さて、残りの被告はまとめて処刑。異議は?」

弁護士は、もはや言葉を発せなかった。

「では、執行」

ベルガンはヴァロンからブレス焼き払えと指示を受け、黙って実行する。
ファイアバレットではなく、普通の炎。だがその高温は部屋を瞬く間に灰に変えた。

神は弁護士を見下ろす。
「お前は法律という暴力で同じことをしてきた。弱者の気持ち、少しは理解できたか?」

そして最後にこう告げる。

「お前は殺さない。だが、生き延びた先で再び守りたいものを得たとき……また、この法廷を開きに来る」

神は煙のように消え、ガーゴイルたちも姿を消した。

復讐は完了した。

——第Ⅰ章・第2部、完。
(次回、第3部「神の軍勢 vs 国家」へ)




2025年6月1日日曜日

【ドラゴンクエストX オンライン】Ver7.4 アップデートレビュー【DQX】

こんにちは。管理人の緑茶です。

今回は先日配信された、ドラゴンクエストX オンラインのバージョン7.4について、シナリオには触れずにアップデート全体をレビューしていきます。

(※シナリオ部分のネタバレなし)


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 異界アスタルジアの改修について


今バージョンで特に注目したいのは、「異界アスタルジア」における「異界のなかま」のレベル解放です。

ようやくストレスなく周回できるようになったのは大きな進展だと感じました。


ただし、レベル解放にはボス討伐が必須で、そのためには強い「異界のなかま」が必要というジレンマがあります。

この構造から見えるのは、運営が意図的に「最初は不自由→強化によって爽快感」という昔ながらのバランス調整を採用していることです。


現在主流のゲームでは、

・初期状態で「普通」

・少しプレイすれば「爽快」

・やり込めば「無双」


と、プラス方向にのみ強化が進みます。これに対してDQXは、

・初期状態で「かなり弱い」

・少しプレイしても「まだ弱い」

・やり込んでようやく「普通」


という形になっており、結果として「面白さ」に到達する前に「面倒くささ」を感じてしまいやすい印象です。


たとえるなら、かつてのスポ根アニメが受け入れられていた時代のような設計思想です。今の時代はもっと即効性のある「変身」「チート」「転生」などが人気を博していますので、やや古いモデルに感じるのも無理はないのかもしれません。


 輝石のベルト・戦神のベルトの改修


今回のアップデートで「輝石のベルト」の効果が月に1回選べるようになりました。一見、戦神のベルトとの関連性が分かりにくい変更ですが、実際には非常に大きな影響をもたらしています。


戦神のベルトには「武器種縛り」があるため、たとえば魔剣士で「鎌」と「片手剣」の両方を使い分ける場合、それぞれに対応した効果を持つベルトが必要になります。

一方で、輝石のベルトは「闇特技〇%」のように武器種を問わず効果が発動するため、汎用性が高いのです。


魔法使いを例にとると、

・両手杖・炎

・両手杖・氷

・両手杖・雷

・攻撃魔力+

・会心率+


といった効果でベルトの枠が埋まるため、状況によっては持ち替えが非常に不便になります。

賢者は「両手杖・闇」、竜術士は「両手杖・土」など、職ごとの細かな違いにも対応しづらい状況です。


この点で、輝石のベルトのほうが使い勝手に優れていると言えますが、問題は強化素材が月1回しかもらえない点です。課金誘導の要素が強まっているのは少し気になるところです。

とはいえ、火力面で見れば、戦神のベルトの特化性が高いため、最終的には使い分けが鍵となりそうです。


 バランス調整について


 道具使い


こちらについては専門外のため、詳細は割愛いたします。


 竜術士


体感として大きく強化された印象です。特に、チャージタイムなしで使える「超暴走魔法陣」の追加が大きく、魔法使い不在でも序盤から火力を出せるようになりました。

これにより、短時間で敵を一掃するようなフィールド系コンテンツ、たとえば王家の迷宮などでの使い勝手が格段に上がりました。


また、サポート仲間との相性も改善されており、開幕から陣を敷くことで「暴走魔法陣+やまびこの陣」に無理なく乗せることができます。

中でも「異界アスタルジア」のエステラとの相性は抜群です。神速メラガイアーを暴走で連発してくれるため、火力の出方が段違いです。


エステラは移動が多いものの、行動パターン自体はそこまで複雑ではなく、タイミングさえつかめば非常に爽快な連携が可能です。


 全体的な印象とその他


今回のアップデートでは「学園」関連の内容もありましたが、制作コストが高かったとのことで、詳細についてはDQXTVでの報告に期待したいところです。筆者はすでにクリア済みですので、個人的な感想はありませんが、結果だけは気になります。


また、新規コンテンツが少なかったことも印象的でした。

この内容であれば、レベル解放や仲間モンスターの転生開放などがあってもよかったように思います。


新武器や盾に関しては、バザーの価格を見ても、防衛軍で集めたほうが効率が良さそうなため、そちらを軸に楽しんでいくのがよさそうです。


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最後に

今回のレビューではシナリオに触れませんでしたが、もう少し時間が経ち、ネタバレを気にせず語れるタイミングになった際に、改めてシナリオレビューもお届けできればと思っています。

今後もアップデートのたびに、現役プレイヤー目線での感想をお届けしていきますので、よろしくお願いいたします。

2025年5月29日木曜日

俺は星間国家の悪徳領主!~第8話(一部レビュー)

<あらすじ>

星間国家アルグランド帝国の辺境を治める伯爵家に生まれ、幼くして当主となった転生者・リアム。

前世では「善良であるがゆえに奪われる人生」を送ってきた彼は、転生を機に「悪徳領主」として君臨し、民を搾取することを誓う――。


<レビュー>

「悪徳領主」を目指すはずが、なぜか領地が潤っていく――

本作はそんな“すれ違い”をコミカルに描く、異色の転生SFコメディです。


主人公・リアムは真面目で努力家。

悪徳領主として振る舞おうと日々研鑽を積むのですが、その方向性がズレていたり、周囲の人々の“良い方向への勘違い”により、気がつけば「有能で民思いな領主」として名声を集めてしまいます。


このギャップこそが本作最大の魅力であり、「無自覚」「偶然」「勘違い」などの要素がうまく噛み合い、彼をどんどん“理想の領主”へと押し上げていきます。


第8話では、リアムがついに「ハーレム構想」に着手します。

ところが、彼の理想とする“悪徳”ハーレムは、「嫌がる女性を無理やり加える」という倒錯気味な方針。しかし実際の領民はというと、既に敏腕領主としての評判が高まっており、逆に「ハーレムに入りたい」と考える人ばかりという事態に。


そのため、「悪行」としてのハーレム計画はあっさり失敗。

この一連のやりとりもまた、本作らしい皮肉と笑いが効いた展開です。


また、海賊の拠点から回収された“亡国の姫”が、リアムの手によって治療されていたことが明かされ、最終的には彼のそばに仕えるパートナーのような存在となりそうな気配も描かれました(というより、1話の導入で仲間として登場していたので確定ですが)。


リアムは本気で「悪」に徹しようとするのに、周囲の勘違いや彼自身の実直さが仇となり、結果としてどんどん“善政”が進んでしまう――この構造が実に巧妙です。


無双要素と日常ギャグがバランスよく混在しており、SF的な設定もきちんと背景にあるため、作品としての厚みも十分。

CGの使い方も自然で、視聴のハードルが低く、非常に見やすい作品となっています。


「悪人を目指す善人の無双物語」というユニークな切り口で、ギャグとシリアスを自在に行き来する良作。

主人公のズレた思考と、周囲とのかみ合わなさが生む笑いがクセになる作品です。


配信サービスなどで過去エピソードも視聴可能ですので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。



2025年5月27日火曜日

【お知らせ】今後の掲載スケジュールについて

こんばんは!

管理人の緑茶です。


小説のリリースを初めて2週間がたちました。

このサイトの動向を見ていると、全体的な閲覧数は増加傾向にありますが、極端に滞在時間が短い(数秒程度)人も増加しており、アニメレビューを見たい方と、小説から来ている方でニーズが違うため、求めていない記事の場合は離脱してしまうようでした。


そこで、今後は掲載ルールを下記のように変更し様子を見たいと思います。

・小説の投稿は火曜日にします。

・毎月10日前後に前月の活動レポートを掲載します。(変わらず)

・木曜日と日曜日の記事はレビュー/日記系とします。


この影響で、小説が外部サイトよりも遅れてしまう場合もありそうですが、状況によって水曜日など掲載日ではない曜日に投稿することでできるだけ先行状態を引き続き維持できるよう考えています。


様子を見てご不便がありそうであれば、また変更するかもしれませんが一旦この方式で木曜日から掲載スケジュールを組ませていただきます。


何かございましたらDMやメールでご意見を頂戴できれば幸いです。



2025年5月25日日曜日

【小説】人類アンチ種族神《復讐の合間に》

——トラックの運転手は、望んだ形で処理した。 だが、不思議と満たされた感情は少なかった。

神は玉座に腰かけ、思考の深みに沈んでいた。 静まり返った空中の城の一室に、重厚な扉の開く音が響いた。 扉を軽々と開けて入ってきたヴァロンの姿を見て、 神は改めて思う。人に近い姿ではあるが、やはり彼も怪物なのだと。

「お呼びでしょうか」

ヴァロンは少しうつむきながら問いかけた。 その声音には、どこか緊張の色が滲んでいた。

——ああ、エーテルで話し合うこともできたが、あえて直接ここへ招いた。 叱責かと誤解されたか。

「運転手の件、よくやってくれた。まずは直接、労いを伝えたくてな」

神の言葉に、ヴァロンの顔がわかりやすく緩む。

「いえ、神の命令は我らの存在意義そのもの。お褒めいただくには及びません」

——本当に感情のない存在なのか、疑いたくなるな。 その言葉の喜び方は、あまりに人間的だ。



「では、本題に入ろう。次の標的についての進捗を聞きたい」

ヴァロンの表情が切り替わる。職務遂行者としての顔になる。

「弁護士はポイント227の私設シェルターに籠城中です。既に何体かの同胞が突入を試みましたが、銃撃を受けて消滅。2日前からは完全に扉が閉鎖されています。 同胞の攻撃では、扉を破壊できなかったようです」

——ガーゴイルが倒された? 信じがたいが、事実なら相応の備えがあるのだろう。

「少し調べてみる」

神は、意識を地上へと滑らせた。

——地上3階、地下5階。耐熱・耐衝撃コンクリート三重構造。 偽装された外観。これは国家レベルの核シェルターだ。

その理由もすぐに判明した。 地下5階に政治家2名が監禁されていた。 この施設は元々、彼らの所有物。 弁護士はどさくさに紛れて入り込み、SPを買収して占拠していた。

——だが占拠だけではないな。 地下2階には、妻、娘、愛人2人、そして愛人の息子。

「家族もろとも押し込んでいるのか。所有者ごと追い出して……」

シェルターの入口には、重なり合って倒れた子供たちの遺体。

「政治家の家族か……邪魔者は処理したわけだ」

神はさらに調べを進める。 SPは.357マグナムを所持。首には爆薬装置。 弁護士に逆らえば、命はない。

地上部はSPと取り込んだ一般人の居住区。 巡回する若い女と体格の良い男たち。地下1階には倉庫と、拷問部屋。 逃げ遅れた一般人を連れ込み、奴隷のように扱い、時に慰み者としても使っていた。

彼が握る“支配”は恐怖と暴力によって成り立っていた。

ある若い女は、監視カメラの死角で水を多く使ったというだけで、地下1階に連行され、数時間にわたって拘束された末に、衣類をすべて焼却された。 彼女はそのまま、私設の慰み物として連日呼び出されていた。

別の男は、物資の配分に文句を言ったことで見せしめに指を一本ずつ切られ、最終的にはベッドフレームに鎖で繋がれ、食事も与えられず、もはや死ぬのも時間の問題といったところだが、助けることは許されないようだ。

