2025年8月28日木曜日

【DQX】Ver7.5 新職業「隠者」使用感レビュー

■ 隠者とは

「隠者」は、「僧侶」と「レンジャー」のレベルを一定以上まで上げることで解放される「マスタークラス」です。

この職業は、僧侶の回復力とレンジャーの支援能力を併せ持ち、「ベホマズン」などの高位回復呪文や、専用リソース「精霊力」を消費する特技によって、継続的な支援が可能です。


■ 精霊力とは

・一部の特技を使用する際に必要なリソース。

・時間経過で最大3段階までチャージ可能。

・特技「精霊の鼓動」やゾーン突入などによってチャージ速度を上げることができます。


< 使用感レビュー>

まず注目していた「精霊力」のチャージ速度ですが、特技やゾーンの恩恵でカバーできるため、戦闘中に著しく困る場面は少なく、非常に快適な使い心地です。


ただし、精霊力が枯渇した場合は一時的に待ち時間が発生しますが、「ベホマラー」や「ザオリク」などの通常呪文も使用可能なため、回復の安定性は十分保たれています。


■ 向いているコンテンツ


ライト層向けの同盟バトルコンテンツとの相性が非常に良いです。

たとえば「邪神の宮殿」や「ナスガルド」「試練の門」「強ボス」、さらには旧コンテンツの「ピラミッド」などでも活躍できます。


特に「トライアミュレット」による自動回復支援が優秀で、ベホマラーの合間に攻撃や蘇生行動を挟む余裕が生まれるため、立ち回りに幅が出ます。


■ 苦手なコンテンツと理由


一方で、パニガルムやエンドコンテンツ(デルメゼ、アウルモッドなど)では不向きな印象を受けました。

その理由は以下の通りです。


・「天使の守り」や「シャインステッキ」が存在しないため、即死攻撃に極端に弱い

・敵のバフ解除(洗礼)、強制変身などのギミックに対して、精霊力によるバフ維持が無力化されやすい

・「トライアミュレット」は再使用までに時間があり、バフを即時に掛け直す手段がない


ゾンビ戦法のように戦闘不能が頻発する場面では、支援性能が機能せず、結果的に“劣化僧侶”化してしまう恐れがあります。


■ 攻撃・火力性能について


攻撃特技はありますが、火力職には遠く及ばず、バイキルト系の支援呪文も持たないため、

サポート兼アタッカーとしての運用はほぼ期待できません。

その点では、賢者に近い立ち位置ですが、火力面では賢者が一歩リードしています。


そのため、現環境ではスティックを装備し、回復・補助に特化した立ち回りが主軸になるでしょう。


■ 総評


「隠者」は、コンセプトと性能自体は面白く、特に精霊力の扱い方がユニークな職業です。

ライトコンテンツではその性能を十分に発揮できますが、高難易度バトルでは脆さが目立つため、僧侶の代替として安定的に運用するには装備や仲間構成に工夫が必要です。


今後のボス設計や新装備次第では評価が一変する可能性もあるため、今後のアップデートにも期待したいところです。

2025年8月26日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑫ 大規模攻勢_4_サーチ》

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

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5万のガーゴイルを引き連れて、自衛隊の迎撃に向かったベルガンだったが、自衛隊の私有シェルター民救出連隊「通称R連隊」の連隊長である足立《あだち》昭介《しょうすけ》と副長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐による徹底したガーゴイル迎撃作戦によって、ベルガンは1万9千まで手持ちの兵を減らし、後退を余儀なくされた。


その頃、神の居城《きょじょう》デスランドに、ダメージを負ったサーチが帰還した。


サーチはすぐさま、神とヴァロンのもとを連れた。


「創造主様。申し訳ございません。想定外の攻撃に対処できずダメージを負い、帰還いたしました」


神は失態を気にもしない様子で、サーチに確認する。


「体の状態はどうなの?」


むろん神は把握しているが、サーチの自己分析能力を試しているのだ。


「閃光で視覚にダメージ。ピントが合わずぼやけた状況です。また仲間との視覚共有も機能していません」

「轟音で聴覚にダメージ。比較的軽微ですが、遠方の音声にノイズが入ります。また平衡感覚が戻りません」

「熱波で個体特定の機能にダメージ。人間を見つけても識別不能です。加えて軽微な皮膚の損傷もあります」


神はサーチの分析能力に関心を持ちつつ、さらに意地の悪い質問をする。


「サーチ。それでいつ戦線に復帰できる?ベルガンが交戦中だが、兵の半数を失った」


それを聞くとサーチは両手を胸に当てると、絞り出すような声で報告する。


「すべてのダメージは修復不能と分析しております。私を処分し、新たなベルガンの増援をお送りください」


神はガーゴイルという作られた兵が、自己犠牲と仲間意識を表したことに満足したように笑う。


「ふははは。やはり君たち特別個体はいい。面白い。ヴァロン。ベルガンの様子はしばらくここで見ていてくれ、サーチついてこい」


そういうと、ヴァロンを置いて、サーチを伴い奥の部屋へ向かった。


その後ろ姿をみたヴァロンは声をかけずにはいられない。


「創造主様。サーチは能力は失われましたが、私の片腕として指揮系の職務であれば可能です。分解は早計かと」


神はその言葉にも反応した。


「ふん。それは私の勝手だ。許せ」


絶対の存在である神の言葉。ヴァロンはそれ以上何も言うことはできなかった。ただ負傷したサーチの後ろ姿にこれまでのサーチとの連携作戦の情景を思い出し、なにか胸の中に刺さるような感情を抱いていた。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


