2025年9月30日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑯ 大規模攻勢_8》

足立《あだち》昭介《しょうすけ》率いる「R連隊」は急速に接近するUFB特殊個体に対処すべく、散会陣形で待ち受けていた。


副長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐はこの短い期間でも、できる限りの情報を集めようと複数のドローンを使い、その挙動を分析した。


「足立隊長。特殊個体の速度ですが水平飛行で時速80kmです」


足立が報告を聞き、仲原に目線を向ける。


「はい。どうやら我々を見失ったようです。先ほどの熱線で破損した戦車の黒煙も視界を遮っています」


「仲原、後方のロングレンジ・レールガンに座標を送れるか?」


「可能です。特殊弾で焼き払いますか?」


「手札としては持っておこう。だが、UFBの王の武器は熱線だ。当然自身の耐熱性能も高いと見よう」


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆


同時刻 ベルガンの視点


ーーチッ。味方の損耗が早くファイアバレットの出力は40%といったところか。

ーーどこまで破壊できた?


ベルガンは眼下に映る自衛隊の兵器の残骸を眺めつつ、残敵を探していた。


しばらくすると、ふと残骸が途切れる。


ーーここまでか。全滅させたのか?

ーーいや、それにしては綺麗すぎる。半壊車両の一つもないなんてことはあり得るのか?ここまで距離が離れればファイアバレットの威力も相当低下しているはず。


ベルガンがあたりを見回していると、1機のドローンを発見する。


ーーまた羽虫か。


しかし、驚くことにその羽虫はベルガンに語り掛けてきた。


「私に敵意はない。私は自衛隊R連隊隊長、足立である。なぜ我々を攻撃する。話し合う余地はないのか?」


ーーほう。この羽虫が人間どもの隊長か。


ベルガンは羽虫に近寄ると答える。


「貴様らに名乗る名はない。貴様らを攻撃する理由だと?目障りだからだ。虫ケラごときが私と話し合うなど思いあがるな!」


そういうと、高速回し蹴りでドローンを破壊してしまう。


3秒間ほど、ドローンが落下する音だけがその場を支配した。


だが次の瞬間、瓦礫の陰から自衛隊の攻撃が始まった。


「ドドドドン」


ベルガンの背中に数発命中する。


その衝撃で体勢を崩すベルガンに、別の方角から再び攻撃が降りかかる。


ベルガンの体は戦車よりも硬い皮膚に覆われている。だが、対戦車を想定した弾丸の直撃は、一定のダメージをベルガンに与える。


数発被弾したベルガンは、素早く上昇すると攻撃の発射地点を探しだす。


「そこか!」


急降下で自衛隊車両を襲うベルガン。その強襲速度は通常の滑空ではない。エーテルを推進力に変換した超高速滑空である。


ベルガンはその勢いのまま自衛隊の兵器の外装を突き破る。


生き残った隊員が武器を持ち銃口を向けるが、ベルガンを捉えることなどできようもない。銃を構えた瞬間に首をはねられ視界が回転し、落下する。


通常のガーゴイルでも近接戦では自衛隊を圧倒する。これがベルガンとなれば一方的な蹂躙《じゅうりん》。狙われた車両は確実に乗員ともども破壊されていく。


だが自衛隊側も車両を遮蔽物に隠したり、バルーンダミーという車両型の風船を使ってベルガンをかく乱する。


ベルガンは自衛隊の兵器に接近する必要がある以上、ある程度の行動を予測されてしまう。1発のダメージは少ないものの、何度も被弾しているとベルガンにも変化が起こる。


それは偶然の一撃から始まった。10台以上の自衛隊の兵器を破壊したベルガンが索敵のために高度を上げた。


その時、側面から自爆型ドローンがベルガンの翼に直撃する。自爆型ドローンが装備しているのは例の高熱反応を起こす特殊弾である。


直撃を受けた翼には亀裂が走り一部が溶け、ベルガンの機動性を奪った。被弾した左翼が思うように動かないベルガンだったが、それでも自衛隊への攻撃には支障はなかった。


「いてええなあ!おい!万倍にして返してやるよ!」


そう吠えると、ベルガンは次々と自衛隊の兵器を狙う。


やがて変化が起こる。攻撃が左側からばかり狙われるようになったのだ。ダメージを受けた左翼は、ベルガンの左側への旋回能力を制限する。


制限されると、軌道が大きくなり被弾する弾薬も増えていった。


また煙幕を巧みに利用され、左側の視界も封じられた。


「くそがあああ!こんなものを何度当てようと、俺様は止まらねえぞ!隠れているヤツラ全てを破壊するからなぁ!」


そういうと、なんとか接近した自衛隊の戦車を軽々と破壊し、再び上昇する。


再び、左側から幾重もの自衛隊の弾薬が飛んでくる。さすがのベルガンも学習し、さらに高度を上げてこれをかわす。


しかし、その行動は自衛隊に読まれていた。


左側にばかり気を取られていたベルガンの右側に、あの自爆型ドローンが炸裂する。


「ぐあああああ」


思わず声が出る。


もちろん致命的なダメージは受けない。だが、両翼を失ったベルガンは旋回するように高度を落とし、地面へ落とされてしまう。


そこへあの「灼熱の雨」が再び降りかかる。ベルガンは機動力を活かし、すかさず自衛隊と距離をとり被弾を回避した。


だが、距離を取ったことで、戦車の主砲がベルガンを捉える。


「ズゥゥン」


重たい炸裂音は、ベルガンへのダメージを物語る。


「くそぉぉぉぉ!」


大地を蹴り、灼熱の雨を迂回して迫るベルガン。捉えたと思った瞬間、戦車は仕込まれていたTNT火薬によって自爆。


爆風と瓦礫がベルガンにさらなるダメージを与える。