それらの“制裁”は弁護士によって“法的に問題ない裁定”として記録されていた。自分の判断が絶対であることを誇示するための演出だった。

彼はこのシェルターで“王”となっていた。

——なるほど。だから若い女と逞しい男が必要だったわけか。

「357マグナムの弾を至近距離で受けたのなら、確かに同胞の運動機能も停止するか……」

神が呟くと、ヴァロンが視線を上げた。

「強力な銃器ですね。電子部品がない分、エーテルの干渉も避けられる……飽和攻撃で弾切れを狙いますか?」

——やはり賢い。

「いや、ベルガンに任せよう。銃は相手を“認識し、狙い、撃つ”までに工程が多い。 ベルガンの身体能力なら、狙われた瞬間にはすでに間合いに入っているはずだ」

ヴァロンは数秒沈黙し、検討する。

——神の言葉すら疑い、検証する。見事だ。

「その場合、入り口の突破が課題になります。 シェルター用の扉は並の攻撃では開きません」

「問題ない。ベルガンには“ファイアバレット”を持たせてある」

「……火の玉、ですか?」

「そうだ。周囲のエーテルを吸収し、体内で高温物質を生成して放出する。 ガーゴイルの火炎《ブレス》とは別物。威力は小型隕石並みだ」

「施設ごと吹き飛ばさぬよう、威力制御が必要ですね」

「その通り。ゆえに、今すぐ命令を出せ」

神が命じると、ヴァロンはすぐに通信を開いた。

《目標2:ポイント227。強力な銃器を所持。サーチは上空より索敵、ベルガンはファイアバレットで入口を破壊、侵入せよ。》 《ベルガンへ補足:過剰破壊は避けること。射線上への進入に注意》

神は静かに笑った。

——さて、第2幕の始まりだ。

2025年5月22日木曜日

アポカリプスホテル(一部レビュー)

 <あらすじ>

人類が滅び、長い年月が経った地球。

東京・銀座にあるホテル「銀河楼」では、ホテリエロボットのヤチヨと従業員ロボットたちが、オーナーの帰還と再び人類の客を迎えるその時を、ただ静かに待ち続けていた。

しかし、100年ぶりに訪れた“お客様”は、なんと地球外生命体だった――。


<レビュー>

人類不在の地球に残されたロボットたちの姿を描く、エモーショナルかつユニークな作品です。


作品の舞台となるのは、東京・銀座にぽつんと残った高級ホテル「銀河楼」。そこでは、すでに人類が絶えてしまった後も、ロボットたちがかつての役割を忠実に守り続けています。

ドアを開け続けるドアマン、定期的に環境情報を送り続けるチェックロボット。誰もそれを必要としていないと理解しつつも、彼らは「命令」を果たそうとし続けているのです。


物語は、人類滅亡から100年後から始まります。この時点で、ロボットたちの数も半分以下にまで減っており、温泉の掘削ロボットが故障し、廃棄されるシーンからも、静かに進行する“終わり”の気配が感じられます。


そんな停滞した日常に訪れる転機が、「異星人」の来訪です。

敵なのか、客なのか、正体も目的もわからないまま、ロボットたちは“お客様”として丁重に彼らをもてなします。100年ぶりに仕事ができることに喜びを見せるロボットたちの姿がどこか切なく、それでいて微笑ましくもあります。


やがて、地球人に変身できる“タヌキ星人”が登場し、物語はよりにぎやかに展開していきますが、部品が手に入らず修理できないロボットたちの“寿命”を思うと、どこか儚さも同居していて、この世界観の深みを感じさせます。


日々の営みを失った地球で、忠義と希望を捨てずに“おもてなし”を続けるロボットたち。

その姿に、観る側の心も静かに揺さぶられます。




2025年5月20日火曜日

【小説】人類アンチ種族神Ⅳ 《復讐ⅰ》

 黒い空を背景に、神は虚空へ右手を伸ばした。

「……エーテルを操るのも、懐かしいな」

その声には、ほんのわずかに、かつて人であったころの名残が滲んでいた。


神の視界に、青白い粒子が舞い上がる。

それはこの世界の根幹に触れる“力の種”——エーテル。


かつて神の子として修業していた時代、神はこの粒子の性質を学び、そして今、無限に生成する力を得ていた。


自然界にはほとんど存在しないエーテルを、神は“意志”だけで無から作り出すことができる。


エーテルは、神の創造を可能にし、神の命令で構成された存在を形作る基礎となる。

だがその本質は生命の源ではなく、創造物を物質化するための材料である。


つまり、エーテルを使って生み出したものは、死ねばすべてエーテルへと戻り、霧散する。

肉体も血も、存在の痕跡すらも、世界のどこにも残らない。


このエーテルは高度な科学を拒絶する。

ミサイル、レーダー、人工衛星、パソコン。

精密であるほどに、エーテルはその機能を狂わせる。


ヘリや信号機などが誤動作していたのは、ガーゴイルとともに霧散してきたエーテルが一定の濃度を超えたためであった。


◆   ◆   ◆


神の手に集まる粒子。それは神の意志と同調したエーテルの核であり、神の内から発せられる指令に応じて、かたちを得ようと震えていた。


「次は……多少賢い者を創ろう」


今までのガーゴイルは本能に従う獣にすぎなかった。

だが今、神は“命令を遂行する”という、オオカミ程度の協調性をもつ特別な個体の創造を試そうとしていた。


神はベルガン、サーチ、ヴァロンの3体の創造を始めた。


濁った光の中から最初に現れたのは、筋肉の鎧をまとった屈強な男型。

——名はベルガン。格闘と破壊を好む粗暴な個体。

筋肉と神経にこだわっており、剛腕ながら緻密《ちみつ》な手さばきが可能だ。


次に、滑らかな肌と流れる銀髪を持つ女性型。

 ——名はサーチ。遠距離索敵《えんきょりさくてき》と感知に優れた個体。 動体視力や識別能力、高度な視力を持ち、さらに見たものを神やベルガン、ヴァロンに共有する視界共有能力を備えている。


最後に、沈黙と共に生まれた影のような存在。

——名はヴァロン。彼は計算し、制御し、判断する個体。

神が与えた命令の行間や、現在の状況を複合的に思考する知性にこだわっており、サーチとベルガンにエーテルを介して指示を出すことができる。


「命令だ」


神の声が、三体の創造体に染み渡るように届く。


「“あれら”を探し出し、殺せ。妻を殺した運転手。そして……それを擁護した弁護士を」


ヴァロンは静かに居城の執務室へと向かい、サーチとベルガンは、朝焼けの街へと滑り出した。



◆   ◆   ◆


——その頃、神の命令など知る由もない地上では、ひとりの運転手が逃走を続けていた。


それは、あの神災が発生した当日のことだった。トラックの運転手は仕事で東京都内にいた。

黒いモヤが怪物になって人々を襲い始めた光景を見た運転手は、本能的に逃げ始めた。

この判断が他の運転手よりも数分早かったことが、運転手をここまで生かしていた。


だが、大きな道はどこも事故や渋滞となっており、運転手はトラック仲間と無線で連絡を取り合いながら、まだ通れる道を選んで進んでいた。


しかしついに、多摩川をトラックで渡れる橋がなくなり、車両を捨てて徒歩で橋を渡ろうとしていた。


幸運にも、この地域にはまだガーゴイルは到達しておらず、多くの住民が我先にと徒歩で渡れる橋を使い、山梨方面へと逃げていた。


一人の女性が悲鳴を上げた。


「キャー!見て!あそこ!!!」


彼女の指先のはるか先、普段なら絶対に気づかないであろう距離に、1つの黒い点が8の字を描くように飛んでいた。


「鳥じゃないのか?」

近くにいた男性が口火を切ると、周囲は騒然とし始めた。

そして、初老の男がつぶやいた。


「襲ってくる気配がない……あれは、何かを探しているのか……?」


その黒い点の正体はサーチだった。 彼女は機動力を活かし、高高度から目標を探していた。 これまではトラックに乗っていたため、上空からでは認識できなかったが、車を降り橋の上を逃げる運転手を、サーチは容易に発見した。


「動きが変わった!!こっちへ来るぞ!」

誰かが叫んだ。


◆   ◆   ◆



——群衆にいてはダメだ。まとめて丸焦げにされてしまう!


ガーゴイルの恐ろしさを直接見ていた運転手は、すぐに川に飛び込む決意をした。


「ドボン」


運転手はためらわずに飛び込んだが、その音は群衆の悲鳴にすぐかき消された。


——冷たい。


運転手は川の中を必死に泳ぎながら、息を切らしていた。頭上では何かが飛ぶ音が響いている。振り返る余裕などない。ただ、水面に浮いていたタイヤを掴み、流れに身を任せるしかなかった。


「これでアイツは群衆に引き付けられるはず……ふふふ」


軽薄な自己中心的な笑みと言葉が漏れた。


両腕は震え、指先の感覚は麻痺しはじめていた。足を動かす余裕もなく、ただタイヤにしがみつきながら、彼は思った。


——下流は安全なのだろうか。


思考が熱を帯び始めたその瞬間だった。


◆   ◆   ◆



川の中へ消えた目標を探していたサーチは再び目標を補足、分析を開始した。


《目標確認:人物、年齢40前後、浮遊物につかまり下流へ移動中》


サーチは瞬時にエーテル通信を開き、その情報をヴァロンとベルガンへ共有し、まるで防犯カメラが何かをとらえたときのように、機械的に視覚情報の中継を開始した。


彼女の網膜に映る人影——その苦悶も、願いも、恐怖も、彼女にとっては“動きの変化”以上の意味を持たないが、間違いなく目標の運転手であった。


サーチの視界に、ヴァロンからの命令がテキスト化された映像として浮かび上がった。


《命令:目標1発見。川へ逃走中。》


《命令:ベルガンは下流でサーチと合流し、目標を地上へ引きずり出せ。》


命令を確認した瞬間、彼女の視界には自動的に地形と風速、運動予測が投影された。

ベルガンとの交差点が最も効果的となる座標が算出され、即時行動が最適化される。


無言のまま、彼女は風を切って降下した。


◆   ◆   ◆


多摩川の下流、500m付近でサーチとベルガンが合流。


流れてくる運転手を待ち構えた。

そこへ、車のタイヤに抱きついて流されてくる運転手が現れた。


即座にサーチが拾い上げ、河原にいるベルガンの前へ投げ捨てる。


運転手は疲れ切った眼差しでベルガンを見上げ、即座に背を向けて逃げようとする。


だが、その先にサーチは立ちふさがった。


「う……うわああああっ!」


サーチの視界に、対象の音声情報、筋肉の伸縮情報、心拍数の急上昇、瞳孔の拡大などが観測される。


《反応解析:極度の恐怖。逃走本能優位。生存意識:強》


彼女にとって、“生存意識”は実はよく理解できていなかった。 死は、命令を終えるだけの工程。 そこに意味も、恐れも、回避の必要性もない。


——なぜ、彼は叫ぶのだろう?



この反応も理解はできなかった。 サーチは、命令された対象が死を前にあがくその様に、純粋な分析対象としての“観察興味”すら覚えていた。 運転手が最初に砕かれたのは左足だった。痛みに顔を歪め、「誰か!誰かー!」と助けを呼んだ。


サーチの知能でも、2体のガーゴイルがいるこの空間に、人間などいるはずもなく、全く理解のできない反応だった。


そこへベルガンの追撃。

次は右腕だった。

まるで小枝を折るように、軽々と二の腕を胴体から切り離し、切り離した腕を川へ投げ捨てた。


悲痛な叫び声が河原にこだまするが、ベルガンは続けた。

次は右足、そして左腕。


サーチは一歩引いた位置からその光景を静かに見つめていた。


運転手の悲鳴は、鼓膜ではなく皮膚に触れるように空気を震わせる。

骨が砕け、肉が裂けるたびに、サーチの視界には神経伝達の異常数値と血圧の急上昇が明示されていく。


《苦痛レベル:高/意思維持:強》


彼女にはそれが、なぜか心地よく感じられた。


それは“快楽”ではない。ましてや“喜び”でもない。


ただ、神の命令が確かに果たされていること、神の望みがこの場所でかたちになっているという“整合性”が、

彼女の内部構造にごく微細な振動として反応していた。


それはまるで、神の命令にぴたりと合った動作をしたときに感じる、脳の裏側が静かに震えるような感覚だった。



一つ一つ丁寧に、時間をかけて解体していく。


運転手が失神すればサーチが川の水をかけて起こす。 この行為は、他のガーゴイルの殺戮とは明らかに別種だった。


運転手に、自分がこれから死ぬことを確実に認識させ、何かを後悔させるような、手間のかかる“作業”だった。


やがて、ベルガンとサーチにヴァロンから指令が届く。


「目標1の処分を神が承認。仕上げを」


サーチとベルガンに仕上げの詳細が、視界にテキストとして表示された。


すると四肢を失った運転手を河原に放置したまま、2体のガーゴイルは一旦飛び去った。


◆   ◆   ◆


——助かったのか? いや、ゆっくり死ぬまで放置されたのか。


運転手が、二体の奇妙な行動に自分なりの解釈をつけていると、空を見上げたその視界に、あるはずのないものが映る。


宙に舞う、自分のトラックだった。

サーチとベルガンは運転手のいた橋まで戻り、乗り捨てられたトラックを取りに行っていたのだ。


——なんで俺の車が……?