デスランド、第5研究室。


主に特別個体の生産、解体を行う場所である。

サーチは扉の前に立つと、察した。


「分解ですね。創造主様。ご迷惑をおかけしました。可能であれば苦痛なくお願いします。そして私を構成しているエーテルで、ベルガンの支援個体の生産をお願いします」


「入れ」


神は答えず、ただ指示を出す。


サーチが第5研究室に入ると、円筒状の装置が二基並んでいた。片方は白い液体で、もう片方は黒い液体で満たされている。


「これで分解、生産なさるわけですね。黒い方が分解ですか?」


サーチが黒い方の円筒に向かう。


「待て、一つ聞かせろ。サーチ、お前は分解されたいのか?できれば自分でベルガンを助けたいと思わないのか?」


サーチは悲しげな表情で答えた。


「創造主様。お心に反してしまい申し訳ございません。サーチは分解に対しては恐怖はありません。私は道具ですから。しかし、ベルガンを直接支援したい気持ちが何故か胸の奥から湧いています。私は分解されたくありません。ヴァロン、ベルガンとともに創造主様の兵としてできればこれからも」


その言葉を聞いた神は緑色の液体の入った瓶を取り出した。


「これは、お前たちの修復材だ。飲めば完全に機能は回復する。これをお前にやろう」


差し出された神の手に、サーチは嬉しさと悲しさを織り交ぜたような表情で返す。


「・・・いえ、結構です。たとえ全機能が回復しても、私の体はあの攻撃に耐えられません。ベルガンの支援に行ってもすぐに離脱することになるでしょう。この修復材はもしベルガンが負傷したら渡してください」


ベルガンは強靭がコンセプトの個体。いわば鋼鉄の兵器のような堅牢さをもっている。

一方でサーチは違う。コンセプトは精密さ。美しく繊細で機能美に特化した飴細工のような脆い存在なのだ。それをサーチは誰よりも知っておりだからこそ、気持ちと現実を天秤にかけて、自分では力不足と判断したのだ。


「戦いたい気持ちはあっても、役には立てないということか。分かった」


神の言葉に気持ちに整理がついたサーチは一言


「お願いします」


と神に頼む。


神は不敵な笑みを浮かべると、白い方の液体を円筒の装置から抜いていく。


サーチはその中のものに目を疑った。


液体の中から出てきたのは「サーチと似たタイプの特別個体のガーゴイル」だったのだ。


「サーチよ。このガーゴイルはサーチ型第2世代という。こいつは強い閃光や音をキャッチしたときに、機能が破壊されないように安全機構がついている」


神は新しい体に近づくと得意げに説明を始めた。


「この体のコンセプトは支援だ。その為、味方を守るための盾「エーテルシールド」が生成できる。多少時間はかかるがエーテルによる巨大な盾だ。この盾の強度はエーテルの使用量に左右されるが、簡単にベルガンの守備力を超える」


「お前にこの体をやろう。この装置の手形の部分に手を当てれば、お前はこの体に意識が移動する」


サーチは恐る恐る白い円筒の装置に付いた手形に自分の手を重ねた。


その瞬間、もとのサーチの体は土くれのように崩れ去る。やがて円筒の装置が開かれると先ほどまでは動かない、でくの坊であったサーチ型第2世代は、ゆっくりと装置から降り立った。


「この体は・・・・」

ーー視覚、聴覚もさらに使いやすくなっている。体も軽い?筋力が上がっているのね。


サーチが新しい体に驚いていると、神が声をかける


「サーチ。それが新しいお前の体だ。間に合うか分からない。だが、ベルガンを援護せよ」


その言葉を聞くと、サーチは第5研究室飛び出し、デスランドのテラスにに出ると


「承知しました!」


と一声残し、ベルガンのいる方向へ飛び去った。

2025年8月24日日曜日

勇者パーティーを追放された白魔導師、Sランク冒険者に拾われる(一部レビュー)