それでもベルガンは止まらない。弾丸の角度から敵を割り出し1つ、また1つと自衛隊車両を破壊していく。


だが、それも長くは続かなかった。


埼玉シェルターに待機していた、数百の自爆ドローンがベルガンに対して攻撃を始めた。


翼を傷め、飛べないベルガンは辛うじて直撃は避けるがダメージは避けられない。これまで蓄積したダメージと合わせ、ベルガンの機動力と体力を確実に削っていた。


頭上からのドローンの自爆攻撃を避け、何とか距離を取ったベルガンだったが、そこには1台の破損した装甲車が置かれていた。


ドローンの追跡を逃れるため、この装甲車を盾にすべくベルガンが接近すると、その装甲車には大量のTNT爆薬が隠されており、自爆ドローンの攻撃で誘爆。


ベルガンは片足を失うほどのダメージを受け、地面にひれ伏した。


そしてベルガンが見たものは、20~30の自爆ドローンが自身に直進してくる光景だった。

この数の直撃には耐えられない。ベルガンは天に吠えた。

2025年9月29日月曜日

その着せ替え人形は恋をする Season 2 (終)

 <あらすじ>

ある日の出会いをきっかけに、コスプレを通して交流を深めていく喜多川海夢(まりん)と五条新菜(わかな)。

まだまだやりたいコスプレ、作りたい衣装はたくさん。

クラスメイトたちとの交流や、新たなコスプレ仲間との出会いを通じて、ふたりの世界はさらに広がっていく──。


<レビュー>

『その着せ替え人形は恋をする』Season 2は、コスプレを主軸にしながら、主人公とヒロインの恋愛要素を織り交ぜたラブコメ作品です。

恋愛の進展自体はスローペースですが、それゆえにコスプレに興味のある視聴者にとっては、リアリティある描写や知識の深さが非常に魅力的でした。


■ コスプレ描写のリアルさと広がり

衣装制作、撮影、スタジオの種類、用語解説など、初心者でもわかりやすい構成が随所に見られました。

中でも、カメラやレンズの取り扱い、ポージングの工夫などを説明するパートは、単なるアニメの枠を超えて“知識コンテンツ”としても楽しめました。


撮影機材に実在するメーカー名が登場するなど、現実の企業とのタイアップが推察されます。

マネタイズの手法として、こうした“作品との親和性が高い広告”は非常に上手な例だと感じました。


■ クライマックスの演出とやや惜しい点

とはいえ、最終回のクライマックスシーンにおいて、特定メーカーのロゴが映し出されていた点は少し引っかかりました。

ヒロイン・海夢が、1期からの思い出をフラッシュバックする感動的な場面だっただけに、商業的な意図が前面に出ることで感情の波から少し離脱してしまった印象です。


ただし、これは作品全体を損なうほどではなく、他の要素が非常に丁寧に作り込まれていたことで十分に帳消しにできる範囲でした。


■ 作画・キャラクター描き分けの工夫

本作はコスプレ描写が多く、髪型や衣装が頻繁に変わるため、記号的なデザインでのキャラ識別が難しい作品でもありました。

それを補うように、所作や表情、表現のトーンなどでキャラクターを描き分け、さらに「このコスプレは誰がしているのか」というテロップまで表示されるなど、視聴者の理解をサポートする細やかな配慮が印象的でした。


■ 総評

恋愛・ファッション・創作が交差する良作。最初から見直したくなる完成度でした。




2025年9月25日木曜日

強くてニューサーガ(終)

 <あらすじ>

4年もの時を遡ったカイルは、前世で失った家族・友人・恋人と再会し、再び訪れる悲劇を防ぐべく、2周目の人生に挑む。

物語は佳境へ。カイルは伝説の武器「聖剣ランド」を手にし、魔族ガニアスを打ち倒す。


<レビュー>

『強くてニューサーガ』は、魔王討伐後にタイムリープした主人公が、今度こそ仲間を失わずに勝利を目指す異世界ファンタジーです。


さて、最終回まで視聴した率直な感想ですが、2期への期待を高める形で幕を閉じたという印象でした。


■ 物語の「区切り」か「未完」か?


最終話では、


カイルが王族に「死ぬか部下になるか」と選択を迫られる


魔王が、部下ユーリガからガニアス討伐の報告を受けて、カイルへの警戒心を強める


という展開が描かれましたが、どちらも“導入”に留まり、大きな進展はありません。

これを「キリの良いクール終了」と好意的に捉えることもできますが、視聴者の目線では『2期ありき』の構成と感じられる部分が強く残ります。


もし仮に2期がなかった場合、全12話が“単なる壮大な原作広告”と受け取られてしまうリスクもあると感じました。


■ 作品としての魅力と課題


本作は低予算を感じさせない工夫が随所に見られた、意欲的な佳作です。

特にキャラクターの背景やタイムリープ設定は丁寧に描かれており、魔族との戦闘シーンも緊張感と爽快感が共存した演出でした。


ただ、最終回が「物語の一区切り」ではなく、「次シーズンへの橋渡し」として終わったことは好みが分かれそうです。


個人的には、せめて最後に“2期制作決定”などのアナウンスがあれば視聴後の満足度も高まったのではないかと感じました。

過去にも「2期を匂わせたまま終わる作品」はありましたが、ファンとしてはそうならないことを強く願っています。


■ もし単体完結なら…


もし本作が1期限りで終わる予定だったとしたら、

「俺たちの戦いはこれからだ」的な演出で綺麗に締めくくった方が、単発作品としての完成度・満足感は高かったかもしれません。


■ 総評


タイムリープの設定と丁寧な人物描写が光る

魔族との戦闘や仲間との再会は胸を打つ展開に

最終話の“導入で終わる感”が惜しい点ではあるが…

2期への期待を強く持たせる終わり方としては納得感あり

→ 結論:2期がある前提で楽しむべき良作。期待して待ちましょう!