思考が走った瞬間に、空中のトラックは運転手めがけて投げ捨てられた。

四肢を失い、逃げることもできない運転手は、なすすべもなくトラックに潰された。


◆   ◆   ◆


——なぜ、トラックに殺させたのか。


サーチが思考しようとしたが、ヴァロンからの最終報告が、思考を妨げる。


《命令完了:目標1、排除済み。》


《次命令:目標2、追跡開始。対象は弁護士。識別優先順位:高》



サーチは再び上空へ舞い上がった。


既に昼を過ぎた東京都内を俯瞰しながら、彼女の視界には無数の熱源と行動パターンが浮かぶ。 その中から、特定の条件に一致する動きと痕跡を洗い出していく。


《探索開始:エリアスキャン・フェーズ2》


サーチは旋回を続けながら、自身の回路に残る微かな振動を解析していた。


先ほど、運転手の苦悶を観測していたとき、なぜか応答信号に小さな変化が生じていた。


——なぜ、私はあの音と動きが終わったあと、気が晴れたように感じたのだろう。


それが命令の完了による正常な反応なのか、それとも私の内部構造が何か異常な挙動を示したのか。


サーチは答えを出せぬまま、視界の奥で目標を走査し続けていた。


2025年5月18日日曜日

片田舎のおっさん、剣聖になる 3〜6話(一部レビュー)

 <あらすじ>

片田舎で道場を営むしがない剣術師範の中年男、ベリル・ガーデナント。

剣士としての頂点を目指した日々は遠い昔のこととなり、長年の鍛錬によって極めたその剣の腕は、今や“片田舎の剣聖”と称されるほどの領域に達していた――。


<レビュー>

“おじさん無双系”として分類される本作ですが、単なるテンプレ展開にとどまらず、設定と演出の一貫性において非常に完成度の高い作品となっています。


まず特筆すべきは、タイトルにもある「片田舎のおっさん」と「剣聖」という両極端なイメージが、作中で一切ブレることなく丁寧に描かれているという点です。


このジャンルでは、どうしても無双系の宿命としてバトルシーンでキャラクターの精神年齢が若返りがちになる傾向があります。熱い戦闘や中二病的なセリフを「かっこよさ」として演出した結果、見た目は中年、言動は少年というギャップが生まれてしまう例も少なくありません。


しかし本作では、そのようなバランスの崩壊を避け、あくまで“大人としての視点”から描かれる戦闘スタイルを維持しています。無駄に派手なバトルではなく、熟練された技と読み合いによる静かな熱量こそが本作の醍醐味です。


例えば、ネズミを捕まえるのにも苦労していたりと、“剣聖”でありながらもすべてが完璧ではないという描写もあり、人間味のある「おっさん像」がとても好印象です。


また、剣術だけではなく“子育て”的な側面のエピソードも差し込まれ、キャラクターの厚みを増しています。

せっかくのハーレムフラグを自らへし折ってしまうような主人公の振る舞いも、本作ならではの魅力と言えるでしょう。


全体としては、派手さこそ控えめですが、「大人のための無双ファンタジー」として非常に高品質な作品です。




2025年5月15日木曜日

【告知】人類アンチ種族神を小説投稿サイトに掲載します。

こんばんは、管理人の 緑茶 です!

今日は――ついに!――オリジナル小説の投稿スケジュール をお知らせします。


◆ 公開スケジュール

タイトル:『人類アンチ種族神

投稿先:

・小説家になろう

・カクヨム

・アルファポリス


公開日時:明日(16日)

※同じ日にアップできるよう準備中ですが、サイトの反映状況で多少前後するかもしれません。


ペンネームは当ブログと同じ 「緑茶」 で統一しています。

見かけたらぜひブックマークやレビューで応援していただけると励みになります!


◆ バージョンについて

当サイトに置いているものは “初稿版(1st)”

各投稿サイトにアップするものは “加筆版”


・セリフや情景をブラッシュアップした回もあれば、新シーンを足した回もあります。

・逆に初稿とほぼ同じ回もあり、一方が完全版というわけではありません。


「初稿はもう読んだから二度手間かな…?」と思う方も、加筆によって印象が変わるシーンがきっとあるので、ぜひもう一度のぞいてみてください。


◆ ブログ読者さまへ

当ブログを見てくださる皆様は、“最速で読める先行読者” です。更新は今後もこちらが一番早い予定なので、引き続きチェックしていただければ嬉しいです。


それでは、明日の公開をお楽しみに。

どうぞよろしくお願いいたします!


――緑茶




2025年5月13日火曜日

【小説】人類アンチ種族神III《誕生》

――今から五十年前。東京を焼いた「神災」より半世紀さかのぼる時代──

後に〈人類アンチ種族神〉と呼ばれる存在が目覚めた、その記憶である。


◆   ◆   ◆


俺は、死んだのだと思った。

けれど恐怖はなく、痛みもない。

深い海の底でようやく息を吐き切ったかのような静けさだけがあった。

この終わりを、ずっと待っていた気がする。



◆   ◆   ◆


 歪みの始まり


二歳の春。――他人の不注意で信号無視の自転車が歩道に突っ込み、俺は跳ね飛ばされた。

脊髄を損傷し、左半身は中等度の麻痺。

医師は「奇跡的に命は助かった」と言ったが、その奇跡は幼児には重すぎた。


外見にはほとんど傷が残らない。立てば、ぎこちなくても歩ける。

だから大人たちは言った。


> 「努力が足りないだけさ」

> 「ほら、手を抜くな、怠けるな」

> 「泣くのは甘えだろ?」


左足が思うように上がらず、指先の感覚が半分しか戻らない、と訴えても

「できるはずだ」 と笑うだけ。健常な価値観で計った物差しは、俺の痛みを計測不能と切り捨てた。


家の中でさえ、両親は後に生まれた妹へ視線を注ぎ、

「お兄ちゃんは静かでいい子だものね」と微笑んだ。

黙れば家が保たれる。だから黙ることを覚えた。


◆   ◆   ◆


 働くという罰


十八で就職。体に負担の少ない軽作業を選んだ――つもりだった。

だが健常な上司は、自分のミスで止まったラインを

「遅いお前が原因だ」と言い張り、俺はあっさり切られた。

障害者雇用枠は求人票より狭く、抗議する力は麻痺より早く萎えた。


二十二で再就職。見下す視線と無言の圧が職場全体を湿らせていた。

「手が遅い」 「給料泥棒」――耳障りな陰口は、やがて自分の心音と区別がつかなくなった。


◆   ◆   ◆


 奇跡の光景と崩壊


そんな泥の底で、たった一輪の花が咲く。

彼女――昼休みに渡した紙コップのコーヒーを「ありがとう」と言って受け取る人。

特別な台詞ではなかった。けれど真正面から向けられた声は、俺だけを見ていた。


家庭ができ、男の子と女の子が生まれた。

小さな靴音が廊下を駆け、ベビーカーの笑い声が風鈴のように響く。

その光景は、間違いなく奇跡だった。


だが奇跡は長く続かない。


彼女は夜勤明け、横断歩道の青を渡っていた。そこへ大型トラックが赤信号を無視して突っ込み、ブレーキ音もなく彼女をはねた。運転席の男は明らかに首をがくりと傾け、ハンドルを握ったまま瞼を閉じていた――居眠り運転。


事故調書が上がる前に、運転手はこう証言した。


> 「いえ、歩行者が急に飛び出したんです。避けきれませんでした」


「そんなはずはない」

俺は現場近くの文具店から防犯カメラの映像を入手した。赤信号を突っ切るトラックと、青を歩く彼女。決定的だった。


だが運転手の雇われ先は大手運送会社だった。事故からわずか三日で、店主は映像を『紛失』したとくつがえした。後に知る――会社が高額で買収し、口止め料を添えてデータを封印したのだ。


法廷で俺は弁護士に翻弄された。


> 「確かに過失はあります。しかし故意ではない。居眠りという主張は原告のかってな想像にすぎません。証拠も証人もなく、妻を思う原告が被告への私怨から作り上げた妄想であると、われわれは主張せざるを得ません」

> 「事故後の調査では歩行者がわずかに前のめりに見えますね。急いでいた可能性は?」


眠っている姿がはっきり映った防犯カメラの映像を示そうとしても、手元に映像はなく。裁判官は運転手に禁錮一年、執行猶予三年を言い渡し、会社は業務改善命令だけで済んだ。


俺はただ、謝罪が欲しかった。すまなかったの一言でよかった。だが会社も男も「保険が降りますので」と頭を下げただけで、その眼に感情はなかった。


正義は金で買われる。 その現実が胃の奥で錆びた鉄の味を広げ、胸を焼く憎悪に変わった。


残された子どもを守るため、俺は働き続けた。

食べることも眠ることも感じることも忘れ、

気づけば、笑い声は過去形でしか思い出せなくなっていた。


◆   ◆   ◆


心臓停止


その日は朝から少し体が重かった。しかし体の不自由な俺は人よりも作業に時間がかかる。

俺はいつものように昼休みも取らず、倉庫の奥で三十キロの段ボールを抱えていた。照明は切れかけ、たった一本の蛍光灯がジジジと鳴り、影が床をゆらす。額を伝った汗が右目に入り、視界が滲む。


そのときだ。胸のまん中を、赤く焼けたナイフでいきなり刺されたような痛みが走った。


「――っぐ……!」


荷が落ち、つぶれた箱からネジが散る。ひざが折れ、ほこりのにおいが鼻を突いた。


やめろ、まだ倒れられない。給料日までは、あと三日なんだ。


左手を伸ばすが、指先から力がすべて抜ける。心臓が一発ごとに強く打ち、そのたび視界のふちが暗くなる。


痛みは徐々に強くなり、一つの思考が俺の中でこだまする。


――死ぬ? 今ここで?


恐ろしい。けれど同じくらい理不尽だった。


なんなんだ、このくそみたいな人生は。 せめて子どもたちの成長を見届けさせろ。父親まで死んでしまえば、残された子供の小さな肩にどれほどの重荷がのしかかるか──それだけは避けたい。 いや、それどころか――最後のことばひとつ残す時間さえくれないのか。


息が吸えず、口がぱくぱくと音もなく開くだけ。誰もいない倉庫に爪を立てても、助けは来ない。


ふざけるな……ふざけるな……!


胸を殴っても鼓動は弱まる一方で、世界の音が遠ざかる。ネジが転がるカラカラという音だけが、むなしく響いた。


俺は、ただ、ちゃんと謝ってほしかっただけだ。

彼女をころした運転手も、笑っていた上司も、この社会も。


涙は出なかった。かわりに熱い血が耳のうしろで波打ち、視界は真っ白に発光した。


「誰か――」


せめて――最後に……!