 <あらすじ>

白魔導師のロイドは、ある日突然クビを告げられ、勇者パーティーから追放されてしまう。

途方に暮れていたロイドだったが、偶然出会ったSランク冒険者のパーティーに誘われ、彼らのクエストに同行することになる──。


<レビュー>

本作は、「有能すぎるがゆえに周囲に理解されず追放される」という、定番の追放系ストーリーです。


主人公ロイドは、修行時代から「すごい……でも実力不足」といった否定的な評価ばかりを受けて育ってきました。

それによって、自身の実力を正しく認識できないまま、自己肯定感が非常に低い状態で勇者パーティーに参加することになります。


彼は支援魔法を駆使して着実に貢献していたにもかかわらず、戦闘力の派手さがないがために「無能」と断じられ、追放されてしまいます。


この背景には、彼の師匠の存在が大きく影響しています。

過去の自身の過ちを繰り返さないようにという意識からか、ことあるごとにロイドに対して「すごい、でも実力不足」と評価し続け、過剰なまでに謙遜を植え付けてしまいます。


現実で言えば、子どもに否定的な言葉をかけ続けて自信を奪う“毒親”にも似た、指導者像として描かれており、視聴者としてはロイドの境遇に同情を禁じ得ません。


ただ、ロイドの修行は非常に順調に進んでおり、彼は“選ばれし存在”として、すでに高い実力を備えていました。

勇者パーティーから追放された後、Sランク冒険者たちとともに冒険を重ねる中で、その真の力を次第に発揮していきます。


それでも、幼少期に植え付けられた「自己否定の呪い」のような言葉の数々が、彼の行動を縛ります。

そんな彼に対して、仲間たちが「すごいよ」「自信を持っていいよ」と声をかけ、彼の心の呪縛を少しずつ解いていく過程が本作の見どころです。


ストーリー構成としてはテンプレート的な追放モノですが、キャラクター同士の心のやり取りや、

自信を取り戻していく丁寧なプロセスが描かれており、単なる無双作品ではない人間ドラマ的な味わいも持ち合わせています。


アニメーション面ではやや粗さが目立ちます。

中間フレームが少ないため動きに飛びがあり、戦闘シーンなどは音や背景で演出されるケースも多く見受けられました。

このあたりは予算的な制約も感じられますが、物語そのものの面白さで十分に補っており、視聴に大きな支障はありません。


今後の展開でも、ロイドがどのように自信をつけていくのか、仲間との関係性がどこまで深まるのかに注目したい作品です。

追放系に慣れた方にも、ちょっと違った角度から楽しめる1本としておすすめできます。



2025年8月21日木曜日

【Youtube】チャンネル別感想3選

 1. 佐久間宣行のNOBROCK TV


地上波ではできないような尖った企画や試験的な挑戦が魅力のチャンネルです。

売れている芸人から、まだ知名度の低い芸人まで幅広く愛用しており、芸人愛に溢れた番組作りが印象的です。


さらに、福留光帆のような無名の女優・アイドルを見出し、育成的に取り上げていく姿勢も特徴的。

昨今のテレビが「人材消費型」に傾く中で、育てる姿勢を持つのは好感が持てます。


動画の完成度は非常に高く、全体的におすすめです。

ただ、当たり外れの振れ幅も大きく、時には「これは厳しい…」と思うような企画を、佐久間氏自身が奮闘して成立させている様子が見られることも。

それ自体が“裏側の努力”として楽しめるポイントでもあります。


2. ばんばんざい


一時期の爆発的な人気は落ち着いたものの、動画の品質は今も安定しています。

YouTubeによくある「説明のない内輪ノリ動画」とは異なり、どの動画も「導入 → 説明 → 企画本編 → オチ」と構成が明確で視聴しやすいです。


ただし、メンバーの1人が脱退したことで、これまでバランサーとして機能していた「みゆ」がツッコミや仕切りまで担うようになり、時折方向性を見失っている印象もあります。


個人的には、「ぎし」の奥様を新メンバーとして加え、3人体制に戻すことでバランスが改善されると考えています。

そして次に紹介する「旦那のじゅんとかえで」的なフォーマットを導入することで、カップル的な緊張感や企画性を強化できるはずです。


既婚者男性と独身女性の組み合わせでは、イチャイチャ系企画に制約がありますが、奥様の存在を“嫉妬役”にすることで、過去のような恋愛バラエティ要素も再展開できるのではないかと思います。


3. 旦那のじゅんとかえで


現在、個人的に最も注目しているチャンネルです。

NOBROCKやばんばんざいと比べると、動画のクオリティではやや劣りますが、企画構成とキャラクターの魅力でぐんぐん伸びてきています。


当初は夫「じゅん」と本妻「かえで」の2人構成で、やや伸び悩んでいましたが、

最近、かえでの姉「みさき」が加入し、男1人×姉妹2人という“伸びる体制”が整いました。実際、視聴数も上昇傾向です。


主な構成は、じゅんがみさきを褒めたり親しげに接したりすることで、かえでが嫉妬するというテンプレート構成。

この「ギリギリのライン」を攻める描写が視聴者のドキドキ感を刺激しており、非常に面白いです。


やりすぎた際には、和解シーンまで動画として構成されており、視聴後の後味も良好。

構成・キャラ・リアリティのバランスが絶妙な、おすすめの成長株チャンネルです。


総括


どのチャンネルもそれぞれ異なる魅力と個性があり、

企画の軸・キャラクター配置・視聴者との距離感など、比較しながら見ると非常に面白いです。


気になるチャンネルがありましたら、ぜひ一度チェックしてみてください!

2025年8月19日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑪ 大規模攻勢_3》

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

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副長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐が連隊長の足立《あだち》昭介《しょうすけ》に報告する。


「連隊長。荒川渡河の状況報告です。現状、UFBを特殊弾で殲滅した区域への橋の建設は完了しました。」


細かい報告はこのようだった。

<渡河完了状況>

・地面冷却用の特殊車両・・・20台

・25式戦車・・・・・・・・・・・・・・20台

・25式耐熱装甲車・・・・・・・・40台

・25式対空対地迎撃車両・・・40台


全体の75%が渡河完了、ということだ

レールガンや迫撃砲は射程が届くため、渡河は行わない。


足立は直ぐに次の指令を出した。


「特殊弾で生き残ったUFBの反撃がくるぞ。ここからが本番だ。気を引き締めていけ! 全車両、安全装置解除。UFBは発見次第撃て」


ほどなくして、足立の予測は的中する。


埼玉から池袋方面に長く伸びた車列の側面や前方の上空からUFBの強襲が始まる。


しかし、特殊弾によって遮蔽物がすべて溶け落ちた視界の良い地形のおかげで、UFBを早期に発見し、近づかれる前に戦車や装甲車の積んだ大口径の対空砲がロックオンできる。