2025年9月23日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑮ 大規模攻勢_7》

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

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池袋周辺の私有シェルターの一つに、自衛隊の車列は接近していた。


目視でも変わり果てた池袋の駅前が確認できる距離だ。



私有シェルターの民間人を保護するための耐熱装甲車3台。その装甲車を守るための戦車3台、対空対地迎撃車両が4台、索敵用のドローンベースが1台で構成された。救護小隊が車列を離れ私有シェルターの方向へ向かい出した。



その後方には、万が一の備えとして、さらに戦車2台、対空対地迎撃車両2台、耐熱装甲車2台の護衛部隊も距離を取って続く。



その時、ドローンベースから発進した索敵ドローンに異変が起こる。


池袋の少し奥、瓦礫の多い地域を中心として扇状にドローンが次々と応答不能となったのだ。


足立《あだち》昭介《しょうすけ》は即座に、部隊の前進を止め、遠距離から望遠レンズを使って扇状の発生源を確認する。


そこにいたのは、通常のUFBよりも一回り大きく、強い熱源を発する1体のガーゴイルであった。


そう。ベルガンである。


副長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐が、本能的に危険を察知すると、すぐに足立に進言する。


「隊長!あれは普通じゃないです!一旦防御陣形に戻しましょう!」


足立が返答をしようとした刹那。


ベルガンの固有技「ファイアバレット」が火を吹いた。


深紅の炎が自衛隊に猛烈な速度で接近する。


「退避!」


足立の指示が飛ぶ。


だが、指示と同時に深紅の炎は救護小隊、そして後方の護衛部隊を飲み込む。


各車両は、耐熱装備に助けられながら一斉に進路反転を開始する。


だがベルガンのファイアバレットはこれでは終わらなかった。


深紅の炎はやがて赤みが抜けていく。そして次第に青く、やがて透明度の高い青へと変わっていった。


これは燃焼効率の上昇意味する。


当初、数百℃であった炎は瞬く間に1200℃まで上昇し、車両の限界温度を超えていく。


足立や仲原がいる後方でもその閃光は確認できるほどで、足立は何度も無線を取る。


「退避!退避!!!全軍退避!、ポイント120まで撤退だ!!!」



その声は救護小隊、そして後方の護衛部隊には届かなかった。1200℃の高温は車内の人命を一瞬で焼き払い、兵器の弾薬に誘爆する。


「ボン」・・・「ボボン」


そこかしこで、自衛隊の車両が爆発して停止する。


その被害は護衛部隊のさらに後方、自衛隊の車列本体の一部にも及ぶ。


転回するも余裕もない車両は、全速力で後退を始める。


だが、青い炎に飲まれた兵器は数秒で「ボン」と音を立てて炸裂してしまった。


足立は茫然としていた。


ーー何が起きたんだ?


その様子をみた仲原三佐が、声を張る


「状況報告!ダメージコントロール!ポイント120まで後退!急いで!」


仲原の声で我に返る足立。


無線のチャンネルを防衛大臣に変更するとすぐに報告する。


「正体不明のUFBが出現。数1!強い高熱を広範囲に展開中!救護小隊、および、護衛部隊は全滅。本体車列にも被害が出ており状況確認中!」



◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆


同時刻 内閣シェルター作戦司令部。


大仲は津田と目を合わせていた。舞岡議員は力なく崩れ落ち天井を仰いでいる。


口火は大仲が開いた。


「UFBの将が城にはいなかった。この規格外の強さ、UFBの王とみて間違いないでしょう。やはり防衛拠点を作るべきだった。早計な判断で多くの自衛隊が一瞬で・・・」


そういうと、力なく席を立ち上がるとフラフラと司令部の出口へ向かっていた。


津田は直ぐに察し、声を張り上げる。


「防衛大臣 大仲晴彦!戦闘継続中だぞ!席に戻れ!指揮を取れ!」


しかし反応はない。ふらふらと出口へ向かう。


津田も席を立ちあがると、床に座り込んでいる舞岡を足で払いのけ、大仲の襟首をつかむ。そして渾身の力を込めて持ち上げると大仲を大臣の席へ投げとばした。


「防衛大臣は貴方だ!これ以上の被害を食い止めるのは誰の仕事だ!」


投げ飛ばされた衝撃と、津田議員から聞いたことがない叱責で大仲は我に返る。


「すみません。ありがとうございます」


そういうと大臣席に座り、無線を取る。


「足立、仲原、埼玉まで撤退できそうか?」


ノイズ交じりの無線から足立の声が返ってくる。


「撤退中にもう一度今の攻撃を受ければ全滅です。仲原の解析では炎の射程は縦方向には長いものの、横幅は広くありません。広く散会陣形をとり、迎撃を進言します。動ける被弾車両はその間に埼玉へ撤退させます」