心臓が、ひとつ、ぐしゃりと音を立てた気がした。次の鼓動は来なかった。


白い世界だけが残り、そして静けさがすべてを飲みこんだ。


◆   ◆   ◆


(……おかえりなさい)


音ではなく光そのものが語りかける。

次の瞬間、宇宙規模の記憶が洪水のように流れ込む。


星々の上での修行。宇宙意思との問答。俺は“神の子”であることを思い出した。守るべき対象の種族を自身で体験し、理解し、愛するため 人間へ転生した観測者だった。


だが俺が見たのは愛ではなく、醜さと暴力だった。

傲慢、残酷、自ら築いた仕組みに押し潰されながらそれを正しいと唱える愚かさ。

その総和が怒りとなり、俺の内側で再結晶した。


「人間の種族神か。ならば存分に破壊から始めるべきだろう。このクソ種族は守るべき価値から

 作り出してやろう。面白い。実に面白い。あははははは」


人間として生きた生涯で、妻と別れてから忘れていた表情と感情が結晶の中で凝縮し

神の子は「種族神」として誕生した。


人類を最も憎む人類の種族神。

「人類アンチ種族神」の誕生の瞬間だった。


神として力を得た俺は、お台場の空に浮かぶ大地を創り、その中央に漆黒の塔をそびえさせる。

のちに人間はそこを「デスランド」と呼ぶだろう──だが名など要らない。ただの城だ。


黒いモヤを凝集し、石の翼を持つ兵を作り出した。

喰らわず、眠らず、人とその文明の破壊だけを使命とする影。人は《ガーゴイル》と呼ぶだろう。


これは復讐ではない。選別だ。

人間が守るに値するか、進化の資格を持つかを見極める試験。


祈る者には与え、立ち上がる者には道を残す。選ぶのは人間だ。

俺は冷酷に、正確に、一滴の雫を世界へ垂らすように試験を始める。


けれど胸の奥でまだ疼くものがある。

あの日の笑顔、小さな手の温もり、四人で落とした影――

それが完全に消えるまでは、秤を傾けてはならない。


塔のバルコニーに立ち、指先で夜空を弾く。

黒い粒が散り、都市の上空へ転移し、モヤへ、そして影へ。


下界の灯が遠く瞬き、やがて悲鳴に塗り替わる。


第一の試験を始めよう。


――この瞬間から人間は、それを神災と呼ぶ。



2025年5月11日日曜日

活動レポート 2025年4月

 管理人の緑茶です。こんばんは!

 今回は先月の活動レポートとなります。

 【実績】
 作家関連のお仕事は・・・・0(ZERO!)
 今月も安定の0!(ZERO!)でした。
  

 【雑感】
『レビューの話題』----------------------
春アニメを中心に、一部ドラマ作品もレビューとして掲載しました。
驚いたことに、ドラマのレビューも意外と読まれており、アニメが専門の私にとっては少し恐縮しつつも、興味を持っていただけたことに感謝しています。

当サイトでは、いわゆる“覇権アニメ”にこだわらず、自分が「面白い」と思った作品を紹介しています。
作品のジャンルも内容もまちまちですが、そうした“クセ”を楽しんでいただければ嬉しいです。
知らないアニメのレビューをきっかけに、新しい作品に触れていただけたら本望です。

『DQXの話題』----------------------
最近は魔法使いが強化されたので、サブキャラで魔法使いのレベルを上げています。
ただ……魔法使いとメタル系モンスターの相性が壊滅的で、かなり苦戦しています。

普通に「ゴーレム呼び」などで育成すれば良いのでしょうが、ペアメタルが余っているので、ついそちらで育てたくなります。
しかし武器が「杖」「鞭」「短剣」しか選べず、会心が狙える特技が鞭に少しある程度で範囲も狭く、効率が出ません。

もし「魔法使いでペアメタル育成するならこれ!」というおすすめ武器と特技をご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えていただけると嬉しいです!

『YouTubeの話題』----------------------
春になったので、夏野菜の栽培方法をYouTubeで調べていたところ……
以後、トップ画面が完全に“農家チャンネル”に占領されてしまいました。

爺さん・婆さんの農業指南動画や、プロ農家YouTuberの動画がずらりと並び、
肝心のアニメ関連動画がどこかへ飛んでいってしまいました。

まだ、探しにくいだけなら100歩譲って我慢できますが、トップが年配の方だらけになってしまったことで、
「自分まで老けた気持ちになる」のはどうにか避けたいところです(笑)

『その他の話題』----------------------
GWのNサークルでは、「5月11日までを集中強化期間」として活動しておりました。
その結果、ゲーム2本のリリースと、1本のバージョンアップに成功!

あとは、

・体験版1本
・バージョンアップ1本
・新規リリース1本

が残っています。
バージョンアップの方は、すでにリリース手続きに入っているので、近日中に出る見込みです。

問題は体験版です……。
メイン開発担当のニック氏のお子さんが食中毒でキーボードに嘔吐してしまうという事故が発生し、2日ほど開発が完全停止。
その影響で全体スケジュールを見直すことになり、体験版の優先度が大幅にダウンしました。
年内に出せるかどうか怪しい雰囲気ですが、ここはニック氏の孤軍奮闘に期待するしかなさそうです(汗)
----------------------------
以上、4月の活動レポートでした。
今月もお付き合いいただき、ありがとうございました!

これからもズズズイッとよろしくお願いいたします!!

2025年5月8日木曜日

【小説】人類アンチ種族神Ⅱ 《神災》

 秋葉原・中央通り 午後二時二十八分


「コメントの波が止まらない……!」

ミナトは震える手でスマホを握りしめた。


画面には猛スピードで流れる《秋葉原が燃える!》《渋谷でも爆発!》といった文字の奔流。その視界の向こう、現実では悲鳴とガラスの割れる音が重なり、まるで文字列が音に姿を変えたかのように錯覚する。


コトハが黒い怪物に掴まれ、上空から落とされる瞬間——。

石畳に当たった骨はバラバラに砕け、鮮血が水風船を破裂させたような音を立てて四散した。まるで生きた人間がどのくらいの高度から落下したら砕け散るのか確認したかのような無機質な行動に、ミナトの恐怖は一気に跳ね上がる。


「やめろ、配信を切れ……!」

理性が囁く。しかし視聴者数は跳ね上がり、虹色の投げ銭通知が止まらない。

──このまま続ければ大金が入る──でも映し続けるのか? 友だちの死体を……

──俺だって逃げなきゃ死ぬ!


三つ巴の葛藤が胸を掻きむしる。結局ミナトは配信停止ボタンを強くタップした。


ポケットのスマホが通知の振動で熱い小石のように脈打つ。

そのとき足元のアスファルトが波打った。ビルの看板が落下して地面を叩きつけ、路面が跳ね上がったのだ。ミナトは咄嗟に身を伏せた。


◆   ◆   ◆


 渋谷警察署・交通管制室 午後二時三十一分


「カメラ12番、信号も電源も落ちました!」

新人巡査・千田美里の声が裏返る。壁一面のモニターでは、スクランブル交差点が炎の渦となっている。


隣席の警部補が唸った。

「EMPか? 磁気嵐で機器がやられてるのか?」


美里は息を整え、冷静さを装って答えた。

「磁気嵐にしては局所的かつ範囲が広すぎます。衝撃による破損が濃厚です!」


スピーカーからは途切れ途切れの報告と悲鳴。

「スクランブル、封鎖不能! 封鎖車両が炎で溶解!」

「未確認飛来生物、頭上通過!」

政府が決めたばかりの汎用呼称“未確認飛来生物(UFB)”が、無線ごとに語尾を震わせた。


◆   ◆   ◆


 SNSタイムライン(日本時間 14:33)


 #秋葉原壊滅  12,400件/分

 #渋谷炎上    14,900件/分

 #デスランド   18,200件/分


秒単位で積み上がる真偽不明の動画と悲鳴。突然、お台場上空を撮影した写真が爆発的に拡散される。

巨大な岩盤と黒い尖塔——投稿者は「#デスランド」と添えた。


千田美里の端末にもその画像が流れ込み、彼女は息を呑む。

「UFBだけじゃない……お台場の空に島? 合成じゃないの?」

コメント欄が一気に恐怖と絶望の単語で染まる様子が、モニターの色温度を下げていくようだった。


◆   ◆   ◆


官邸・緊急対策会議室 午後二時四十六分


「静粛に!」

内閣危機管理監・大江は拳で円卓を叩いた。


大型モニターには、お台場上空に静止した浮遊岩盤と尖塔。カメラがピントを合わせるたび、尖塔の周囲に黒いモヤが絡みつく。


防衛庁の技官が青ざめながら報告する。

「UFBが都内数か所で同時発生、尖塔周辺にも多数確認。しかし発生源は不明のままです!」


「尖塔を破壊したらどうなる?」

技官はその案の浅さに眉をしかめ、眼鏡を押し上げた。

「瓦礫が落下すればお台場一帯は壊滅です」


大江はかぶせるように問いを重ねる。

「被害を無視すれば対空ミサイルで破壊できるのか?」


技官の上司、制服組の統合幕僚監代理が腕を組んで椅子を軋ませた。

「安易にミサイルなんて撃てませんよ。標的ロックは不安定、誘導エラーは頻発。それに民間機がまだ上空にいる。万が一巻き込めば――責任は取っていただけるんですか?」


責任という単語で勢いは失ったが、大江は続けた。

「ならレールガンは? 尖塔だけを穿てばいい」

代理が鼻で笑った。

「射程も威力も足りませんよ。あの乱流じゃ弾道の予測もできません」


嫌味と苛立ちが交差し、会議室の空気はさらに鉛を載せた。

大江は二人を睨みつけ、唇の端で呟く。

「否定はするが代案は出さない。さすがは制服組ですな……」

そして腕を組んで黙ってしまった。


緊迫した沈黙を破ったのは、ビル全体の微かな揺れだった。非常灯が赤く点滅し、モニターの映像が一瞬ブラックアウトする。

大江は口元を硬く結び、決定的な一文を呟く。

「今言えることは……空と地、二つの未知の脅威が同時に襲来した、ということだな。」


◆   ◆   ◆


 お台場上空・偵察ヘリ〈エコー1〉 午後二時五十二分


「官邸より。映像をもっと寄せろ!」

機長兼操縦士・安西一尉はヘッドセット越しの命令に苛立ちを隠せない。

浮遊岩盤の下面からは、雨雲のような黒いモヤの粒が次々滴り、風に乗って各方位へ散っていく。


「視界クリア。10秒後さらに30メートル接近」

その瞬間、計器が一斉に警告音を発した。

「高度計ノイズ! ジャイロ暴走!」


ヘリが見えない力に押されたように揺れ、ローターが軋む。

安西は操縦桿を引きつつ叫んだ。

「接近不能! 〈エコー1〉、機長権限で離脱します!」


副操縦士の山口三曹が青ざめた顔で続ける。

「安西さん!HUDオールレッド! コンパスもスピン!」


そこへ黒いモヤが凝集し、鋭い翼をもつ影に変わった。影はヘリと並走し、口腔から赤熱のブレスを吐きつける。

キャノピーに火柱——ガラスが蜘蛛の巣状に砕け、安西は絶叫した。

「でかすぎる……振り切れない!」


ヘリは海上を目指して急降下し、その機影は煙に飲まれていった。


◆   ◆   ◆


 秋葉原・中央通り 午後三時〇四分


ミナトは瓦礫の影に身を潜め、喉奥へまとわりつく甘焦げと鉄の匂いを吐き出した。


上空——ビル屋上から垂れ下がる電線がスパークし、その火花の裏で小さな黒いモヤが無数に生まれる。モヤは人型へ凝集し、翼を備えた影へ姿を変えた。


秋葉原、渋谷、新宿——都心の空は黒い斑点で埋め尽くされる。

夜空の星のように見えるそれは、確実に死を運ぶ種子だった。


「これを配信できたら……いくら投げ銭が来る?」

ミナトの口端が引きつる。同時に背中を汗が流れる。

「いや、スマホを構えた瞬間に俺もコトハのように……」


震える指がカメラ起動ボタンへ触れ、結局、長押しして電源を落とした。真っ黒な画面には、照明の消えた秋葉原と、自分の歪んだ笑みだけが映った。


◆   ◆   ◆


 SNSタイムライン(世界標準時 06:15/日本時間 15:15)


# Breaking: Mystery floating island appears over Tokyo metropolitan area.

 (速報:東京上空に謎の浮遊島出現)

# Breaking: Japan declares State of Catastrophe.

 (速報:日本政府、特別災害事態を宣言)

#PrayForTokyo  2,100,000 tweets

#Deathland     2,800,000 tweets


世界中のモニターが東京を映し、各国のニュースキャスターが声を失う。誰も正体を知らない黒い影と岩盤——。


人々は理解し始めた。日常の破壊は、これが序章にすぎないということを。





2025年5月6日火曜日

ゴリラの神から加護された令嬢は王立騎士団で可愛がられる(一部レビュー)

<あらすじ>

16歳になると、さまざまな動物神から加護を授かる世界。

主人公・ソフィア・リーラーは、戦闘系最強と言われる「ゴリラの神」の加護を引き当ててしまう。

同じ学校に通う年上の従騎士ルイ・スカーレルをはじめ、有望な若手騎士たちは、そんな彼女を優しく見守る。

――“ゴリラの力”から始まる、予想外の胸キュンラブコメディ!