この対空砲の威力はガーゴイルを一撃で粉砕できる。この地域は、神が戦闘を長く楽しむためエーテルの濃度を薄めており、精密機器も正常に動作する。


これにより、レーダーで発見したUFBを即座に対空砲に送信し、自動で迎撃することが可能になっていた。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同時刻、神の居城デスランド


神と指揮官であるヴァロンは、神が映し出した最前線の状況を、まるで映画を鑑賞するような緩い空気で眺めていた。


時折ヴァロンが口を開く


「創造主様。ガーゴイルですが個体としては人間の3倍の強さを誇りますが、人間の兵器が相手では劣勢のようです。増援を出しますか?」


しかし、神はこれを受け入れない。神は瞬時に数万のガーゴイルを生産できる。だがこれは人間を守護するに値するかを見定める余興。


持ち駒を無限に増やすのは得策ではないと考えていた。


「ヴァロン。つまらないことを言うなよ。人間が全力で戦っているのだから、彼らの基準で戦ってやろうよ。エーテルの濃度も少し下げたから近代兵器も使えるし、どのくらいもつのか興味が湧かないか?」


ヴァロンは神の言動に納得はしつつも、指揮官として意見を出す。


「しかし、よく考えましたな。通常の進軍であればあのように車列を組んで進むことはないでしょう。ですが、視界の良い地形と、我らガーゴイルが近接戦闘を得意としていることを考慮して、どこから攻撃しても接近する前に複数の兵器から迎撃可能になっています」


神は嬉しそうにうなずく


「うんうん、戦車、装甲車、対空車両の配置もいい。お互いの兵器が弱点をカバーしたすばらしい車列じゃないか。これは、池袋まで行けるんじゃないか?」


その時、ヴァロンに行動不能のベルガンから通信が入る。


「ヴァロン!ベルガンだ!なんだこれは!地面は灼熱のマグマのようで思うように歩けん!しかも翼をやられて浮上もできん!サーチの映像情報も来ない!どうなってる!」


人間の予測不能な攻撃で、行動不能になったことでイラだつベルガン。神も聞いている通信にもかかわらず苛立ちが伝播する。


「落ち着けベルガン。それは人間の高温特殊砲撃の影響だ。荒川から池袋の範囲すべてが、そんな状況だ。お前は耐熱性能が高いので無事だが、周囲の同胞は全滅した」


「はぁ?全滅?クソがぁぁ。ん?サーチはサーチもやられたのか!!!!」


「安心しろ、高高度を飛行していたため直撃はしていない。だが、熱波と閃光、加えて轟音で感覚器官にダメージ。いまは神の城へ帰還中だ」



「サーチがダメージ?うおおああああ!人間ッ!矮小《わいしょう》な存在でありながら、神に作られた特別な我らを害するなんて!万死に値する!」


このやり取りを見ていた神は、一つの遊びを思いついた。


「ベルガン。俺だ。後方のガーゴイルをお前のもとに向かわせる。そいつに薬を持たせておくので飲むといい損傷が修復され飛べるようになるだろう。そのまま、そのガーゴイル5万の指揮をとり、ポイント122付近へ迎って敵の進軍部隊を壊滅せよ」


通信を切ると神はヴァロンに話しかけた


「指揮を代行してすまなかったな。ただ、このまま池袋まで無難に到着されてもつまらないだろ?秋葉にいるガーゴイル5万をベルガンの指揮下に入れて戦わせたら面白そうじゃないか」


そういうと、何もない空間から緑色の液体の入った瓶を生み出した。


「これがベルガンの修復材。まぁ破損した部分を自動的に補うエーテルの塊だけどね」


手元に出した瓶を、そのまま宙になげると瓶は煙のように消えてしまう。


「これで秋葉のガーゴイルに渡したので、あとは戦況を見守ろう。おっと、今回はベルガンのターンだからね、ヴァロンは余計なことは言わないでよね」


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


30分後


ベルガンのもとに、薬を持ったガーゴイルと5万のガーゴイルがやってきた。薬を飲むとベルガンの翼はボロボロと崩れ去る。また皮膚などに受けた損傷部分もパリパリと音を立てて崩れていった。その直後、緑の光が損傷個所を包み込み、新しい翼、新しい皮膚がベルガンにあたえられた。


「これが神の力。うおおおおおおおおお!」


勢いよく浮上すると、5万のガーゴイルに指示を出す。


ポイント122へ向かう。100体の分隊を10分隊作成しろ、本隊の前に出て障害を排除するんだ。


残りは3万の1部隊編成で先行する。先行する100体分隊へ続け、万が一100体分隊で欠員がでたら増援に入り、100体分隊を維持しろ。


残った1万9千は後方の俺と来い、敗走する雑兵を掃討する。一人も生かして返すな!