大仲は一瞬目を閉じて決断する。


「わかった。頼む、一人でも多くの命を守ってくれ!」


「当然です!私と仲原で命に代えても、損害は最小限にして見せます!」


そのやり取りの中、偵察部隊からの無線が割って入る。


「先ほどのUFB特殊個体が移動開始、こちらに向かっている模様です!」


再び緊張が走る


2025年9月22日月曜日

【かるい日記的なもの2】アニメ最終回までの尺つなぎ雑記

こんばんは!管理人の緑茶です。


今週から来週にかけて、夏アニメが最終回を迎えるクライマックス週。

作品に水を差したくないので、この時期はゆるめの日記更新が増えております。


今回は以下の3本立てでお送りします。

2025年9月18日木曜日

【かるい日記的なもの】日々雑感 2025年9月

こんばんは!管理人の緑茶です。


今週来週で多くのアニメが最終回を迎えることもあり、今日は雑記中心の日記回となります。最終回直前の作品にあれこれ語るのも、なんだか少し野暮な気がしてしまって。


というわけで、“つまらない話テンプレ第一位”こと「夢ネタ」から雑感スタートです(笑)。


■ 夢の中の「ルパン三世 vs ルパンレンジャー」


週末に2時間ほど昼寝をしたのですが、その間に見た夢がまさかのフル尺映画並み。

しかも、「ルパン三世」と「ルパンレンジャー」が激突するクロスオーバー作品でした。


導入からクライマックス、オチ、後日談まできっちり構成されており、目覚めたときは2時間映画を観終わったような気分。


もちろん名作というほどではないですが、「そこそこ面白い」のが妙にリアル。

日頃から小説やゲームシナリオを考えている“創作脳”が夢にまで出張してきたのかもしれませんね(笑)。


■ 将棋は魔法?


最近、休憩時間に同僚と将棋を始めました。

同僚も私も“にわか”なので、「定石」から始めて、あとはお互いの攻め方に応じて場当たり的に対処していく、というレベルです。


ところが、上司が混ざると空気が一変。

子どもの頃から将棋に親しんでいたということで、我々の手筋はすべて見抜かれているようです。


一番驚くのは、私自身の意志で動かしているはずの玉(王将)が、気が付くとどこにも逃げ道がなくなって詰まされていること。

数手前に打たれた桂馬が、最終局面で私の退路をふさいでいたときには、もはや魔法かと思いました。


差がありすぎると勉強にもならないし、なにより自分が魔法にかけられてるような気持ちになりますね……(笑)。


■ 田舎の物々交換と鶏経済


先日、里帰りした際に、近所のご家庭に野菜を届けました。

田舎では、野菜が採れすぎたら“不足していそうな家”に持っていくと、自然な流れで物々交換が発生します。



その家では鶏を飼っており、今回は新鮮な卵と交換してもらえました。


ふと見ると、以前は黒い鶏がいたのに、今年はすべて茶色。聞いてみると、鶏は10年以上生きるが、産卵のピークは3年程度とのこと。

そのため、3年で食肉に回して新しい鶏を導入するそうです。


ヒヨコから育てる選択肢もありますが、雄雌の判断が難しいうえに、卵を産むまで育てる手間を考えると、種鶏孵化場から1羽2000円程度で買う方が効率的とのこと。


卵の市販価格は6個200円=1個約33円。

1羽が1日1個を3年間産めば1095個。卵ベースで36500円の“収益”になります。

エサ代等は別途かかるとしても、10羽で年間数万円の副収入……ちょっとした「卵ビジネス」ですね。


ちなみに、月収20万円のサラリーマンは、卵で換算すると鶏200羽分の働きということに……。


卵1個33円 × 200羽 × 30日 = 約19万8000円


うーん、ちょっと複雑な気持ちになります(笑)。


それでは、今日はこのあたりで。

来週はアニメの最終回ラッシュ。しっかり見届けて、また記事にまとめたいと思います。

引き続きよろしくお願いします!

2025年9月16日火曜日

2025年9月14日日曜日

その着せ替え人形は恋をする Season 2 ~21話(一部レビュー)

<あらすじ>

ある出会いをきっかけに、コスプレを通して交流を深めていく女子高生・喜多川海夢(まりん)と、伝統工芸の道を歩む男子高校生・五条新菜(わかな)。

やりたいコスプレや作りたい衣装は尽きることなく、クラスメイトや新たなコスプレ仲間たちとの出会いの中で、ふたりの世界はますます広がっていく。


<レビュー>

『その着せ替え人形は恋をする』は、コスプレと青春恋愛を融合させたラブコメ作品。

Season2では、恋愛要素を保ちつつ、よりコスプレを主軸に置いた構成が目立ってきました。


五条が持つ「日本人形職人」の設定はやや薄れてきた印象がありますが、シナリオは明るく、キャラクターの成長と多様な趣味の世界を丁寧に描いています。


・コスプレ描写の深化


登場キャラクターの増加とともに、コスプレの幅も広がりました。

版権作品、職業コス、オリジナル創作などジャンルが多岐に渡り、視覚的にも飽きさせません。


また、コスプレに興味がない視聴者に配慮された演出も魅力です。

たとえば専門用語のカットインや、モブキャラによる自然な用語解説があり、初心者にも分かりやすい設計が施されています。


・"撮影”パートと違和感


今期では特に「撮影」の描写が強化されています。実在するカメラメーカの一眼レフカメラを用いた撮影シーンや、構図・カメラの設定などの解説が入るほどの丁寧さです。これは作中CM的なものなのかもしれませんが、これはこれで勉強になりました。


ただ、その丁寧さゆえに一部シーンでは尺を多く取りすぎている印象も。

海夢と新菜が、まるでカメラマン志望のように熱中する描写は、やや本筋の“コスプレ製作”から外れて感じられる部分もありました。


とはいえ、日常回としての位置づけであり、今後も過度なPR的演出が続かなければ、気にならない範囲でしょう。


・恋愛描写の進展


Season1に比べて、ふたりの距離感も確実に縮まっており、恋愛要素もじわじわと前進しています。

甘酸っぱくもじれったいやりとりは、視聴者の共感を呼び、コスプレに興味がない層でも恋愛ドラマとして十分に楽しめる構成です。


コスプレに興味がない方でも、青春恋愛ドラマとして楽しめるので、ぜひ一度ご覧になってみてください。


2025年9月11日木曜日

【ゲームレビュー】『ハロルドの日常 コレクターズカード実装版』

 