<レビュー>

本作は、「突然怪力を手に入れた地味系女子の逆ハーレムラブコメ」という一風変わった設定の物語です。

一見すると聖女系アニメのようですが、“聖なる力”の部分が 「ゴリラの力」 に置き換わった、ユニークな亜種作品といえます。


王子様のような美男子たちから注目を浴び、他の女性たちの嫉妬に巻き込まれつつも、

結果的には周囲から愛され、応援される展開。

根っこの部分は王道の「聖女系アニメ」の流れを踏襲しており、女性向けの安心感ある物語です。


主人公のキャラクター像は、以下のような“定番”要素がしっかり盛り込まれています。


・目立ちたくない

・事件に巻き込まれがち

・優しさにあふれる

・結果的に活躍する

・やたらと好感度が上がりやすい

・ちゃんと化粧すれば美人


この「定番の塊」ともいえる構成に加え、“ゴリラの力”という超個性的な要素が加わることで、「王道の枠の中で個性が際立つ」 主人公像に仕上がっています。

まさにラブコメからバトルまで対応可能な万能型ヒロインです。


現在5話まで視聴しましたが、ゴリラの力に助けられたり、力加減を間違えて物を壊してしまったり、ラブ要素とコメディ要素のバランスがとても心地よい作品だと感じました。


また、ソフィアの感情が高ぶると、背後にゴリラのイラストが浮かび上がり、「内面描写をビジュアルで表現する」 演出もユニーク。

“聖女系アニメ”のフォーマットを守りつつ、“ゴリラの神の加護”という設定をしっかり活かしています。


正直、シナリオ自体は可もなく不可もなく、「聖女系あるある」の展開が続くため、先の読める部分も多いです。

しかし、時折挟まれる“ゴリラの神の加護”によるデメリットや笑いを誘うシーンが、良いアクセントになっており、飽きることなく楽しめる印象です。


タイトルのインパクトが強く、女性層が敬遠してしまいそうなイメージがありますが、中身は完全に“女性向け逆ハーレム聖女系作品” なので、女性視聴者も安心して楽しめる作品だと思います。




2025年5月4日日曜日

最強の王様、二度目の人生は何をする?(一部レビュー)

 <あらすじ>

史上最強の王様・グレイ。

比類なき力と地位を持ちながら、孤独に生きた彼に寄り添う者はいなかった。

そんな彼が“アーサー”として魔法世界に転生する。

前世とは異なる愛と冒険に満ちた、“二度目の人生”がいま始まる──!


<レビュー>

本作は、最強の王が“知識だけ”を持ち越して異世界に転生する物語です。

しかも、転生元の文明は現代以上に高度な発展を遂げた世界。

この「文明レベルのギャップ」が作品の大きな特徴となっています。


普通、異世界転生ものでは「知識チート」が無双の武器になることが多いですが、

この作品では、高度な知識であっても 技術やインフラが追いついていない異世界では活かしきれない という現実が描かれます。

たとえるなら「スマホの設計図を知っていても、通信網も半導体技術もない中世では作れない」ような状況です。


主人公のアドバンテージは、“大人びた思考力”や“精神力”、“技術的な身体操作”といった、

知識そのものではなく 知識を活かせる土台の部分 に限られています。

この「限定的なチート」が、逆に物語の魅力を高めています。


物語序盤では、魔法への早期覚醒により、主人公アーサーはわずか6歳で大人を不意打ちで倒せるほどの力を得ます。

しかし、あくまで「不意打ち限定」。

体格差や経験差の前に、正面からの戦いではまだまだ劣勢に立たされる場面があり、

その “完璧ではない強さ”が視聴者の緊張感を生んでいる のです。


「最強転生主人公なのに負けるかも?」という一抹の不安が、

テンプレの無双作品との差別化に成功しているポイントだと感じました。


さらに本作では、モノローグを通じて前世の自分と向き合うシーンも多く描かれます。

前世の冷徹な性格に対する“後悔”や、今の肉体で初めて芽生える“感情”に戸惑う様子。

「大人の精神で、子供の体と新しい感情を自己分析する」 という心理描写が非常に丁寧です。

この内面描写こそ、物語に深みを与える重要な要素だと思いました。


また、子供時代のエピソードがハイテンポで進むのも特徴です。

このテンポ感から、「早めに青年編に移るのでは?」「この先、何を成し遂げるのか?」

と自然に物語の未来が気になる構成になっています。


一方で、序盤から物語が丁寧に積み重ねられており、

「2クール構成?」「2期ありき?」「書籍誘導型の“俺たた”エンド?」

と終わり方への不安も感じ始めました。


まだ物語は序盤ですが、早くも今後の展開や結末が気になる、

見ごたえある異世界転生作品だと思います。



2025年5月1日木曜日

【小説】人類アンチ種族神Ⅰ 《異変》 

東京都・秋葉原、午後二時二十三分。

高校生ストリーマー ミナト は歩行者天国でスマホ用ジンバルを構え、メイド喫茶の新人メイド コトハ を映していた。

「いいね! ライブも盛り上がってるよ!」

ピースサインを返すコトハに、コメント欄は《かわいい》《尊い》《いいね×100》とハートまみれ。


ところが画面の背景――青空の一点に、黒い“モヤ” がぽつりと浮かんだ。

ミナトがズームすると、コメントは一転してざわつく。

――《ドローン?》《ゴミ袋?》《なんか増えてね?》《上見ろ上!》《もっと拡大できる?》《やばくね?》――


モヤは濃度を増し、翼を持つ人型の影に変質。さらに真紅の裂孔がぽっかり開き、黒い怪物が誕生する。しかも一体ではない。あっという間に三メートル級の怪物が無数に形成され、東京上空へ散っていく。


◆   ◆   ◆


渋谷スクランブル交差点。

就活帰りの大学生 蒼井隆司 は赤信号で立ち止まり、ハンカチで額の汗を拭った。

横目に映る大型ビジョンではミナトのライブが転載され、“黒い怪物が増殖中” のテロップが躍る。

「今時の生成AIは何でもありかよ……」と苦笑した直後、頭上を覆うほど巨大な黒影が現れ、気温が一気に下がった。


影は凝集して羽ばたき、真紅の口腔を開く。

ゴゥッ!――炎が横断歩道を薙ぎ、観光バスが爆裂。ガラス片と悲鳴が雨のように降る。

隆司は反射で走り出すが、視界の端にはまだ“現実”を飲み込めずスマホを掲げたままの人々がいた。


◆   ◆   ◆


逃げ惑う群衆。

手を繋いでいたカップルが必死に走るが、ヒールの彼女は速度が上がらない。

「はぁ、はぁ……待って……!」

「だ、だめだ! もっと速く!」

振り返った彼氏は、黒い怪物が彼女を獲物と定めた瞬間を見てしまう。自分にも伝播する底なしの殺意。

「ごめん!」

彼は手を振り払い、群衆へ紛れて逃げ去った。


「ヤダ……待って! たすけ――!」

彼女の悲鳴が途切れ、骨の砕ける鈍音と焼け付く匂いだけが残る。

隆司は耳を塞いでも鼓膜の奥でその音が反響し、胃液がこみ上げた。


◆   ◆   ◆


秋葉原。

ミナトのライブは瞬時に炎上し、コメント欄は阿鼻叫喚。

――《やばい》《秋葉だけじゃない渋谷も燃えてるぞ!》《黒い怪物多すぎ》《ガーゴイルじゃね?》――

“ガーゴイル”という単語が怒涛の勢いでタグ化されていく。


「嘘だろ……これ、現実?」

ミナトがコトハへ視線を戻した刹那、黒い怪物が彼女を掴み無機質に天高く連れ去り――無慈悲に放り捨てた。

声にならない悲鳴がライブ音声に乗り、十万を超えた視聴者へと響き渡る。


ミナトの手が震え、カメラがブレる。

秋葉原駅前ビルの壁面にも怪物が着地し、コンクリートを爪で抉った。


誰も正式な名前を知らない。

それでもSNSのタイムラインはこう決めつけた――

『ガーゴイル』――それが、この黒い怪物の名だ。


――都市は、奈落へ落ちた。




2025年4月29日火曜日

男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!)~レビュー~

<あらすじ>

とある田舎の中学校で、ある男女が永遠の友情を誓い合った。

ところが、悠宇が過去の初恋相手と再会したことで、突如二人の歯車が狂い出す。

果たして恋を知った日葵は〈理想の友だち〉から脱却できるのか?


<レビュー>

本作は、両想いでありながら中学時代に交わしてしまった「ずっと親友でいよう」という約束に縛られ、高校生になった今も関係を進展できずにもどかしい距離感を保っている男女を描いた恋愛アニメです。


最近の男性向け恋愛作品では、肉食系女子と草食系男子の組み合わせが多い傾向にあります。本作もその流れに沿っており、SNS普及によって告白リスクが高まった現代を背景に、男性側が慎重な立場をとる設定が自然と受け入れられやすくなっているように思います。


さて本作ですが、主人公とヒロインの双方から、あふれんばかりの「好意」がこれでもかと伝わってきます。

大人の視聴者からすれば「もう早くくっついてしまえ!」と叫びたくなるほどなのですが、そこをぐっと堪えて「親友」としての関係を丁寧に描きつつ、恋愛関係への進展は徹底して牛歩戦術的に進めていきます。


さらに、ヒロインには主人公の初恋の相手という強力なライバルも登場し、日葵は自分の気持ちに気づきながらも、「ずっと一緒にいたい」「一番じゃなければいやだ!」と心の中で叫びながら、現状をなかなか打破できずにいます。


この絶妙なもどかしさと甘酸っぱさこそが、本作最大の魅力だといえるでしょう。

短気な方には少しじれったく感じるかもしれませんが、不器用な若い男女の恋模様をじっくり味わいたい方には、非常におすすめできる作品です。


また、主人公の趣味が「アクセサリー作り」である点もユニークです。

一見すると変わった趣味ですが、これがヒロインたちとの接点づくりにしっかりと生かされており、小道具の使い方にもセンスを感じる作品に仕上がっています。


恋愛系アニメがお好きな方は、ぜひ一度視聴してみてはいかがでしょうか。




2025年4月27日日曜日

一瞬で治療していたのに役立たずと追放された天才治癒師 闇ヒーラーとして楽しく生きる ~レビュー~

<あらすじ>

険者パーティから「役立たず」と言われ、一枚の金貨を手切れ金に追放された治癒師の青年ゼノス。

ライセンスも持たないゼノスが路地を歩いていると、腹を刺され瀕死状態のエルフの少女リリと出会う。

貧民街の外れにある廃墟街でひっそりと開業した治療院を舞台に、無免許天才治癒師による無自覚最強ファンタジーが始まる――。


<レビュー>

本作は、いわゆる「追放系×無双系」のファンタジーアニメです。物語は、パーティの要であるはずのヒーラーが、役立たずと罵られて追放されるところから始まります。


冒頭の導入部分が非常に秀逸で、ヒーラーを無能扱いする前衛職リーダーの自己矛盾が鮮やかに描かれています。

考えてみれば、ヒーラーが忙しく立ち回っているということは、それだけ前衛が被弾している=前衛が無能ということ。逆にヒーラーが暇なら、前衛が優秀という話になるわけです。本作では、被弾しまくっていたリーダーが、自身の無能さにも気付かず、治癒師を追放してしまうという展開が描かれており、パーティの末路が容易に想像できる、素晴らしい導入になっています。


追放された主人公ゼノスですが、本作ではヒーラーの能力を大きく拡張して描いています。

回復術は、単なる治癒だけでなく「身体強化」の延長線上にあるという解釈になっており、ゼノスは剣や拳による攻撃はもちろん、この世界の銃撃すら「ちょっと痛い」程度で済ませる耐久力を身に付けています。さらに、ヒーラーとしては腕を切り落とされても再生可能という異次元の回復力も持っています。


ただし、これほどの力を振りかざして暴れるのではなく、あくまでも騒動に巻き込まれた際に「仕方なく使う」というスタンスで描かれており、押し付けがましさのない、現代的で好感の持てる主人公像に仕上がっています。


現時点ではまだ数話しか放送されていないため、ゼノスを追放した元パーティのその後の顛末なども含め、今後の展開が非常に楽しみな作品です。

追放系や無双系がお好きな方には、特におすすめしたい一作です! 