指示を出すと、隊列を形成しベルガンは自衛隊の車列の先端に向かって行動を開始した。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


居城デスランド。


ヴァロンは驚いていた。


「あのベルガンが指揮を。翼が回復したら怒りに任せて全軍突撃コースかと思いましたが・・・」


神も楽しそうだ。


「だろ?筋力重視の個体だが知能だって小隊長個体よりも高い。激情していても最低限の冷静さは持っていたな」


「ま、ヴァロンに比べたら分隊の組成も、陣形も稚拙《ちせつ》極まりないがな」


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


10分後、ベルガンの指揮する100体分隊の視界は、自衛隊の車列を捉えた。


ベルガンは細かい指示を出す。


「まずは高度100mに2分隊。300mに2分隊、残りは50mに分かれろ、左右の間隔あけて陣形を整えろ!」


すぐさま、100体分隊が陣形に合わせる。


「よし、高度100m隊は滑空しつつ、ブレスで攻撃しろ!30秒後に、50m隊が滑空開始、さらに30秒後に300m隊が滑空開始」


「これでブレスに気を取られた人間を、上空から高速攻撃しつつ、低空から大量のガーゴイルが襲う。人間の車列に潜り込み混乱しているところへ、3万が増援。これで壊滅だ。敗走するだろうが、それは俺たちが全て殺し、神の力を思い知らせてやる!」


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


3分前。自衛隊早期警戒車両


「UFBの大群を発見。約3万。指示をーー」


これを聞いた仲原は無線を取る。


「連隊長。本命が来ましたね」


「ああ、三佐の作戦に移行する。戦車部隊に次ぐ発光弾用意!早期警戒車両は後方のレールガンに座標を送れ!大まかでいい!」


仲原は自分の作戦に自信はあったが、それでも不安は隠せない。


「連隊長。彼らは高度を上げて滑空で速度を上げてくるでしょうか?」


「来るさ。先ほどの攻撃で、遠距離攻撃を警戒するはずだ。ならどうする。速度を上げるために高度を上げて滑空するしかない。だが高度を上げた瞬間に、発光弾を撃つ。これで再びヤツラは光に飲まれ視界を失う。そうなれば高速滑空は不可能。そこへ後方のレールガンから高熱の特殊弾を再度叩き込む。半分、1万~2万はこれで消滅だ」


数分後


「UFBの先方が分隊に分かれ、高度300、100、50に移動しました!」


足立は読みが当たってやや興奮気味に


「来るぞ!発光弾発射」


25式戦車から再び、真夏の3倍の光量の発光弾が空中に放たれる。すべてが光の中に溶けて視界は失われる。


「UFB移動速度減少。視界を奪いました」


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同時刻 ベルガン


落ち着き始めた空に再び閃光が走る。


「くそ!何も見えん!滑空中止!同胞と衝突するぞ!」


「人間の対応が早い!ワナか?いったん引く、後退!!」


ガーゴイルが転身しようとしたその時、聞き覚えのある発砲音が聞こえる


「ドドドドドド」


ほぼ同時に、あの雨、灼熱の雨が降り始めた。


高度300mにいた部隊は瞬時に消滅。

100m、50mも数秒遅れて消滅した。


その後ろにいた3万の部隊は2万が消滅、残り1万もダメージを受けていた。


かろうじて後方にいたベルガンの部隊だけが残された状態だった。


「この攻撃。何度も何度も同胞を忌々《いまいま》しい!だが、今回は違う。俺が!このベルガンが無傷で残っている!」


「残兵を本体に戻せ!人間達はこの攻撃で再び、俺らを一掃したと思っている!そこを突く!」


「1km後退!高度20まで降下し、待機。今度はこちらが待ち伏せしてやる!!」


発光が消え、夜が戻る。闇の縁で、逆襲の弓が静かに引き絞られていた。


2025年8月17日日曜日

青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない(赤城郁実編)

<あらすじ>

咲太の中学時代のクラスメイトで、現在は同じ大学の看護学科に通う赤城郁実。

ある日、SNSに書き込んだ夢が次々と正夢になると噂されている「#夢見る」の話を聞き……。


<レビュー>

今回のヒロインである赤城郁実の思春期症候群は、「パラレルワールドの自分と入れ替わる」という現象でした。

これは、1期で描かれた「桜島麻衣と豊浜のどかの姉妹入れ替わり」に近い、発展型といえる構造です。

前回の広川卯月編よりも、SF的な設定が強く打ち出されており、シリーズの原点に近い不思議さが戻ってきた印象で楽しめました。


ただ、視聴中にいくつかの疑問も残りました。


たとえば、パラレルワールドの自分と体に文字を書くことで連絡が取れるという設定、

そして同窓会で誰からも赤城が認識されなくなるという描写。

これらは、単一の症候群としては整合性に欠けているように感じられました。


視聴者の理解としては、

「入れ替わり」(姉妹編の亜種)

「体の異変」(かえで編の要素)

「存在が認識されない」(麻衣編の要素)


の3種類の思春期症候群がミックスされたような状況に見え、やや混乱を招く構成になっていたとも言えます。

1期に比べて物語構造が複雑化した影響か、説明不足が少し気になりました。


一方で、これらの説明不足は、今後明かされていくであろう2期のメインキャラクター「霧島透子」に関わる伏線である可能性もあり、「わざと謎を残している」と考えれば納得がいく部分もあります。