■ゲーム 概要

『ハロルドの日常 コレクターズカード実装版』は、日常系短編RPG(アドベンチャー寄り)として展開される作品で、砦を舞台にハロルドと仲間たちが盗賊撃退に挑む物語です。

本作は、同名の原作『ハロルドの日常』をベースにしつつ、カード要素の追加とシナリオの強化が施された、事実上のリメイク作品となっています。

<レビュー>

■ 原作との違いと進化

原作の『ハロルドの日常』は、エンジニアが30分で制作するというチャレンジ企画から生まれた作品でした。

そのため導線やテキストは最低限で、コンパクトながらも一定の完成度を持っていました。


今回の「コレクターズカード実装版」では、シナリオライターによるシナリオ全面改稿が行われ、テキスト量は2倍以上に。

一本道ではなく、迷いそうな場面には複数のルートを設けるなど、プレイヤビリティの向上にも配慮がなされています。


■ キャラクター強化と会話演出

原作ではキャラ設定がありませんでしたが、登場キャラクターも再設計されています。

ハロルド:ちょっと弱気な勇者

ルキウス:冷静なツッコミ僧侶

マーシャ:闇落ち気味の天然魔法使い

テレーゼ:ギャップ萌え要素のある女戦士


これらのキャラ設定により、戦闘外の会話や寸劇パートにもテンポと個性が生まれています。

お使いクエストの合間には、「ボケ→ツッコミ→オチ」の構成でコミカルなやりとりが差し込まれ、ちょっと笑えて、心が和む演出が随所に光ります。


また、モブの町人たちにも簡単な設定が付加され、舞台全体に活気が出ています。


■ ミニゲームとゲームバランス

本作には複数のミニゲームが収録されており、息抜きとして楽しめる構成です。

基本的には2~4回のプレイでコツがつかめる難易度設計ですが、「訓練」クエストに関しては原作仕様が維持されており、10回以上かかる可能性も。


ただし、失敗回数に応じてクリア条件が緩和される親切仕様が継続されているため、時間をかければ必ず突破できる点は安心です。


■ コレクターズカードの演出

本作の目玉となる「カードコレクション」では、25種類のキャラクターカードが実装され、カードごとに完全な書き下ろしテキストが用意されています。


イラストは、もこもこさんが担当。特筆すべきは、高レア女性キャラには凝った演出が施されつつも、低レア男性キャラは標準立ち絵に抑えられている点。

このことで「あたり感・はずれ感」が明確になり、収集の楽しさが視覚的にも演出されています。


■ 総評

プレイ時間1時間程度でコンプリート可能なコンパクト作品ながら、シナリオ・演出・カード・ミニゲームと丁寧に作られた満足度の高い1本です。

特に、原作をプレイした方にとっては「別物レベル」の進化が楽しめるでしょう。


ご興味があれば、Nサークルゲーム広場またはふりーむにて配信中ですので、ぜひプレイしてみてください!


2025年9月9日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑭ 大規模攻勢_6》

 この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

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池袋付近、戦闘区域。


ベルガンの編成した部隊が自衛隊(R連隊)への波状攻撃を開始した。


5000体規模の部隊による波状攻撃は、戦術というよりも力と数で強引に自衛隊の陣形を崩す強襲に近いものだった。


先頭の部隊が一斉に自衛隊に急速接近を始めた。


無数のガーゴイルが自衛隊のレーダーに捕捉される。その瞬間、自動照準システムが動作し対空対地迎撃車両が猛烈な火力を発揮する。


もともと航空機や速度の速い軽戦車を破壊する対空対地迎撃車両である。その弾薬の破壊力は高く、1~2発を被弾しただけでガーゴイルは次々と霧散、もしくは姿勢制御を失い地面へと崩れ落ちた。


だが、単純に計算しても5000体のガーゴイルを倒すためには5000~10000発の発砲が必要。投入され、射程内に配置されているたった5両の対空対地迎撃車両では、最低でも2分、命中精度や連射による放熱を加味すれば5分は要することになる。


最初の5000体が全滅し、即座に次の5000体が再度攻撃を仕掛ける。この5分でガーゴイル達は自衛隊の部隊へと着実に近づいていく。


幾多の同胞が盾となり、道を切り開き、後方のガーゴイルが遺志を引き継ぐかのように真っすぐに迫る。


1kmもあった自衛隊との距離は、5000体の損失で300m程度前進。次の5000体になると対空対地迎撃車両の性能限界によって、連射速度が落ち、400mの距離を詰めた。


自衛隊は対空対地迎撃車両の援護のため、戦車や装甲車からの機銃攻撃を始め、ついに最後の5000体との対峙となる。


距離は残り300m。対空対地迎撃車両は半数が弾切れ。ベルガンが「やつらのクビに同胞は届く」そう確信した瞬間、自衛隊後方のロングレンジレールガンが放った特殊弾が炸裂する。


空中で炸裂し高熱の雨をもたらす特殊弾だ。


ファイアバレットの準備動作で身動きが取れないベルガンには、信じられない光景だった。


なぜなら、今回の攻撃はスピードを重視した波状攻撃である。しかもロングレンジレールガンに座標を送る時間も、自軍に影響のな地域を計算する時間もなかったはず。


だが彼らは自軍の座標に向けてロングレンジレールガンを使った。放たれた高温の雨は自衛隊の先頭車両の上空で炸裂。灼熱の雨が最後の5000体にも降り注ぐ。


ーー味方ごと焼き払うつもりか!人間は仲間意識が強いはずではなかったのか!


灼熱の雨は、5000体のガーゴイルを、1分程度ですべて飲み込んだ。


ーー全滅?届かなかった?