2025年4月24日木曜日

休載のお知らせ

こんばんは!管理人の緑茶です。

本日はリアル作業の都合で、いまだ帰宅できておらず更新することができそうにありません。

大変申し訳ありませんが休載とさせてください。


次回は、日曜日の更新となります。楽しみにしていただいており恐縮ですがリアル作業も

怠るわけにはいかず、ご理解をお願いいたします。


緑茶




2025年4月22日火曜日

俺は星間国家の悪徳領主! ~3話(一部レビュー)

<あらすじ>

星間国家アルグランド帝国の辺境を治める伯爵家に生まれ、幼くして当主となった転生者リアム。

善良さゆえに奪われ続けた前世を悔い、今度の人生では「悪徳領主」となり、民を虐げる側になることを決意する――。


<レビュー>

本作は「異世界転生×成り上がり×ロボットアニメ」という、非常に個性の強いジャンル要素が詰め込まれた作品です。一歩間違えば設定過多によって破綻しかねない構成にもかかわらず、SFやファンタジーの設定をバランス良く使い、ひとつの物語としてしっかり成立させている点から、作者の手腕の確かさがうかがえます。


現在(第3話時点)では、「現在のリアムによる無双展開」「転生前に虐げられた男としての記憶」「幼少期の準備期間を過ごすリアム」という3つの時間軸が描かれています。おそらく、幼少期のリアムから物語が進み、現在のリアムに繋がり、未来を描いていくという構成が予想されます。しかし第3話を終えても、リアムはまだ貧乏領主のままであり、ラストは「俺たちの戦いはこれからだ」系の締めくくりになる可能性が高そうです。


とはいえ、物語自体は非常に面白く、SF好きにも異世界ファンタジー好きにも刺さる作品に仕上がっています。ロボットの操縦スキルだけでは勝てないという設定から、ファンタジー要素である修行の必要性をしっかり描き込むなど、要素の融合にも説得力があります。


さらに秀逸なのは、丁寧に描くべきポイントと、省略すべき要素の取捨選択がとても巧みなところです。例えば、リアムの学習シーンはSF設定を活かしてAIによる機械的訓練に任せ、領地統治もメイドAIに丸投げしているため、無駄な描写を避けテンポが非常に良いです。これにより、視聴者が注目すべきシーンへ集中できる構造が成り立っています。


特に、領地経済がAIの手で瞬く間に改善される展開には説得力と快感があり、まさに「AI的な合理性」がうまく表現されていました。


あえて一点挙げるなら、シーンの切り替わりがやや唐突で、時系列のジャンプに一瞬戸惑うことがある点です。倍速視聴やながら見をしていると、いつの間にか時間軸が変わっている可能性があるため、視聴には多少の集中力を要します。ただし、しっかり画面を見ていれば混乱するほどではありません。


本作はTVerでも見逃し配信されています。第1話~第3話はそれぞれある程度の区切りがついているため、気軽に試し見するにはちょうど良いと思います。少しでも気になった方は、まずは最新話から視聴してみてはいかがでしょうか。




2025年4月20日日曜日

【お知らせ】Nサークル GWのお知らせ

こんばんは!

管理人の緑茶です。


本日はレビュー記事ではなく、お知らせになります。


詳しくは週末にNサークルのX(Twitter)にて発表予定ですが、ゴールデンウィークに複数のゲームがリリースされる予定です。現在、その追い込み作業をフル稼働で進めており、皆さまのお手元に無事届けられるよう、メンバー一同頑張っております。


そして――


このサイトでは、かなり久しぶりになりますが、私の小説をアップする予定です。こちらもゴールデンウィーク期間中に2回掲載を予定しております。ゲームシナリオとは異なる、私の個人的な物語をお届けできればと思いますので、ぜひお楽しみいただければ幸いです。



2025年4月17日木曜日

【ドラマ】ジョフウ~女性に××××って必要ですか?~(一部レビュー)

<あらすじ>

ひょんなことから、“パラディーソ”という女性用風俗店、通称・女風(ジョフウ)の内勤として働くことになったアカリ。はじめは風俗業界に抵抗があった彼女だが、女風を利用する女性たちのさまざまな悩みに触れる中で、個性豊かなセラピストたちと共に、一人でも多くの女性の要望に応えようと奮闘していく。


<レビュー>

タイトルからしてかなり刺激的で、0話切りされてしまいそうな本作ですが、実際の中身は想像以上に健全な内容で、ギャグを中心としたドラマに仕上がっています。家族での視聴は少し気まずいかもしれませんが、大人が一人で観る分には何の問題もない内容です。


主人公のアカリは、視聴者と同様に女風という存在に偏見を持った状態でこの業界に入ります。しかし、1話を見ればすぐに本作が性的な内容を主軸にしていないことに気づきます。女風をテーマにしつつも、サービス業としての側面に焦点を当てており、時に笑いを交えながら真面目に描かれているのが特徴です。


ドラマは原作漫画のコミカルな雰囲気をしっかりと引き継いでおり、漫画らしい非現実的な構成の中で、実際の俳優たちが演じるリアリティが見事に融合しています。役者の演技によって、目線の動きや表情、セリフの間合いなど、原作以上の情報量が加わり、ドラマならではの魅力を生み出しています。


こうした作りには、どこか『逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)』に通じるものを感じました。作品全体がコミカルでありながらも、テーマは現代社会の問題に切り込んでいる。その点でも、女風という題材に真っ正面から向き合うこの作品は、非常にチャレンジングでありながら見応えのある内容です。


0話切りしてしまうのは非常にもったいない作品です。もし少しでも興味を持たれた方は、Netflixで1話だけでも視聴してみてください。私自身、正直かなりハマってしまいました。

(下記Youtubeでも期間限定ですが視聴できます)



2025年4月15日火曜日

片田舎のおっさん、剣聖になる ~第2話(一部レビュー)

 <あらすじ>

片田舎で道場を構える、しがない剣術師範の中年、ベリル・ガーデナント。

剣士としての頂を目指した日々は遠く過ぎ去ったが、実直に鍛え続けたその剣の腕は、いまや“片田舎の剣聖”と称されるほどの域に達していた――。


<レビュー>

おじさんが主人公の“無双系”異世界アニメです。

この手のジャンルでは、少年や少女など若いキャラクターが主役になることが多い中、本作では中年男性が主役として活躍します。


本作は転生ものではなく、あくまで異世界に生きるベリルという男が、自らの鍛錬によって地位と実力を築いたという物語です。年齢的にはすでにピークを過ぎたはずのベリルですが、長年の積み重ねによる技術と身体の使い方、そして卓越した動体視力により、若手にも引けを取らない戦闘を見せてくれます。


戦闘描写は、ただ強さを誇示する“無双系”ではなく、「熟練者の戦い方」として描かれている点が本作の魅力の一つです。若さに頼らない、年齢を重ねた者だからこその体さばきや駆け引きがしっかりとアニメーションで表現されています。


また、ベリルの人物像も魅力的です。強さを誇ることなく、常に謙虚であり、トラブルにも穏やかに対処しようとする姿勢が、“大人の主人公”として視聴者に安心感を与えます。キャッチーなタイトルだけで終わらず、内容でも主人公の人格や世界観の深みをきちんと描いている点に制作陣の意気込みが感じられました。


さらに、本作には控えめながらも“ハーレム要素”も含まれています。かつての教え子が大人になって再登場し、主人公に淡い恋心を抱くという展開は、年齢を重ねたベリルの背景や、彼が長年剣にすべてを捧げてきた人物であることを視聴者に伝えます。

その上で、恋愛要素としても作品に自然に溶け込ませており、物語全体に程よい刺激と深みを加えていました。


物語はまだ序盤ですが、2話の時点で既に高い完成度を感じさせる作品です。今期の中でも、注目に値する良作だと感じました。興味のある方は、ぜひ一度ご視聴いただいてはいかがでしょうか。




2025年4月13日日曜日

【軽い日記的なもの】緊急メンテ!

こんにちは、管理人の緑茶です。


今回は緊急でこの記事をお届けしています。


本日、Nサークルの開発サーバにて機器の異常が発生しました。夕方ごろから接続が不安定になり、断続的に切断される現象が続いていたため調査を行ったところ、監視ソフトが機器不良を検知していたことが判明しました。


急ぎ、ニックさんと二人で原因の究明と対応にあたり、ハードウェア保守の手配を行いました。


利用者として緊急メンテナンスに立ち会う機会は何度かありましたが、運営側としてこのような本格的な障害対応に関わるのは初めての経験で、最初は右往左往するばかりでした。そんな中、ニックさんの手際の良さと冷静な判断力には本当に驚かされました。


なんとわずか3時間ほどで、原因の特定から保守手配、関係者への連絡、対応方針の策定、復旧後のチェック項目まで、すべてを段取りしてしまう手腕には感嘆するばかりです。まさに本職の実力を垣間見た瞬間でした。


また、サークル用のサーバでありながら、きちんとメーカーと保守契約を結んでおり、有事の際には翌日対応ができる体制が整っていたことにも驚かされました。我々の知らないところで、毎月、あるいは毎年しっかりと保守費用を支払ってくれていたことに、頭が下がる思いです。


現時点ではまだ完全復旧には至っていませんので、安心はできませんが、今回の一連の対応は非常に貴重な体験となりました。ということで、今回はこの出来事を日記として記録させていただきます。


あらためて、貴重なデータを預かるサーバを運用・管理するという責任の重さと重要性を強く実感しました!



2025年4月10日木曜日

活動レポート 2025年3月

こんにちは、管理人の緑茶です。

今回は先月の活動をゆるっと振り返る「2025年3月の活動レポート」をお届けします。


【実績】


作家関連のお仕事は……ゼロ!

今月も安定のゼロでした!


【雑感】

■ レビューの話題

冬アニメの最終回ラッシュに合わせて、いくつかの全体レビューを投稿しました。

また、『ドラゴンクエストX(DQX)』関連の記事もいくつかアップし、ありがたいことにDMなどでご意見もいただきました。賛否両方ありましたが、今後の記事制作にしっかり活かしていきたいと思います。


■ DQXの話題

リアルの多忙でログイン時間は限られていましたが、イベント「ミルドラース」には何とか挑戦できました。私自身は初日討伐という結果でしたが、記事でも述べた通り、エンドコンテンツをミドル層に無理に強制するのは少し違和感があるように感じました。


■ YouTubeの話題

過去に何度かホリエモンチャンネルや政党系チャンネルを覗いたことがあったのですが、未だにおすすめ欄にその手の動画が表示され続けているのがちょっと困りものです。

ミュート機能など、興味がなくなったチャンネルを制御できる機能があると便利だなと感じます。


■ その他の話題

ゴールデンウィークに向けて、これまで多忙を理由に後回しにしていたゲーム制作タスクを一気に着手する時期になりました。

おかげで最近のNサークルのX(旧Twitter)も活気に満ちており、嬉しさ半分、プレッシャー半分といったところです。


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以上、3月の活動レポートでした。

今月も引き続き更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします!


ズズズイッとお付き合いください!