毎回、1期のヒロインたちがチラリと登場し、成長した姿を見せてくれる構成は非常に好印象です。

特に「双葉理央」が説明役として続投していることで、物語全体の骨格に一貫性が保たれていると感じます。


物語は後半に突入し、いよいよ「霧島透子」の行方を追う本筋が動き出します。

この不思議な連鎖が、どのように繋がっていくのか――今後の展開が非常に楽しみです。




2025年8月14日木曜日

異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~ ~6話

 <あらすじ>

ユーザーランキング1位を獲得した伝説のプレイヤー・伊良拓斗は、入院中に意識を失う。

気が付くと、彼はまるでゲームの中のような世界「イドラギィア大陸」に降り立っていた──。


<レビュー>

本作のレビューは今回で2回目です。

今回は特に第5話の展開を中心に振り返りたいと思います。


ここまで、内政を中心に比較的平和的な路線で進行してきた本作ですが、5話ではついに作品の裏の顔とも言える「残虐な描写」が表に出てきました。


導入としては、聖騎士が主人公の支配する森へ無理やり侵入しようとする、というもの。しかし、この程度の理由で即座に過激な手段に出るのは、動機としてやや薄く感じられました。

「ユーザーランキング1位」の知略を持つ主人公であれば、相手を森に誘導した上で騙して撤退させるなど、より狡猾な対応があってもよかったように思います。


実際、作中でも語られていたように、調査団を全滅させれば相手の警戒レベルは当然上がります。

これを逆手に取って、相手を欺いたり誤魔化したりできていれば、主人公の知的な魅力がより際立ち、印象的な展開になった可能性もあったでしょう。


とはいえ、作り手の視点から見れば、4話にわたって地味な内政パートが続いた後に、緩急をつけるためのバトル回を挟むという判断は非常によく理解できます。

実際、このエピソードは物語のアクセントとしてよく機能しており、ヒロインの強さや冷酷さがしっかりと表現された見応えのある回でした。


特に、聖騎士との戦いにおいて、あえて手の内を隠して戦い、

「もしかしたら勝てるかも」と思わせたうえで一気に絶望へ突き落とす──という演出は、悪役主人公としてのカタルシスが非常に強く、シリーズ随一の名シーンだったと感じます。


作画についても、相手に絶望を与える瞬間の表情やカメラワーク、演出が非常に優れており、

この作品の持つ「残虐さ」や「容赦のなさ」を映像としてしっかり成立させていました。

特に、**悪い笑みを浮かべるヒロインの邪悪な表情(誉め言葉です)**は非常に印象的でした。


バトルシーン全体も、単なる戦いというよりは一方的な蹂躙劇。

まるで遊んでいるかのように描かれつつ、戦闘開始 → 前衛崩壊 → 聖騎士の反撃 → 聖騎士敗北 → 残党敗走 → 足止め → 全滅 → 絶望、という一連の流れがテンポよく繋がっており、アニメ的な演出力が光る構成になっていたと思います。


次回は「同盟国の模索」がテーマになるようですが、まだ第6話。

今後もまた、あのような冷徹かつ衝撃的な展開が待ち受けているのではないかと思うと、思わずワクワクしてしまいます。




2025年8月10日日曜日

軽い日記的なもの【お知らせ】

こんばんは!管理人の緑茶です。


次回(8/12)の更新は休載となります。本来は火曜日の小説更新日ですが、今回は木曜日または日曜日に振り替え予定です。


休載理由は毎年恒例の帰省です。行き先は、電波がほとんど届かない「陸の孤島」のようなど田舎。

祖母も高齢になってきたため、今年から滞在日数を短縮することになりました。大人数で押しかけると何かと負担が大きいので、親戚同士で話し合い、前半組と後半組に分けて帰省する方式に。中1日だけは全員が揃い、顔合わせができるようにしています。


前半・後半ともに滞在日数は短くなったものの、合計すれば例年とほぼ同じ。ただし一度に集まる人数が減るため、祖母への負担も軽くなるはずです。


個人的には、毎年目にする“巨大昆虫”も密かな楽しみです。信じられないほど大きなバッタやクモなど……あれを見たあとだと、自宅で遭遇するGが可愛く思えるほど。


ちなみに出発は明日。ですが、なんとクーラーボックスが破損してしまいました。これから急いで買いに行ってきます(執筆時:8/10 AM)。


それでは、引き続き本サイトをよろしくお願いいたします。




2025年8月7日木曜日

転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます 第2期(一部レビュー)

<あらすじ>

魔術への探求心が止まらないロイドが次に目をつけたのは「神聖魔術」!

その習得のため、教会を訪れるロイドたちだったが……?

原作シリーズ累計発行部数800万部突破の異世界魔術バトルファンタジーが、いよいよ新章“教会編”に突入!