本来なら1000体程度が生き残り自衛隊の車列に突入。車列をかく乱しつつ相手の注意を引き付けて、手元に残していた手勢4000体が再度強襲。自衛隊の陣形に入ってしまえば近接戦ではガーゴイルが圧倒的に有利となる。

しかし、ベルガンは近代兵器。特に戦車のような火力の高い兵器は高く評価していた。


4000体は奮戦するも恐らく全滅。そこへ1時間かけて練り上げたベルガンの全力ファイアバレットを発動し、自衛隊の8割を薙ぎ払う想定だった。


だが、自衛隊は自軍上空に灼熱の雨を降らせることで最後の5000体を瞬殺するだけでなく、手元の手勢4000が近づくことも困難な状況を作り上げた。さらに驚くべきことに、自衛隊の先頭車両は生き残っていた。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同時刻 神の居城デスランド。玉座。


神は上機嫌だった。


「ヴァロン。見ろ、自軍の上に特殊弾を撃って、簡易バリアに仕立て上げた。面白い!人間らしい、こざかしい作戦じゃないか!」


神は手を叩き驚きを隠せないヴァロンに語り掛ける。


「しかも、ほら、特殊弾の炸裂する高度を高くすることで広範囲に時間をかけて高温の液体が飛散するように工夫してきた。あれなら耐熱仕様の地上部隊は耐えられる。もともとガーゴイルの火炎対策で数百度まで耐えるような武装になっているからな!」


「そこまで耐熱性の高くないガーゴイルだけを殲滅できる。いい作戦じゃないか!こりゃーベルガンの敗北かなー」


ふと我に返るヴァロン


「創造主様、戦況は極めて悪い状況です。増援をー!」


「駄目だ。興ざめするようなことを言うな」


上機嫌から一気に不機嫌になった神の声に、ヴァロンは思わず頭を下げ目線をそらす。それでもヴァロンは声を絞り出す。


「人間の勝ち、それもいいでしょう。ならば、ならばせめて、ベルガンに撤退命令を!!」


「撤退?すればいいじゃないか。撤退の判断ができるかどうか。それを見るのも面白い。いいかヴァロン。俺は今、このイベントのクライマックスを楽しんでいるんだ。索敵と射程で有利をとっている自衛隊。数と個々の力で自衛隊を大きく上回るベルガンの部隊」


「そのベルガンの部隊が、間もなく全滅するだろう。その時、部隊の将たるベルガンの行動に期待しようじゃないか。ファイアバレットはまだチャージ30%程度か、想像以上に早く兵を損耗ている。さぁファイナルイベントだ!」


神の不敵な笑いが玉座に響き、ヴァロンはベルガンに祈ることしかできなかった。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同時刻 自衛隊司令部。


R連隊の隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》と副長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐は、やや後方の耐熱装甲車に乗車し、ここを司令部としていた。


「前方の部隊に損害ナシ、ロングレンジレールガンの影響を受けていません」


その報告に、息を吐く足立。しかしすぐに仲原が声をかける。


「UFB残存部隊確認。散会しつつ接近中。数4000」


ベルガンの手勢を補足していた。


「隊長。プランA2を発動します」


先ほどの、自軍の上空に特殊弾を撃ち、高温バリアを作り出す作戦がC1。この際に、高温の影響を受けないように下がらせていた前線より少し後ろの部隊を前方の支援に合流させる案がA2である。


足立は無線をとる。


「プランA2へ移行。先頭の部隊は消耗と高温の影響で発砲が出来ない。これを全力で守れ!」


新たに投入される3台の対空対地迎撃車両、および6台の装甲車と2台の戦車。


散会して広範囲に散ったガーゴイルだったが、運悪く高温を避けるために退避していた索敵ドローンの視界に入ることになり、その座標は即座に対空対地迎撃車両連係される。


3台は先頭部隊の前、左右に1台ずつ展開し死角なく撃ち落としていく。


10分後


「UFB残存数50。距離も離れています。やれます」


仲原がそう足立に報告すると、やっと彼女にも笑みがもれる。


「これは勝ちましたね。UFBのさらなる増援に備え、プランA3も発動しますか?」


足立は仲原を横目で見ると問う


「周囲に増援の気配は?」


仲原は当然のように答える


「半径2km以内に敵影なし」


「池袋まで1㎞弱。なら残存UFBに警戒しつつ、さっさと私有シェルターの救出に向かおう。最後まで気を抜くなよ!」


そういうと無線を取る。


「大仲大臣。UFBをほぼ退けました。救出作戦に移行しますがよろしいですか?」


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同時刻 内閣シェルター作戦司令部。


防衛省の大臣、大仲《おおなか》晴彦《はるひこ》と、野党第一党「立国平和党」の党首「津田《つだ》一郎《いちろう》」は救出作戦の可否について悩んでいた。


足立からの確認に、一旦「待て」と回答し議論をしていた。


「津田さん、客観的に見て戦況は良いといえるでしょう。ですが、救出作戦となると自衛隊員が装甲車を降りることになります。UFBの増援が来た場合、生身の人間では危険があります。しかし、この局面はスピードが大切だと私は思います。少なくとも2㎞以内に増援は居ないようですし、私は行くべきだと思います。どうでしょう?」


津田議員は、少し机を眺め思考をまとめると答える。


「賛成したいのですが、この優勢は本物でしょうか?UFBの兵は確かに討ちました。ですが、あのお台場に浮いている城の主、つまりUFBの将は討っていません。これを政治に置き換えれば、敵対する勢力の事務次官は排除しても議員は排除できていない。そういう政局です。ここでさらに前に進むのはリスクが高いと思います。先頭の部隊は消耗もしていますし、一旦下がらせて後方の部隊を前に出して、今いる場所の防衛拠点化をするのはどうでしょうか?」