2025年4月8日火曜日

ニートくノ一となぜか同棲はじめました(一部レビュー)

 <あらすじ>

平凡なサラリーマン・安海政を妖魔から守護するため、居候を条件に主従契約を結んだ天才くノ一・出浦白津莉。颯爽と妖魔を倒すその姿とは裏腹に、白津莉はゲームに明け暮れるオタクで、ニート生活を満喫していました。

そんな彼女を甘やかす政とのぐうたら同棲生活に、クセの強いくノ一たちも加わって――

オタクでニートな天才くノ一との、ちょっと不思議な同棲ラブコメディが始まります。


<レビュー>

なし崩し的に始まったくノ一との同棲生活のなかで、家主と居候という関係から、次第に主従関係が強まり、やがてはその枠を超えていく関係性が丁寧に描かれているラブコメ作品です。


一話完結型のスタイルで構成されており、基本的には妖魔から政を守るという軸がありつつも、内容の多くはくノ一関係者たちのドタバタ劇を中心としたコメディになっています。


特筆すべきは、可愛らしい画風を活かしながらも、それを裏切るかのような多彩な“顔芸”の演出です。ヒロインたちが見せる、アニメ作品ではあまり見かけないような表情は、本作ならではの魅力となっています。


また、毎話のコメディ要素を楽しみながらも、政と白津莉の関係が少しずつ深まっていく構成になっており、笑いと恋愛要素がバランスよく同居した作品だと感じました。


本作は全24話(2クール)予定で、4月以降も引き続き放送されています。12話までは白津莉が政を守る立場でしたが、13話では彼女がニート生活を脱却し、家事や炊事に積極的に取り組む姿が描かれました。それを見た政が、今度は主として白津莉を支えようと決意する流れが印象的で、14話以降の展開がとても楽しみです。


ラブコメ好きの方、テンポの良いコメディをお探しの方には特におすすめの作品です。




2025年4月6日日曜日

アラフォー男の異世界通販(終)(一部レビュー)

<あらすじ>

アラフォー独身男・ケンイチは異世界に転移し、現代の商品を購入できる通販チート能力を手に入れます。その力で商人として成功し、スローライフを目指しますが、王女リリスとの出会いや、周囲の少女たちとの関わりの中で、さまざまなトラブルに巻き込まれていきます。異世界で自由な生活を求める男のファンタジーが始まる――!

<レビュー>

異世界転生と通販という、現在の流行を組み合わせた作品です。主人公が中年男性という点も、近年の定番になりつつあります。

本作はそうした定番構成を踏襲しつつも、シナリオの進め方、特にテンポの良さが非常に特徴的でした。テンプレート的な異世界設定は、最低限の説明にとどめることで、物語のテンポを重視して進行していきます。

そのため、視聴者を飽きさせることなく、次々と物語が展開していく点は大きな魅力です。また、章ごとにヒロインが変わる構成となっているため、好みに合わなかったヒロインが登場しても、すぐに次の展開へと移行できる仕組みになっており、視聴者離れを防ぐ工夫も見られました。

主人公のケンイチは、倫理観のやや軽い、しかしどこか憎めない人物として描かれています。相手が人間であっても、獣人であっても、王族のメイドであっても、積極的な姿勢を崩しません。地上波アニメであるため直接的な描写はありませんが、情事の前後のやり取りなどから、彼の奔放な一面が垣間見えます。

通販設定も物語の最後までしっかりと活かされており、作品全体において設定や構成に一貫性がありました。説明の少なさゆえに、人を選ぶ作品ではありますが、ハマる人には非常に魅力的に映ることでしょう。

現時点ではピンと来なかった方も、2年ほど経ってから見返すと、むしろ楽しめる作品かもしれません。終わり方は「俺たちの戦いはこれからだ!」という、いわゆる“おれたたエンド”で締めくくられており、今後の第2期に期待が高まるラストでした。





2025年4月3日木曜日

ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います(終)(一部レビュー)

<あらすじ>

アリナが不満を爆発させると、隠し持った一面が顔を出す。何を隠そう彼女こそ、正体不明・神出鬼没、街で噂の凄腕冒険者〈処刑人〉その人だった!

しかしその事実は絶対に隠し通さねばならない。なぜならギルドの受付嬢は副業禁止。バレたら即刻クビなのだから――。


<レビュー>

平穏を望み、受付嬢として暮らしている主人公が、実は凄腕の冒険者でもあるという設定のアニメです。


まず最初に印象的なのは、キャラクターたちのビジュアルの良さです。主人公のアリナだけでなく、他の女性キャラも非常に魅力的に描かれており、視覚的にも楽しめる作品になっています。


物語の中心では、アリナが好意を寄せるジェイドを助けるため、危険なボス討伐に身を投じます。彼女は傷つきながらも魔人を討伐し、視聴者の心を掴む王道の展開が繰り広げられます。受付嬢でありながら正体を隠して戦うという設定も、物語後半にはギルドマスターを含む主要人物にはバレてしまっており、逆に物語の制約が取れてテンポよく展開していく点が好印象でした。


正体を隠すというドキドキ感に加え、可愛らしいアリナが大きなハンマーを振るってボスを叩きのめすという豪快さが、この作品の大きな魅力でもあります。バトルアニメとしての見応えだけでなく、ジェイドとのラブコメ要素もほんのりと描かれ、バランスよく仕上がっています。


また、戦闘では吐血などややショッキングな描写もありますが、作画がリアル過ぎないことで緊張感はありつつも不快感は抑えられており、視聴のハードルが高くないのもポイントです。


アリナのキャラクター性も手伝って、現実のフィギュアやグッズ販売面でも人気が高まっており、クレーンゲームの景品に選ばれるなど、商業的な成功も見られました。


全体としては、敷居が低く可愛らしい作風の中に、ほどよい戦闘描写とゆるやかなラブコメが盛り込まれたバランスの良いアニメです。戦闘描写が多少苦手な方でも楽しめる作品になっており、未視聴の方にもおすすめできる一本だと思います。




2025年4月1日火曜日

聖女なのに国を追い出されたので、崩壊寸前の隣国へ来ました(終)(一部レビュー)

<あらすじ>

聖女リーシャは、婚約者であるバーズーデン国の国王に追放され、隣国メートポリスへと送られた。

聖女の加護を失ったバーズーデン国では、やがて不穏な変化が現れ始める――。


<レビュー>

本作は「アニコミ」と呼ばれる、アニメと漫画の要素が融合したようなスタイルで制作された作品です。アニメとして見るとやや簡素な印象を受ける一方で、漫画としては非常に丁寧に描かれており、独特なビジュアル体験を提供してくれました。


ただ、この形式は地上波で放送するにはやや馴染みにくいと感じました。テレビで流すと、ぱっと見では漫画のCMのように見えてしまい、視聴者の興味を引くには難しい面があったように思います。むしろ、YouTubeやアプリ配信など、短尺でテンポよく視聴できる媒体の方が相性が良かったのではないでしょうか。


作品の内容自体は非常に王道の「追放系×聖女もの」として安定感がありました。

二人目の聖女の登場や、偽聖女といったスパイスも加えられ、シナリオに深みを持たせていた点は好印象です。


ただし、構成面ではやや物足りなさを感じました。特に物語の焦点が、リーシャが受け入れられたメートポリス側の環境改善に偏っていたため、追放元であるバーズーデン側の状況が十分に描かれないまま終わってしまった点は残念でした。

最終話でわずかに触れられ、「詳しくは漫画で!」というような締め方だったため、ややCM的な印象を拭えませんでした。


アニコミという新しいスタイルに不慣れな視聴者にとって、せっかく楽しんでいた作品の終わり方が「これは漫画の宣伝でした」と突き放されたように感じられる構成は、やや不親切だったように思います。


全体としてはテンポも良く、キャラクターも魅力的で楽しく視聴できるシリーズでしたが、終わり方の演出次第でもう一段視聴者の満足度を高められたのではないかと感じました。


個人的には、もしこの作品が通常のTVアニメ形式で展開されていたら、もっと多くの視聴者に受け入れられていたのではないかと想像してしまいます。できれば、改めて通常のアニメとして再構成された続編を見てみたいと思わせる、そんな作品でした。




2025年3月30日日曜日

【DQX】「伝説の宿敵たち」開催!「ミルドラース」レビュー

<ミルドラースとは>

『ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁』に初登場した魔王で、自らを「魔界の王にして 王の中の王」と称する存在です。

魔界の最奥に居を構え、配下を使って人間界を侵略しようと暗躍します。


<レビュー>

バージョン6で実装されたエンドコンテンツのひとつ、「伝説の宿敵たち」にて開催中の「ミルドラース討伐」。

今回は期間限定イベントとして登場しており、4人用と8人用のオートマッチングが用意されています。


オートマッチングでは難易度が大きく変動することがありますが、これはDQXに限らず多くのオンラインコンテンツの共通課題ですので、今回はミルドラース戦に絞ってレビューを行います。


まず、ミルドラースは光る床を避けたり、ボスの行動を見て後出しで対応する「後出しジャンケン」型のバトルが要求されます。

フィールドが狭く、味方を巻き込んでしまうタイプの回避困難な攻撃も多いため、エンドコンテンツとしての手応えは十分です。


ボスの行動はある程度パターン化されており、慣れてくると感覚的に回避や対処ができるようになり、徐々に楽しさが増してくる設計になっています。


初日にはSNS上で「強すぎる」といった声が多く見られましたが、それらの投稿を確認してみると、もともとエンドコンテンツには縁がなかったプレイヤー層の方々も多く含まれていました。

このため、エンド未経験のカジュアル勢にとっては、かなり敷居の高い内容だったのだと思われます。


実際に参加してみた印象としても、オートマッチングで出会ったメンバーの中には職業の役割を把握していなかったり、ボス技の名称から行動を予測できない方が多く見受けられました。


こうした層にとって、今回のイベントは正直「不評」だったのではないでしょうか。

せっかく作られた良質なボスにも関わらず、ユーザーから不満の声が多く出てしまったのは、やはり「報酬」の設定に問題があったように思います。


今回の討伐報酬は、ドラクエシリーズでも屈指のおしゃれ装備。課金してでも欲しいと考えるプレイヤーが多いであろう人気アイテムです。

それをエンドコンテンツの報酬にしてしまったため、普段はエンドを遊ばない層も「仕方なく」参加することになり、不満が噴出したのだと考えられます。


おそらく運営側としては、「報酬を魅力的にすることでエンド人口を増やしたい」という狙いがあったのでしょう。しかし、この方針はMMORPGというジャンルにおいては「悪手」と言わざるを得ません。


というのも、エンドコンテンツの人口割合は低く保たれるべきだからです。

例えば、サービス中のゲームに新規プレイヤーが入ったとき、全体のプレイヤー1000人中900人がエンドプレイヤーだったらどうでしょうか?

どのコンテンツも「最強装備・完璧な予習・カンスト育成」が求められ、参加のハードルが非常に高くなってしまいます。結果、新規は定着せずに離れていってしまうのです。


ドラクエ10の良さは、「ただおしゃべりしているだけ」「コスプレを楽しんでいるだけ」といった、プレイ時間は長くてもプレイスキル的には中間層であるミドルプレイヤーの存在です。

このミドル層が、新規プレイヤーと自然に交流することで、やがて彼らがミドル層になり、さらにその一部がエンド層に到達するという、良い循環ができていました。


今回の施策は、そのミドル層を無理やり上に引き上げるような構造になっており、長年培われてきたDQXの基盤に逆行しているようにも感じます。


エンドコンテンツの人口は、全体の5%前後で十分です。

重要なのは、新規が入ってきて、中間層として定着しやすい環境が保たれていること。そのため、エンドの報酬には魅力を持たせすぎるべきではありません。


ミルドラース自体は、動きや演出も面白く、バトルとしての完成度は非常に高い良ボスだったと思います。

しかし、イベントとしての設計――特に報酬の設定とターゲット層の誤り――によって、結果的に「悪手」になってしまったのは非常に残念でした。


【総評・感想】

ミルドラースはボスとしては非常に優秀で、やりがいのあるエンドコンテンツだったと思います。しかし「誰に向けて提供するのか」「その報酬は誰が欲しがるのか」といった設計のバランスを誤ってしまった印象です。


イベントとコンテンツは切り分けて考えるべきで、今回のように「エンドコンテンツに参加しないと入手できない大人気アイテム」を報酬にしてしまったことで、多くのプレイヤーが戸惑ったのではないでしょうか。


エンド層のモチベーション維持と、新規・中間層の居場所の両立は、今後のDQXの運営における大きな課題となるでしょう。今後のイベント運営には、そうした視点のバランスを期待したいところです。


2025年3月27日木曜日

外れスキル《木の実マスター》 (終)(一部レビュー)

<あらすじ>

何度でも“スキルの実”を食べることで、無限に能力を得られるというチート能力を発現した主人公。

最初は「最下位スキル」とされた《木の実マスター》の真の力が明かされ、彼の大冒険が始まる――!