<レビュー>

第2期第5話までのレビューです。


本作は、かつて魔術師だった主人公が転生し、圧倒的な魔力と知識を持った状態でさらに魔術を極めていく物語です。

第1期では、魔術の実験や知識探求の描写が印象的でしたが、第2期では実戦パートと仲間の活躍に焦点が当てられている印象です。


第1期後半からの傾向として、仲間たちが苦戦する敵を、主人公が軽く片づけるという爽快展開が特徴でしたが、

第2期ではその描写がさらに強化されています。


また、コミカルな描写が随所に挿入されており、特に戦闘中にゆるい画風を織り交ぜることで、主人公の“圧倒的な余裕”を際立たせる演出が多く見られます。

仲間たちが驚くシーンでも同様の演出が使われており、メリハリをつけるための工夫だと思われます。


ただ個人的には、この日常系のゆるい画風がバトルシーンに入り込むことで、せっかくの緊張感が削がれてしまうようにも感じました。視聴者によって好みが分かれそうです。


第2期全体の印象としては、テンポがやや落ち着いた分、会話やサブキャラクターの掘り下げが増え、群像劇的な雰囲気が出てきたように思います。

特に、サブキャラクターたちが苦戦し、主人公が最後に圧倒的な力で片をつけるという「当て馬構造」はより顕著になりました。

主人公が“ラスボス的なポジション”として悠然と構えているような描写も目立ちます。


その一方で、視聴者の中には「どうせ最後は主人公が出てきて勝つんでしょ」という先の展開が読めてしまう点に対して、

緊張感が薄れると感じる人もいるかもしれません。


この点に関しては、最強系主人公の圧倒的制裁を楽しむ層と、出来レース的な展開を退屈に感じてしまう層に評価が分かれそうです。


演出やテンポに変化はあるものの、物語の骨格や演出の流れは第1期をしっかり踏襲しており、

第1期を楽しめた方なら、今期も十分楽しめる内容になっていると思います。

魔術バトルとスーパーチート主人公の魅力を引き続き堪能できる第2期。今後の展開にも期待です!




2025年8月5日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑩ 大規模攻勢_2》

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

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夜明けまであと1時間。


月夜の中で、私有シェルター救出連隊の隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》と先遣隊《せんけんたい》は、暗闇で動かないUFBの座標情報を1000以上

後方に設置したロングレンジレールガンの射撃管制機能に登録していた。


ロングレンジレールガンには、対地面制圧用の弾薬が装填されていた。


この弾薬は高度200mで炸裂し、小型の特殊弾を散布する。特殊弾は散布後数秒で化学反応を起こし、数千度の高熱を発し落下する。この熱は地上に灼熱の雨となって降り注ぎあらゆるものを燃やし、溶かしてしまう。


副長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐が、心配そうに足立へ確認する。


「私有シェルター場所への落下は制御していますが、離れていてもこの高熱に耐えられるでしょうか?」


足立は作り笑いで答える。


「大丈夫だ。私有シェルターのほとんどが核を想定している。直撃しなければ問題ない」


その時に、防衛大臣の大仲《おおなか》晴彦《はるひこ》から指令が入る。


「射撃開始180秒前」


ロングレンジレールガンが座標を最適化し、連射モードで動き出す。


また、通常の25式迫撃砲も、ロングレンジレールガンのダミーとして配置されており、これらもレールガンの射撃管制機能と接続され、射程に応じて実際に使用される。


「装填開始」


各迫撃砲も足立の指示で対地面制圧用の弾薬が装填される。



「3・・・、2・・・、1・・・」


大仲のカウントダウンが進む。


「ゼロ」


月明かりの夜空に200発の光の玉が炸裂する。


仲原が即座に確認する。


「足立連隊長。先遣隊の戦車から発光弾の一斉発射を完了。池袋から荒川付近までの全区域が光に飲まれました」


足立は即座に作戦を進める。


「よし、これでヤツラの目は奪った。暗闇から真夏の3倍の光量だ!光の弾幕でUFBの視界はゼロ。射撃管制機能を解放。砲撃開始!」


前回の戦いでは、最初の砲撃で脅威を察知したUFBに場所を視認され強襲された。その教訓から発光弾で視界を奪ってから砲撃を行ったのだ。



「ドドドドド」



レールガンの高い射撃音と迫撃砲の低い射撃音が混ざり合い、地鳴りのような音を立てた。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同時刻、埼玉県内の山頂。


TV局のリポーターは、数キロ先の森林から無数の光の筋が、池袋方面に伸びていくのを発見した。


「作戦が始まったのでしょうか!」


実況を始めた直後、無数の雷鳴のような轟音《ごうおん》が山頂を揺らした。


「すごい音圧です!これは発砲音でしょうか?」


耳を抑えながら必死に解説をするが、イヤホンに中継車から指示が飛ぶ。


「もっと大きな声で!」


「すごい音圧です!これは発砲音でしょうか!!!」


怒鳴るような発声でもわずかに聞こえる程度だった。


その裏で一人のスタッフがその攻撃をみてつぶやいた。


「綺麗‥‥‥。まるで虹色の光線が地平線に吸われていくみたい」


そのライブを映したSNSではコメントの投稿が止まらない。


<これはもう戦争じゃね?>

<何?あれ全部ミサイル?>

<本気の自衛隊マジ怖い>

<ガーゴイル終了のお知らせ>

<これがリアル地ならしだw>


そのほとんどが、勝利を確信したコメントであふれていた。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


池袋から1キロほど埼玉に近づいた付近。


レールガンと迫撃砲から放たれた無数の砲弾が地上を灼熱の海に変えていた。


付近の再開発ビルが熱で一瞬にして骨格だけを残し崩れ落ちた


ガーゴイル達は混乱し、飛び上がろうとする者、物陰に隠れようとする者、どの個体も何が起こったか

把握をしていなかった。


「ガアアァァ!!」「ギィィィア」と叫び熱波に溶かされていく。


また、自衛隊が存在すら知らない特殊個体。サーチやベルガンにもこの攻撃は影響を与えていた。


サーチは自身の長所である、感知能力があだとなり、視覚・聴覚を奪われた。


「何が起きた?熱?光?音?ベルガン!ヴァロン!状況を!!」


平衡感覚を失ったサーチは、呼びかけながらかろうじてグライダーのように翼を広げ、お台場方面に滑空していた。


ベルガンは強い熱波を浴びたが、耐熱性能の高さに助けられた。

だが、溶ける大地に足を取られ、身動きが取れない状態になっていた。


「クソッ。なんだこれは!高熱で翼をやられたか!」


混乱はしていないものの、正体不明の攻撃にイラだつベルガン。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