その声に大仲も同調する。


「確かに、UFBが近くにいないこの状況は、補給と拠点確保の好機。そうとも取れますね」


その言葉に敏感に反応した議員がいた。野党「帝都復権党」の舞岡《まいおか》幸三《こうぞう》だ。


「なにを寝ぼけてるんですか!!!要救護者がすぐそこにいる!私有シェルターまで1㎞じゃないですか!!自衛隊は何の組織ですか?飾りですか?拠点を作る大工ですか?違うでしょ!国民を助ける組織でしょ!その為の装備でしょ!!今勝ってんだから、ホラ、どう見ても勝ってる!地盤固めとか政治的な発想ではなく、人命を優先してください!ほら!はやく!」


「要救護者」・「人命救助」 このキーワードは政治家にとって覆しがたい言葉である。


大仲は決断し、無線を取る。


「救助開始!だが、細心の注意を払え」


2025年9月7日日曜日

強くてニューサーガ ~10話(レビュー)

<あらすじ>

4年もの時を遡ったカイルは、前世で失った家族・友人・恋人と再会し、再び訪れる悲劇を防ぐべく、2周目の人生に挑む。


物語は佳境へ。

カイルは伝説の武器「聖剣ランド」を手にし、魔族ガニアスとの戦闘においてツノの切断に成功。戦況が優勢に傾く中、彼は戦いの一時中断を提案し、ツノと聖剣を賭けた一騎打ちが始まる──。


<レビュー>

『強くてニューサーガ』は、魔王討伐後にタイムリープした主人公が、今度こそ仲間を失わずに勝利を目指すという設定の異世界転生作品です。


1〜3話が導入、4〜6話が世界観の展開、7話以降が決戦フェーズという、非常に王道的な構成で物語が進行しており、アニメ視聴者にとってもわかりやすいテンポ感が保たれています。


原作はアルファポリス発の小説作品ですが、アニメ化に際して無理なくテンプレートに落とし込まれている印象を受けます。


■ 作りの丁寧さと工夫


制作面では、限られた予算を工夫でカバーしている好例といえます。


たとえば滑らかなアニメーションに頼らずとも、構図や台詞回し、演出でしっかりと盛り上げています。

キャラクターの個性を活かしたセリフ運び、止め絵やズーム、口元や足元の一部を切り取るような“演出的省略”が違和感なく用いられており、視聴における没入感を損ねていません。


明らかに「動いてない」と感じさせない構成力とテンポの良さがあり、作り手の熱意と原作の底力を感じられる良作です。




2025年9月4日木曜日

盾の勇者の成り上がり Season4(レビュー)

<あらすじ>

復活の時が迫る“四霊・鳳凰”との戦いに備える盾の勇者・岩谷尚文は、対立していた三勇者とついに和解。

その一方で、ラフタリアが王位継承の意思ありと誤解され、クテンロウという国から刺客を差し向けられる事態に巻き込まれてしまう。


<レビュー>


『盾の勇者の成り上がり』第4期は、かつて「追放系×転生ファンタジー」の代表格として始まった物語の、新たな局面を描いています。


尚文は、異世界に「盾の勇者」として召喚されながらも、当初は冤罪で貶められ、勇者パーティーから追放されるという波乱のスタートを切りました。

しかし仲間となるラフタリアやフィーロらと共に信頼関係を築き、「波」という世界的災厄と向き合う使命に気づいていきます。


シリーズ初期は、当時流行していた「追放→成り上がり」テンプレートを踏襲しつつも、王族を断罪するなど早期に“復讐パート”を終え、物語の主軸を王道ファンタジーへとシフトしていきました。


第4期の立ち位置


Season4では、尚文を英雄として信仰する国が登場。彼を“守られる存在”から“守る側”へと押し上げたことで、物語はさらに成熟したフェーズに入ります。


一方で、波の対処と並行して、“クテンロウの陰謀”や“信仰国家での事件”など、サブストーリー的な展開も増加。

これにより進行のテンポがやや落ちた印象を受けるかもしれません。


ただし、これらのサブシナリオによって、尚文以外のキャラクターの視点が強調され、物語が群像劇的な構造へと変化しています。

単なる成り上がり作品に留まらず、多角的な人物描写を通して物語に奥行きをもたせている点は本作の魅力の一つです。


 総評


今作は、初期のテンプレから脱却し、長期シリーズとしての深みを見せつつある内容です。

バトル・陰謀・政治劇がバランスよく織り交ぜられており、4期単体でも楽しめる丁寧な構成になっています。


「追放系作品は苦手…」という方にも、今期の内容はむしろ王道ファンタジーとしておすすめできる仕上がりです。

また、1期からの成長や仲間との絆に触れることで、シリーズを追ってきたファンにとってはより一層感慨深い内容となるでしょう。


群像劇×ファンタジーが好きな方には、特におすすめです。


2025年9月2日火曜日

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑬ 大規模攻勢_5》

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。

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サーチが居城デスランドを飛び立つ少し前、後退していたベルガンの部隊1万9000体が待ち伏せている地帯に自衛隊が接近していた。


ベルガンは配下に低空飛行を指示。自衛隊の特殊弾による高熱から残った瓦礫に隠れるように分散して待ち構えている。


作戦は部隊を円形に散会、伏兵《ふくへい》として、自衛隊の車列を円形の中心付近まで誘い込んでから、360度全方位から一斉攻撃を仕掛けるというものだった。


しかし、実際は自衛隊は円形の外縁付近で停止。隠れているガーゴイルを攻撃し始めていた。


ーーなぜだ。なぜ伏兵がわかる?