<レビュー>

本作は少し珍しい構成となっており、実質的には第8話が本編の最終回。

そして第9話から第12話までは、ヒロイン視点を中心とした外伝的なエピソードで構成されていました。


7話~8話に登場する強敵は、物語的に中ボスのような位置づけではありますが、実質的には主人公のラストバトル。

そのために異常なほど強く描かれており、納得の演出でした。


本編終了後は物語がヒロイン側に切り替わり、彼女の視点から描かれる4話分の外伝が展開されます。

この外伝パートが予想外に濃密で、キャラクターの関係性や敵役の背景に至るまで、しっかりと作り込まれていました。


原作未読の筆者から見ても、この外伝はあたかも別の監督が手掛けたかのような緻密さとテンポの良さがあり、非常に見応えのある構成だったと感じます。


全体を通してみると、本編8話+外伝4話の構成で、最終話には「俺たちの戦いはこれからだ」といった雰囲気を残したまま幕を閉じました。

さらに、最後に新キャラクターが主人公パーティーに加入する描写もあり、2期を意識した伏線がうっすらと張られていたのが印象的です。


このアニメ最大の魅力である「無限にスキルを得られる」という設定は、確かに目を引く個性ではあるのですが、1話から8話までの本編では、その能力を全面的に活かしての無双展開はほとんど描かれませんでした。

スキルを得る描写はあるものの、「積極的に能力を得て無双する」とまではいかず、どこか煮え切らない印象が残りました。


ただし、その分、戦闘における緊張感や、物語の起伏はしっかり保たれていたとも言えます。

「無双系」としての爽快感を求める人には少し物足りないかもしれませんが、「バトルにドラマ性を求める視聴者」には十分楽しめる内容だったのではないでしょうか。


2期の制作はメディアの売れ行きにかかっていそうですが、個性を活かしつつも未完成な部分がある本作が、次の展開でどう進化していくのかに期待したいところです。


<総評・感想>

構成の大胆さと、外伝パートの密度が印象的な作品でした。本編がやや物足りない展開だっただけに、外伝がそれを補う形になっており、「後半に化けるタイプの作品」と言っても過言ではありません。

2期があるとすれば、本編の課題であった無双の見せ場をしっかり描いてくれることを期待したいです。


王道のファンタジーとはひと味違う構成を楽しみたい方にはおすすめの作品だと感じました。



<編集後記>

ギリギリ更新が間に合いました!よかった!


2025年3月23日日曜日

クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。(終)(レビュー)

<あらすじ>

高校生の北条才人は、なんとクラスメイトと結婚することに。しかも相手は学校で一番苦手としていた女子、桜森朱音。

そんな二人が一つ屋根の下で過ごすうち、徐々に距離を縮めていきます。素直になれそうでなれない二人が織りなす胸キュンの新婚生活が、ここに開幕します。


<レビュー>

YouTube発の王道ラブコメとして話題を集めた本作も、ついに最終回を迎えました。全話を通してみた感想としては、終始「昭和感」を感じさせる、どこか懐かしい空気に包まれた作品だったように思います。


終わり方についてはネタバレになりますが、きっちりと「俺たちの恋愛はこれからだ!」という王道の締めくくり方。最初から両想いでありながらも、親の意向で学生結婚をすることになった二人が、さまざまな経験を通して少しずつ心を通わせていく物語でした。想定通りではありましたが、安定感のある展開だったと思います。


最終回ではヒロイン・朱音の恋心が大きく花開きますが、その後に劇的な進展はなく、「感情が高まったところで終点をあえて定めずに終える」という、かつてのラブコメ作品に多く見られた締め方でした。たとえば『うる星やつら』のTVシリーズも、長期にわたって距離を縮めたり離れたりを繰り返しながら、視聴者を飽きさせずに物語を続けていたことを思い出させます。


本作も同様に、メインのラブコメ要素に大きな進展がない分、毎話ごとの小さなエピソードが丁寧に作り込まれていました。「どうせ進展しない」と思いつつも、つい毎週見てしまう、そんな不思議な魅力がありました。


また、YouTube版と比べてTVアニメ版は演出やエピソードのクオリティが大きく向上し、登場人物の数こそ少ないものの、それぞれが個性的に描かれており、TV版ならではの面白さをしっかり感じることができました。


全話を通して観た今、もう一度見返してみたいと思える作品です。特にYouTube版と比較しながら観ると、その進化ぶりがより一層楽しめるかもしれません。


【編集後記】

年度末で作業場が多忙のため、次回火曜日の更新は休載とさせていただきます。予めご了承ください。

木曜日の更新については、可能な限り記事を出せるよう努力いたします!




2025年3月20日木曜日

俺だけレベルアップな件 Season 2 ~23話 (一部レビュー)

<あらすじ>

異次元と現世界を結ぶ通路「ゲート」、そして「ハンター」と呼ばれる特殊能力を持つ人間たちが存在する世界。人類最弱兵器と呼ばれる最低ランクのハンター、水篠 旬は、ある日突然「レベルアップ」する力を手に入れる。彼はダンジョンを攻略し、難病を患っていた母親を救うことに成功する。しかし、それは新たな戦いの始まりにすぎなかった——。


<レビュー>

物語が進むにつれ、A級やS級といった高ランクのハンターがメインになってきました。主人公の水篠 旬もE級からS級へと再認定され、徐々にその強さが周囲に認識されていきます。そのため、これまでの「E級なのに異常に強く、周囲を驚かせる」展開から、「底知れない強さを持つS級として注目される」展開へと変化し、物語の面白さがさらに増してきました。


また、2期のメインシナリオの一つであった「母親の病を治す」という目的がついに果たされ、新たに巨大蟻殲滅編へと突入しました。これまでのバトルでは、モンスターや魔族とハンターたちが戦う構図が中心でしたが、今回のエピソードではS級ハンター同士が模擬戦を行う場面も描かれています。


この模擬戦の描写によって、視聴者にとって漠然と「強い」と思われていたS級ハンターたちの間にも、実力差や相性があることが明確になりました。それぞれの能力がどのように戦闘に影響を与えるのかが具体的に描かれることで、これからの蟻編におけるバトルがさらに楽しみになりました。


また、A級とS級の差の大きさも明確に示され、S級ハンターがどれほど貴重な存在なのかがより実感できる構成となっています。戦闘シーンの迫力も抜群で、特にS級ハンターたちと蟻の壮絶な戦いは圧巻の演出でした。豪華な声優陣の演技も相まって、非常に見ごたえのあるシーンとなっています。


公式がYouTubeで一部のシーンを公開しているので、まだ視聴していない方はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。




2025年3月18日火曜日

サラリーマンが異世界に行ったら四天王になった話 ~11話(一部レビュー)

<あらすじ>

異世界に君臨する魔王軍の四天王。その最後の一席に選ばれたのは、冴えないサラリーマン、ウチムラデンノスケだった。特別な能力を持たない彼は、サラリーマンとしての経験と知恵を活かし、異世界の難題に立ち向かっていく。


<レビュー>

11話では、大量のワイバーンと戦う最終決戦へと突入しました。ここまでの物語の前半で、主人公が四天王や魔王軍の仲間たちと築き上げてきた信頼関係が、この戦いの中で存分に発揮される展開となっています。


異世界に転生しながらも、個性的で圧倒的な力を持つ仲間たちに押されがちだった主人公。しかし、今話では指揮官として最前線に立ち、兵士たちを鼓舞する演説を行います。このシーンは、彼がこれまで培ってきたものを活かし、成長を見せる非常に感動的な場面でした。


少々気になった点としては、総力戦のはずなのに登場人物の数があまりにも少ないことです。画面外にいる兵士の存在を想像して補完する必要があるとはいえ、魔王軍の戦力はせいぜい300人程度。特に囮となる女性集団に至っては小隊規模で、戦場のスケール感が物足りなく感じました。最終決戦のはずなのに、小競り合いのような印象になってしまったのは少し残念です。


とはいえ、シナリオ自体は非常に熱く、主人公を支える仲間たちの絆が見どころです。弱気になった主人公を励ます仲間、満身創痍で駆けつけるヒロイン、信頼を得たことで援軍に駆けつける四天王の仲間たち。これでもかと言わんばかりに熱い展開が続き、胸が熱くなること間違いなしです。


また、ワイバーンとの戦いが終わったかと思いきや、さらなる強敵である超巨大ワイバーンが出現。さらに、その後も予想を超える展開が待ち受けており、主人公たちは絶望的な状況へと追い込まれてしまいます。そのタイミングで、満を持して「あの人物」が助けに来るという王道展開が炸裂。ベタではありますが、だからこそ高揚感が止まりません。


11話で物語が大きく収束したようにも見えますが、次回の12話でどのように締めくくられるのか非常に楽しみな作品です




2025年3月16日日曜日

【軽い日記的なもの】日々雑記

こんばんは!管理人の緑茶です。

本日は、最近のネタ帳から、気になった話題を三つご紹介したいと思います。


【ドラクエ10を改善するなら?】

これは、同人ゲームのネタとして考えたドラクエ10の改善案です。


まず、ピラミッド・パニガルム・不思議の魔塔の三つは、プレイヤーにとって面倒なコンテンツになりがちです。どれか一つならまだしも、すべて必須になっているのが問題でしょう。個人的には、共通のポイント制に変更し、そのポイントでアンクやカード、箱庭の強化ができるシステムにすれば、負担が減るのではないかと思います。


また、ドラクエ10は「SE待ち」や「ムービー待ち」が多く、テンポの悪さが気になる部分です。例えば、バトルロードのバッジ開封時など、SEが鳴り終わるまで操作を受け付けない仕様になっています。最近のゲームでは、ミュートで遊ぶことも想定し、SEを途中でキャンセルできるものが多いです。これを考慮し、演出上必須なSE以外はキャンセル可能にするオプションがあれば、快適になるのではないでしょうか。


【アニメ業界の「放送できればいい思想」の広がり】

最近の深夜アニメは、作品によって品質の差が激しくなっていると感じます。作画コストを抑えるためのテクニックは昔からありました。例えば、口の動きだけをパクパクさせることで、表情の作画を簡略化する手法はよく知られています。


しかし、最近は「個性」と称して、明らかに低予算と分かる作画を平然と使ってくる作品も増えてきました。これは制作側のコスト削減の意図もあるでしょうが、視聴者としては単なる「手抜き」としか感じられないことも多いです。日本のアニメは品質の高さが一つの魅力なのに、これが当たり前になってしまうと、アニメ業界の価値自体が下がってしまうのではないかと心配になります。


【イラストAIの普及と業界の反応】

最近、さまざまな分野でAIが導入されていますが、イラスト業界も例外ではありません。生成AIは、ゼロからイラストを作るだけでなく、色塗りや補完機能も充実してきました。


しかし、イラスト業界ではAIイラストに対して否定的な意見が多いようです。理由の一つは、無断盗用の問題。そしてもう一つは、AIによって新人育成が難しくなることです。特に「自分が何年もかけて習得した技術を、AIが一瞬で再現できてしまう」という点に、クリエイターの苦労が報われないと感じる人もいるのではないでしょうか。


この流れの中で、AdobeのPhotoshopは積極的にAI機能を導入しています。先行して特許を取得し、市場の主導権を握ろうとしているように見えます。一方で、CLIP STUDIOはAI機能よりも、デッサン人形や影の補助機能など、人間のクリエイティブを支援する方向に進んでいます。


「AI推進派」と「AI非推奨派」の構図になりつつありますが、今後どのように市場が変わるのか、とても興味深いですね。


【まとめ】

今回は、ドラクエ10の改善案、アニメ業界の制作スタンス、イラストAIの動向という三つの話題を取り上げました。雑記形式でまとまりのない内容ではありますが、どれか一つでも興味を持っていただけたら嬉しいです。


では、また次回の記事でお会いしましょう!