神の居城デスランド



「創造主様。攻撃が始まりました。」


ヴァロンが冷静に分析をしつつ、神へ報告する。


「正常なのはヴァロンだけか。ベルガンは行動不能。サーチは撤退中。思ったより面白いじゃないか」


「ガーゴイルも随分減ったな。巻き添えも含めて10万は消えたか」


神は笑みが止まらない。

必死に攻撃する自衛隊。状況伝えようと奮闘するレポーター。弾薬の雨に混乱するガーゴイル。熱で霧散するガーゴイル。

少し手間をかけた特殊個体の状況。どのシーンも神の心を高揚させる。


「創造主様。サーチの視覚共有が途絶。以降、私では敵位置の再計測が困難です」


「ならば俺が見てみよう。どれどれ。ふむ。荒川に橋を架けているようだな。よいアイディアじゃないか」


2時間で即席の橋を作ることができる架橋兵器。前回と違い、既存の橋を使わずに渡河を試みる工夫にも神には楽しみとして映った。

まるで、蟻がアリジゴクを工夫して脱出している姿を観察する子供のような視線だった。


ーー迎撃か?いやまだ現場の小隊長ガーゴイルに任せてみるか?指揮ならヴァロンを使うか?


神の妄想が捗る。


神の目には架橋兵器の後ろに並ぶ25式戦車、25式耐熱装甲車、25式対空対地迎撃車両なども映る。


ーー絶対に成功させるという意思を感じる。特に指揮をしている二人の人間の作戦は見事だ。


足立と中原である。二人は連携してガーゴイルを一層した区域から橋を架けて部隊を送り込む指揮を行っていた。


対地面制圧用の弾薬の効果で高温になった大地に特殊な金属片をドローンで散布していた。この金属に先頭車両がジェル状の液体を噴射すると急激に温度が下がる。まるで科学の実験のような作戦だが、短時間で揃う物資を巧みに使った作戦だった。


だが、このまま進めばエーテルの濃度が上がり、先頭車両やドローンが制御不能になるのは明白だった。


神はその点についても迷っていた。誘い込んで長く楽しむか。エーテルの洗礼を受けさせて反応を楽しむか。どちらにしようかと。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同時刻、内閣シェルター内作戦本部


大仲大臣と津田議員がならんでモニターを見つめていた。自衛隊からは絶えず状況が報告される。


「荒川渡河開始します」


「侵入区域周辺、地上・上空ともに敵影なし」


「着弾地点の数か所でプロパンガスが爆発している模様。想定の範囲内です」


悪い報告はない


だが、大仲の表情は厳しかった。


「津田議員。どう思います?自衛隊の制服組は順調だといいますが・・・・・・・」


津田も表情は冴えない。


「ふむ。難しい法案を通す過程に置き換えると・・・・・・なにか引っ掛かりますね」


二人は神の存在を知らない。だが長年永田町で駆け引きを経験した猛者としては、なにか得体のしれない懸念を感じていた。


そんな中、舞岡は違った。


「見てよ見てよ!圧倒的じゃない自衛隊!強い強い!!!いけー!!いけー!!!」


「はぁ」


大仲と津田のため息が懸念をより強くした。

2025年8月3日日曜日

気絶勇者と暗殺姫(一部レビュー)

 <あらすじ>

勇者トトは、3人の美女――シエル、アネモネ、ゴアから突然パーティーへと誘われる!

女性耐性がゼロで、少しドキドキしただけで気絶してしまう極度の人見知り勇者と、

それぞれの目的のために勇者の命を狙う3人の美女が繰り広げる、ハーレムDEATHラブコメディ!


<レビュー>

女性耐性ゼロの勇者・トトと、3人の美女たちによるハーレム作品です。

ただし本作は、「仲良しハーレム」ではなく、お互いがトトを奪い合うギスギス感を楽しむタイプのハーレムものになっています。


そして注目すべきは、3人の女性キャラが本当にトトを好きで集まってきたわけではなく、

暗殺対象として勇者を狙っているという設定です。

その上で、トト自身が女性に免疫がなさすぎて、すぐに気絶してしまうという“隙だらけな勇者”として描かれていることで、

ラブコメと緊張感が絶妙に同居する独特の空気感を生んでいます。


作画は、いわゆる深夜アニメの標準的なレベルといった印象ですが、

戦闘やアクションシーンでは、止め絵や効果演出を巧みに使いながら躍動感を演出しており、

動かしすぎずに迫力を出す工夫が随所に感じられ、アニメ演出としても非常に参考になります。


また、3人のヒロインの「裏表の使い分け」も見どころです。

パーティーメンバーとして仲よくふるまう“表の顔”と、勇者を暗殺しようとする“裏の顔”。

その切り替えは、表情・所作・声のトーンといった面に明確に現れており、

とても分かりやすく、かつキャラの印象を深める効果があります。


これらの描き分けは、少しコミカルな演出としても機能しており、作品全体のテンポや魅力を引き上げているように感じます。


単話視聴では本作の良さが少し伝わりにくい面もあるため、

ぜひ第1話からネット配信などで、じっくりと視聴してみることをおすすめします。

ギスギス系ハーレム×ラブコメ×暗殺サスペンスという独特のジャンルを、テンポよく仕上げた意欲作です!