季節は冬。薄暗い雪空の中、俺はリビングのコタツで暖を取っている。
「ふぅ。もうすぐ年末かぁ」
高校生にもなって年末年始の楽しみがテレビだけって、俺は大丈夫なんだろうか?中学生の時に見た高校生とは、もっと大人びた印象を持っていたのだが自分がなってみるとあまり変わらないことに驚いている。
トントントンと速いテンポで階段を下りてくる音がする。
「お兄ちゃん?暇でしょ?」
妹のハルがゲーム機を持ってリビングにやってきた。
「お前、受験勉強しなくていいの?」
メンドクサイのでつれない返事をする。
ハルは黙ってコタツに潜り込み、冷たい手で俺の手を握ると上目遣いで俺に言い返してきた。
「息抜きだよ。イ・キ・ヌ・キ。てかさ、お兄ちゃん朝からずっとコタツから出てこないんけど大丈夫?根付いてんじゃないの?」
「大丈夫だよ・・・あれ?」
俺が起き上がろうとすると、俺の動きに合わせてコタツが動く。
一瞬混乱したが、すぐにハルのイタズラだと分かった。ハルが俺の足首とコタツの足首をヘアバンドで繋いだのだ。
「へへー。びっくりした?びっくりしてたよねー。ウシシ」
この笑顔。あざといなぁ。妹ってのは自然と兄に可愛がられる特殊能力でも持っているんじゃないかと思ってしまう。
「で、何?お兄ちゃん忙しいから」
とりあえず自分のペースを取り戻そうと塩対応を続ける俺。
「えー。つれないなー。ぽんぽこテニスやろうよー?ほらっ!」
俺の返事を気にする様子もなく、ハルはゲーム機をテレビに繋ぎ俺にコントローラーを渡してきた。
「だから、やらないって言ってるだろ!」
俺はちょっとキツめに言うと、ハルへコントローラを投げ返した。
だがその行動も想定内と言わんばかりにハルは言葉を返してくる。
「ええー?このゲームオンライン対戦もできるんだよ?やらないの?」
「オンライン?対人戦かよ。余計やらんわ!」
年末の至福の怠惰タイムをハルの趣味に付き合わされてたまるか。俺は絶対拒否の意思を持ってゲームを拒絶した。
するとハルは悪~い笑みをこぼすと声のトーンを1つ上げた。
「いいの?やらないの?あぁそう。折角対戦相手も用意してあげたのに~」
ハルは俺の視線を誘導するようにゲーム画面を指さした。
するとその先に「対戦ペア:鮎川(姉)・鮎川(妹)」の文字が!!!
鮎川(姉)とは超絶美人の俺の幼馴染である。幼馴染と言っても最近はちょっと疎遠になっていた。内心では仲良くしたいと思っていた相手だ。
「あ、やっぱり俺も・・」
俺の動揺を察知したハルは、ニヤリと笑い俺のコントローラーをポケットにしまう。
「お兄ちゃんは忙しそうだから、ハルはコンピューターとペアを組んで遊びますね。それとも急に暇になったお兄ちゃんが、カラスの物まねでもしているようならお兄ちゃんを誘いますが・・・?ふっ」
ハルは完全にマウントを取りに来やがった。だが、俺に拒否権はない。悔しいが妹の手のひらで遊ばれてやるしかなさそうだ・・・。
「クァー。クァー!!やったぞ!」
俺はコントローラーを手に入れた代わりに、何かを奪われたような気がしたが、鮎川とオンラインで遊べる嬉しさが全てを忘れさせた。
ハルは満足げに笑みを漏らすと元気よく声を上げた。
「ゲームスタート!」
~ 完 ~
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【編集後記】
4年ぶり?くらいの鈴木兄妹の短編です。
超短編なのでオレたたENDですみません。
2015年にキャラメイクされたキャラなので実質5年ぶりに小説に登場しました。私の小説の原点ともいえるこの兄妹を動かしてみたくなり久しぶりに短編小説を執筆しました。
これで約1200文字。改行等を含めると原稿用紙3枚~4枚分ですね。
久しぶりの割にソコソコまとまって満足です(笑)
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