ベルガンは自衛隊の目、偵察ドローンの存在を軽視していた。もともとパワータイプのベルガンは小さいもの、弱々しいものを見ると油断する傾向があった。それは自身に対して無力で気を配るに値しないという認識に基づいた行動だった。


しかし、自衛隊の偵察ドローンは性能が高く、高度500mから容易にガーゴイル達を視認していたのだ。これは、戦闘が長引いて夜が明け始めたことも関係していた。


なすすべもなく、1体、また1体とガーゴイルは集中砲火を浴びて消えていく。


ーー創造主に……指示を……いや、ヴァロンに作戦を……いや、駄目だ。。俺が弱気になるな!


ベルガンは敵がこちらの位置を把握していると認識を改め、陣形を変更した。


「残存兵は、ポイント120に集結、5000の集団を3部隊編成しろ。 残りは俺のところへ来い」


潜んでいたガーゴイルは一斉に動き出した。中には遮蔽物を飛び出して自衛隊に攻撃されてたどり着けなかったガーゴイルもいたが、なんとか陣形を立て直した。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


同時刻 居城デスランド。 サーチが飛び出し、神は玉座に戻っていた。


「ヴァロン、ベルガンの戦況をどうみる?」


神はヴァロンの能力を試すように問う。


「良いとは言い難いですね。自軍の位置が把握されているというのは、作戦上致命的です。その原因を潰すことなく続行したところで劣勢は変わりません。しかし、部隊を集めたのは正解でしょう。これで人間も攻撃しにくい。警戒すべきは例のロングレンジレールガンですね」


神の笑みを見て、自分の能力を証明するかのようにヴァロンは饒舌《じょうぜつ》に分析を進める。


「おそらくベルガンは、3部隊による連続的な正面突撃を狙っていると思います。これは恐らく全滅します。その間に左右に散った3000体程度が挟み撃ちでしょうな。この挟み撃ちで正面から敵の注意をそらし、ベルガンはファイアバレットを正面から最大火力で放つつもりです。3部隊の突撃はこのファイアバレットの時間稼ぎといったところかと」


「はははは、面白そうじゃない。ファイアバレットを最大火力まで溜め込むには相当なエーテル量が必要だ。練りこんで密度を上げるのには1時間はかかるだろう。間に合うのかー」


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


神とヴァロンの予想は的中し、ベルガンは5000体の部隊3体に、20分間隔で突撃するように指示をだしていた。


最初の部隊が自衛隊の車列に突入した。高度を上げている余裕はなく、なんとか数十メートル上昇して即座に攻撃に入った。


「光る玉に気をつけろ!視界を奪われた場合は直進、体当たりで敵の位置を把握し、破壊しろ!足を止めるな!また灼熱の雨にやられるぞ!」


ベルガンの檄《げき》が飛ぶ


指示を出し終えるとベルガンはすぐにファイアバレットの射撃準備に入る。体内にエーテルを練り込み、超高温の炎を育てていく。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


10分前 自衛隊司令部。


R連隊の隊長、足立《あだち》昭介《しょうすけ》と副長の仲原《なかばら》香《かおり》三佐は、やや後方の耐熱装甲車に乗車し、ここを司令部としていた。


偵察ドローン部隊から報告が入る。


「UFBが前方に集結中。5000規模の集団を複数形成中。3個群」


仲原は直ぐに意図を読み解く


「こちらの偵察ドローンを無視?レールガンに撃たれないように短期間で距離を詰める損耗戦術ですかね?」


話の相手は足立だ。


「だろうな。UFBの指揮官は1900年代の戦争をしたいらしい。だがさすがに、あの数と距離だ。防げるか?」


「発光弾も、夜明けに伴い効果は落ちますが、それでも視界を奪う程度にはなるはずです」


足立はチラリと仲原を見るとトーンを落として話を進める。


「発光弾か。仲原三佐は前回と、今回でUFBの戦術に違いを感じないのか?」


予想外の会話に戸惑う仲原。


「まぁいい。前回は高低差をつけるなど工夫が見られた。これは兵の損耗を考慮した理性ある戦いとみていい。だが、今回は団子状に固めた兵の弾丸を感情的にぶつけている。これはつまり、理性が欠けている。だとすれば、発光弾で視界が奪われようがお構いなしに突撃してくる。これは全滅覚悟の玉砕攻撃に近い」


「全滅覚悟ですか。酷い時代錯誤ですね。ではプランC1でどうでしょう。もともと想定が大規模奇襲用なので適切かと」


足立は仲原の的確で素早い思考回路に、若さと才能を感じ、少し笑みを浮かべ


「君が味方でよかったよ。了承だ」


と答えた。


僅か5分でベルガンの作戦は看破され、対応策が講じられた。


「全車両に通達。前方からUFB15000接近。プランC1で迎撃する」


その時、シェルターにいる大仲防衛大臣から連絡が入る。


「足立隊長。大仲です。プランC1と聞き、急ぎ連絡をしました。作戦は君たちに一任するが、単なる大規模突撃だろうか?いや、何か懸念があるわけではない。だが、私も、ここにいる津田議員も、政治家としての勘が何かを警戒させるのだ。増援か、何か他の脅威か、正体は分からないが警戒を頼む。自衛隊を頼んだぞ」


ベルガンのファイアバレットの存在も知らない。それどころかベルガンの存在すら認識していない人類だが、長年駆け引きを行ってきた政治家は、その脅威を「勘」というあいまいなもので察知した。


「分かりました大臣。C1のあと、増援に備えプランA2も準備しておきます」


数分後、ついに両者は再び激突することとなった。


【お知らせ】 8/31の記事の件

こんばんは。

管理人の緑茶です。前回日曜日に投稿した記事が、非表示になっていました。

なにかのポリシーに触れてしまったようです。


改めて全体を見直し、表現を修正したうえで再掲載いたします。